警告します!
 
 
この物語には 読んだ人を不快にさせる要素が含まれています
 
使用中に気分を害された方は、すぐに使用を中止してください
 
 
 
この物語は HALPASで連載させて頂いている「新世紀エヴァンゲリオン パワーアップキット」シリーズの外伝であります
時期的には 本編第一部、第五章後編冒頭のシーン一日前ぐらいです。
 
色々あって、HALPASでの公開を躊躇していた原稿を ここの管理人様に気に入っていただいたのを良いことに、掲載させていただくことになりました。
 
内容は本編よりも若干ドロドロとしたものになっております。二次創作を読んで不快になりたくない方は、決してお読みにならないでください。
 
 
 
この物語に登場するものは全て架空の存在であり、現実とは何も関係ありません
なお、この物語は T.C様およびUSO・きのとはじめ両氏の作品と世界観の一部を共有しております
 
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どこか 別の世界  その片隅
 
 
 
 
 
 
 
ざざぁぁ‥‥ん ざぁぁ‥‥ん  
 
 
 
赤昏の空
 
 
 
ざざぁぁ‥‥ん ざぁぁ‥‥ん  
 
 
 
赤い海
 
 
 
ざざぁぁ‥‥ん ざぁぁ‥‥ん  
 
 
 
一面の 赤い海
 
 
 
ざざぁぁ‥‥ん ざぁぁ‥‥ん  
 
 
 
寄せては返す LCLの波
 
 
 
ざざぁぁ‥‥ん ざぁぁ‥‥ん  
 
 
 
 
 
ここは妄執と愚行の果てに作り上げられた 赤い地獄
 
 
 
 
 
 
 
 
だが、地獄にすら 微かな希望が有る。
永遠に続く責苦など 在りはしない
 
いつか、必ず 終わる日が来る。
いつか 地獄から解き放たれ 輪廻の輪に戻る日が来るのだ。
 
この世界にも
全地球の生命が強制的に融合させられ
その後 自由意志に見せかけた意識誘導により融合が解かれて
融合体の核であった只一種 只一対の生物のみを残し
全ての生物が死滅した この人造の地獄にも 
 
救いは有る。
 
 
地獄に仏ではないが
 
救いの女神が やって来たのだ。
 
 
 
 
 
 
救いの女神は 黒髪の眼鏡っ娘だった。
 
 
 
 
 
 
 
         新世紀エヴァンゲリオン パワーアップキット外伝
                 『罪人たち』
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「はい。 もう大丈夫です」
 
白魚のような指が、砂浜に横たわる紅い少女‥半ば破れた真紅のプラグスーツの残骸を纏ったままのアスカ‥の、剥き出しになった腹から離れた。
紅い少女の腹部に有った筈の惨たらしい傷は もう、無くなっている。
アスカはまだ気絶したままだが、呼吸も落ちついていた
生命の危機は去ったのだ。
 
 
「あ、あ、あ、有り難う」
 
どもりながら 感謝の言葉をのべるLCLまみれの、学生服姿の少年 碇シンジ
 
救いの女神‥ 黒髪の少女は そんなシンジの様子に微笑みを浮かべた。
 
透明感あふれる 優しい笑顔。
シンジが一度だけ、この少女と別れたときに見た 笑顔。
いや、シンジの記憶にある あの少女と 瀕死のアスカを救った目の前の少女が、同一人物の筈はない。
 
彼女‥ 山岸マユミは サードインパクトにより死んだのだから
シンジが殺したのだから
 
他の数十億の人間と共に 殺したのだから
 
 
「あの‥ 山岸さん‥   だよね?」
 
「はい。 そして貴方は碇君、この人は惣流さん」
 
「‥‥その えっと‥」
 
「何故、私がここにいるのか不思議なのでしょう?
エヴァと同調していた、貴方と惣流さんを除く全ての生命が溶けてしまった筈なのに」
 
「‥うん」
 
 
「私は 別の世界から来たの」
 
「別の‥ 世界?」
 
「この世界に重なるように存在する 別の世界。 互いに少しずつ異なる世界。 平行世界、パラレルワールド。 碇君も知っていますよね」
 
「う、うん、一応。 聞いたことがあるよ、流石にパラレルワールドから来た人と会うのは初めてだけど」
 
と 半信半疑ながらシンジは応じた。
マユミは話を続ける
 
「私の世界では、私‥山岸マユミがサードチルドレンだったんです」
 
「‥‥‥じゃあ 僕は?」
 
「私から見れば 転校生でした」
 
「もしかして、使徒に憑りつかれるの?」
 
こっくりと 頷くマユミ。
 
「立場がそっくり入れ替わっていることを除けば 私の体験したことは碇君と同じなんです。
私の世界は 私が壊してしまった。
なにもかも
 
だから、今は人助けの旅をしているんです。罪滅ぼしにも何にもならないけど
泣くのは飽きたから」
 
「山岸さん‥」
 
 
マユミの話によれば 彼女はサードインパクトにより崩壊した世界を巡って歩き、生き残った依り代‥大抵は碇シンジだが、希に他の人物の場合も有る‥を救助する任務に付いているらしい。
 
任務とは マユミたちは似たような境遇の者同士が集まって組合を作っており、その組合ではサードインパクトによる世界崩壊後の世界を巡り歩いているのだそうだ。 
 
「‥‥組合?」
 
「スフィア・セーバーズ・アソシエイション‥ 世界救済者互助組合、略称SSAです」
 
 
 
 
 
 
 
「碇君たちは、本当に危ないところだったんですよ」
 
「う、うん。 アスカが助かって良かった‥ 本当に良かった」
 
「そうではなくて、今も危ないのです」
 
「そうなの?」
 
 
マユミは沖合いに立つ 崩れかけた巨大な天使像を指差した。
 
「碇君、あの像は好きですか?」
 
「‥‥嫌いだよ」
 
沖合いの歪んだ天使像は 量産型エヴァンゲリオンのなれの果てである。
本部を襲撃し、アスカごと弐号機を貪った 『敵』である。
サードインパクトの際に塩の十字架と化し無力化したが 好きになれる訳がない。
 
「よく見ていてください」
 
マユミは、天使像を睨みつけた。右腕を天使像へと伸ばし、人差し指で指し示す。
 
シンジはマユミの指先に、なにか見えないものが集まってくるような感触を覚えた。
エヴァに乗っているときに、使徒と相対しているときに 何度も感じた気配だ。
 
マユミの指先から、強烈な光が迸る。
白い光の束が一直線に伸びて 沖合いの天使像に届いた瞬間に、天使像は噴煙を撒き散らして爆砕された。
 
目に見える爆発から数秒遅れで聞こえてくる爆音が、妙にリアルだ。
爆発音からやや遅れて 浜辺まで粉塵が飛んできた。
大粒の塩の結晶が、マユミが二人の周囲に展開しているらしいATフィールドに当たり、パラパラと音を立てる。
 
