『ふぅ、委員会の仕事も楽ではありませんね…少々遅くなってしまいました』
校庭に目をやれば人もまばら。私は靴を履き替え、帰路に就こうとした時でした…
『お、みっし〜発見!!お〜い、みっし〜!!』
校庭に聞き覚えのある声が響きました。
見れば子供のように私の元へ駆けてくる男性…
私が秘めた想いを寄せている男性…
私こと天野美汐は、はやる胸を押さえ、冷静に…
『何か御用ですか…相沢さん?』
天野美汐presents
【相沢祐一の傾向と対策】
【ほんのちょっぴり改訂版】
書いた素っ頓狂:B&B
『む、対応が冷たいな…みっし〜』
拗ねたように相沢さんが言いました。
『相沢さん…私にはちゃんと天野美汐という名前がございます…』
まったく相沢さんにも困りましたね…この様なところでしかも大声で呼ぶなんて…
…でもちょっと嬉しいのですよ?……相沢さんに付けて戴いた物なんですから…
でもそのネーミングセンスは戴けませんね…
まぁ、ピロの件もありますから諦めています。
『それで…何か御用ですか?』
人を大声で呼んでおいて何もなかったでは済まされませんよ?
それ以前に恥ずかしく…ないのでしょうね、きっと…
相沢さんはそういう人でしたね…
『いや、ただ呼んだだ…ってちょっと待て!冗談だってば!!』
私は踵を返すと校門に向かいました。…全く!
相沢さんは人をからかうのが大好きな人でしたね…失念でした。
『悪かった!この通りだ!だから待ってくれ天野!!』
しかたありません…ここは折れて差し上げましょう…
『私はそう言う冗談は好きではありません…』
出来るだけ不機嫌そうな声を出します。
ここで甘やかすと相沢さんはすぐ調子に乗りますから…
『分かった、気を付けるよ…すまない』
申し訳なさそうに謝る相沢さん。しょぼ〜ん、といった感じです。
そうなんです、この人は自分に非があると素直に謝ってくれるんです。
相沢さんの魅力の一つなんですよね…
『分かって下さればいいんです…それで…改めてお聞きします、何か御用ですか?』
普通の声に戻って尋ねます。あまり責め立てるのも可哀想ですからね…
『むぅ、なんだか天野に手玉に取られている気がするぞ…』
『何か、おっしゃいましたか?』
失礼な…私が殿方を手玉に取っているなんて、そんな酷なことはないでしょう…
あ、でも…相沢さんを手玉に取る……ちょっといいかもしれませんね…
『いや、何でもないぞ!うん!』
ふふっ、まぁ、不問に付すとしましょう…。
『まぁいいでしょう…』
『うぐぅ』
あゆさんの真似ですか…相沢さんがやっても可愛くありません。
『さてそろそろ本題に入りましょうか…あ・い・ざ・わ・さん?』
後半の"あいざわさん"を強めに発音します。いい加減にしてくださいね、という視線も加えておきます。これでばっちりです。
『分かった分かった、実はな…これだ!』
両手を挙げ降参の意思表示をして相沢さんが私に見せてくれた物は…
『カラオケ…ですか?』
駅前のカラオケBOXの無料券でした。確かあの店は曲数が豊富なのが売りでしたね…
え、なんでそんなに詳しいのか、ですか?…真琴に散々連れて行かれましたから…
あの子は"帰って来た真琴!お帰りなさいパーティー"の時に相沢さんに連れて行ってもらって以来、カラオケがお気に入りの様でしたから…
この間なんか2人で6時間ですよ?2人しかいないのにですよ?あの時ばかりは喉を痛めてしまいました。
そのせいで声が出ずに周囲から『また天野が怒ってる』と
勘違いされてしまいました。そんな酷なことはないでしょう…
え?歌わなければ良いのにですって?あの子の悲しむ顔を私に見ろと言うのですか?
人間になって帰ってきたあの子の『美汐、一緒に歌って!』とマイクを嬉しそうに渡してくれるあの子の願いを断れ、と?…あなたはそんな事が出来ますか?
もし出来るのと言うのなら、あなたは…
鬼です!
悪魔です!
人として不出来です!
人類の敵です!
そんな事言う人嫌いです!!
…こほん、多少毛色の違う物が混ざってしまいました…
しかしおかげで歌のレパートリーが増えてました。
演歌からアニメソングまで何でも来いです。
…あ、そう言えば相沢さんのお話に戻らないと…えっとカラオケの無料券でしたね…
む、何ですか、相沢さん?その呆れ顔は…
『やっと終わったか…いや、よく喋るなぁと思って…』
『はい?』
相沢さんのおっしゃる意味が分からないのですが…?
いえ、ちょっと待ってください…今、"いや、よく喋るなぁ"とおっしゃいましたよね?
相沢さんの呆れ顔。
先程の言葉。
この二点から推測される答えは……
!?…まさかっ!!そんなはずはありません!…で、でもそうとしか…
ここは事実関係を相沢さんに確認しましょう…酷なことではありますが…
『あ、あの相沢…さん?も、もしかして…』
うぅ、声が震えてます…あぁっ!何ですか、相沢さん!その満面の笑みは!?
『おう!!ばっちり声に出てたぞ?』(親指を立てて)
ショック!!そ、そんなバカな…
うぅ、相沢さん…そんなに嬉しそうな顔しないで下さい…
『ちなみにどこからかと言うと“なんでそんなに〜”って辺りからだ!』
さらにショック!!
