〜五月雨は永遠に〜






五月の半ば、早朝からやっているテレビによると今日は十二星座の中で一番運のいい星座らしかった。
まぁ、占いとはすべからく全員に当てはまるわけではなく、もしそうだとしたら日本総人口十二分の一が人生のどん底な訳でだから同じようにいくら日本一いい日だとしても北川潤は信じていなかった。

朝食を終え、コーヒーブレイクの時間に入っている北川家を前に占い師は今週のラッキーカラーを効果音とともに発表している。
それを遮るテレビの砂嵐のようなノイズ。小さな庭に通じる窓を打ち付ける小さな雫。

誰がどういおうと雨だった。テレビの中のカリスマ――とテレビでは宣伝している――占い師がいくら『今日は最高ですわよぉ』と言っても雨だ。
覆らない。占いなんてそんなものだ。大抵は自己満足の域を出ない。だから信じるも信じないも自由だと思う。

「じゅ〜ん…そろそろ時間じゃないのぉ?」

「あぁ分かってるって」

水の流れる音を背景に間延びした母の声が北川を促す。
台所では母が早くも朝食の後片付けをしており、その背中を眺める形で父はテーブルを占拠し新聞を広げている。
新聞にはまったく興味がないのか、リビングのソファには大学生の兄がおり、北川よりもくつろいでテレビに見入っていた。


いつのまにか占い師はブラウンから消え、うら若い女性天気予報子が天気図を背景に『今日一日雨が降りしきるちょっと憂鬱な日になるでしょう』など言っている。雰囲気ぶち壊しだ。もう少し占い師の発言に気を使ってもいいと思う。まぁ、生放送だから仕方ない。北川はよくも分からない理由をつけて苦笑した。

「さてっと。そろそろオレは行くかな」

北川は立ち上がり背伸びをした。眠気は朝食と洗面とテレビの間にすっかり取れている。この行為はちょっした癖だ。
腕を下ろしソファの上に放っておいたカバンを取り上げると家族への挨拶もそこそこに玄関に通じる扉を開けようとして、


「ちょーっとまて潤」


かなり気さくな声が北川を止めた。兄か父か。北川は一瞬迷った。それぐらい二人の声は似ているのだ。
二人が言うには遺伝的傑作だという。つく嘘も同じだと納得してしまう。だが今日の場合、迷う必要はなかった。二人が北川を呼んでいたからだ。
父親優先と言うことなのか、兄は視線をあっさりとテレビに戻した。

だが父もまったく新聞から目を離さず、

「黒い傘は使わんでくれよ。俺の勝負傘だからな」

「勝負傘って…なんだよそりゃ」

「なにおぅ? あの傘でなぁ俺は母さんを落としたんだぞ。つまりまぁえんじぇるみたいなもんだ。凄いだろーが」

新聞から目を離さないで父。
何が凄いのかよく分からない。だが父はそれだけ言いたかったようで、すでに興味は新聞に移っていた。

「それで、兄貴は?」

「緑はダメだぞ。ふふふ…俺の勝負傘だからな」

時々実は自分が父親ではないのかと思うときがある。
ここまで似た父と息子もない。勝負傘ってなんだ。えんじぇるらしいが傘のおかげで生まれて来たといわれてもそれはただのトラウマにしかならないような気がする。でもいつものことなので北川は何も考えず適当に返事をしてリビングを颯爽と抜け出した。

二人分の玄関は思った以上に狭い。

四苦八苦しながら靴を履く。横付けされた靴箱の上には傘が数本置かれていた。几帳面な母親に感謝しつつ黒でも緑でもない透明なビニール傘を手に取る。

「お前も勝負傘か? うんうん、父はうれしいぞ」

「やっぱさ、雨と言ったら相合い傘ってなわけ。それなのに気合いいれてない傘じゃどうにもなんないからねー」

「あら、相合い傘? ふふ、あの時を思い出すわね、あ・な・た」

「こ、こらかあさん」

「おーっなになに。父さんと母さんの馴れ初め? こりゃ聞かないといけないな。なー潤? ってあれ、おーい…」


盛り上がる馴れ初め話を背中に北川は玄関の扉を開けた。雨の匂いがそこかしこで感じられ湿った冷気が北川を包む。これでは暖かかった昨日も台無しだ。ただ、家に埋めてある植物だけが緑を増し活気づいている。