「か、か、加粒子砲?!」
 
マユミは 動転するシンジの眼前に右手を示してみせた。
 
「これが私の得た力。あらゆる使徒の能力を使いこなせる、使徒使いの能力」
 
「使徒使い?」
 
「使徒は人間の持つ可能性を具現した姿。 碇君、あなたがアダムの力を得たように、私は全ての使徒の力を得ました」
 
「アダムの力‥ って」
 
思い悩むシンジ。
 
「ひょっとすると、僕も手から光線とか出せるの?」
 
補完中の夢のような綾波レイとの結合によって、シンジの脳裏にはマユミの説明を理解しうる基盤が作られていた。
 
「訓練しだいで、できるようになります」
 
「そうなのか‥」 
シンジはじっと手を見る。
 
「碇君、これだけの力があっても、私一人での旅は危険過ぎるのです。
危険度とゆう点では平行次元も深宇宙も似たようなものだけど‥
はっきり言えば、今の碇君がこの世界に1時間居続けるよりも 使徒使いになる前の私が全裸で目隠しして第三新東京市を横断する方が よっぽど安全です」
 
 
「‥‥全裸‥」
 
と シンジは呆然と呟き、三秒ほど間をおいてマユミの顔から視線を逸らした。
頬が赤く染まっている。
 
アイマスク以外何一つ身にまとってないマユミが市街をさまよっている図 を想像してしまったらしい。
 
「‥す、済みません 今の喩えは忘れてください」
 
シンジの反応を見て マユミはひどく赤面した。
 
 
 
 
 
「一人旅が危険なのは解かったけど‥そうすると山岸さんはどうなるの?」
 
「私には頼もしい連れがいますから」
 
マユミは天を指差してみせた。
シンジはつられて空を見上げるが、巻き上げられたLCLがモヤとなって漂う大気は透明度が低く、何か浮かんでるのかもしれないが良く見えない。
 
 
 
「でも、碇君の力はもっともっと凄いですよ」
 
「凄いの?」
 
「ええ、私には決してできないことができます。例えば、時を遡ることも」
 
「時を遡る‥」 
 
「つまり、時間移動ですね」
 
 
長い沈黙‥ とシンジは感じたが、実際には1分ほどであろう。
 
「‥じゃあ、元の世界に 戻れるの!?」
 
「戻れます。碇君が望みさえすれば」
 
マユミの言葉が染み渡るにつれて シンジの身は震え、心に喜びとゆう感情が沸き起こる。歓喜のあまり、胸の鼓動が爆発しかねないほどに高まる。
 
やりなおせる 
 
もう一度やりなおせる 
 
今度は失敗なんかしない
 
トウジを助けることができる トウジの妹も
 
綾波も 自爆なんてさせずにすむ
 
父さんもミサトさんも加持さんも 誰も死なずにすむ
 
 
 
 
「でも、時を遡っても 誰も救えはしませんよ」
 
そう言いきるマユミの声は 凍死しかねない程に冷たかった。
 
 
「え?」
 
高揚感に水を注されたシンジがマユミに向き直ったとき
 
上空から何かが落ちてきた。
 
その 何か は凄まじい速度でほぼ直角に墜落して、波打ち際あたりの地面に激突した。
あまりの衝撃に、砂と紅い液体が半々に混じった波が衝撃破と共に シンジたちに押し寄せる。
 
反応する間もなく衝撃破に吹き飛ばされる かと思われたが、シンジとアスカはマユミを中心に展開されるATフィールドに守られていた。
 
水分が多いだけに、砂煙がおさまるのは早かった。
波打ち際に すり鉢状の穴ができている。
そして、その中心では 右腕が肘近くの部位から無くなっている 綾波レイが立ちあがろうとしていた。
 
「綾‥波」
 
右腕の傷口から血を滴らせているレイを見て 呆然と呟くシンジの前に マユミが出る。
 
 
レイはシンジの姿を認めると叫んだ。
 
「碇君、そいつから離れて!」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「碇君、そいつから離れて!」
 
クレーターの中央に立つ水色の髪の少女‥綾波レイはシンジに向かって叫んだ。
レイの右腕は無残にも切り落とされ、その傷口から流れる鮮血は彼女のスカートに滴り落ち布地を汚し続けている。
 
「綾‥波?」
 
シンジは呆然と呟く。
彼の前に立つ黒髪の少女‥山岸マユミは右手の人差し指をレイに向けた。
不可視の『力』が集まる感触を シンジは皮膚で感じ取る。
 
マユミの指先から迸る破壊の光を、レイは跳び退って避けた。
浜辺に爆炎が巻き起こる。
 
空から、一人 また一人 と 人影が降りてくる。今度は派手な墜落ではなく、ソフトな着地だ。
 
降りてきたのは、全員が綾波レイだった。
 
 
 
 
 
全部で10人近くいるレイたちとマユミの戦いが始まった。
 
レイたちは手に手に光る剣や鞭を出して、マユミを包囲しようとする。対するマユミは小刻みに動き回り、レイたちを背後に廻らせないようにしている。
 
シンジは事の成り行きについていけずに、うろたえるばかりだったが
 
「碇君はアスカさんを護って!」
 
マユミの叱咤を浴びて、とりあえず動けるようになる。
シンジはまだ気絶したままのアスカを抱えて、物陰に隠れた。
 
 
 
 
常人の目では追うことも出来ぬであろう速度で動きまわり、切り結ぶレイたちとマユミ。
だがシンジには その動きがはっきりと見える。
 
「危ない!」
 
レイの一人が突き出した剣の切っ先が、マユミの脇腹に突き刺さった。
動きの止まったマユミの身体に、さらに何本もの武器が突き立てられる。
 
マユミの身体がぼやけ、滲むように形が崩れて、そして二つに分かれた。
第七使徒 イスラフェルの分身能力だ。
二人になったマユミは互いの背中を守りながら戦い続ける。
傷を負っても一瞬で回復するようになったマユミは 圧倒的に有利になった。
 
「‥これが、使徒使い」
 
全ての使徒の力を併せ持つ とゆう言葉の意味を、シンジは改めて実感する。
 
 
 
 
確かに戦いの様子が見える。だが見えるから それが何だとゆうのだろう。
見えるだけでは、何もできない。
何も変えられはしない。
 
切り伏せられる綾波を、助けることもできない。
 
なぜ、レイたちとマユミが戦わねばならないのかは解からない。
争いを止めねば とは思うものの、手の出しようがない。
せめて手から光線でも出せれば と念じてみるが、出せない。
どうすれば出せるのか解からないのだ。
 
マユミたちの優勢は覆りそうもない。レイたちの手傷は増える一方だ。
もはや手段を選んではいられない。無駄かもしれないが、割って入るしかないだろう。
シンジは立ちあがり、物陰から出た。
 
そこに、一発の光弾が飛んでくる。
マユミの放ったプラズマ球を、レイの一人が剣ではじき返したものが 流れ弾となってシンジへと向かう。
 
 
危険
 
 
脅威
 
 
恐怖
 
 
拒絶
 
 
絶対の 拒絶
 
 
 
プラズマ球は シンジの眼前に現れた壁にぶつかり、爆散した。
爆炎と壁の境界に 同心六角形の光の波紋が現れる。
 
「‥これは」
 
ATフィールドである。エヴァ越しとはいえ、シンジが実際に使ったことがある能力故に、咄嗟に出すことができたのだ。 
 
「おめでとうシンジ君、ようこそ我らが倶楽部へ」
 
声の方向‥背後に振り向くシンジが見たものは
 
「‥‥カヲル君」
 
愛しくも懐かしい、紅い瞳の少年の姿だった。
 
 
 
