Donner　L'amour















ピンポンパンポーン

『授業中失礼致します。三年六組、ロロノア＝ゾロさん。三年六組、ロロノア＝ゾロさん。
至急生徒会室までおこしください。繰り返します、三年六組・・・・・』

ピンポンパンポーン






こんな放送が授業中にいきなり流れた。
半分居眠りしていたゾロには、何がなんだかよくわからなかったが、担任に申し出て生徒会室に向かった。

ゾロのいなくなった教室では、普通に授業が再開される。

そのなか、窓際に座るサンジが、ニヤリ・・・とかすかに笑みをみせた。





・・・いったいなんだってんだ？

廊下を進みながらゾロは首をひねる。

・・・またなんか、使われるのか・・・？

なんとなく、ナミのひどくにこやかな笑顔が頭に浮かんだが、とりあえず行ってみることにした。



三階の教室から四階の生徒会室まではすぐだった。
ほかの部屋のドアよりも立派な扉の前で、ゾロは立ち止まった。
そして、少し構えてその扉を開いた。





「たんじょーび、おめでとっ！ゾロっ！！」


ゾロの予想はおおはずれだった。
彼を迎えたのはナミではなくて・・・

「・・・ル・・・ルフィっ？」
「しししし」

いきなり飛びついてきたのは、ルフィだった。
剣道で鍛えたゾロの腕は、突然のことでもちゃんとルフィを受け止めてくれる。
それがルフィはとても嬉しかった。


「・・・お前な、祝ってくれんのは嬉しいが、今は一応授業中だぞ？」
さわさわと、優しくルフィの頭を撫でながらいっても、説得力はまるでなかった。
「だって、おれが一番にゾロに『オメデトウ』を言いたかったんだ」
「なんだそれ」
「ほら、見てみろよ！時計！ゾロの生まれた時間だろ？」
言われた通り、生徒会室の壁掛け時計を確かめると、まさしく彼が母親から教えられた出生時間だった。
「ほんとだ・・・」
「だろ？」
ルフィはいたずらが成功した子供みたいに、無邪気に笑った。
「なんで、んなこと知ってんだ？・・・って、ナミに聞いたのか・・・？」

まるで底知れぬ策略家のような幼なじみの見た目だけは美しい顔が、即座に浮かぶ。
こんなことを仕掛けるのはあの女くらいだ。まったくろくでもない・・・。

「おう！すげェな、ゾロ！なんで分かったんだ？」
そしてそんなことを考えているとは露知らず。
丸い目をさらに丸めてルフィが肯定した。

そんな姿、ひとつひとつが愛らしい。
ゾロは苦笑を浮かべて、『なんとなく』と答えておいた。



「ま、いーや。あらためて、ゾロ、誕生日オメデトウ」
「ああ、ありがとな」
「おれが一番だな？」
「ああ、一番だな」
「しししし」
「・・・なんだよ？」
「プレゼント、なにがいい？」
「あ？・・・別になんもいらねェよ」
「ナミに聞いたら『あんたをあげれば？』っていわれた」
「・・・ぶっ・・・・！」
「それでいいか？」
「・・・・・はぁ？」
「・・・うそ。今日放課後、部活休みだろ？どっかに見にいこ？すきなの買ってやるよ」
「・・・ん・・・ああ・・・そうだな・・・」
「よし、決まりな？忘れんなよ？」
「・・・・・・・・・・・」
「ん？どうした、ゾロ？」
「・・・・・なあ、ルフィ？」
「なんだ？」
「・・・・・・」









授業終了を告げるチャイムが鳴り響いた。
サンジは階段を滑り降り、颯爽と二階のナミの教室に向かった。
その途中、声をかけてくれる女生徒たちへの挨拶も忘れない。
そして目的の少女を見つけると、高らかに手を振り上げながら声を張った。

「なっみさはぁ〜んっ！！」

遠くから駆けてくるサンジに、ナミは困った笑いを浮かべながら手を振った。


「アイツ、結局授業に帰ってきませんでしたよ！！」
「まぁっ！そうなの？！」
「はい！・・・なにやってんだか」
「ふふふ・・・やっぱり『プレゼント』でも受け取ってるんじゃないの？」
「・・・ですかね？」
「きゃっ！ゾロってば、ケダモノっ！！・・・大丈夫よ、サンジくん！ぬかりはないわ！すでにカメラはセット済みよ！！」
「さすがはナミさん！！」


二人は楽しげにそんなことをいいながら、生徒会室に向かった。
わくわくして扉をひらくと、そこにはもう二人はいなかった。

すこし残念だったが、さらにわくわくしてビデオを再生する。





・・・・ゾロはナミともう、１８年の付き合いなので・・・・。

「あ・・・録画停止されてる・・・」


今回ばかりはさすがにゾロが勝ちをもぎ取った。




「くっ・・・ゾロのくせに、生意気ね！みてなさい、次こそはっ！」
「あああ・・・闘志を燃やすナミさんも素敵だ・・・・！！」










そんなことになっているとは知らずに、二人は放課後デートを・・・

・・・もとい、
放課後デートも、楽しんでおりました。