鬼畜魔王ランス伝
第55話 「天志教軍追撃」 天志教軍の本軍を打ち破ったランス率いる山本家の軍団二千五百と、魔物軍二千はJAPAN最高峰の霊山、富士山麓に建立された天志教の総本山へとひた走る。 その前日のこと、捕虜をまとめたり負傷者の手当てをするなどをしているうちに夕刻になった事もあり、その場で野営する事にしたランスは、捕虜の筆頭(とランスが認定した人物)たる三人の美少女を引見していた。 「がはははは、降伏したからには約束通りお前らは俺様の女だ。がはははは。」 「そ、そんなこと約束した覚えなんかないよっ!」 自分の天幕内で豪快に笑うランスに敢然と食って掛るあかね、唇を噛み締めランスを無言で睨みつける春菜。しかし、彼女らのリーダーである七緒の返答は違った。 「承知致しました。確かに仰る通りです。」 「な!?」 「七緒さん!」 驚く二人の声を涼やかに受け止め、それでも揺らがぬ決意を声に込める。眼前の男、覇王にして魔王たる男を動かす為に。 「ですが、それは私だけ……と云う事にして、この二人の事は勘弁していただきたいのです。虫のいい願いとは承知してますが、何卒。」 陣幕の床……地面に頭を擦り付けるように土下座をする七緒に、ランスの心が動いたのか、それとも何ぞ企みでもあるのか意外にも二つ返事で承知した。 「おう。ただし、そういう事なら一人で三人分サービスして貰わなくちゃ割りに合わんがな。がはははは。」 あのクロウの迷宮での苦しい戦いの中でさえ、下卑た信長の兵の誘いにも乗らなかったし、捕われて辱められた経験もなかったが……とうとう覚悟を決めねばならない時が来たようだ。そうと悟った七緒は、苦しい息を吐き出すような気持ちで喉の奥から返答を搾り出した。 「はい。」 二人の友人が必死に止めようとするのを、振り切るように。ここで、この男の機嫌を損ねる事だけは避けなければならない。自分を信じて付いて来てくれた人達や友人達を助ける為に身を捧げる事については躊躇う理由は何もない。 「どうして、そんなこと言うんだよっ! もっと他に方法とかあるんじゃないか!?」 「いえ、この方……ランス殿は条件を明示されました。それを承知で降伏した以上、議論の余地はありません。」 毅然として言い放つ七緒に、あかねも春菜も……そして、ランスさえもが黙り込む。 『ちっ、話が楽なのは良いが。何となく面白くない。』 場の仕切りを取られた形となったランスが幾分不機嫌そうな表情になるが、口元は緩んでいる。何はともあれ、目的の美女はゲットできたのだ。予定外の美女達については、後でゆっくりとと考えていたランスではあったが、その後の彼女らの台詞が彼女らの運命を変えた。 「そんなっ! 七緒だけ犠牲にして逃げるなんて真似できないよっ!」 「友人を見捨てて、自分だけ助かるなんて義にもとります。」 拳を握り締め、身構える友人二人を何とか抑えようとした七緒を手で制して、ランスは場の主導権を奪い返した。 「がはははは、そうか。じゃ、俺様からお前らに提案がある。」 「何っ、助平の強欲魔王が今更何の提案があるって言うんだっ!」 「いかなる提案でしょうか。」 あかねは喧嘩腰で。春菜は幾分抑えた口調で聞いて来る。 「明日の夜明けまでに、俺様を満足……つまり、俺様のハイパー兵器を発射させられればお前らの勝ちだ。お前らは解放するし、兵も大阪までは引いてやる。」 下品な提案に顔色を変える二人だが、一概に無視出来ない要素も混じっているところが巧妙、あるいは狡猾なところだ。それを見計らって言葉を続けるランス。 「ただし、朝になるまで発射させられなかった場合、もしくは朝になる前に二人とも降参した場合は、俺様の勝ちって事で七緒に加えてお前らも俺様の女だ。」 「いいよ! やってやろうじゃないかっ!」 「……お相手します。」 二人二様な返事が返って来たその時、陣幕を揺らして更なる人間が連行されて来た。 「あ、皆さん、こんなところにいたんですか〜。」 あの戦闘中にかなみに捕縛されてしまっていた呪術士部隊の長、美鈴である。 常識人のかなみに連行されているので、武器の鈴は取り上げられ両腕は固く縛られて動かなかったが、縛られている訳でもない三人を見て気が楽になったのか、そうのたまったのだ。 当然ながら、場の緊張感は一気に崩れかけた。だが、当然ランスが飛び込んできたネギを背負ったカモを見逃す訳はない。 「おう、俺様はこれからゲームをするとこなんだが、参加するか?」 「え?」 「お前ぐらい可愛ければ大歓迎だ。がははははは。」 「ゲーム……何だか面白そう〜。」 「それに、実に気持ち良いぞ、がはははは。」 「じゃあ、やりますですぅ〜。」 あわれ、生け贄は他の友人達が硬直から復帰する前に承知してしまった。……実は皆が虚を突かれたのを良い事に簡単な術で僅かな時間だけ金縛りにしただけなんだが、それで効果は充分だったらしい。 