 
 
 
「カヲル君!」
 
「わかっているよシンジ君‥ 彼女たちを止めたいんだね」
 
「‥う、うん」
 
「一つだけ方法があるんだ‥ シンジ君が協力してくれれば止めることができる」
 
「わかったよ、僕にできることならなんでもするよ!」
 
「有り難う、シンジ君」
 
渚カヲルはシンジに歩み寄り、その咽喉もとに手を伸ばした。
カヲルのひんやりとした手がシンジの咽喉に突き刺さり溶けこんでいく。
咽喉に生じた違和感に悶えるシンジを抑えつけ、カヲルは微笑んだ。
 
 
「動くな! シンジ君がどうなっても良いのかい?」
 
 
 
 
 
 
咽喉が痛い。息が苦しい。
だが、それ以上に悔しかった。
同じ顔をしているとゆう ただそれだけのことで騙されてしまったことが悔しかった。
こいつは偽者だ。
こんな卑怯者が、僕の友達のカヲル君の筈はない。
 
 
渚カヲル‥もしくは渚カヲルの顔を持つ者は 融合した手から、シンジの頚椎神経に微弱な電流を流して動きを止めさせた。
 
「動かないで貰おうか、山岸マユミ‥ いや、『使徒使い』かな?」
 
マユミとレイたちは足を止め対峙したまま、じりじりと隙を伺っていた。
 
 
 
「人質‥ですか。 それで、要求は何でしょう?」
 
「とりあえず分身を解いて一人に戻ってくれないかな。 あとはじっとしていてくれれば良い」
 
カヲルはにこやかに微笑みながら言う。
 
「解かりました」
 
二人のマユミは溶け合い、一人に戻った。
レイたちは‥その半分は手負いだ‥ マユミを包囲する。
 
シンジは叫びたかった。マユミに『逃げて!』と言いたかった。
だが、現実は呼吸すらままならない。
 
「そんなに怯えなくても‥ 私は何もしませんよ?」
 
マユミは そう言って取り囲むレイたちに微笑んだ。
その態度が 更にレイたちを警戒させる。人質を取られ絶体絶命の筈なのに、余裕がありすぎる。
 
じりじりと包囲を狭めるレイたち。一人一人の戦力はマユミに劣るが、9人で一斉にかかれば充分に仕留めれる。増して相手は棒立ちのノーガード状態だ。
 
機は熟した。
レイたちは‥綾波レイの姿形を持つものたちは 一斉にマユミへと襲いかかる。
 
 
 
 
 
 
 
 
それは 何よりも誰よりも速かった。
 
天から飛来したそれは 光の剣 光の鞭 荷電粒子の砲弾 ‥9人のレイたちの振るうどんな武器よりも速く、標的の頭上に到来した。
 
直径3センチ余りの、青い珠。
マユミの頭上で制止した球体は その秘めた力の一部を解放する。
 
百万の閃光 百万の稲妻 百万の雷鳴
 
怒つ霊(いかつち) ‥古代人が怒りの精霊と呼んだ破壊の具現が、マユミの頭上を中心に現れた。
 
電子の奔流が、マユミに飛び掛っていた7人のレイを焼き尽くしガスと消し炭に変える。
レイたちのうち やや距離を置いていた二人だけが、即死を免れた。
 
風が 雷により温められた空気が造る上昇気流が 煙を吹き散らす。
むせ返るようなオゾンと肉の焼け焦げる臭気のなかに 黒髪の少女は平然と立っていた。
 
「このとおり、何もしてませんよ? 私は」
 
頭上に浮かぶ青い珠を手に取り、そっと胸元へ滑らせて マユミは微笑む。
 
 
 
 
 
 
すぱぱぱぱっ  と軽い音を立てて、マユミの長い黒髪が針と化して放たれる。
放たれた数十本の髪針は、まだ電撃のダメージが抜けていない近い方のレイに命中し、深々と突き刺さり、空気と体温に反応して溶けて強酸へと変化した。
これは第九使徒 マトリエルの能力。
 
酸に体内から焼かれてのたうちまわる 半分焦げたレイにマユミは歩み寄る。
と同時にマユミの右腕が切り離され 宙を舞う。
空中に浮いたマユミの右腕は光る紐状生物へと変化して、比較的傷の浅い最後のレイへと襲いかかった。
第十七使徒 アルミサエルの能力だ。
 
「き、貴様! 人質がどうなっても良いのか!?」
 
まだ目が眩んでいるカヲルはシンジを盾のように掲げてマユミを恫喝するが‥
 
「どうにかできるものなら、してみては如何です?」
 
半分焦げたレイの頭を左手一本で掴み、一撃で砕き焼き尽くしたマユミは あっさりと切り返した。
 
彼我の戦力差は 最早絶望的。逆転の可能性は皆無。
こうなってしまっては、人質を殺すことはできない。7人のレイが消し炭になったその瞬間に、シンジはカヲルにとって勝利の為の手駒ではなく逃亡の為の切り札になってしまったのだ。
 
光る紐状生物に巻きつかれた最後のレイは 成す術もなく捻り殺された。
圧倒的な力で潰され肉塊と化した水色の髪の娘から、光る紐状生物は離れ宙を泳いでマユミの右肩に取りつき、元通り右腕となった。
 
 
「くっ‥」
 
カヲルはシンジを抱えたまま下がる。その背後に黒い穴のようなものが現れた。
これは虚数空間を利用した『門』である。これを潜ればこの場から脱出できるのだ。
だが、ただ逃げるだけでは 『門』に入った瞬間に攻撃を受けてしまう。
 
だからシンジを足止めに使う。
 
即死せず、それでいて『使徒使い』が即座に手当てしなければ死んでしまうだけの傷をシンジに負わせて その隙に逃げるのだ。
技術的には何も難しくはない。咽喉に同化させてある右手を引き抜けば それで済む。
難しいのは 引き抜く隙を見付けること だ。
 
「来るな!」
 
マユミはカヲルとシンジを見つめたまま 穏やかに語りはじめた。
 
「貴方がたのことは良く知っています。望まぬ出会いとはいえ、何度も会ってますから‥」
 
「来るなと言っているんだ!」
 
言われたとおり、マユミは立ち止まる。
 
「貴方がたの弱点は首です。動力源と司令部はそれぞれ胸郭と頭蓋骨で守られているのに対し、それらを繋ぐ脊索は頚骨を折られると機能できなくなる‥」
 
「黙れ!」
 
「ですから、良く狙ってくださいね。 惣流さん」
 
カヲルが振り向くよりも早く、その背後に忍び寄っていたアスカが振り降ろした鉄パイプは カヲルの細い頚骨を一撃でへし折った。 
 
 
 
 
 
 
 
シンジの咽喉の傷に埋め込まれた白い手は 瞬く間にシンジの肉と一体化して傷を塞ぎ血を止めた。
マユミの手が引き抜かれると、その跡はまるで水面に差し込んだ手を抜いたかのように何事も無い。
アスカの腹の傷を治したときと同じである。
 