誰か嘘だといって下さい!!
相沢さんが感染したというのですか!?
あの相沢さんの不治の病『自動情報公開』が感染したというのですか?
あの不幸な病気が感染したというのですか!?
そんな酷なことはないでしょう!?
って…あ、あの相沢さん?…如何なされたのですか?そんなにうつむいて…
あ、肩まで震わせて!…笑っているのですね?私の愚かさを笑っているのですね?
あなたという人はっ!まったくもって人として不出来です!!
『お…』
え?何か言いましたか?相沢さん!!私は怒っているんですよ?
『お前…』
『なんですかっ!?』
怒りあらわに私は聞き返しました。
相沢さんがガバッと顔を上げました。…ってなんで涙を溜めてらっしゃるんですか?
『お前の方が…
よっぽど不出来じゃぁぁぁぁぁっ!!』
そう言うと相沢さんは校門へ走って行きました…
『え?…ちょ、ちょっと相沢さん!?』
な、なんで泣きながら走っていくのですか?
何があったんですかっ!?話して下さい!
相沢さんがお悩みなら、不肖、天野美汐及ばずながらお手伝い致しますからっ!!
『天野のアホォォォォォォォォ!!』
相沢さんの声が遠くから聞こえてきます。
…行ってしまいました…なにがあったのでしょう?
『美汐ちゃん…極悪人だよ…』
『ひゃっ!み、水瀬先輩っ!!』
後ろに相沢さんの従妹である水瀬名雪先輩がいらっしゃいました。
しかし極悪人とは一体何のことでしょうか?
『祐一が可哀想だよ…』
え?どういう事でしょうか?
『まだ分かってないの?』
水瀬先輩の声が怒気をはらんできました。怖いです。
『祐一はね…
あぁ見えてもすっごく繊細なんだよ!?』
うぅ、水瀬先輩が怒ってます…こんな水瀬先輩、初めて見ました…
しかし原因究明のために聞いてみることにしましょう。
虎穴に入らずんば虎児を得ず、です!
『あの水瀬先輩…何故で私が極悪人扱いされて、相沢さんが泣いていたのでしょうか?』
しばしの沈黙…
水瀬先輩が呆れた、と言った感じで口を開きました…
『美汐ちゃん、声に出してたよ?』
『はい?』
コエニダシテタ?
『“さらにショック”って所から声に出してたんだよ!』
そ、そんな…
『祐一は病気でもなければ…病原菌でもないんだよ!?』
うぐぅ…
『…さ、帰って祐一を慰めてあげよっと♪』 (ニヤソ)
ソンナコトイウヒトキライデス…
『ゆういち〜待ってよ〜♪♪』
水瀬先輩が嬉々として帰っていきます……白煙を上げて…
…はい…皆さん…準備は……クスン、よろしいですか?
すり〜
つぅ〜
わ〜ん
はい!
そんな酷なことはないでしょう!!
今回の教訓:口は災いの門。
試験に出ますから……要注意………ですよ?…くすん……
美汐ルートBADEND♪
おまけ
『ぐすぐす…なゆき〜』
私は帰ってから部屋で泣いていた祐一を…
『よしよし♪』
抱きしめて慰めてあげた。そうそう!泣き顔の祐一って可愛いんだよ〜♪
滅多に見れないから、とってもらっき〜だよ〜♪
あんまり可愛いから襲いそうになったのは内緒だよ?
そんなこんなで2人は一気に急接近。そして…
『名雪、俺と付き合ってくれ!!もう俺は名雪しか見えないんだ!! 』
『了承♪♪♪』(0.05秒)
めでたく付き合う事となりました♪
名雪ルートHAPPYEND♪
おまけ其の2
相沢さんはあれから1週間、口も聞いてくれませんでした…
その上、水瀬先輩とお付き合いする事になったそうです………
教訓其の2:泣きっ顔に蜂。
これも要チェックです………
おまけ其の3
あう、保育園のアルバイトが終わってから公園で肉まん食べてたはずなのに…
真琴は何でカラオケ屋にいるの?
『真琴!!人が歌っているのにいつまで肉まんなんか食べているのですか!?』
あう〜、みしおがこわいよ〜!!
『俺の歌を聴けぇぇぇぇ!!』
『あうぅぅぅぅぅぅぅぅ!!』
ちゃんちゃん♪
あとがき、むしろ言い訳。
いかがでしたでしょうか?【天野美汐Presents相沢祐一の傾向と対策】。
タイトルとは噛み合っていないのは、ご愛敬♪(笑)
元はほのラヴの筈がこんな有様…
いったいなにがあったんでしょうか?俺の中で………。
もっと表現がうまくなりたいです。
不躾にもShadow Moon様に送り付けてしまいました。
こんな駄作送り付ける前に…
リクエストUPしろや、ドララァッ!!
と怒られても仕方ないですね。はい。
Shadow Moon様、もらってやってください。B&Bでした。
Shadow Moonより
B&B様、SSたいへんありがとうございました。
美汐と祐一のやり取りが、とても楽しそうですね。
読んでいて、確かに元がほのラブとは思えないですね(失礼)。
バ○ラのように歌う美汐ちゃんが笑えました。 ラストがちょっと、かわいそうでしたが(汗)。
これからも、よろしくお願いしますね。
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