『銀ちゃん&蛮ちゃん』
| 空には雲一つ無く、澄み渡った青空がどこまでも広がっていた。 大都会の真ん中ということで、高層ビルが雄大な空の広さを削り取ってはいるが、気持ちの良い日差しが降り注ぎ、周囲のもの全てを輝かせている。 「んん〜、いい天気だなぁ」 公園のベンチで寛ぎつつ、両手を頭上に思い切り伸ばして、銀次は春の空気を胸いっぱいに吸い込んだ。 若い上に活動的な心身を持つ銀次にとって、こんな日は心が浮き立つ。 そんな晴れ晴れしい気分を分かち合いたくて、銀次は傍らの相棒に目を向けた。 「気持ちいいね、蛮ちゃんっ」 「んごー…」 「ねぇ蛮ちゃん」 「んごー…」 返事は返ってこなかった。 ある意味、蛮は蛮でこの麗らかな日を満喫しているのかもしれない。 ぽかぽかの陽気に包まれて、蛮はすっかり熟睡していた。 「もー」 つれない相棒に落胆しつつも、銀次の顔は笑っている。 こんな心地の良い日だと、少々のことでは怒りなど湧いてこない。 「俺も寝ちゃおっかな」 普段は裏社会で過酷な毎日を生き抜いているのだ、こんな穏やかな一日があってもいい。 数分後、寄り添って昼寝をする二人の姿があった。 しかし、一日はそこで終わらなかった。 「何じゃこりゃあっ!!」 車のバックミラーを覗き込んで蛮が大声を上げている。 そしてその背後では腹を抱えて笑っている銀次がいた。 「あはははははははははは」 「てめぇ笑うな、銀次!!」 「だって、だって、逆さバンダ〜っ!!」 日が落ちて、肌寒さに目覚めた二人を待っていたものは、お日様によるささやかな悪戯だった。 蛮の顔は日焼けで赤く染まり、サングラスの部分だけが白く残っていたのである。 春の紫外線を甘く見てはいけない。 |