 
「‥‥有り難うアスカ。助かったよ」
 
咽喉を揉みつつ 己の血にまみれたままの少年は感謝の言葉を述べた。
 
 
「まったく‥頼りないにも程があるわね。
で、とりあえず殺っちゃったけど‥ この偽ファーストと偽フィフスは何もんなのよ?」
 
赤い少女は 倒れ伏し、すでに事切れたカヲルの身体を軽く蹴る。
 
「やっぱり‥ 偽者なんだ」
 
シンジの呟きに アスカは固まってしまう。 そして数秒の間を置いて、絶望の溜息を洩らした。
 
「あ〜あ、ファーストも報われないわね〜 見分けもつかないなんてさ〜」
 
アスカの言うとおりだ、あんなに簡単に騙されるなんて‥ とシンジは自己嫌悪のスパイラル降下を始める。
マユミはそんなシンジの肩に手を置いた。
 
「碇君が騙されたのは、綾波さんと渚君への思いが強いからです」
 
 
 
 
 
マユミは言う。
人が 愛する者の死を認めることは難しい と。
 
愛する人は死んでなどいない。 今は会えないだけで、どこか遠いところで元気に暮している。 
そしてある日ひょっこりと帰ってきて 「ただいま」 と言ってくれるのだ。
理性では、そんなことは有り得ないと解かっていても そう夢見ずにはいられない。
 
そんな人の弱さに付け込んでくるのが この偽者どもなのだ と。
 
 
 
黒髪の眼鏡っ娘は 最後のレイの‥只一つ焼かれることなく残った首を 浜辺から拾ってシンジたちの前まで持って来た。
 
「よく見ていてください」
 
マユミは偽者たちの頭を砂の上に並べ、指先から出した光の武器の切っ先をカヲルの頭骨に突き刺した。
シンジとアスカはマユミの気迫に呑まれ、口を挟めない。
 
そのまま刃を円形に動かして 頭頂部を切り取る。
中華料理に猿の生首を出すものがあるが、似たような切り口だ。 
同様に、レイの頭頂部も切れ目を入れる。
 
「これが、彼らの正体です」
 
マユミは蓋を‥両方の頭部から 頭頂部の部分を取り去った。
 
 
うねうねとうごめく粘液質の質感。 頭蓋骨の下、硬膜に囲まれている脳髄がある筈の場所に ピンク色の蛭のような生き物がびっしりと詰まっていた。
 
「元々は人間の脳に忍びこみ、寄生して宿主を操ることを目的に作られた人造生物。
無性生殖を繰り返して増え、宿主の脳を完全に食い尽くした後でも人間の真似を続け、喜怒哀楽‥人の感情をかなりのところまで模倣できる生き物です。
チューリングテストにも年単位の時間で耐えられます」
 
うごめく蛭の塊を見据え 淡々と語るマユミ。
蛭の異臭と生理的嫌悪感に耐え切れず アスカは嘔吐した。手で抑えた口から、胃液が砂地にこぼれる。
シンジの顔は 死者たちよりも青褪めていた。
 
カヲルの頭蓋骨の縁から這い出そうとする蛭を、橙色に光る壁が抑えこむ。マユミはATフィールドでレイとカヲルの首を覆い、蛭が逃げないようにしているのだ。
 
「碇君、貴方も見たのでしょう? ターミナルドグマに居た綾波さんたちを‥」
 
「‥‥まさか」
 
「そう。 ‥この偽者どもの身体は ダミープラグ製造施設に居た綾波さんたちの身体。そして渚君の身体。 彼らの脳をこの蛭に食わせて、魂のまがい物を取りつかせているんです」
 
静かな声に込められた 限りなき憎悪。
 
ATフィールドを維持したままの、マユミの白い掌から蛍のような光の粒が飛び立つ。
その光の粒‥超々高温度のプラズマ塊は、レイとカヲルの首に取りついて発火。跡形も無く焼き尽くす。
これは数えられぬ使徒 ナタナエルの能力。
 
 
 
「‥言いなさいよ」
 
アスカは胃液で汚れた口元を拭い、マユミを睨んだ。
 
「こいつらは何なのよ! 何の為に他所の世界に来るのよ?! あんた知ってるんでしょ!!」
 
「彼らは‥この偽物どもの主人にとっては 勝手に増える良い下僕 だからです。
サードインパクト前の‥ダミープラグが実用化される前の世界なら、ほんの一つまみの卵をダミープラントへ入れることができれば 百体近い同類を作り出せますから」
 
「そんな‥ことの‥ 為に?」
 
「サードインパクト後の世界ならもっと簡単です。碇君の隙を見て蛭を取りつかせれば それで仲間が増えるわけですから」
 
もし、マユミが来なければ アスカは助からなかっただろう。
シンジは この人造の地獄で一人ぼっちになっていた筈だ。
 
そこにレイとカヲルの偽物が現れれば‥ 
 
 
「絶対騙されるわね、この馬鹿なら」
 
返す言葉も無いシンジだった。
 
 
 
 
 
 
「その‥ 山岸さん」
 
「なんでしょう?」
 
「さっき‥ 僕が過去に戻っても、誰も助からないって 言ってたよね。
どうしてなの?」
 
マユミは 答えなかった。
無視しているのではなく 答えに窮しているようだ。
 
焦れたアスカは問い詰めようとマユミへ近寄るが、シンジは無言で割って入りアスカを制する。
詰問を止められた少女は少年をきつい目付きで睨むが、少年は小さく首を振る。
とことん気弱な少年だが、この表情が出たら絶対に後には引かない。勝ち負け関係なしに最後まで立ちはだかるのだ。
 
 
 
 
「私は、碇君と同じなんです」
 
マユミは ぽつぽつと語り始めた。
 
『使徒使い』山岸マユミの世界は サードチルドレンであったマユミを巫子としてインパクトが起きた。
そこまではシンジたちと大差ない。登場人物やその役どころが多少違うくらいだ。
 
だが、マユミの世界では誰も来なかった。いや、来てはいたがマユミの前には出てこなかった。
 
 
そして 永劫に等しい時間が流れた。
 
 
 
数百年か数千年か それとも数億年か。
使徒としての身体と、その結果としての 無限に近い寿命を得たマユミは死ぬこともできず ただ呆然と時を過ごしていた。
 
瓦礫も岩も全てが風化して 遂には綾波レイのなれの果てである顔の山も崩れ落ちた。
いつ、どんなふうに崩れたのか マユミはもう思い出すことができない。
 
 
そんなときに 『彼ら』は現れた。
 
 
「彼ら?」
 
「ええ。碇君そっくりの顔をした三人組の‥偽物が」
 
 
 
 
『彼ら』は、自らを下僕であると言った。
使徒の一種であり、使徒を統べる者となったマユミに仕える為に来たのだと言った。
 
マユミはそれを信じた。
何の根拠も裏付けもない言葉を信じた。
縋りつけるれるものなら なんでも良かったのだ。
 
 
 
