―――ここで語るのは『野比のび太』の物語・・・
―――『空白の一週間』から今までより充実した日々を送り・・・
―――中学、高校、大学と進み環境庁に勤め、結婚、出産、そして約11年・・・
外伝「『四聖』?との再開」
その日の仕事を終え、家路につく。
数年前から解決策を探していた「オゾンホール」問題で中核となる「現在浮上中のフロンガスをどうするか?」について
技術班から「完全無害なフロンガス分解酵素開発の糸口が見つかった!」との報告を受けたからかその足取りも軽い。
ドラえもんのおかげでしずかちゃんこと旧姓「源静香」と結婚し、一人息子も自分の記憶の中で一番輝いていた頃、
小学5年生になって『幸せな一家』と称しても良いと自己評価する生活を送っている。
ただ・・・何故一人息子の性格が自分ではなく『ガキ大将』に似ているのか・・
「なんでだろうね?ドラえもん?」
過去にはネックレスになっていた『黄色い鈴』は、少しだけ淡い色合いの家鍵のキーホルダーになっていた。
その『黄色い鈴』に話しかけるのは穏やかな気持ちの時。
幸せな気分な時。
もう会う事の無い親友に報告する時。
幸せを確かなものと確認する時。
静かにその鈴を目の高さまで持ち上げ、言葉にして自分の気持ちを確認する。
「さて、我が家に帰りますか。」
今回の『報告』が終わり、家鍵をポケットにしまうとそうつぶやくのび太。
ちょっと歩くペースを上げ、家族の待つ我が家へとちょっと急いで帰る。
その時、家ではちょっとした事件が起こっているとも知らずに・・・
「ただい・・・ん?」
家の扉を開けると玄関に並んでいる靴の量が普段よりも格段に多く、見知った人物が家にいる事を知る。
のび太は靴を脱ぎ、居間へと歩いていくと幼馴染の『ガキ大将』が自分の子供の心配を前面に出したセリフを喋っているのが廊下でも聞こえてきた。
そして、そのまま居間の会話を聞いていると懐かしい、親友の妹の声が混ざっていて子供達が行方不明になっている事を知る。
だが、それを知ってものび太は驚かなかった。逆に「ついにやったか。」と思ったほどだった。
(あんな小学生時代を過ごした自分達の子供がおとなしい訳が無い。)
この考えが既にのび太の中にあり、それに対しても既に手をうっていたためであった。
自分の息子、ノビスケに「あるもの」を肌身離さず持つように守らせていた。
そのあるものが正常に動作している事を廊下で確認し、意気揚々と居間へと続く扉を開く・・・
ノビスケに渡しておいた「ビー球型通話発信機」でノビスケたちの乗った船を「海底牧場」まで誘導し、
太陽光で充電を行わせノビスケたちを助けた。特に怪我は無いようなので安心した。
ただ・・・ミニドラを見た時に笑顔を少しだけ深くした。
そして・・・ミニドラをつれてドラミちゃんが未来に帰ろうとした時、不意にドラミちゃんが思い出したかのように話始める
「あ、そうだ。のび太さん、中学生のころに一週間神隠しになったそうだけど・・・その時のこと、何か覚えてないの?」
「え?・・・ああ、あの『事件』の事かい?残念だけど・・・」
あの『事件』・・・自分でもどんな事に巻き込まれたのか・・・一つも覚えていない。
いくら思い出そうとしても、学校の帰りに『鈴』に語りかけていたところまでしか思い出せず、
そこからは一週間後に玄関の前に呆然と立っていたところに記憶が飛んでしまう。
本当に奇妙な体験だと今でも思っている。
「実はあの事件は・・・」
ドラミちゃんが言うにはあの事件で自分はこの時空間そのものから消滅させられそうだったらしい。
そして、タイムパトロールの言う事では『とんでもない幸運で戻ってこれた』ということらしかった。
「そ、そんな事があの『事件』にあったんだ・・・でも、何であの事件の直後に教えてくれなかったんだい?」
「お兄ちゃんは『のび太君はもうどんな事があっても大丈夫さ』って自分を抑えてたわ。」
ドラミちゃんのその言葉に、『親友』からの絶大な信頼を感じたような気がした。
「『ぼくとのび太君はもう二度と会っちゃ駄目なんだ。
会ってしまったらあの時の決意をぼくに示したのび太君を侮辱した事になる。
だから、のび太君にどんなことが起こったとしてもぼくは会いに行かない。』だって。
こう、両手をぐっとオイルが漏れるんじゃないかってほど握り締めながら言っていたわ。」
顔の前に両手を持ってきて力いっぱい握る動作をするドラミちゃん。
「っと、そうだわ。のび太さん、ちょっといい?」
お腹のポケットに両手を入れながらそう切り出す。
「実は、のび太さんが行方不明になった時と重なるように一時的にこっちでもちょっとした『事件』が起きたの。」
