『スーパーペドフェリア・本日謝恩セール
 牛乳1リットル 98円
 焼きソバ3人前1パック 100円
 卵1パック 88円 お一人様につき1パック 午後3時から先着300名様――』
(……午後3時)


「よーこさん」
「ぅわ」
 ス―パーの特売チラシをソファに座って見ていた鹿沼葉子は、突然目の前に相沢祐一の顔が現れて、思い切り驚いた。





    午後3時までの逢瀬


らいたー  水亭帯人






「そこまで驚かなくてもいいと思う」


 祐一が葉子を驚かした格好のまま、つまり極めて至近距離から葉子の顔を見詰めたまま彼女に話し掛けた。
 眼前に異性の顔があるというのに、彼の態度からはまるでそのことに対する感動、或いは動揺のようなものが全く見つけられない。
 一方祐一との交際を始めてようやく数ヶ月、未だに異性に対する免疫がろくに出来ていない葉子は僅かに頬を赤く染めて、それから拗ねたような顔になる。
 具体的に言うと子供っぽい仕草で小さく頬を膨らませた。


「いきなり目の前に顔が現れたら誰だって驚きます」
「そう?」


 極めて無防備な、子供のように不思議そうな表情をする祐一。
 葉子の方が祐一よりも五歳年上なのだが、彼の口調には年上に対する敬意らしきものは微塵も含まれていない。
 そしてその代わりにあるのは身近な人間に対してだけ向けられる親しみ。
 葉子とてそれが不満というわけではないのだが、多少堅いところのある彼女は少しでも良いから年齢の差における礼儀と言うものを祐一に理解して欲しいと常々思っていた。
 何より、彼は若干世間知らずなところのある彼女を時々子ども扱いする。
 ぶっちゃけて言うと葉子はそのことが年上として気に食わなくて、事あるごとに自分が優位に立とうとするのだが成功した試しがない。


 精神年齢ははっきり言って祐一の方が高いのだ。
 その主な証拠に挙げられるのが彼らの見るテレビ番組の違い。
 祐一が見るのは大抵ニュースやドラマだが、葉子が見るのは子供向けのアニメや教育番組、しかもアニメが放送されている間はテレビに視線が釘付けだ。
 それだけの説明で分かるようにその差は実に歴然としている。


「何見てるのかと思ったら、スーパーのチラシ。葉子さんもいよいよ所帯じみて来たな」
 しみじみと、それこそ中年オヤジのように呟く。
「それって、私がおばさんっぽくなったってことですか?」
 目を細めて軽くにらみながら葉子が祐一を真正面から見る。
「いや、良い感じ。……もののあはれと申しますか、食べ頃な大人の色香がたまりません」
 葉子の右隣に座った祐一が茶化すように笑いながら答えて、その言葉を証明するように葉子の背中に両手を回して彼女を軽く抱擁した。


 透明な笑みだ、葉子は祐一の笑顔を見るたびにそう思う。
 無色なのではなく、詰め込んだ物が多過ぎてその挙句に色を失ってしまった、そんな笑みだ。
 未だ成人していない年下の少年の顔立ち容姿はかなり端整な部類に入る。
 当然その笑顔も女性である葉子から見れば魅力的なのだが、やはり物足りなさを感じてしまう。
 見る者が満たされることはあっても見られる者が満たされない、そんな物足りなさ。


 そしてそこまで考えると葉子は決まって、祐一が毎日雪の降る中積もった雪も払わずに午後1時から3時まで誰かを待つように駅前のベンチで座っていた以前の光景を思い出す。
 二人の出会いの切っ掛けにもなった、奇行とも見られる祐一の行動の理由を葉子はどうしても知りたかった。


「祐一さん、貴方の過去に何があったんですか?」
 無神経とも取れる質問をする葉子。
 しかし訊ねたのは今回が初めてというわけではなく、そしてそれに対する祐一の答えも決まっていた。
「企業秘密です」
 相変わらず透明な笑みを浮かべたままの祐一。
 もう既に何度も繰り返したやり取りだった。
「私に貴方を受け入れさせて貰えませんか?」
「……もしかして誘ってる?」
 背中に両手を回したまま葉子の表情を再び真正面から見詰め直して祐一が訊ねた。
「どうしてそうなるんですか」
「受け入れるって言葉で連想した。それと最近御無沙汰だったし」
 そう言って葉子の金髪をゆっくりと撫でる。