空は鉛色の雲に覆われ辺り一面少し暗い。北川の鮮やかな金髪も色あせ、アンテナのような癖のある髪は少し萎びていた。
ボーっと雨に染まった景色を見つめ、そんな時間なんてないことに気づく。急いで傘を広げると雨の中に飛び出した。
傘を打つ雨は機関銃のように獰猛で、透明なビニールなんてすぐに穴が開きそうだった。走ろうにも水溜り地雷はアスファルト中に散らばり北川の邪魔をする。
時計をつける習慣がないので最後に見たテレビ右上の時刻を必死に思い出す。大丈夫かもしれない。もっとも自分の瞬間記憶能力があてになるのか分からないけれど。

学校をはさんで商店街の反対に位置するこの辺りは住宅街で、同じような家々が等間隔に並んでいた。
引っ越して始めは迷路のような感覚に面食らったものだが今では鼻歌交じりで何処へでも行くことができる。その中でも学校への道のりはねむけ眼で朝食を食べるよりはるかに簡単だった。

傘から垂れる雫がカバンにかからないように注意しながら少しでこぼこのアスファルトを北川はひたすら歩く。

しばらくするうちにちらほら同じ学校の制服を着た生徒が北川の前方に見え始めた。
まだ歩いているところを見るとどうやら間に合うらしい。

それにしても――北川は心の中で愚痴をこぼした。

大雨だと視界も悪い。前を行くほとんどの生徒が雨でかすれ同じに見える。
これじゃ見つけられないな、と思った矢先、

一人の後姿に目が止まった。

「よっ美坂。おはよう」

小走りでその後姿に追いつき北川は声をかけた。後姿は歩きながら反転し、そしていつもの表情を北川に向けた。

「おはよう、北川君」

そこに微妙な変化があることに気づいたのは、多分、一瞬だった。
何かが変だ。元気がない。それも少し違う気がする。分からない。見えないガラスの向こう側を触ろうとするもどかしさ。

二年から三年へ移行する際、クラス替えがないのがこの学校の伝統である。だから一年からあわせると北川と香里の付き合いはザッと三年間ということなった。
同じクラスで親友の相沢祐一は『香里の奴、時々よく分からないよな』と言うが冗談じゃなかった。北川には少なくとも祐一よりは香里のことを分かる自信がある。

「…どうしたの?」

「いや、なんか今日は美坂、雰囲気違うなって思って」

「そんなことないわよ」

…多分だけれど。

でもやはりいつもの口調に力がなかった。
雨のせいか、と思った北川だがそんなことなら今日じゃなくてもいいはずだ。
雨が激しさを増す中、傘と雨のノイズに隠れて香里の表情はよく分からない。

ったく、三年間見てきて分からないんじゃ笑っちまうよな。

好きな人の些細な変化をもいち早く見抜いてしまう主人公。
それはブラウン管の中の世界。理想の在り方。でも、少なくとも北川には――――

「ま、んじゃ一緒に学校に行こうぜ」

「分かってるわよ。同じクラスでしょ」

「はは、それもそうだな」

見抜くこともできなければ聞くこともできない。

ブラウン管の主人公にはなれない。

三年の間に告白しようと思ってたんだけどな。北川は苦笑しながら正月元旦に奮発したさい銭でもって神に頼みこんだ願いを思い出した。あの時は一人だった。でもせめて、来年は、一緒に…。まだ勇気はないけれど。