硬直から復帰した彼女らを待っていたのは、ランスの魔の手だけであった。 結局、朝どころか真夜中まででさえ持ち堪えた人間はいなかった。 ミリと張り合えるほどに成長したテクニック、アイゼルの魔血魂を初期化する際に会得した催眠術を含む性魔術、吸血行為による相手の性感の激増などは、彼女らの想像を遥かに上回る拷問となって彼女らの躰を責め苛んだ。 最後まで屈しなかったのは、やはり七緒であったが、それも気絶するまで責められてはどうしようもない。ランスも彼女らを壊すのが目的じゃないので、気絶した女の子を起こして無理矢理……という行為をしなかった事も手伝って、彼女らは気持ち良く朝を迎える事ができた。 ……起きた後で青くなったのは言うまでもないが。 日が昇って明るくなってきた陣幕内では、座椅子にどっかと座ってハイパー兵器をそそり立たせているランスが彼女らの視界の真ん中を占領していた。 冬だと言うのに、この格好で寒くないのかというツッコミもあろうかと思うのだが、実は陣幕内はそれほど寒くない。こっそりと四隅に配置されていた暖房用アイテムが範囲内を快適な気温に保っているからだ。 ランスがハイパー兵器を十二分に充填しているのは、全裸に剥かれた彼女ら四人を前にしている訳だからだが、それだけではなかった。 「さて、降参しない子がいたんで発射できなかった俺様の相手をしてもらわんとなあ。がははははは。」 そう、律儀にも朝まで待ってやり倒そうと期待で股間を膨らませていたのだ。 そして、その溜まりに溜まったエネルギーをいかんなくぶつけられた四人は後悔と満足を覚えるのであった。 再び闇に堕ちて行く意識の片隅で。 彼女ら四人ともが「ランスの女」としての立場を受け入れたのは、昼を過ぎた時刻の事となった。散々やり倒したランスが四人……途中から五十六や風華やかなみまで交えて七人以上……を白い粘液で厚塗りに化粧して満足したのが昼過ぎだとも言うが。 七緒たちが比較的あっさりとランスの魔手に屈したのは、抵抗しても既に無駄以前の問題になってしまった事が大きいだろう。全てを承知で受け入れた最後の機会をモノに出来なかったからには、その賭けに負けた場合の条件を飲む以外の選択肢など残されてはいないのだ。 しかし、彼女らがランスに服するには、もう一つの理由があった。 「そういえば、お前ら。クロウの迷宮で信長の悪ふざけに付き合わされていた連中か?」 一晩じっくり観察している間に辿り着いた彼女達に感じた既視感の理由を、ランスは四人に向かって尋ねた。 「それがどうしたっていうんだよ!」 「そうですぅ〜。」 「え、何で知ってるの?」 口々に反応する彼女達の反応は、どれもランスの立てた仮説を証明していた。 「もし、そうだとすれば、どうなさるおつもりですか。」 最後に質問して来たのは七緒だ。 「がははは、最初にそっちのねーちゃん……春菜だったか……の質問に答えておこう。俺様が信長をぶち殺した時に、ヤツの記録をゲットしたんで、それを調べた(まあ、正確には記録じゃなくて、ヤツを初期化した時に得たヤツの記憶なんだが)。」 その回答に納得しかねながらも、ともかく返答が得られた事に満足して次の質問への問いを目で促す一同を気分良く見回してから、ランスはおもむろに言葉を繋いだ。 「そして、どうするつもりかって方だが、それに答える前に俺様から質問がある。」 「はい、何でしょうか、ランス殿。」 「京姫を封じた宝珠、まだ封印が解けてないのか?」 「はい、残念ながら……」 答える七緒の声にも、四人の表情にも無念が滲み出ていた。今にも音を立てて噴き出しそうな程に。 「それは、どこにある?」 「ここにはございません。」 きっぱりと言い切る七緒の表情は、この後に及んでも毅然たるものであった。たとえ自分は身をやつしたとしても主君だけは護り通そうという気概が彼女を支えていた。 しかし、ランスの次の台詞は彼女の心が築いた防壁を無視して大手門を堂々と歩み寄ってきた。 「残念だな。ここにあれば俺様が封印を解いてやったのに。」 その言葉が彼女らに与えた反応は……沈黙であった。 いや、驚きのあまり、声に出して反応する事が出来なかったのだ。 「こ、この上、私達に何をさせようっていうんですか。」 しばらくして、ようやく言葉を口に出来るようになった春菜の声を皮切りに口々にランスへの質問が飛ぶが、あまりのかしましさに閉口するランス。 「ええい、ちょっとは黙れ。俺様が話を出来ないじゃないか、まったく。」 毒混じりの文句で場が静かになったのを見計らうと、ランスは腹の内を晒す事にした。勿論、話せる部分だけであるが。 「可愛い俺様の女達が必死になって頑張ってきた事だから、かなえてやってもいいかなって気になっただけだ。別にお前らを更にどうこうしようって気はないぞ。」 ランスのその言葉には嘘の気配は無い。 術者の信長が死んだからには、他に封印を解ける見込みはない。 