 思わず葉子は言葉に詰まった。
 至近距離で見詰め合っている相手からそういったセクシャルなことを改めて言われたので顔も赤くなる。
 おまけに意思とは関係なく目まで潤み始めた。
 理性では否定したいのに肝心の身体はすぐ傍にいる異性の体温、匂いその他を意識して勝手に化学反応を始める。
 祐一の言う通り“御無沙汰”だったのも理由の一つだろう。
 胸の鼓動が高まって身体が震える。
 身体からどんどん力が抜けていく。
 更に、発汗量が増えたような錯覚を覚える。
 それらは葉子をまるで行為へと駆り立てているようだ。
「ぁ……」
 祐一に頬を軽く撫でられただけで葉子は今にも消え入りそうな声を漏らした。
 意識し始めるとブレーキが効かなくなるタイプなのか、彼女はそのまま自分を抱擁する相手の身体にもたれ掛かって上半身の体重を預ける。
「ん、感じた?」
「はい……」
 葉子は祐一の胸元に顔を寄せて、朱く染まった表情を相手に気付かれないように祈りながら小さく答えた。


「じゃあ、どうしようか」
 葉子が求めていると判断した祐一が、俯いてその表情を見せない葉子を見ながら穏やかな口調で訊ねる。
「優しくしてください」
 祐一の身体にぴったりとしがみ付いた葉子の言葉に祐一は頷いた。
「うぃ、了解」




 口付けは祐一の方からだった。
 舌を挿れない唇を重ねるだけ、葉子の要望通りの優しいキス。
 そのまま祐一は目を閉じて、葉子を抱きしめていた両手を彼女の身体を服の上から撫でるようにゆっくり動かして平均以上のサイズを保有する胸の位置に運ぶ。
 そして上着の上から両胸をほぐすように揉んだ。
 祐一の両掌の中にあるものは手の動きに従って溶けたアイスノンのように形を変える。
「ぅん……」
 頬を上気させた葉子の漏らした声で、祐一はイタズラが成功した子供のように満足そうな表情になった。
 今度は上着のボタンを半分外して服の中に右手だけを入れブラジャーの上から触る。
 もう片方の左手は葉子の腹の位置を這って進み、スカートの中に潜り込んだ。
 スカートの中の左手は人差し指と中指を用いて、既に水気をたっぷり帯びている下着の上から葉子の大事なところをなぞって刺激する。
 葉子が息を荒くしたことに調子付いた祐一は行為をエスカレートさせる。
 口の中に舌を挿れて、両手は更に下着の中に潜り込ませた。


 左手が茂みを掻き分けて、秘裂に直接触れると其処はいっそう激しく濡れ出す。
 祐一は愛撫の動きをいったん中断して、左手は葉子の秘所を覆ったままに、彼女の服を右手だけで脱がしていく。
 焦らすような祐一の緩慢な動作に葉子は我慢しきれず、自分から上着のボタンを全て外してそれを脱いだ。
「……やっぱり御無沙汰だったから?」
「知りません」
 恥ずかしそうに顔を赤らめながら、祐一の顔を直視できずに葉子はそっぽを向く。
 それでも彼女自ら進んでスカートを脱ごうとする辺り、身体は素直、ということなのだろうか。
「これからはもうちょっと定期的に満足させてあげないと」
 祐一の軽口が葉子の顔を益々赤いものに変える。
 せめてもの抵抗をしようと、葉子は祐一の服を脱がしに掛かった。
 祐一は大して抵抗もせずに葉子に任せ、下着の中に潜り込ませた左手を再び動かし始めた。
「っっぁあっ」
 先ほどまでよりも激しくなった指の動きに、葉子は甲高い声を出して身体をピクンと反応させる。
 それでも悔しいのか、服を祐一からまるで盗賊のように剥ぎ取る葉子を可愛らしく思いながら、祐一は右手の指だけを使って露わになったブラジャーのフロントホックを外した。
 肌と絹製の下着が擦れてソファの上に落ちる音が鼓膜を震わせる。
「こっちも」
 続けて、すっかりびしょ濡れになって透けている下の方の下着もゆっくりと脱がせた。
「葉子さんのココ、凄く濡れてる」
 祐一の言葉によって、羞恥心から葉子の顔に改めて朱色が差す。
 外気にさらされた秘所は愛液を溢れさせながらヒクヒクと動き、まるでそれ自身が意思を持って祐一を誘っているように思われた。
 陰核を軽く弄りながら祐一は葉子の割れ目に口付け、なぞるように舌で舐めた。
「ひぅっ――――」
 指とは違った柔らかい感触を与えられて、先ほどよりも一際高い声が葉子の口から出る。
 それでも声が小さいのは葉子が我慢しているからだ。
 初々しい相手の態度に好感を抱きながら、祐一は葉子をソファの上に寝かせる。
 さっきまで着ていた衣服の上に横たわったせいで、それらに皺がついてしまうが今の二人にとっては些細な出来事だ。
「いいか?」
 念のため確認を取る。
 己がどうであれ、相手が望まないのであれば無理強いはしないという彼の性格がその一言に現れている。
 人を傷付けたくない臆病さと誠実さ。
「祐一さんが望むなら」
 その言葉と共に葉子はソファの上で横になったまま、祐一の身体が自分に覆い被さるようにして彼の顔を寄せ、潤んだ瞳で見詰めてから祐一の唇を求めた。