臆病な愛の主人公もいたもんだ。


好きな人の隣でいつもの笑みを浮かべながら、北川はそんなことを思っていた。





それは五月雨の日。
五月の半ば。傘の華が開くとき。

全国的には。

とりあえず、大吉の、そんな日の朝だった。












§§















朝から大雨だと気も滅入る。

どうにか間に合った学校の中で四時間目の授業を右から左へ聞き流しながら北川は黒板に向きを合わせ時計を眺めていた。
四時間目の英語の時間は最悪だ。空腹時に異国の言葉など呪文よろしくかけられたら寝てしまわないほうがおかしい。現に斜め前に座っている名雪は広げたノートを枕代わりに夢の世界へ旅立っていた。
その隣では祐一が面白そうに名雪の頬を突っついている。微笑ましいと思う。授業中にあるまじき光景だけれど。

それを意に介さず黙々とノートを取っているのは北川の隣に座る美坂香里。

変わらないクラス、担任、そして席。
おなじ香里の横顔を幾度となく見てきたが一度も眠気まなこを見せないのはさすがだった。
だが時にそれは北川を怖がらせた。休憩なしに取り組む姿勢はどこか無理をしていると思わないでもない。そしてそれが勘違いではないことをここ最近北川は何となく感じていた。もちろん香里は口に出さないが。

凛とした孤高の華。


隣にいるのに、距離は果てしなく遠い。


トントン。
急に頭を小突かれた。

「げ…あ、相沢」

前を見るといつの間にかシャーペンを手のひらで転がしながら祐一がニヤニヤしていた。

「見つめすぎると身体によくないぞ」

「ば、ばっきゃろう。だ、誰も…オレは……別に」

「ははは、まぁそういうことにしておいてやろう」

あっさり身体の向きを戻す祐一。そして再び名雪にかまいだした。

不覚だった。自分の想いを祐一も知っているとしても今の顔はまずかったと思う。
二人のやり取りに気づいた香里が北川と祐一に視線を走らせたがすぐにノートに視線を落とした。

なにが大吉だ。北川はため息を一つつくと窓の外に視線を移した。

外は相変わらずの鉛色で、彼方まで同じ色に覆われた景色はさすがに憂鬱だった。
雪から開放された中庭が水に侵略されている。土色のにわか湖は魚さえ住めそうな気がした。
窓に張り付いた雫をガラス越しに指で押さえその軌跡を追う。重力が作り出す自然の流れ。大して面白くなかったが他にする事がないので半ば仕方なく、半ばなんとなく雫を指差しては不規則な動きでガラスを辿っていった。


コンコンコン。


と、ちょうど雫の末路を十と五見納めたところで遠慮がちなノックが教室に響いた。
決まっている。珍事だ。祐一と北川、そして香里を含め起きていた者と寝ていた者の半分が顔を上げ扉を注視した。

「あ、はい?」

英語とはかけ離れた純日本語で教師が返事をする。
すると扉がゆっくりと開き、ヒョコッと顔を出したのは大半の予想を裏切りクラス担任の石橋だった。
抜けたため息とともにほとんどの生徒が顔をそらした。有名人でも出てくればそれなりに盛り上がったのに。