 
『彼ら』は アダムないしリリスの力を持つものならば、時を遡れると言った。
それは 嘘ではなかった。
 
 
幾つもの次元界を渡り歩き、ついに出会った超越者の力を借りて マユミは過去へ渡った。
三人の下僕をつれて。
 
 
 
そして、世界を救う試みが始まった。
 
 
1回目、EVAへの搭乗をあっさりと承諾して出撃。第三使徒サキエルと交戦、相手にもならず捻り殺され 失敗。
 
「‥‥負けちゃったの?」
 
「使徒使いになっても シンクロ率や操縦技術が上がるわけではありませんから‥」
 
 
再度 時間遡行。
 
 
2回目、無闇な改変は避け、サキエルは暴走により処理。第四使徒シャムシエルに特攻を挑むが、僅かに時間が足りず 初号機は全損。破壊された初号機から降りて下僕と共に時間かせぎを計るものの、侵攻を防ぎきれず サードインパクト発生。 失敗。
 
「‥‥アンタ、使徒よりは弱いわけね」
 
「サイズ差にものをいわせられると、ちょっと‥。 元々の耐久力が違いすぎますから削りあいになると勝てません」
 
 
再々度 時間遡行。
 
 
3回目、ヤシマ作戦準備中にテロ行為によって陽電子砲が損傷、修理不可能。自棄で突撃をかけるも第五使徒のATフィールドを破れず 過粒子ビームの直撃を浴び、初号機ごと蒸発。 失敗。
 
「‥‥‥‥」
 
「‥‥‥‥‥‥」
 
 
再々々度 時間遡行。
 
 
4回目、第七使徒イスラフェルまでは順調。N2爆弾の集中攻撃により休眠中の第七使徒にダメージが軽かった初号機と零号機で同時攻撃を挑むものの、休眠は擬態であり零号機は瞬殺。初号機は戦線離脱に失敗し、大破。
165時間後、使徒侵攻によってサードインパクト発生。 失敗。
 
 
「‥ひょっとして、わざと?」
 
「『彼ら』は 故意だったのでしょう」
 
 
 
 
失敗を繰り返し、その度に時を遡り、やりなおす。
数十回に及ぶ失敗。
だが、それ以上は繰り返されなかった。
 
『彼ら』‥ 三人の押しかけ下僕たちは姿を消したからだ。
来たときと同じく 唐突に。
 
 
「なぜ?」
 
「‥目的を達したからでしょう」
 
 
 
マユミの話は更に続く。
 
 
 
下僕たちの失踪に衝撃を受けたマユミは、かなりの時間壊れていたが‥
時間とともにいくらかは立ち直り 再び次元界を渡る旅に出た。
 
 
 
旅の途中には 様々な危難があった。
 
『次元獣』と呼ばれる奇怪な超生物たちに次元界移動能力を封じられ、足止めをくらった事もあった。
 
『外なる神』なる危険な存在に 餌として追いかけまわされたこともあった。
 
強大な力を持つ超越者に軟禁され、彼が持つハーレムの一員となるよう 執拗に誘われたこともあった。
 
タイムパトロールを詐称する組織と遭遇し、激しく対立したこともある。
 
 
 
その旅の最中に マユミは様々なことを知った。
 
 
 
 
「時間遡行はとても危険なんです」
 
「‥‥失敗するから?」
 
「『失敗してもやり直せる』と考えてしまうからです」
 
 
時間遡行による人生のやり直し。
魅力的なアイデアである。なにしろ失敗を恐れる必要がない。展開が気に入らなければリセットしてしまえば良いのだ。
 
だが、同じ時間軸の同じ時間帯で同じ人間(超越者)が同じ行動を繰り返せば どうなるのか。
時間遡行者には その点に関する自覚が必要だ。
 
同じ個性の持ち主が、同じ目的を持って歴史改変を挑み、繰り返せばどうなるか。
当然ながら何度も試みるうちに、特定の手段が多用されるようになる。
確実な成功を望める手段を見つけたならば、その手段を使い続けるからだ。
それはそうだ 
時を遡る度に 妹が瓦礫の下敷きになった同級生に八つあたりされる のは誰でも嫌だろう。
 
 
 
同じ対処を繰り返すこと その次元界では時間遡行によって次に同じ対処を取ったときに、その対処が成功しやすくなるのである。
例を挙げれば 第三使徒戦で避難しそこねた小学生を助けることが出来ると、次に遡行して再度やり直す場合 助けられる確率は格段に上がる。
 
繰り返される世界では 一度起きたことは、もう一度起こり易くなる。
 
この『同じことを繰り返す』ことが非常に危険なのだ。
 
 
「‥それが狙いだったのね」
 
「おそらくは」
 
 
「‥‥どうゆうこと?」
 
「アンタ馬鹿? 失敗繰り返して、その度にサードインパクト起こしてたら 防げるものも防げなくなるじゃないの!」
 
 
失敗を繰り返しても 何度も試みるうちにより良い方策を見つけることができる。
加持を死なせずに済むかもしれない、レイは自爆せずに済むかもしれない。トウジを無事救出できるかもしれない。
 
試みるたびに 何か進展がある。
だから 錯覚する。
今度こそ 皆を助ける方法が見つかる筈 と。
 
実際には 時を遡るたびにサードインパクト発生の確率を押し上げているにもかかわらず。
 
 
そう 『使徒使い』山岸マユミの世界は、もはや時間遡行による救済はほぼ不可能なまでに歪んでしまったのだ。
 
マユミを殺す といった単純な手段と比べると、この 時間遡行の繰り返しによって世界の進路を歪めていく手法は
世界を完全に滅ぼす手段として 手間はかかるが効果は大きい。
なにしろ 救済の可能性そのものを摘み取れるのだ。
 
 
 
「‥そいつらの正体は?」
 
「分かりません。この『蛭』の飼い主とは手口が違いますから‥別口だとは思うのですが」
 
 
 
 
 
「解かったよ山岸さん。 本当に‥ 本当に危険なんだってことが」
 
「多層次元界はあまりに広く、危険です。まして、碇君が得た力は邪な意志を持つ者の垂涎の的なのです」
 
「要は『誰も信じるな』ってこと?」
 
「はい。もちろん私も含めて」
 
 
今、マユミが語ったことも 嘘かもしれない。
 
先ほどの偽者どもとの戦いも 出来試合かもしれない。
 
疑え。 信じるな。 気を許すな。
 
世界は悪意に満ちているのだから。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
さて、黒髪の眼鏡っ娘が 赤い海のほとりへと舞い降りてから約半日後。
 
その世界の、最後の生き残りとして保護されたシンジとアスカの二人を仲間たちに引き合わせた『使徒使い』とその相棒は 『SSA』専用の宿泊施設であるひなびた温泉旅館風の建物でくつろいでいた。
 
 
その一室、中庭に面した畳敷きの部屋で 座卓の前に胡座をかいている学生服姿の少年。
背後の畳の上に 無造作に二又の総金属製槍を転がして置いている。
彼が『使徒使い』山岸マユミの言う 頼もしい連れ である。
 
