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『銀ちゃん&蛮ちゃん』


空から羽のような軽やかさで、雪が降っていた。

寒いのを我慢するのは辛いが、どこもかしこも白くなって、見慣れているはずの街並みがいつもと違って見える。

強いて言えば夏の方が好きだが、こうした光景を見ると冬も悪くないと思えた。

傍らにいる相棒も、初雪に大はしゃぎしていたものである。

しかし、雪が降るたび喜んでいたはずの銀次は、最近では何故かふさぎ込むようになった。

いい加減飽きたのか、寒さに対する辛さの方が勝ってしまったのか、今も小雪の舞う街を眺めながら溜息をついている。

「何だよ銀次。さっきから何回溜息つきゃ気が済むんだ」

「あっ、ごめんね、蛮ちゃん」

蛮に指摘されて反射的に謝るものの、あの分では自分がどれだけ鬱々たる表情をしていたのか気付いていない。

「最近変だぞ、お前。どうしたんだよ?」

「別にどうもしないよ」

「嘘つけ。俺にも言えないようなことなのかよ」

「…だって」

俯きながら口ごもる銀次は、まるで親に悪戯を咎められた子供のようだ。

「言ったら蛮ちゃん、絶対笑うか怒るかするだろうからさ」

「笑わねぇし、怒らねぇ。だから言ってみろ。気になって仕方がないぜ」

銀次は暫く考えて、ようやく重い口を開いた。

「雪って白いよね」

「そりゃそうだな」

「寒いと、暗い色のコートを着る人が増えるよね」

「んー? まぁそうだな」

「黒いコートって雪の中だと目立つよね」

「……」

「あっちにもこっちにも黒コートを着てる人がたくさんいて、しかも雪が降ってるとそれがとっても目に付いて、まるで黒コートの集団に囲まれているような錯覚がして、俺はそのたび背筋が寒くなるんだ。…無限城でのあの黒い恐怖が甦ってくるんだよ、蛮ちゃん」

「……」

「まるで赤屍さんがいっぱいいるみたいじゃないか!!」



銀次が思いっきり殴られたのは言うまでもない。

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