その発言がなんだったかはもう思い出せないが、ある日、些細な会話の途中でそいつに欲情を覚えた。
馬鹿らしい。動物相手に何を考えているんだ、と思ったがよく考えてみればあいつだって雌である。
女性器があるのだから、事ぐらい成せるだろうという考えを思いついたらそれはもう止まらなかった。
押さえつけて、人間のそれとは違うふうに少し乱暴に無理矢理やり遂げる。その妄想でマスターベーションをすることなど容易だった。
こんなのは少し異常だ、と分かりながらも好奇心のようにその性欲は止まらず、十二月の二十八日、そいつの誕生日にその妄想を行動に移してみようじゃないかと思い立った。

当日、部屋には既に他の住人が来ていた。まきばという、イザベラとよく似た性格をした高飛車な雌牛である。しかし性格を比べれば何処か可愛さが劣る。
そいつだって行為に巻き込んでも良かったが、暴れられるといくら男手でも太刀打ちできないことは分かっていた。
気が弱いやつだとは分かっていたから、怒鳴って脅して追い出してしまおうと考えた。


「イザベラ、お誕生日おめでとう…」


そう言っておずおずとプレゼントを差し出せば、「シャキっとしなさいよ」といつものようにぴしゃりと叱り付けられ、その後にプレゼントにうっとりと目を細める。
ああそうだ、その、目が。いけない。
そしてそれから「アンタにしちゃあいい出来ね」と高飛車に褒められ、背筋にぞくりと冷や汗が流れた。俺が普段大人しくしているものだから、こういう主従関係があるように考えているらしい。
ふと脳裏に過ぎった、何度も何度も妄想したシーン。その想像の通りに、俺はぐいっと力を入れて硬そうな床にイザベラの頭を押し付けた。手のひらに余る、小さな頭蓋骨だった。

「ちょっとアンタなにをやってるのよ!やめなさいよ!!」

案の定、まきばがそう叫んだ。俺は声を張り上げ、うるせえおめぇもこうされたくなかったらでてけよだとかそんな感じの内容のことを喚き散らした。
まきばは目に涙をたっぷり溜めて震えた後に、ドアを開け走り逃げていった。助けを呼んでくるかもしれない。そう考え、俺は錠をした。
イザベラは俺を見上げてぷるぷると震えた後に部屋をすばしこく逃げ回った。
尻尾を掴んで引っ張ったときに咄嗟に「ちぎれる!」と感じ、そう思うと同時に、なんともいえない破壊願望の入り混じった快感が背筋を駆けた。
実際には尻尾は千切れなかったのに、引っ張ったときの感触と嫌な音が耳について離れない。


イザベラの皮膚は思ったよりずっと温かく、柔らかく、薄かった。
脚を押さえつけ付け根を探れば、縦に筋が入っただけの幼い性器が露になる。
指で乱暴に挫いたら、きいきいと高く鳴いた。それはかまわないが、暴れるのが煩わしい。
そう思いイザベラの手を手で押さえ、足を膝で踏んだ。少しでも力を入れれば、竹ひごのように折れてしまいそうだった。


「離しなさいよ!」と命令されれば体が余計に粟立つ。
「ばかやろう」と汚い言葉を使うところは、直してあげなければなと背筋が震えた。
「イヤだあ…」とただそれだけ呟いたその弱り具合に、征服したような快感を覚えた。
そのまま男性器を取り出し股ぐらに押し付け、少し擦った後に無理に中へ押し込んだ。
ぎゅっと苦しそうな声を出した以外は、もう喚かなかった。同じ高い声でも、金きり声ではなく随分色気を含んでいて、甘い。
確かにはっきりと聞き取れる「あん、あん」という人間染みた喘ぎに、体はどうしようもないほど興奮した。
そのまま中で射精をし、引き抜いたときのイザベラの目は、プレゼントを開けたときと同じうっとりとした目をしていた。
幼さと厭らしさの紙一重の感覚に気付く。イザベラの服を直し、部屋を出て行くときになんとなく「ごめんね」と呟いた。それは、無意識に。
イザベラはただ目を細めたまま、最後までうっとりと焦点の合わないままだった。


その夜はもう、いつもの妄想も、その続きも考えなかった。
母に昔教えられた、どうぶつ虐待は100000ベル以下の罰金という話のことだけ思い出しながら寝た。
次の朝起きたらイザベラはいなかった。大急ぎで荷物をまとめ、出て行ってしまったのだろう。
何もない部屋の中にあの硬そうな床敷きだけ残されていて、昨夜の激しさと何もない寂しさが残っていた。
それから一週間後に、イザベラから手紙が届いた。くしゅっと縮まった字で「ありがとう」とだけ書かれていた。
どうしてそんなことが言えるのか罪悪感に悩まされていた俺には分からなかったが、俺は今でもその手紙を捨てられずにおり、時折それに苛まれる。



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