『新生VOLTS』
| 「せっかくのお正月だから、少しそれらしくしましょうね」 そういう朔羅の提案で、新生VOLTSの幹部が集う部屋には、様々な正月グッズが持ち込まれることとなった。 おせちや鏡餅やミカン、他にもたくさんのものが用意されたが、中でも皆の関心を一身に集めたのはコタツであった。 コタツでぬくぬくしながらミカンを食べる、日本人なら誰でも心惹かれる光景である。 「僕、コタツなんて初めてだよ」 「気に入ってもらえて嬉しいわ、MAKUBEX」 「コタツは日本人の心の故郷でっせ〜」 早くもコタツの虜となった三人に、初めは遠慮がちだった俊樹も遅れて加わった。 「懐かしいな、コタツなど何年ぶりだろう。それほど寒くなくても、コタツがあるとつい入ってしまう。…筧、お前も入ったらどうだ」 コタツの魅力を満喫しながら、四人の視線が十兵衛の方を向く。 「いや、俺はいい」 きっぱりとした断りの言葉に、それぞれが不審な顔つきをした。 「俺は正月とはいえ、たるんだ生活を送る気はない。一年の計は元旦にあり。こんな時こそ己を戒め、修行をしなくてはならないと思うのだ」 生真面目な十兵衛ならではの言葉だが、生憎にも賛同者はいなかった。 MAKUBEXや笑師はおろか、朔羅や俊樹までもが生暖かい目で十兵衛を見守っている。 コタツの魔力の前には、どんな名言もその効力を失ってしまうものであるらしい。 「と…とにかく、俺は遠慮させてもらう」 そう言って皆とコタツに背を向けた十兵衛に、MAKUBEXから甘い言葉が投げ掛けられた。 「じゃあ、このミカンを食べる間だけでいいからこっちに来なよ、十兵衛」 それから数分後。 「たるんだ生活はしないって言ってたの誰だっけ?」 通常業務に戻ったMAKUBEXたちの目の前には、すっかりコタツに馴染んだ十兵衛が惰眠を貪っていた。 |