そう言いながらポケットから犬などのペットを入れる鞄を取り出す。
「のび太さんみたいに一週間ではなく、一日だけだったんだけどこの子達が住んでいるエリアから完全に姿がなくなっていたの。
でも、それからは特に問題は無かったからそのままにされちゃったの。で、その子達っていうのが・・・」
ゆっくりと鞄を開けると勢い良く自分に向かい飛び出してくる4つの影。
一つは顔に、一つは首に、残りは一つずつ腕に飛び掛り、その場所から動かなくなる。
顔に引っ付いた影の感触はぬいぐるみのような暖かい。首に引っ付く・・・というか巻きついた影は細長いもので顔を撫でてくる。
腕に飛びついた影たちはそれぞれ甘噛みをしてくる。一つは馬のような歯を持った感触、もう一つは嘴を持つ鳥がやるような感触。
顔の影に視界と共に呼吸まで妨げられていたためその影を右手で引き離す。
「・・・ぷはっ!いったいな・・に・・・・」
後ろ首を掴まれ猫のようにぶら下がりつつこちらを見つめるオレンジ色の竜。
首に巻きついた胴をそのままに真っ直ぐな視線をよこす龍。
右腕で右手を甘噛みしつつ視線を向ける翼を持った白馬。
左腕で左手を嘴で咥えるようにして仰ぎ見る鷲と獅子の特徴を備えた動物。
かつて『命と引き換えに自分を、世界を守った生命』、『自分が秘密道具で創り育て離れ離れとなった生命』。
もう二度と会うことが出来ないと思っていた仲間。色あせた鈴、本来の持ち主と共に駆けていった色あせる事の無い思い出の中にいた掛替えの無い親友。
「風子!ドラコ!ペガ!グリ!」
それぞれの名を呼び、胸に引き寄せ、うれしさを示すかのように力一杯に抱き しめる。
「「「え!」」」「「「は?」」」
かつて自分と共に数々の冒険へと繰り出し大人陣の驚きの声と、
そんな大人たちの冒険を知らず空想上の生き物たちを親しげに抱きしめている自分への疑問の声が重なる。
四匹を満足するまで抱きしめ、開放するとペガだけが自分のところに残り、風子は静香、グリはスネ夫、ドラコはジャイアンの所へと飛んで行き再会を喜び合っていた。
その様子を笑顔で見つつ、蚊帳の外に置かれている子供たちに目を向ける。
「ノビスケたちは聞いた事があるだろう?
私を含めた親たちが君たちくらいの歳に経験した冒険を、と言ってもただの作り話だと思っていただろうけどね。」
そう言って、まだ固まったままの子供たちを見続ける。
「で、その『作り話』の中にこんな話があったはずだよ?
『七万年前の日本での時間犯罪者との激突』『風使いの一族同士の衝突』って話がね。」
見ていると、少しずつ子供たちの目に意識が戻ってくるのがわかる。
子供たち全員の視線が自分に向かい、ノビスケが口を開いた。
「う、うん。たしか、22世紀から来たっていうロボットと一緒に父さんたちが経験した冒険のうち二つで・・・
ああ!!たしか、7万年前に行ったときは友だちを3人(?)創ったって・・・
それに、もう片方では大事な友だちが世界を救ってくれたって・・・」
ノビスケの言葉とともに頷きながら子供たちがこちらを『信じられない』という目で見ている。
まあ、あの話を実際の経験談ではなく『作り話』と感じてしまうのは普通のとらえ方だ。
「そうだよ。このペガとグリ、ドラコが7万年前の話で出た友だちさ。」
まだ腕の中にいるペガを撫で、スネ夫とジャイアンの方に視線を向けてグリとドラコを見る。
そして、静香の方に視線を移す。
「そして、静香が抱いているのが風使いの話で死んでしまったと思っていた風子だよ。」
そこまで言うと子供たちは興奮した表情になり、静香たちの方に向かっていった。
どうやら、それぞれに質問をしているようで少し視線をやったが、ドラミちゃんに視線を戻す。
「それにしても、ドラミちゃん。ペガたちと会うことが出来たのは嬉しいんだけど・・・」
そこで、ちょっと言葉が詰まったが続きを静香たちに聞こえないくらいの大きさで話す。
「これってドラミちゃんたちは大丈夫なの?
私も詳しくはわからないけどいろいろと許可とかが必要だと思うのだけど・・・
そう言うとドラミちゃんはちょっと目を見開いて驚いたあとにクスクスと笑い出した。
そして、笑顔のまま話し出す。
「そこは大丈夫よ、のび太さん。今回のことは空想動物園が私に頼んできたくらいですもの。
だから、私は何かしらの処分を受けることもないし、むしろタイムパトロールも容認しているの。」
そこまで聞いてちょっとだけ安堵の溜息を気づかれない様にはく。
「なら良いけど・・・じゃあ、ペガたちとはいつまで一緒にいられるのかな?
