船長の特別
「よう、ゾロ!!」
「・・・なにィーーっ・・・!?」
「バカ!テメェ一人でまいてこい!!!!!」
・・・ったく、どうしてこいつは、こうなんだか・・・・・・・・
ドラムで・・・・
「なーんだ、その服見覚えがあったからあいつらの仲間かと思ったよ」
おれを間違えてぶっとばしたあとに、あいつは笑いながらそう言った。
「服が変わっただけで、わかんなくなるんだな」
すでに出港し、バカ騒ぎの中で、おれは不機嫌そうな声でルフィにそういった。
少しからかってやるつもりで。
こいつは不思議そうな顔で、きょとんとおれを眺めながら首をかしげる。
「・・・・あの変な山の上で、だ」
「やまぁ?」
「お前おれのことぶっ飛ばしただろうが」
「・・・おおっ!!したした!!」
やっと思い当たったようで、しきりに頷く。
それからやっぱり不思議そうな顔をして、
「それがどうかしたのか?」
あっさりそう聞いてくるから、おれはさらに不機嫌な声で言った。
「・・・・・・・・なんでもねェよ・・・」
するとルフィはにぃーっと笑って、
「なんだ、ゾロ?怒ってんのか?」
「・・・違ェよ」
「ふーん。じゃあ拗ねてるんだな?」
『誰が拗ねてんだ!!』、そうおれが反論する前に、ルフィは俺に飛びついてきた。
子供の体温が心地よかった。
一日も離れていなかったというのに、なぜだかひどく久しぶりなものに感じられた。
こうして直にルフィに触れるだけで、どうしてこんなに安心できるのだろう。
「ごめんな?」
おれが黙っていると、ルフィはひょいと顔をあげてそう言った。
「『ゾロだ』って、わかんなくて」
『冗談だ、ちょっとからかうつもりだった』という言葉が、うまくでてこなかった。
正直、おれは・・・そう、ルフィの言うとおり拗ねていたんだろう・・・。
だが、こんな風に謝られると、そんなことはどうでもよくなってしまう・・・。
「・・・もういい」
おれはため息をついて、目を伏せた。
「んーでもよ、ちゃんと途中でわかったぞ?」
「ああ、そうだな」
その『途中』というのは空中で、止まることなどできないところだった。
だからそのままおれとウソップをぶっとばしてしまったのだ、とルフィは言いたいらしい。
「ほんとはゾロだったらどんなカッコしてたってわかるぞ?」
「うそつけ」
「うそじゃねェよ!だってゾロだろ?わかるって!」
まるで子供が意地を張るかのようにルフィは言いつのる。
おれも・・・やっぱり子供なんだろう・・・。
「じゃあ、なんであん時はすぐわかんなかったんだよ?」
つい、口からそんな言葉が飛び出した。
ルフィが・・・ぐ・・・と唸る。
「あん時は・・・ちょっと失敗したんだ!もう飛び出したあとだったし・・・」
だんだん後ろが小さくなっていく。
いいかげん勘弁してやるか、とおれは思う。
気はすんだし、それに聞きたい言葉もちゃんと聞けたし。
『ほんとはゾロだったらどんなカッコしてたってわかるぞ?』
まぁ、その言葉でチャラにしてやるよ。
「わかったわかった」
おれは苦笑をもらしながらルフィの麦わらをかぶった頭をぽんぽんと叩いた。
「なんだよ!!うそだと思ってるだろ?!ほんとにほんとなんだぞ?!」
「わかったって、ほんとなんだろ?」
「そうだ!ほんとにほんとだ!」
「はいはい」
「次は絶対わかるからな!!」
「そうかよ」
「・・・・・・・・・・・うそだと思ってるだろ・・・・・?ほんとにほんとの絶対の絶対なんだからな?!」
バカみたいに真剣にいってくるルフィ。
冗談半分に聞き流して、でもその真剣さを嬉しく思いながら、おれはルフィをからかっていた。
アラバスタで・・・・・
「・・・ったく、よりによってなんで気がつくんだよ!!」
海軍の追跡から逃げながらおれはルフィにむかって声をかける。
ドラムなんかよりもよっぽどわかりにくい格好をしているというのに、あっさりとおれだとわかったルフィ。
「だってさー!」
ルフィはおれの方を振り返ると、なにやら満足げな笑顔でこういった。
「ゾロだったらどんなカッコしてたってわかるからな!!」
おれはなんといっていいかわからなかった。
正直、あのとき一番におれに気がついたことが嬉しくなかったといえば嘘になるかもしれない。
海軍をおまけにつけてきやがって!と思う反面、今度は・・・と思ってしまったのだから。
なんだか照れくさかったので、とりあえず「このアホ・・・」といって背中を蹴っておく。
ルフィは「なにすんだ!」といいながらも、まだ笑っていた。
「な?ほんとにほんとだっただろ?おれはちゃんとゾロのことはわかるんだぞ?」
まるでいたずらが成功したガキのように、嬉しそうにそういってくる。
「・・・るせぇよ・・・」
おれは呆れた表情をつくって低く唸った。
「時と場合を考えやがれ・・・」
「いーじゃん!なんとかなったんだからさ!それに、ちゃんとわかるってこともショウメイできたしな!!」
太陽のような笑顔が、やっぱり照れくさかったので、おれはもう一度ルフィを蹴っておいた。
それは・・・・・・自惚れてもいいんだろ?
お前はどんなカッコしてても俺がわかると。
その言葉に嘘はないと。
それだけおれが、特別だと・・・・・・・・・・・・・。
・・・自惚れてますロロノアさん・・・(苦笑)かってに自惚れててください。
しかも最初ちょっと拗ねたり・・・(さらに笑)
いえ、だってこのところが原作よりもアニメが、『ルフィ、ゾロだけに気がつく!!!』が強調されてて、思わず文章を書いてしまったり・・・
いや、グッジョブでしたよアニメさん!
そうです、そこはばっちりゾロルポイントですからね!
さすが!わかってらっしゃる!(拳)