船長たるもの

　　　　　　　　　　誇れる愚かさ

レインディナーズ、地下。

同じ空間にあの男と一緒にいるというのに。
手を伸ばせば届く距離にいるというのに。
間にあるのは黒い柵だけだというのに。
この柵のせいで、この柵のせいで！

クロコダイルの哄笑が響きわたる。
卑劣な『ユートピア作戦』の全貌を知り、ビビの表情が憎々しげに歪む。
「・・・なんて非道いことを・・・！！」

目の前にいるあいつを、ぶっとばしてやりてェんだ！！

ルフィが殴りかかるほどの勢いで柵に掴みかかった。
「んぎぎぎぎ・・・！！」
そして外に出ようと必死で力を込める。
だが、やはり海楼石により体の力は奪われてしまう。
それでもなおルフィは柵に詰め寄ることをやめない。
「このぉ・・・！！勝負し・・ホ・・・・・・・・」

それを見て、スモーカーが口を開いた。
「あいつァ、バカか？おれの話を聞いてなかったのか」
無駄なことを、と言外で語っている。
ゾロはスモーカーに視線を合わせた。
「バカにゃあ違いねェ。だが、」
と、ここで言葉をきり、なおも柵にしがみついているルフィを見つめなおす。
そして、誰よりも真剣な眼差しと声音で続けた。

「だからウチの船長やってんだ」

その言葉の最後の音が消えぬうちに、ゾロは和道一文字を閃かせた。
鉄をも斬りおとしそうな一閃。
しかしそれはあえなく柵に受け止められ、かすかな痺れが刀を通して腕に伝わるのみだった。

「んぎぎぎ・・・！！！このヤロ・・・・・・はふ・・・・・・・・」
力尽き、くたりと柵にもたれかかるルフィを、刀を納めたゾロが支えた。
そして二人そろってクロコダイルに射殺しそうな眼差しを向けている。

スモーカーはただ無言でそれを眺めていた。