サードインパクト時に マユミは全ての使徒の力を得た、今日保護したシンジはアダムの力を得た。
この少年はロンギヌスの槍と同化して、その破壊の力を得た。
故に『槍の王』碇シンジ‥と呼ばれている。
 
『槍の王』は掌のなかの青い珠を じっと見詰めていた。
人質を盾に偽カヲルに脅迫されたマユミを助けた あの珠である。
 
 
珠を愛でるように とゆう言葉もあるが‥『槍の王』の眼差しは、彼の掌中にある珠が彼にとり何よりも愛しく貴き至宝であることを 百万の言葉よりも雄弁に語っていた。
 
 
 
 
「ふう。いいお風呂でした」
 
頭にタオルを巻き、浴衣を着込んだマユミが部屋に入ってきた。
砂やら塩の結晶やらLCLやら‥ 色々なもので汚れてしまった身を風呂場で洗い清め、湯に浸かって疲労を溶かし解してきたのだ。
 
無論のこと、使徒の力を使えば汚れも疲労も即座に片付けれる。
だがそれではマユミの心は 人の意識から離れてしまう。
 
人の心を保ったままでは 超越者としての力を振るう際に発想の限界等の問題を抱えることになる。
かと言って 余りにも人間から離れすぎては自己同一性が保てなくなる。
彼女の意識があくまでも人間を基本に組みあがっている以上、人間から離れすぎて異種知性と化してしまうのは御免こうむりたいところだ。
 
マユミのように 超越者のなかには意識バランスを保つ為に人間的な休養施設を必要とする者もいる。
それ故にエヴァ系超越者を中心に結成された、世界救済を志す者たちの援助組織である『SSA』は、このような宿泊施設を運営しているのである。
 
 
 
「‥山岸さん」
 
「なんでしょう。碇君」
 
槍の王は珠を見詰めたまま マユミに声をかけた。
 
「悪いけど、明日にでもまた出かけようと思う」
 
「‥‥それは構いませんが、行き先はどちらへ?」
 
マユミとそのパートナーである槍のシンジは対等の関係であり、交互に主導権を譲り合って行動することにしている。今日の訪問先はマユミが決めたものであり、次はシンジが行き先を決める順番なのだ。
 
「GSの9031、天獄宮」
 
マユミは眉をひそめた。
 
「‥あそこは現地住人に任せる筈ではありませんか?」
 
『SSA』の管理コードGS9031は、いわゆる剣と魔法の世界である。
当然ながらエヴァンゲリオンとは関係しない世界であり、『SSA』が積極的に関わる必然性はない。
 
GS9031世界は あまり質の良くない超越者が実験場として利用しているが、その超越者自身が実験に興味を失っているらしく、研究は永らく停滞している。
 
超越者の下僕である『天の者』と呼ばれる種族は未だに実験を続けているが、実験体として利用され続けてきた現地勢力の不満と実力は、もはや彼らでは抑え切れない段階に達しており‥
遅かれ早かれ その実験の司令中枢である亜空間要塞、通称『天獄宮』は陥落するものと見られていた。
 
マユミの感性から言うと 『天の者』たちもその主も嫌悪の対象となる存在ではあるが、部外者が手出ししようとまでは思っていない。
現地の住人たちが自分で打倒しようとしている連中を、なにもよそ者が始末することもあるまい。
 
「‥三人組が『天獄宮』に接触した疑いがある」
 
 
マユミの頭からタオルが落ちた。
長い黒髪が ざわざわと生き物のように蠢く。
 
「本当ですか?」
 
マユミを騙し、弄び、マユミの世界を滅ぼした‥ いや、マユミ自身の手で滅ぼさせ そして放り出した あの三人。
 
「僕が自ら確かめに行く必要があるくらいには」
 
 
シンジは立ちあがり、怒りの炎を身に纏わせたマユミを抱きしめた。夏用学生服の布地が熱で燻り出す。
比喩ではなく、実際に熱くなっているのだ。それも火事を起こしかねない程に。
その熱を ATフィールドで抑えこむ。
 
静かな外面と裏腹に 内に秘めた怒りの炎。
少年は 黒髪の少女が彼と似たもの同士であることを今更ながら思い知る。
 
 
 
 
 
 
部屋に広がる 青い光。
淡く優しげな 清浄の光。
 
それは 槍のシンジが持つ青い珠から放たれる 心の光。
 
 
青い珠が放つ光を浴びたマユミは 心身を焦がす怒りの炎が引いていくのが分かった。
消えたわけではない。忘れたわけでもない。
だが、怒りに全てを任せようとはしなくなった。
 
青い光が そうさせた。
 
 
 
 
「‥‥もう、大丈夫です」
 
マユミは そうシンジに告げて腕の力を緩めてもらった。
彼女の顔が赤くなっているのは 熱や息が苦しかったからだけではあるまい。
 
「完全に落ちつくまでは、離すわけにはいかないよ」
 
と シンジは力を緩めたものの 抱きしめたまま離さない。
 
 
 
 
 
「そろそろ放してくださいな。 いつまでもくっ付いていると綾波さんが怒りますよ?」
 
抱きしめたままのシンジへ向けて マユミは冗談めかして言う。
 
「妬いてくれると、嬉しいんだけどね」
 
マユミを抱きかかえて、槍のシンジは続き部屋に入った。
続き部屋に並べてある寝具の上に浴衣姿のマユミをそっと降ろす。
その掌に青い珠を‥ 彼の永遠の伴侶の形見を握り締めたまま。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
無限に連なる多層次元世界。
その隙間に生じる空間に キロメートル単位サイズの岩塊が浮いている。
 
それは要塞。
岩塊の上に 西洋の城砦を模した建築物を岩盤の上に建造させた 超空の城。
かつては この城を建てた強力な超越者の本拠地として使われていた場所である。
 
 
本来の城主が敵対勢力との抗争の果てに倒れた故に、主なき城は同盟勢力に接収され、新たな主のものとなった。
 
その新たな城主は 城の一室‥前の城主の居室である‥で部下の報告を聞いているところだ。
 
 
 
「‥‥以上でございます」
 
城主は 浮かぬ表情でグラスを傾けた。
 
「まずいな」
 
城主の呟きに その足元に這いつくばる部下は更に頭を下げる。
 
「ははっ 『アダム』を彼奴らに奪われたこの失態、万死に値します! 
されど、されど此度の一戦で『使徒使い』の力量は掴め申したっ 次こそは必ずや仕留めてみせまする。
御上にあらせられましては、格別の慈悲を持って臣の記憶転写が終るまで刑の執行をお待ちくだされ!」
 
「誰が仕留めろと言ったの?」
 
「は?」
 
部下は顔を床から剥がした。
安楽椅子に腰掛けたままの城主‥十代半ばとおぼしき金髪の少年‥は、部下‥同年代の東洋系の少年‥に 再び尋ねた。
 
「誰が、君に『使徒使い』を仕留めろと 命令したの?」
 
「‥‥そ、それは‥」
 
城主の薄茶色の瞳から丸眼鏡ごしに向けられる心理的な圧力を受けて 部下の線の細い容貌が蒼白になる。
誰の命令でもないからだ。
 
「‥し、臣は、良かれと思い‥」
 
「つまり独断なんだね」
 
何時の間にやら現れた警備兵(偽レイ)たちが、床に這いつくばったままの部下を立たせる。
 
「‥お、お慈悲をっ どうか どうかっ  ‥蛭に食われるのは嫌だぁ〜〜〜」
 
その部下‥かつては碇シンジと呼ばれた者は 泣き喚きながら部屋の外へ引きずられていった。
 
 
 