教師と石橋がなにやら話し終わると教師は再び教壇に立ち、

「美坂さん? あぁ…電話がかかってるそうです。授業はいいですから行ってきてください」

興味がうせていた生徒共が再び興味を示す。
美坂? なんだなんだ。無言のヒソヒソ話がクラスを満たした。

「………」

当の香里は無言で席を立つとそのまま教室から出て行った。
北川と祐一は思わず顔を見合わせ、祐一は肩をすくめただけだった。

北川は言うべきか迷い、結局そのまま授業は滞りなく始まり話す機会を失った。


「美坂…」


教室の扉を見続けながら北川は呟いた。



親友は信じるだろうか。



名前を呼ばれたときの好きな人の表情は。

五月雨のように憂鬱で。

悲しく。
儚く。



泣きそうな笑みを浮かべていた。












§§















「あーおわった終わったぁ!」

歓喜の瞬間。誰かが声を上げる。

チャイムが鳴れば授業も終わり。机に伏した亡者どもが教師が帰るやいなや蘇生を完了し立ち上がる。
この時ばかりは誰もが五分前行動で、机の上にはろくに広げなかったノートの変わりに色とりどりの弁当箱が大きな顔をして鎮座した。
それ以外の生徒は全神経を集中させてのロケットスタート。コンマ一秒でも遅れれば食パンとコーヒー牛乳だ。誰もが経験から知り得ていた。
机が跳ね椅子が飛ぶ。扉を開け誰もが廊下の本流と合流した。だがそれと同時にあがる後悔の叫び。クラス内の法律で『みだりに教室を乱す者は清掃の心を忘れぬように』と言うものがある。
簡単に言えば列を乱したらさっさと直せ。これを無視しようなら明日から弁当組みがスタートを邪魔し一週間食パンだけになる。
一週間よりは一日と言う事で今日も数名の生徒が涙ながらに机を綺麗に直していた。

「香里のやつ遅いな」

「うにゅ…けろぴー」

「そうだな」

祐一は後ろ向きに北川の机に頬杖をつき、北川は窓に体を預け「ちくしょうぅ」と泣いて教室を綺麗にしている斉藤を監視していた。
名雪はまだ片足を夢の国に突っ込んでいるようでそれほど状況を把握していない。起こしてもよかったのだが、起こしても意味がない。美坂チームは名前のごとく香里がいなければ成り立たない。だから迂闊に学食にも行けなかった。

「先に学食に行って…すれ違いで帰ってきても困るよな」

「みどりが、ふさふさ…」

「美坂のやつ怒るぞ。『そう、あたしはほったらかしなのね』なーんてな」

「北川、似てねぇ」

「だまらっしゃい」

いつもの会話にも元気がない。
これもまた香里がいないのが原因なのだろう。エンドレスと分かっているから祐一も噛み付かない。



結局、それから十分二十分と待っても香里は返ってこなかった。
ほかのクラスメイトは昼食と会話に夢中でその異常事態に気づいていない。現在進行形で寝行中の名雪を二人でからかいそれなりに時間は過ぎたが、一通りやり終わるとさすがに香里のことが心配になってくる。

