「せんせー」
そう言ってにこにこしながら俺に話し掛けるコイツ。
―名前は。
くりくりな瞳で俺を覗き込むのは正直やめてもらいたい。
いや、アレ心臓に悪いから。可愛いけどね!
何処にでもいるような普通の女子高生。
別に特別可愛いとかそんなんじゃないけど、どういうわけか俺のハートを掴んで離さないわけ。
の一挙一動にドギマギしながら振り回されてるなんて格好悪ィな、俺。
相手は唯の生徒じゃねェーか。
今までも色んな生徒を見てきたわけで、勿論その中には俺に好意をもった生徒なんかもいて
そんな奴らにも大人な余裕みせてかわしてたわけじゃん?
オイ、その時のちょっと冷めたクールな俺どこいった?(クールも冷めたも同じ意味か)
なんで俺が女子高生如きにこんな動揺させられなきゃいけねェんだ、チクショー!
(そんでそんな状況自体も実はちょっと楽しんでたりして)
「先生、聞いてる?」
なんて可愛らしく上目遣いで尋ねるに
これまたドキン!なんてしちゃって
落ちつけ!俺の胸の小人さんンン!!
そしてどうかそのハートを突くのをやめてェェエ!!!
なんて思ってることはこれっぽちも感じさせずに、
いつもみたいに「あー聞いてる聞いてる」
なんて冷めた調子で言ってみる。
案の定、の機嫌を損ねたみたいでツンと拗ねるを見ながら
やべェーかわいいわなんて思ってる俺は相当アレだ。
「おい、日直」
行き成り俺との前に現われたかと思うと、そんな一言と共にいとも簡単にを攫っていく多串くん。
ちょ、おまっ内申下げるぞ?なんて教師に有るまじきことを思ってみる(いや俺が教師らしくねェのはいつものことだけど)
っていうか、もンな簡単に付いて行くなって!アレだぞ?
こいつ日直なんて言ってるけど絶対隙あらばイヤラシイことの一つでもしてやろうとか思ってるからね?
黒板とか消しながら絶対の身体イヤラシイ目付きで盗み見てるからァ!
つうかお前ら近くね?ちょ!何土方お前!!!!
いくらが小さくて可愛いからって覆い被さるとは何事だコノヤロー!!!!!!
「多串くん、いくら欲求不満だからってんなとこでに襲い掛かるなよ」
「は?何言ってんだテメェ…俺はこいつが小さくて手届かねェとこ消してやってるだけだろォがァァア!!!」
「とか言って本当はその気だったんだろォ?…、危ないからそんな瞳孔開いた奴から離れて先生の方来なさい」
「ば・・・!んなわけねェだろォォオ!!!!つうかもそんな天パの言うこと信じんなァァア!!!」
多串くんが騒いでる間に黒板と奴の間から抜け出して、こっちに駆け寄ってきた。
ぎゅっなんて抱きついてきて握り締められた俺の白衣。
え、何コレどっきり?
にしても柔らかい感触がモロ伝わるんですけど…。
ちょ、ヤバイわコレ。まじで。色々と本当ヤバイからね、俺の理性とか。
「ちゃん、ちょっと離れましょーね。いやこの状態も非常に嬉しいんだけど先生も色々とアレだから」
「アレって何?」
「・・・野暮なことは聞かない!はい、離れる!」
「えー」
「えーじゃない!」
しぶしぶながらもやっと離れてくれた。
握られていた白衣にはしっかりとその後を残し皺になってる。
ま、別に皺くらい気にしねェけど。
そんなことよりも、
ばれてはいけない
(柔らかい君の身体に反応しちゃった俺の身体と、
君を思うこの気持ち…少なくとも卒業までは)