やっぱり空想動物園には帰らなきゃいけないだろ?」
ペガの鬣を撫でながらドラミちゃんに聞いてみる。
すると、ドラミちゃんの表情に変化が生まれた。笑顔から苦笑、それからまた笑顔へと。
「それが・・・のび太さん・・・私も聞いたときに耳センサーの調子を疑ったんだけど・・・
このままこの子達は『のび太さんの家で引き取ってもらえたらそうしてもらえ』って話なのよ。」
「へっ?」
この話に驚く。(嬉しいことは嬉しい・・・けど・・・)という思いが胸をよぎる。
「そんなことをやったらペガたちが危険なんじゃ・・・」
(下手をするとピー介の時と同じことが起こるかもしれない。)そんなことを考える。
しかし、ドラミちゃんは笑顔をまだ浮かべたまま喋りだした。
「その点については大丈夫よ、のび太さん。これはタイムパトロールの人から聞いたんだけど・・・」
なんでも近々この時代のある企業がペガたちと同じ形のペットロボットのモニター販売を発表するらしい。
そして、そのモニターとして我が家が他の50件余りの方々と共に選ばれることになっているのだという。
さらには、その企業というのがこの時代のタイムパトロールの拠点らしい。
「なんか微妙に優遇されてたりするのかな?」
ドラミちゃんの話を聞いて妙な汗をでる。
「多分、あの『事件』に対してのタイムパトロールからのお詫びじゃないかしら?
あの時は事前に終わらせるって事が出来なかったし、のび太さんが無事だったのは結果論でしかないから。」
あの『事件』がタイムパトロールに与えた影響は少なくなかったらしい。
「というわけで、その子たちのことお願いね。」
そう言って止める間も無く引き出しの中に戻ってしまうミニドラとドラミちゃん。
遅いとわかっていて引き出しを開けると普通の引き出しの底があるだけ。
溜息を一つつくと静香たちに振り返り、ペガたちがこのまま家に残ることを話す。
皆が驚き、そして歓声をあげる。
やはり、家は沈んだ静かさより明るい笑いに包まれているほうが良いと改めて思う。
―――亜空間
何も無い空間にポツンと浮かぶ人影が一つ。
年のころ十代前半、眼鏡をかけた少年が目を閉じて浮かんでいる。
どれくらいの時間の間目を閉じていたのかわからないが、その少年が目を開け一つ溜息をはく。
「これでこちらののび太とペガたちも一緒になれたな。」
ある一つの方向に視線をやりつつそう口に出す。
「これで蒼太たちからの願いは叶えたことになるな。」
少年の右手に紙を掴んでいる。
「まさか、別な時空間に移動する直前にこのようなものを渡されるとは思わなかったぞ。」
その口から出るのは恨み言のようだが雰囲気にあるのは微笑のそれ。
紙に書いてあることを要約すると『のび太と残ったペガたちも一緒に暮らせるようにしてあげてください。』といった内容だった。
「私は蒼太、君との約束を守ったぞ?君も私との約束を守ってくれよ?」
そこまで呟くとその人影はその体形を崩し、黄金の円盤状になると何処とも無く飛び去っていった。
―――これは一つの物語、日常に帰ったのび太が蒼太と同じ家族を手に入れる
―――ただ、その先にあるのは守るための闘いではなく日常にある安息
―――蒼太とは違うのび太の充実した日々の始まりの物語
後書き
お久しぶりです・・・放浪の道化師です。(ビクビク)
二年ほど前に書き上げた本編の番外編ですがいかがでしたでしょうか?(ビクビク)
これを書こうと思ったキッカケはある感想の中に「残ったのび太はペガたちとは会えないのか」的なものが
ありまして、そのまま投げっぱなしにするのもどうかと思い書き始めたのですが・・・・(ビクビク)
書き始めてから書き終わりまでに2年もかかってしまうと言う事態に・・・(ビクビク)
今後も執筆を続けるかどうかは微妙ですが、もし目に留まることがありましたら読んでやってください。(ビクビク)
では、最後まで読んで頂いた方々、そして私の作品をHPに載せてくださっている【ラグナロック】さんに感謝しつつ・・・
退避〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!C= C= C=C= C= C= (((((( *≧∇)ノノノ
捕まえる算段をしながら後書き
何処へ行こうというのかね!
三分待ってやる大佐は逃がさないと申しております、無論私も
とは言え、人のことを言える状態じゃ思いっきりない私ですがwキースシンジくらいは活躍させてみようと思います、最後にこの言葉を送って〆としましょう
ハーレムハーレム!
ノシ