「もう要らない。下げて」
 
城主は飲みかけのワインを仕舞わせる。 ワイン蔵の奥から見つけ出した、前城主が来客用に秘蔵していた逸品だが、彼の口には合わなかったようだ。
口直しに炭酸水とドーナツの詰め合わせを用意させる。
 
砂糖をまぶしたものやチョコレートで覆ったものなど いかにも健康に悪そうなジャンクフードをがつがつと貪り食らう姿からは、彼が『組織』でも屈指の実力を誇る超越者であるとは 到底思えない。
 
 
「やれやれだ、『シンジ君』はとことん使えないね」
 
口と咽喉に残る糖分をカロリーオフ炭酸水で洗い流した城主は しみじみと一人ごちる。
 
手下が全員 頭に蛭が詰った連中だとゆうのも面白くないなと思い、適当な世界で拾った碇シンジを洗脳して使っているのだが どうも良くない。
今回のように 自分の願望と現実を取り違えて勝手な行動を取ることが多いのだ。
 
先ほどのシンジのように、あまりにも使えない者は脳に蛭を入れて操り人形にしている。
蛭を取り憑かせると多少性能が落ちるが、誤動作を繰り返すよりは余程良い。
 
洗脳による悪影響かとも思ったが、同じように捕まえてきたレイやアスカたちは正常に稼動している。不良品はシンジのみだ。
 
 
彼が思うに、碇シンジとは元々そのようなキャラクター(人格)だったのではあるまいか。
現実よりも自分の中の妄想(願望)が大事な人間だったのではあるまいか。
超越者としての力を得る前の‥ ただの中学生として言われるままに生きていた頃は なにもできない、なにをしても世界(外部・他者)に影響を与えられなかった為に 致命的なトラブルを起こさなかっただけではあるまいか。
 
だとしたら 下らぬ生き物もあったものである。
 
 
 
「かと言って 反抗的なシンジ君は危険だからな‥」
 
無論、『碇シンジ』と一言で言っても 実に様々なバリエーションがある。
現に彼が所属する組織‥『歴史監理機構』の幹部たちは殆どが碇シンジ系の超越者であり、当然ながら強力で抜け目ない者ばかりだ。
 
もっともEVA系の超越者は 碇シンジの比率が圧倒的に高い。
山のようにいるシンジの中には切れ者がいても不思議ではない。現に他の幹部たちの手駒にはシンジ系の超越者が大勢居るし、有能な者も少なくない。
なぜか彼が手下にしたシンジは ことごとく外れなのだが。
 
「クジ運が悪いのかな? ‥まあ、どうでも良いけどね」
 
炭酸水を飲み干し、心底からどうでも良さげに呟いた城主 ‥金髪の少年の元に、伝令がやってきた。
 
「報告! 戦艦『アリゾナ』、只今帰還致しました」 
 
人形じみた表情のない顔をしている元・綾波レイの伝令は 敬礼と共に報告する。
このレイは例外的に洗脳が上手くいかず感情を失ってしまった為に、やむなく伝令として使っているのだ。
 
「そう。じゃあ迎えに行こう」
 
 
 
 
 
 
要塞内部のドックに係留された500m級宇宙戦艦から、様々な物資が積み降ろされている。
EVAや重力制御といった特殊能力を持つ使徒能力者たちが作業に当たっているので その作業は極めて速やかだ。
 
戦艦の甲板に立ち、物資‥戦利品の積み下ろし作業を監督していた小柄な人影が 城主の姿を見止めて埠頭へと飛び降り、駆け寄ってきた。
訓練された猟犬のように、城主の足元から一歩離れた位置まで近寄りその場に肩膝をつく。
 
「只今帰りました、ご主人様」
 
瞳を歓喜に輝かせて報告する朱金の髪の娘に 城主は右手を伸ばす。
戦艦『アリゾナ』を任されている彼お気に入りの下僕は その手を押し頂いた後、手の甲に口付けた。
回り中から押し寄せる嫉妬と羨望の想念に 下僕は目が潤むほどの喜びを覚えていた。
数多い下僕の中でも、これほど厚遇されている者は十名もいない。
 
 
 
 
 
 
「レイクローンが57、カヲルクローンが25体。
S2機関なしのエヴァ量産機が4機、それと無傷の弐号機と零号機+修理用部品か。
時期の割りには良い収穫だね」
 
「申し訳ありません。エヴァ初号機と綾波レイは暴走したので、処理してしまいました」
 
「まあ良いさ。次の機会(チャンス)で捕まえてくれれば」
 
「‥微力を尽くします」
 
アリゾナの艦長である朱金の髪の娘‥ とある次元界出身の惣流・アスカ・ラングレーを連れて、城主はEVAケイジへと向かっていた。
 
彼女に与えられていた使命は 逆行した超越者などの、手強い守護者がいないエヴァ系の平行世界へと赴き、戦力となるものをかき集めてくることである。
 
蛭を寄生させれば、即座に戦力となるクローン体たち。
EVAシリーズとそのパイロット。
関連施設の設備と それらを操る人員たち。
獲物はいくらでも有る。
 
彼女のように 戦艦を中心とする部隊は使徒戦が始まる前、あるいは使徒戦の最中の世界に行くのが基本だ。
赤い海のほとりで蹲っている 自覚なき超越者を騙くらかして回収するなら小艦艇で充分だからだ。
EVAのような大物を回収する任務には、搭載量に優れた大型艦 もしくは優れた次元間移動能力を持つ能力者を割り当てるのである。
 
 
 
到着したケイジには 今回の遠征で鹵獲してきたEVA弐号機が、胸部の装甲を剥がされた状態で拘束具に据えつけられていた。
 
「準備は出来ているみたいだね」
 
城主は 朱金の娘が差し出す、特殊ベークライトで固められた胎児の標本のようなものを受け取った。
アダムの標本‥これも今回の戦利品の一つだ。
 
城主の手がベークライトを握り締め、砕いた。
その手についた樹脂の欠片を振り落とし、ぴちぴちと蠢くアダムを弐号機のコアに押し当てた。
アダムと弐号機のコアに対してアンチATフィールドを浴びせ、強制的に融合させる。
コア内部の人格はキョウコを基本とするが、城主の体組織も混ぜて徹底的に強化しておく。
 
これで アダムの力を取り入れたエヴァ弐号機の出来あがりだ。
リリス・ダイレクトコピーであるエヴァ初号機すら上回る基本能力を持つ 強力極まりない機体である。
 
パイロットがいないと只の木偶人形である とゆう根本的な欠陥は残っているが、この強化弐号機とアスカは喩えるならばガレー戦艦か破城槌かはたまた重戦車。
純然たる決戦兵器であり、汎用性は始めから考えていない。
汎用性は他の戦力で補えば良いのだ。それが適材適所と言うものである。
 
