『不動』
| 年が変わった。 だからといって何も変わったことはない。 108の煩悩を表すという除夜の鐘を聞いても、欲望はなりを潜めるどころかますます強くなるばかりだ。 欲が消える時があるとすれば、それは死んだ時に違いない。 ドロドロに腐った欲が全身に漲っているのを感じながら、目の前に広がる光景を睨み付ける。 視界が鮮やかに染まり、強烈な光が瞳の奥まで突き刺さった。 これを待っていたのである。 待ち構えていたその刹那、魂が咆哮した。 「今年こそは美堂をぶっころ――すっ!!」 無限城のどことも知れぬビルの上、初日の出に向かって今年の抱負を叫ぶ不動だった。 |