「ん、んっ」
 自分の唇を恋人の唇で塞いだ状態のまま、祐一を自分の中に受け入れた葉子は自分と相手が腰を動かすたびに声になっていない声を上げる。
 祐一の両手は葉子の両胸に直接触れており、指と指の間で乳首を弄るように動く。
「んんぅ――っ」
 葉子の動きが段々と激しいものに変わっていっていることとその表情から、彼女の絶頂が間近に迫っていることを感じ取った祐一はラストスパートをかけることにした。
「んんっ、んん、んんっ」
 恋人の感じている声が聞きたくなった祐一は自分から唇を離す。
 唾液の糸が室内の光を反射して淫靡に輝く。
「あ、祐一さん、ああぅッ」
 塞いでいるもののなくなった葉子の口から、今まで小声だったことを補うかのように艶やかで大きな嬌声が漏れた。
「あ、ああっ、んああっ、あッ――」
 絶頂を迎えた葉子が身体をびくりと大きく震わせ膣内を強く締め付ける。
 それは、葉子と同じく絶頂の近かった祐一の射精感を促すには十分で、祐一は葉子の膣内で果てた。




 情事が終わったのは午後2時半少し前。
 葉子はのそのそと皺のついた服を着ながら時計を見て、それから隣で同じようにしている祐一を見て言った。
「祐一さん、買い物に付き合って貰えませんか」
「いいけど、何を買うんだ?」
「商店街のスーパーで今日午後3時から卵の安売りがあるんです。一人1パックなので二人で行けば2パック買える計算になります」
 祐一曰く、所帯じみた笑みを浮かべながら葉子は彼に自分の考えを説明する。
「今から行けば丁度3時くらいに着きます。卵を買ってからついでに少し足を伸ばして足りない日用品なんかも買いに行きましょう」
 祐一に拒否権なんて粋なものは無かった。


 買い物を終えて、荷物持ちに祐一を従えた葉子は夕焼けに染まった駅前を通りがかった時にふと幻視する。
 午後1時から3時までベンチに座ってずっと誰かを待ち続けていた祐一の姿を。
 あの時の寂しさを彼が未だに引き摺っているのではないか、自分は恋人の支えになれていないのではないかと不安になる。
 そしてようやく気付いた。
 愛する少年の過去に何があったのか。
 自分が知りたいのはそんなことじゃない。
「祐一さんは幸せですか?」
 その疑問の答えこそが自分の知りたいこと。




 相沢祐一が答える。
「葉子さんがいるから」
 鹿沼葉子はそれを聞いて満足した。








   18以上か、或いは以下なのに好奇心に負けて読んでしまった読者に贈るあとがき

 祐一×郁未ssの副産物をネタに書いた18禁ss。
 副産物のこっちの方が早く仕上がるなんてどういう了見だ、水の字。
 散々メール戴いといて、待ってる人に申し訳ないと思わんのか、ゴルァ。
 本当、マジすまぬ。


 言っちゃなんですがコレ、続きます。
 更に次回も葉子さんに祐一があんなことさせたり、こんなことさせたり、あまつさえそんなことしてしまったりします。


 そして此処まで読んでくれた人にお礼と、それから厚かましいと思いつつもお願いがあったりします。
 水の字はあまり官能小説を読んだりしないので、18禁のオススメの小説なり、本なり知ってる方がいたら題名(出来れば出版社とかどんな内容なのかも)教えてください。
 ジャンル、媒体、その他もろもろ問いません。
 官能小説ろくに読んだことの無い水亭の文章力ではとてもじゃないけどこれからの闘い(?)に生き残ることは不可です。
 18禁は高レベルの語学力および文章力が必須なのです。マジで。


 読んだ感想なんかも戴けると嬉しいです。
 読む側のニーズ、なんかが分かるので。


Shadow Moonより

いやっほう! ついに頂きました、『月影の館』 初の18禁SS!!
とあるサイトとの協力で、18禁解禁がついに実現。 私は今、モーレツに欲情している!!(核爆)。

さてさて、『逝け逝け・葉子さん!!』 しっかりだっぷり読破させていただきました。
もう、鼻血もんですゥ 葉子さんラブリ〜っ(爆)。
でも、『スーパーペドフェリア』って、凄い名前のスーパー……(汗)
次回の いや〜ん な祐一君と葉子さんの逢瀬も楽しみにしています。 


水亭帯人様へのメールはこちらへ。


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