海賊と剣豪の日常
いい天気だな〜
「ルフィ」
おれは呼ばれて振り返る。
特等席に座ってるから、うまくあいつの顔がみえないな。
でも、まいっか。声でわかるし。
「なんだ〜、ゾロ〜」
「そこから降りろだとよ」
ああ?なんでだよ。
ゾロはたちあがっておれの正面に回りこむと、めんどくさそうに『嵐がくるから』といった。
「素直に降りとかねェと、あのくそコックにめしぬかれるぞ」
「こんなにいい天気なのにか」
メシぬきはいやだけど、おれはちょっとくいさがってみた。
すると,ゾロはいつものかおでおれをじっとみると、いきなり顔を両側からつねって伸ばした。
「ひててててててーっ!」
いてェ!いてェ!ほんとにいてェ!
「嵐がきててめェが海に落ちたらどうすんだ、この馬鹿が」
ゾロはいらいらした声でそういうと、おれから手を離した。
おれが海に落ちたら・・・?
「・・・いてェよ、ゾロ」
「いいから早く降りろ」
顔をさすりながら言うおれをまったく無視して、ゾロがにらむ。
・・・・・・。
「だいじょーぶだろ」
「ああ?」
「おれが海に落ちたって」
おれの言葉にゾロはよりいっそう目をきびしくしておこる。
「てめェ、カナヅチだろうが。わかってんのか?」
すげェこわい顔してるけど、べつにおれはゾロのことこわくねェし、いつもどおりに『ししし』と笑っていってやる。
「だって、おれが海に落ちたら、ゾロが助けてくれるだろ?」
・・・・・・んの馬鹿が。
おれは怒った表情を崩さないまま、こっそりと目の前でのんきに笑う男に毒づいた。
いやそりゃおまえが海に落ちたら助けるがよ、いつもおれがおまえのそばにいてやれるとはかぎらねェだろうが。
・・ったく、この馬鹿は・・・。
「まぁ、おれは海に落ちねェけどな」
へらへらといいやがる馬鹿の頭をとりあえず、ガツンと殴りつけ、『いいから降りろ』と船首から引きずりおろす。
「なんだよ〜ゾロ、さっきから」
情けなく頭をさするルフィの襟首をつかんでおれはいう。
「そういっててめェは何度海に落ちたんだ?」
「ししし。でもおれはだいじょうぶだぞ」
ちっとも悪びれずに言うルフィ。
「毎回おれが助けてるからだろうが。こっちのみにもなってみろ、このウスラ馬鹿が。落ちる前に落ちないように気をつけろ」
「おう、わかった」
でかい目を見開いて返事するから、おれはひょいとルフィを離した。
が、なんとなくいやな予感がしたからそのままコイツを見てたら、案の定・・・。
「おい、わかったっつっただろうが。なんでてめェはいそいそと羊の上に登ろうとしてんだよ。」
「落ちないように気をつけて登ってるんだ」
なんだよとばかりに答える馬鹿。
「・・・てめェ、人の話を聞けよ。」
「聞いてるって」
・・・・・・・・。
「いいか・・」
忍耐強いおれはもう一度だけコイツに説明してやることにした。
「これから嵐がくるんだと」
「天気いいのにな」
「ああ、そうだな。けど、ナミのやつがそういうんだから、くるんだろうな」
「そうだな」
「だから、てめェがそこに座ってるとあぶねェんだよ」
「いや、べつにだいじょうぶだぞ」
・・・・。
「海が荒れるから、落ちるかもしれないんだよ」
「いや、おれは落ちねェぞ。」
・・・・何を根拠にそんなに自信満々なんだよ。
「・・・じゃあ、てめェ海に落ちたらどうすんだ。」
「そりゃ困るな。おれ浮かねェもん。」
困ったように首をかしげるが、のー天気に笑って、
「でもだいじょーぶだろ、ゾロが助けてくれるから」
「・・・っておい」
・・・わかってない。基本的に。
頭痛くなってきたぜ。
思わず黙ったおれを、なぜか変な顔でのぞきこむルフィ。
「おい」
なんだよ。
「助けてくれねェのか、お前」
言われた言葉におれはとっさに反応できなかった。
「おれが死んでもいいのか」
「・・・くっ・・あっはっはっはっは」
「なんだ、ゾロ、いきなり笑い出して!」
「くく・・馬鹿かてめェ・・」
おれの言葉にルフィはひどく心外な顔をした。
「ルフィ、おれはこれから船室で昼寝をする。お前もこいよ」
「?」
おれはひょいと猫をつかむように、船首からルフィをおろす。
そして、コイツにだけ聞こえるように耳打ちする。
「いつも助けてるだろうが。んなこと聞くんじゃねェよ」
おれの言葉にルフィは『ん』とだけいった。
「いいか、てめェが海に落ちようがなにしようがおれがその場にいる限りは助けてやれる。
だがな、おれの目のとどかねェところで勝手に死にかけられたらどうしようもねェだろうが」
現にこの前のローグタウンの一件。
あんなことは二度とごめんだ。
「だから、できるだけおれの目の届く範囲にいろ」
「わかった」
よし。
ふと、東の空を見上げると、はるか彼方に低い雲が。
「どうやら、ナミの言ったことは正しいらしいな」
「おお、雲か」
あーあ、とおれは伸びをする。
「いくぞルフィ。こんなとこで寝て雨にぬれることもねェ」
「そうだな、んじゃ昼寝でもすっか」
「一眠りして起きたら、クソコックがなんか食わしてくれるだろうさ」
「ああ、今日のメシはなんだろな」
「ナミさーん。なにみてるんです?」
「ん?ええ、あの二人。」
私の言葉にサンジくんも外を見る。
「ああ、ルフィのやつの説得ですか。」
さりげなく置いてくれた紅茶のカップに口をつけ、私はうなずいた。
「ああおいし。ルフィのやつったら、私が言っても聞かないんだもん。『この場所はゆずらねェ』とかなんとかいって」
「そうですね。あいつが一番適役でしょうね」
ま、面倒な説得を押し付けてるだけなのだけど。
とりあえず、二人は幸せそうなのでよしとする。
「あ、そうだ」
下の船室に入って行く二人を眺めながら、サンジくんにたのみごとをする。
「あと10分したら船室になにかかけるものもってってくれる?嵐になったら気温が下がるから」
『ま、あの二人がかぜをひくとは思わないけどね。多分なんにもかけずに寝てるだろうから』と、ナミさん。
ほんとによく気のきくいい女性だ。
おれが下に降りると、案の定馬鹿二人が仲良く転がって寝ていた。
しかたねェやつらだ。
おれは持ってきたブランケットを適当にかけてやる。
二人が起きる気配はない。
外はいよいよ嵐になってきた。ナミさんと長鼻はいまごろ舵取りや船の軌道修正をしているんだろう。
『たいした嵐じゃない』というナミさんの言葉どおり、今回はおれが手伝う必要はなさそうだ。
「さて・・・」
今日の献立は何にしようか。
はじめて書いたONEPIECE話。くあー!懐かしいなー。
第一印象から(ゾロル)に決めてました。(告白)