「北川、探しに行ったほうがいいんじゃないか?」

「探したいのは山々だけどな…なんでいなくなったか理由が分かってるし、オレ達の勘違いかもしれないだろ」

「あれ? けろぴーどこ?」

隣の香里の机。そこには弁当の代わりにノートとシャーペンが無造作に置かれていた。
横にはちゃんと香里の鞄もかけられている。少なくとも帰ってくるはずだ。

「ふ〜ん…まぁお前がそう決めたならそれでいいけどな」

「な、なんだよ」

「いや、香里を信用してるんだな、と思ってな」

「…そんな大それたことじゃないってーの。好きだから迂闊に飛べこめない…とか。どうだ、いまの?」

「かっこ悪いと思うよ」

いつの間にか覚醒した名雪が半眼でこちらを見ていた。

「み、水瀬!? お前いつから…」

「ちょっと前。けろぴーが消えた辺り」

前からいないが。

北川はあえてつっこまず自分の失言に頭を抱えただただ後悔し続けた。
と、唐突に立ち上がると取り繕い満面の笑みを浮かべ、

「そろそろオレ達も飯食わないとまずいな」

「一人で食べに行くの?」

「いや、しょうがないからパンでも買ってくる。食パンだけど。相沢と水瀬は美坂を待っててくれ」

「『好きだから迂闊に飛べこめないんだ』…きゃっ。今度使っていいか」

「はぁ…勝手にしてくれ。それで、何枚にする?」

「あるだけ。食パンは俺の大好物だからな」

「北川君に任せるよ」

アバウトな二人だった。


「んじゃ行ってくるわ。美坂が帰ってきてたら文句の一つでも言ってやる」


自分に言い聞かせるように北川は軽口をたたいた。

外は相変わらず雨で、教室は電気をつけてもなお心持ち暗い。
それがまるで自分の心のようで。

北川は逃げるように教室から出て行った。




そして美坂香里は結局帰ってこなかった。




その異常に香里の欠けた美坂チーム以外の人間が気づいたのは六時間目も終わりホームルームが始まるときだった。
教室に入ってきた石橋は滑るように生徒達に視線を這わせ、穴の開いた席でつまずいた。
「美坂はおらんのかー?」石橋は教室に問いかけるがいるわけないので代わりにほかの生徒が騒ぎ始めた。
やはり話題の中心はあの四時間目で、しかし石橋は「仕方ないな」と呟くだけだった。

あーそれじゃ始めるぞー。文句があるかと言わんばかりに石橋は声を上げた。

それからは右から左に流すだけの作業だった。辛い。授業よりも辛かった。
祐一や名雪も同じなのだろう。みるからに身が入っていない。さっさと終われといわんばかりだ。

「おし、じゃ日直、号令」

適当に立ち上がり適当に挨拶をする。これで今日の学業が終わった。
先ほどのざわめきはどこへやら。生徒は何食わぬ顔で鞄を背負い次々と教室から出て行く。ねーねー今日どこ行く? ――そんな帰りがけの会話が北川にはちょっと恨めしかった。
だがそれもしかたない。授業中呼ばれるということは大事である。大半の生徒はそのまま急いで帰ったのだろうぐらいにしか思っていなかった。


「香里…」

四時間目のノートが広がっている放課後の香里の机。
北川も同じように見つめていたが、それがまるで死者に送る花瓶のようで、北川は咄嗟に頭を振った。

「それで、どうするんだ?」

祐一がもっともな質問をした。
石橋に詳しく話を聞こうとしたのだが当の本人は鼻歌交じりでさっさと職員室に帰ってしまっていた。

「私は香里の家に鞄を届けに行くよ。鞄ないと香里も困ると思うから…」

「名雪、部活は大丈夫なのか?」

窓の外を見ながら祐一は首をかしげた。
相変わらずの大雨だが、それでも陸上部は体育館で練習があるはずだ。

「うん、今日もともと部活お休みだし」

どうやら杞憂だったようだ。祐一は「そうか」と呟き、

「じゃ、俺と北川でお前のお姫様でも探しに行くか」

「ぶっ――――!! な、なんだよそりゃ」

「それじゃ私は行くよ〜」

「あぁ。俺達はとりあえず最初に学校を探してみる。もし香里が家に帰ってるようだったら秋子さんに伝えておいてくれ」

「おーい。お二人さん?」

「分かったよ。だいじょうぶ。…香里はちゃんと家に帰ってるよね」

北川の困惑はきっぱりと無視され名雪はそそくさと準備を済ませそのまま教室を出て行ってしまった。
途端に教室が静かになる。なぜならもう教室には二人しか残っていないからだ。
窓の外には傘の華がマスゲームみたく広がっている。色とりどりの傘を携え生徒達はいち早く校門を出ようと必死になっていた。

その様子を見ていると学校にはもう自分と祐一しかいないのではないかと思ってしまう。

「おし、行くぞ北川」

北川の反応は鈍かった。

「相沢…オレ、美坂のやつ学校にゃいないような気がするんだよ」

「? まぁその可能性もないわけじゃないが…外ってなるとかなり面倒だぞ?」

「面倒、だよな」

でもそれでも…。

「二手に分かれようぜ。相沢は中。オレは外ってな。これなら効率がいいだろ」

実際効率は悪い。祐一も分かっているだろうが何も言い返してこなかった。
妙な笑いを浮かべ、北川の肩をポンポンと叩く。

「香里にいいところ見せてやれよ」

「だ、だからなんでそーなるんだよ」

「さぁな」と祐一はそ知らぬ顔をして鞄を手に持った。北川も同じように傘と鞄を手に取り二人は教室を出た。
誰かいてもいいはずなのに、廊下には誰もいない。人一人いない廊下はどこか果てしなく長くみえる。足取りが重いことも影響していた。長い時間――と言うわけでもないだろうが――かけて二人は学校の玄関までたどり着いた。
一階に降りればそれなりに生徒の姿が目に入った。ミーティングがあるのかどこかの部活人間が廊下をせわしなく走っている。

