『MAKUBEX 11月1日』
| 今日は新生VOLTSの幹部にとって、特別な日である。 現リーダーであるMAKUBEXの誕生日という、重要かつ重大なイベントがあるのだ。 朔羅は前日から料理の下準備で忙しく、笑師は3日前からステージで披露するためのネタを練っている。 十兵衛は俊樹を巻き込んで、ギャグの道を極めんとしているようだが、こちらは笑師と違ってモノになりそうもない。 俊樹もそれと分かっているのか、十兵衛の相手はそこそこに、部屋の飾りつけなどに力を入れているようだった。 「こんなに大げさじゃなくてもいいんだけどな」 一人別室に控えたMAKUBEXはこっそり呟いた。 皆が自分のために色々としてくれるのは、とても嬉しいと思う。 そしてこの機会に皆も楽しんでくれたなら、もっと嬉しいと思う。 だから少々気恥ずかしくても、皆の好きなようにさせている。 MAKUBEXはいつものようにコンピュータの前に座って、すぐ隣の部屋から響いてくる物音を聞いていた。 朔羅が料理を並べているのか、食器の触れ合う音がする。 何をセッティングしているのか、俊樹が指示する声も微かに聞こえてくる。 笑師は今からハイテンションのようだ。 十兵衛はリハーサル中なのか、一発ギャグが聞こえてくるが…。 「相変わらず寒いなぁ…」 勢いだけで押しまくる十兵衛の出し物は、やはり期待できそうにもなかった。 それから少しばかり時間が経って、隣が静かになった。 もうすぐ朔羅が呼びにくる。 いつもよりもっと優しい声で名前を呼んでくれるだろう。 扉が開く音に続いて軽やかな足音が響き、それはMAKUBEXのすぐ後ろで止まった。 暖かい空気に、少しだけ胸が高鳴る。 「MAKUBEX。皆が待っているわ」 「うん。今、行くよ。朔羅」 |