「あとは任せる。時間が掛かっても良いから、念入りに仕上げて」
 
城主は 取りあえずの改造が終った弐号機のコアから手を離した。
この機体にはコアの強化以外にも予備S2機関の増設やフレームの強度見直しなど、様々な措置を施す必要があるが それらの作業に城主が直接関わる必要はない。
 
 
「良い機体だね。これは何かご褒美あげなきゃいけないな」
 
ケイジを去り、城の居住区へと上がる城主は アスカの頭をなでながら言った。
 
「では、お願いがございます」
 
「なんだい?」
 
「私に、今日連れて参りましたアスカの指導をお任せくださいませ。必ずや一人前のエヴァ乗りに鍛え上げてみせます」
 
「いいよ。思う存分鍛えておくれ」 
 
「有り難き幸せ」
 
主の許しを得た下僕は 頬を染めて頷いた。
 
主従二人は城主の寝所に入った。
寝台の上には 本日の戦利品である朱金の髪の少女が眠っている。
 
「じゃ、今からこの娘にベッドの上のことを仕込むから、手伝ってもらうよ」
 
「‥はっ」
 
寝台の上の少女と同じ顔を持つ下僕の頬は 更に紅くなった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
窓からさし込む朝日が眩しい。
 
個人差はあるものの、多くの超越者は人としての意識を保つ為に人間的な行動様式を残しているものである。
城主の場合は 例えば一日の四分の一程度の時間を睡眠にあてることだ。
 
 
城主は寝台から降りて、メイド姿の偽レイから水差しを受け取った。
寝台のシーツの上では 『アリゾナ』艦長のアスカと、彼女が昨日捕まえてきたアスカの
二人のアスカが手を握り合ったまま、幸せそうな寝顔を見せていた。
 
「夜のうちに、なにか有ったかい?」
 
メイド服姿の偽レイ‥偽者部隊との中継機でもある‥に 何か進展があったか聞いてみる。
 
「『使徒使い』『槍の王』 共に『天の者』の城へ向かいました由にございます」
 
「そう。そのまま監視を続けて」
 
「はっ」
 
 
 
城主は『使徒使い』を殺すつもりなどない。
むしろ、何時までも元気でいて欲しいぐらいだ。
 
潜在的にではあるが『歴史監理機構』にとり『槍の王』は恐るべき敵だ。少なくとも味方になることは有り得ない。
その大敵と『使徒使い』は組んでいる。組むことにより、両者は単独のときとは比べ物にならぬ行動の自由を得ている。
 
だが それは城主にとって望ましいことなのだ。
両者を組ませたのは彼なのだから。
多層次元界をさまよう二人の超越者を 細心の注意を払いながら誘導して出会うように仕向けたのだ。
 
比類なき破壊力を誇る『槍の王』だが、一人ではできることが限られる。どこかで誰かに関わろうとしても 些細なミスで惑星を砕いてしまうような助っ人は活躍できない。
 
だが、超越者としては非力で小器用な相棒と組ませたら どうなるだろう?
互いの欠点を補い合う二人は それまで介入できなかった世界や事件に関われるようになる。実際、嬉々として関わっている。
 
そして その結果として『歴史監理機構』は破壊の化身である超越者 『槍の王』と遭遇せずにすむようになる。
彼らが目先のことに関わっている限りは だが。
 
 
厄介な敵と正面から戦う必要などない。要は敵のいない所で勝てば良いのだ。
この簡単な理屈を、あの碇シンジは何も理解していなかった。理解しようともしなかった。
 
理解する必要もなかったのだろう。碇シンジは、所詮は恵まれた者なのだから。
 
 
自分には何もなかった。
頼れるものも 救ってくれるものも
 
だから 蛭を作った。
野生種を元に、数千億世代に渡る品種改良を施して作り上げた 寄生者にして共生者を。
 
 
今この瞬間も 彼が作り出した蛭の群れは次元界を渡り、不注意な獲物に忍び寄る。
いかにライバルである『歴史監理機構』の幹部らが 
蛭と蛭の生みの親である城主を嫌い、蔑み、疎んじようとも それでも彼が作った蛭どもの力を侮ることはできない。
 
質の低下を考慮しても、費用対効果において彼の蛭に優る下僕はない。
そして何よりも、便利であるが故に 既に蛭は『組織』の重要な戦力となっているのだから。
 
 
 
 
 
 
誰にも止めさせはしない。
舐められることだけは御免だ。
誰を殺そうと、誰を騙そうと、何を踏み付けようと、負けるわけにはいかない。
 
John-dou(名無し) それが城主の名だった。
 
氏名なし。国籍なし。市民権なし。人権なし。ないない尽くしの環境に産まれた。
親もなければ兄弟もなく、友も恋人も得たことは無い。
 
とある世界のネルフアメリカ支部が養成した実験体の生き残り。ディラックの海へと沈んだエヴァ四号機のテストパイロット。
それが彼だ。
 
 
 
ディラックの海から、サードインパクトによる補完後の世界に帰還した彼は 統合生命体に進化したリリンを殺してフォースインパクトを起こし、超越者となった。
 
宿命なき 魔人。
誰も望まぬ 君主。
偶然で産まれし 覇者。
嘲笑の的でしかない 超越者。
 
 
一山いくらの実験動物からエヴァパイロット候補生へ‥ 
正規パイロットへ‥ 生き残った地球最後の人間へ‥ 
そして超越者へ‥ 
超越者を狩り・飼い・鍛え・編成し・指揮する組織、『歴史監理機構』の一員へ‥ 
その組織の幹部へと ただひたすらにのし上がってきた。
 
 
何も変ってはいない。あの頃と。
だから、やることも変らない。あの時と。
   
規模が 少しばかり大きくなるだけだ。
 
ネルフアメリカ第2支部‥ネヴァダにあった基地を潰したように いざとなれば『歴史監理機構』を潰して彼だけは生き残る。
 
それで良い。
 
 
「‥やっと手に入れた幸せだ。誰にも奪わせはしないよ」
 
城主‥ John-douは 窓から見えるもの‥彼の城を眺めて呟く。
それは この世の全てを呪う言葉だった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
強きものも 弱きものも
賢しきものも 愚かなものも
人の業に従う限り 人は皆 罪人
 
 
 
罪人たちは ただ己が血をもって罪を償う。
その償いの時は 着実に迫っている。
 
だがその顛末は またの機会に。
 
 
 
新世紀エヴァンゲリオン パワーアップキット 本編に続く
 
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この物語は 【ラグナロック】様 難でも家様 T.C様 きのとはじめ USO の皆様のご支援ご協力を受けて完成しました。感謝致します。 

頂きました。うむ、シンジはどんなにしても使えないって落ちに笑ってしまった(オイ。しかし逆行を繰り返す事によって、世界を救える可能性が減って行く・・・と言う設定は初めて見ましたし、目から鱗でしたよ。

この設定は私の現在執筆中のとある救いが無い短編にも使わせて頂く事になっています、快諾して下さった峯田さんに感謝を。

では此れにて、本編も読んで下さいね(バナークリックで飛びます)では峯田さん、投稿有難う御座いました!

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