ここでとりあえずお別れだ。

北川は靴を履きかえ祐一と対峙した。


「もし美坂がいたら家に電話してくれ。留守電になってるから言ってくれりゃいいようになってる」

「ま、香里がいたらな。多分いないと思うけど」

「お、おいおい相沢…」

「北川」

祐一の声は真剣な色を帯びていた。思わず北川も身構える。
こいつがこんなにまじめなのは初めてだな、と北川は心の片隅で場違いな感想を持った。

「香里のやつ、困ってんだよきっとな。アイツが授業サボるなんて考えつかんし。だから」

だから。
この役目は、北川潤にしかできないから。

「見つけたら、もう、離すな。本当に好きならな」

じゃねぇと――――祐一はいつもの笑みを浮かべた。

「俺がさらっていくからな」

逆に北川は半眼になり、

「お前にはもう水瀬がいるだろ。二股なんて最低だぞ」

「二股は男の夢だ」

「それ、ぜってー違う」

「当たり前だ」

一通り笑い終えると祐一は軽く手を上げ廊下の奥へと消えて行った。おそらく中庭に行く気だろう。
当の北川は形としては祐一に背を向ける格好で外に出た。すぐさま雨の匂いが鼻についた。朝よりひどい気がする。
ほかの生徒に混じり校門まで歩きながら、まず商店街に行ってみることにした。

いるなら百家屋が一番可能性がある。

横に伸びるアスファルトを左に曲がる。


そこにあるのは分厚い雲。

五月雨。



まだ、止む気配は見えなかった。













§§














「くそっいったい美坂のやつどこに行ったんだよ!!」

鞄を放り投げ、北川は自宅のソファに倒れこんだ。

外をくまなく探して一時間強、何も成果はなかった。
初めに訪れた百花屋では香里を探すのに店に入ったのはいいが、いないことを確認して店を出ようとしたところに店員の冷たい視線にぶつかってしまった。かまっていられないのでコーヒーを頼み一分で飲み干し外に出た。

次は駅だ。

駅前のベンチにもいなかったので、ちょっと照れくささを残しながら、駅でアナウンスを頼んだ。
『美坂香里様、美坂香里様、至急お出でくださいますよう――――』
同姓同名が三人も来た。不当な不幸を感じずにはいられなかったが、平謝りでそこを抜け出した。

それから噴水のある公園やその向こうまで足を伸ばしたが香里の姿はなかった。
雨で人通りが少ないので見落としはまずない。あとは路を歩いている可能性だがそれこそ運にしか頼れそうになかった。

ふと朝の占い師の顔が脳裏に浮かんだ。

――運がいいですわよぉ〜

即振り払った。
やっぱりあれは信用できない。


「うーちっくしょ〜…」


そういうわけで北川は一旦自宅に戻っていた。
疲れもあるがそれ以上に祐一や名雪から電話がかかるのではないかという期待がある。香里が何もかもおいて家に帰った可能性もまだ十分にあるのだ。