もし、封印が解けなかったとしても、それはそれで京姫に危害が及ぶ事にはならない。そう判断した七緒は正直に真実を伝える事にした。 「京姫の宝珠は、原家総大将の安藤殿が持っております。」 「そうかそうか、がははははは。ところで、封印を解いて欲しいか。」 「はい、お願いします。」 その為ならどんな無理難題でも、と意気込んで答えた七緒の返答は、 「おう、任せろ、がはははは。」 あっさりと一言で返されてしまった。 別に、新たな条件を付け加える訳でも、無茶な要求をされる訳でもない。 ただ単に承知したランスの態度に七緒たち四人は言い知れぬ器の大きさを感じ、ひとまずは反抗的な態度を控えるようにしたのであった。 何はともあれ、彼女らにランスがかまけている間、軍を足止め出来たのだから、戦略的な価値は低くない貢献に成功したのではある。 だが、しかし、勿論、そんな事は慰めにも何もなりはしなかったのだった。 ともかく、四人の例外を除いて捕虜全員を解放したランス軍は、天志教の息の根を止めるべく総本山とでも言うべき富士山へと急行する。しかし、充分とは言えぬまでも再編の為の時間が取れた天志教軍が、ランス達の前に立ちはだかる。 数は三千、指揮はようやく前線復帰した安藤進右衛門である。 ちゃんとした支援部隊として弓兵五百を保持、一本化した指揮系統による対応能力の向上、戦闘域の狭い峠に陣取るという周到さでランス軍に容易に付け入る隙を与えない。 先頭部隊同士がぶつかり合うが、細い山道では大軍の利点を生かす事ができず不利な戦いを強いられる山本家軍。そこで、やむなくランスは一時後退して平地に陣を張り直すように指示を下した。 先の小競り合い程度の戦闘では大した損害は受けていないが、夕刻になった事もあり暗くなる前に防備を固めておきたかったのだ。欲を言えば高台に陣を構えたいのだが、それは敵が占拠している。 「ちっ、やっぱり連中はあっさりやれんか。」 原家の旗印を敵陣に認めたランスは、無理押しを避けて一時後退を指示したのだ。あそこまで徹底的に地の利を活用されては、正面から陥落させるのは困難であるからだ。 「で、どうなさるのです、ランス王。」 「おう、今夜はここで野営。明日の朝に軍を二つに分けて片方に別の道を行かせる。」 何も道はこれ一つではない。それが敵軍の弱点だった。 あの数ならばこそランス軍を相手する事はできても、軍を二分してしまえばそれは望むべくもないであろう。道が狭い事により全軍を投入できなかった事が、かえって敵軍の弱点をランスの前にさらけ出してしまっていたのだ。 「敵が軍を分けるようなら、こっちは正面から攻め落とす。分けないようなら両側から攻める。」 「はっ。」「ハッ。」 論理的に正しい解答にホッとしつつ拝命する五十六とムサシボウ。だが、 「ただ、あいつらが俺様の見込み通りに有能なら、そうはならないな。見張りによく警戒するように言っとけ。」 「はっ。」「ハハッ。」 次のランスの台詞の意味は、二人にはいまいち良くわからなかったが、ともかく夜襲に備えろという内容だとは理解できた。 わからないというのは、ちゃんとした陣備えを整えておれば、数に劣る側が夜襲を仕掛けたとしても何程の事ではないハズなのに“有能なら”夜襲を仕掛けて来るとランスが警告している事だ。むしろ、自分から地の利を捨ててくれるだけ有り難いハズである。 しかし、ランスの考えは違った。 特に訓練されている訳でもない魔物を、夜間に軍として統御する事の難しさを知ってるだけに、敵がそのスキを突くのではと考えていたのだ。敵に元冒険者がいれば、その確率は一気に跳ね上がる。 ランスの心配が杞憂でなかったと証明されたのは、翌朝の日が昇る1時間ほど前に明らかになった。 夜目にも鮮やかな朱色の兜を被った女侍の率いる一隊が五十六の率いる山本家の部隊に攻め込んできたのだ。 夜間戦闘であるから、敵発見から戦闘開始までそれほど間が無いのも災いして一気に乱戦に持ち込まれてしまう山本家軍。こうなってしまうと山本家自慢の弓兵隊や援軍の魔物兵部隊は同士討ちを恐れて動けなくなる。 「かなみ! ムサシボウに近くにいるハズの本隊に当たらせろ!」 「わかったわ。」 「五十六! お前は軍を取りまとめろ!」 「はっ!」 次々に指示を出すランスは既にいつもの甲冑姿だ。……いや、夜襲を警戒して脱いでいなかったのだ。 「そして、俺様は……迎撃に出る!」 腰から魔剣シィルを抜き放ち、不敵な笑みを浮かべるランスの顔が、篝火に照らされ闇夜に浮かび出された。それは、見る者全てを黙らせるほどに凶悪な迫力に満ちていた。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 手始めに七緒達ゲット〜♪ 後の女の子達もこれからじっくりと……ね。 |
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