「三年Z組さん並びに坂田先生、至急校長室まで。繰り返します、三年Z組…」



いつもの如くお昼時で賑わう教室に、突然流れた校内放送。「何やったアルか、?」なんてタコ様ウィンナーを齧りながら振り返る神楽の声は、頭が真っ白になっていたあたしには最早届いていなかった。ヤバイ、ヤバすぎる。普通に考えて思い当たることは一つしかない。みるみるうちに顔面蒼白になっていくあたしを不安に思ったのか心配するお妙をよそに脳内では最悪の結末が流れる。何がいけなかったんだろう?これでも色々気を付けていたはずなのに。ひょっとしてこの前一緒にファミレスで食事してたのを誰かに見られてたとか?(いやでもわざわざ隣町まで行ったし)それともこの前の夜中の公園デート?・・・そう考えると思い当たる節がいくつか。気を付けてたはずで何処か抜けていたんだあたし達。



「おーい、いる?」

真っ青になってあれこれ考えていたあたしの前に現われたのは何時もと変わらないような先生。あたしの右手を取り「じゃ、こいつ借りてくから」なんて教室から連れ出された。





「先生・・・どうしよう」

「何が?」

「何が?ってわかってるでしょ。あたし達・・・」

「あー、わーってる、わーってるって。だから皆まで言うな。流石にここじゃまずいだろ」

「でもっ・・・!」



行き交う人の間を割って廊下を突き進む。未だに掴まれたままのあたしの右手は赤くなりかけてる。いつもの様なラヴ繋ぎなんかじゃなく手首をただ強く掴むだけのそれに痛みすら感じる。そんな風に廊下を先生に引き摺られるように歩いていたあたしは悪目立ちしているみたいで(あたしというか先生もだけど)色んな生徒に好奇の目を向けられる。その視線と痛む手首に気を取られてるうちに前方には「校長室」と書かれた札が。そこで漸く握りすぎたあたしの手首に気が付いたのか「悪ィ・・・」なんて謝る先生。前言撤回、何時もと変わらないなんて。やっぱり先生もちょっと動揺してるみたい。







「失礼しまァす」

やる気なく挨拶する先生に続いてあたしも小さく「失礼します」と言いながら中に進む。後ろでガチャンと音がして閉まる扉、前には先生の広い背中。そしてその先には「やーやー待ってたよ、君達。ま、座りたまえよ。」なんて嫌らしく笑う校長の姿。



「とうとうこの時が来たか。いや〜真に残念じゃよ坂田先生。…やっと君ともお去らば出来る。」

「満足そうに笑ってんじゃねーよ。何が残念だ、何が!っていうかその後の言葉と合ってねェんだけど」

「ちょっ、前から言ってるよね。それ本当校長に対する態度じゃなくね?本当、泣いていい?ねぇ爺よ、わし泣いていい?」

「いいんじゃね?」

「ちょ、爺までェェエ!!!!・・・ってまァいい。坂田先生とはこれで最後じゃしね。さて、いい加減本題に入るのじゃが、とある人から君達二人に関する面白い噂を聞いてね?」

「とある方って誰だよ!?言ってみろつーんだ。大体小さい頃母ちゃんに習わなかったのかオイ。人の陰口はしちゃいけませんってよォ」



あ゛?なんて校長を睨む先生の袖を引っ張り、これ以上校長につっかかるのを止めようとするあたしに先生も気を取り直したのか深くソファーに座りなおす。それをいいことにコホンなんてわざとらしく咳払いをし、数枚の写真を机に並べる校長。そこには誰が撮ったのか、明らかに隠し撮りされたあたし達二人。どこぞの週刊誌宜しく、一枚はあたしと先生が抱きしめあってる写真。そしてそのあと連写されたのだろうキスシーン。誤魔化しようがないくらい顔がはっきりと映ってる。「まさか坂田先生も生徒に手を出すとはね〜。いくら女子高生って響きがちょっとエロいからってそれはいかんよ、君」ニヤニヤとそう笑う校長にプチンときて今まで黙っていたあたしも何か言ってやろうと思いバシンと勢いよくソファーから立ち上がった。





ブチンッ!!!

