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『銀ちゃん&蛮ちゃん』


今年もそろそろ終わりを迎えようというこの時期、毎年恒例の一大イベントがやってくる。

街には金や銀を基調としたイルミネーションが溢れ、店頭には赤と緑のリボンでラッピングされた商品がところ狭しと並べられていた。

特に、恋人たちにとっては大事なイベントである。

有名ホテルやレストランは、その日のために予約が殺到していることだろう。

男としては、彼女に甲斐性を見せつける絶好の機会である。

また、恋人という経過を終えて、家族という形を為している者たちにとっても、やはり特別なイベントだ。

家のテーブルには豪華な料理が用意され、その中央にはケーキが鎮座して子供の目を輝かせるのだろう。



「メリークリスマス」

スバル360の車内で、密やかな囁きが漏れた。

「銀次、俺はお前にプレゼントを用意したんだぜ」

「俺も蛮ちゃんにプレゼントがあるんだっ」

「よし。じゃあ、お互いのプレゼントを交換しようぜ」

「うん。せーのーでっ!!」

銀次の合図と共に、二人は持っていた焼肉弁当を相手に渡した。

「嬉しいぜ、銀次。美味そうな弁当だなっ」

「ありがとう、蛮ちゃん。俺、焼肉弁当が大好きなんだっ」

互いに礼を述べているが、端から見ればただ単に弁当を取り替えただけだ。

それも、全く同じ弁当を。

にこやかに笑いながら二人は弁当を食べ始め、若いだけにあっという間に食べきってしまった。



「…なぁ、銀次。こんなことして楽しいか?」

「いいじゃん。せっかくのクリスマスなんだし、気分だけでも出さなきゃ」

「……」

ささやかな幸せに浸っている銀次を見て、来年こそはクリスマスケーキくらい用意できるようになろうと、決意する蛮だった。

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