「なにするんじゃね君ィィイ!!!!!」


とそれより早く先生が校長に殴りかかり、その卑猥な角を千切り取るとともに鋭い目付きで校長を睨みこう言った。


「生憎、俺はンな厭らしい気持ちでと付き合ってるわけじゃないんで。女子高生だからじゃねー、だから好きなんだよ!!!!生徒だろうがなんだろうと関係ねェ。偶々、好きになったが生徒だっただけだ。わかったか、このスケベおやじがァァア!!!」


「行くぞ、」なんて今度はあたしの右手をいつものラヴ繋ぎにし、校長室を後にしようとするあたし達に慌てて「待ちたまえ!二人ともどうなるかわかってるのかね!?話はまだ終わってないんじゃよ!…えぇい、首じゃ、首ィィイ!!!」なんて騒ぎ立てるが、気にせず突き進む先生。そんな先生と校長を交互に見ながらもそのまま先生について行くあたし。心なしか顔が綻んでいくような気がする。










「何笑ってんの、お前」

「・・・だって嬉しいんだもん。あたしがあたしだから好きなんでしょ?」

「悪ィかコノヤロー!人が熱弁してやったつーのになにお前、馬鹿にしてんの?」

「してないよ。だから嬉しいって言ったじゃん。あーあたしって愛されてる!」

「はいはい、愛してますよ。もうこれ以上ないって程にね。つうかコレ俺、職失ったんじゃね?…ハァ、どうしよう俺これから。この歳でプーか、オイ。きついわコレ、マジで」

「・・・あたしのせい、、だよね」

「バカおまっ、何言っちゃてんの?大体俺はお前と付き合うことになった時から職失うことぐれー覚悟決めてんの。だからオメーのせいとか言うんじゃねェよ」

「・・・先生!」

「つうか、そろそろその先生ってのも卒業してね。どーせもう先生じゃねェし。これからは銀さんって愛情込めて呼んでよ」

「銀・・・ちゃん?」

「・・・あー、まァそれでもいいけど。つーかなんで疑問系?」

「銀ちゃん!」

「はァい」

「銀ちゃん!銀ちゃん!」

「はいはーい」

「銀ちゃん!銀ちゃん!銀ちゃん!銀ちゃ・・・」

「くでーよ、お前」



なんて笑いながら繋いだ手を引き寄せ抱きしめられる。
それから二人で笑い合って、これから先の事だとかここが学校だなんて全て忘れて何度も口付けあった。















「銀ちゃん、履歴書持ったぁ?」

「あー持った持った」

「携帯はー?」

「持ったつーの。あー、あとハンカチも鍵も持ったからね。っていうか幼稚園児ですか俺は!?」

「ふふ、何言ってんの。だって銀ちゃんそそっかしいんだもん。」

「はいはい。っていうかそそっかしいのはどっちかと言うとの方じゃね?・・・あ、忘れ物あったわ。いってらしゃいのチュー」

「しょうがないなー、今日だけだよー?」

「マジでか!」



ちゅっと軽くキスを送ると嬉しそうに「行ってきまァす」と扉を出て行く銀ちゃん。あれから数日後、やっぱり銀ちゃんは学校を辞めることになった。あたし達の噂はあっという間に学校中に広がって流石にPTAも黙っていなかったから。でも3Zのみんなはというと冷ややかな目で見るどころか逆に祝福してくれて。神楽には「どうして言ってくれなかったアルか!ワタシ達親友ネ!隠し事はずるいヨ!!」って怒られて、でもその後ぎゅって抱きしめてくれた神楽の顔は今までにないくらい優しかった。最後の最後までみんなは校長や理事長、PTAに銀ちゃんを辞めさせないように訴えてくれた(それでもやっぱりどうにもならなかったんだけど)



後からわかったことなんだけど、あたしが今もこの学校に居れるのは銀ちゃんのおかげだって。理事長があたしに直々に話してくれたことによると始めはやっぱりあたしも退学処分になるはずだったんだけど、銀ちゃんが俺はどうなってもいいけど、だけは辞めさせないでくれって頭下げて頼んだんだって。それ聞いてなんだか本当にジンときちゃった。そのことを銀ちゃんに聞いてもはぐらかすだけなんだけどね。銀ちゃんが居ないのは寂しいけど、それでもここまでしてくれた銀ちゃんの恩を仇で返すなんてしたくないからちゃんと卒業するつもり。それでも始めの頃は嫌な事を言われる事もあった。後ろ指さされたり、陰口を言われたり。そんな時はいつもお妙や神楽が守ってくれたし、この二人のおかげでそんなことも最近では少なくなった(この二人が怖いからってのもあるけど)



それからあたし達はというと、一緒に暮らし始めることになった。勿論あたしの進路は銀ちゃんのお嫁さん・・・なんて。左手の薬指に光る指輪を眺めて夢見るのはそんなこと。もう内定済みなんだけどね。銀ちゃんはというと「と結婚すんのにプーなんかじゃいらんねー」なんて言ってそれから職探し。今日が面接なんです。受かるといいけど・・・きっと銀ちゃんなら大丈夫!







モラルに逆らうというリスク

   (失うモノは沢山だけど、隣りに君がいればそれでいい)

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