―――トゥルルルル…


ソファに顔を埋めていたところに突然電話が鳴った。
ビンゴだ。北川は大急ぎでドアを開け玄関においてある受話器を手に取った。

「もしもし!?」

『あ、北川君のお宅ですか? えと、水瀬で』

「水瀬か!! オレだよ、北川」

受話器越しの声はいつもどおり、とはいかなかった。

『あ、北川君。……香里の家行ってきたけど、まだ帰ってきてないんだって。香里のお母さんもすごく心配してた』

「相沢は? あいつからなにか連絡あった?」

『うん。祐一もいま家にいるよ。排水溝まで探したんだって。絶対いないって言ってる』

排水溝は嘘だ。
だが訂正している暇はなかった。

『北川君のほうは?』

北川は頭を振った。

「こっちもダメだ。心当たりは全部探したんだけどな…。そうか、家にもいないか」

少しの間沈黙があり、次に名雪が口を開くと、まったく関係ない話だった。

『ねぇ北川君、今日香里の様子がおかしかったのに気づいてた?』

「へ? あ、あぁ、なんとなく、だけどな」

朝のとき感じた違和感。いつの間にか忘れていたけれど。

『香里、ずっと辛そうな顔してた。祐一はそんなことない、って言うんだけど。私には分かるの』

名雪は続ける。

『北川君、香里を助けてあげて…多分、北川君にしかできないよ』

「水瀬も相沢と同じこと言うんだな…でもなんでオレなんだ?」

受話器が「え?」と答えた。

『そ、それはいえないよ。ダメだよ。内緒だよ』

「み、水瀬?」

『そ、それじゃ、私達ももう少し頑張ってみるから。ふぁいとっだよ』

ブツリ、と。

一方的に電話は切れた。北川は受話器を見つめ首を傾げると元に戻した、

「さて、どーすっかな…」

決まっている。予定調和で言ってみただけだ。

――ったくどいつもこいつもオレに期待しやがって。

北川は苦笑した。買い被りにもほどがあると思ったが今は親友の言葉を信じたかった。
十分に休憩を取った。情報も仕入れた。活用、と言うわけにはいかないけれど。

あとは、ぶっ倒れるまで探すだけだ。

靴箱にかけられた濡れたビニール色の傘。

滴り落ちる雫は汗にも似て、休ませてくれと言わんばかり。
だが北川は有無を言わずぶん取り、玄関をあけようと―――――――

「よぉ潤。なんだぁ? 今からお出かけ?」

手を伸ばすより先に玄関が開き、鞄と傘を手に持つ兄が姿を現した。

「ちょっと遅くなるかもしれない。晩飯先食っててもいいから」

「そりゃありがたいが…きーつけろよ。男だから襲われることはないと思うけどな」

こう見えて兄は意外と弟思いだ。
せまっ苦しい玄関でいつも以上に苦戦しながら湿った靴を履くと、兄と立ち位置を入れ替えた。

「あー!! 襲われるっていったらあれだ、潤」

開けっ放しの玄関を出た矢先兄が思い出したように手を叩いた。

「な、どうした兄貴?」

「いやな、今日大学行くのに近道しよーとして墓地を通ったんだわ。そしたらお前と同じ学校の女生徒がいるわけ。ありゃびっくりしたね。もっとびっくりしたのは傘も持ってなかったことだな。ショックだったのは俺が声かけても無視されたことだ。今も同じ道通ったんだけどまだいたぞ。昼からずーっとだから何かしらのチャレンジかと思ってもう声かけなかった。もう暗いし襲われなきゃいいけど…それだけ」


何かが繋がった。


「お、おい兄貴!? 今なんて、昼からずっと!!?」

兄の肩をマグニチュード10ほどで揺すりながら北川は訊いた。
兄は頷いているのか、振動なのかわからないが首を縦に振って肯定した。

これしかない、と思った。

なぜ墓地にいるのか。
なぜ墓地が大学までの近道なのか。


気にはならなかった。


「場所は!? どこの墓地!!?」

「えーっと…なんだったっけ」

「おい!?」

「兄様においってなぁ…。あー思い出した!! ものみの丘の中腹!! バス停が近くにあ―――そろそろ揺るのはやめろー!!」

パッと手を離し北川はまじめな顔で、

「さんきゅ兄貴っオレ行ってくる」

「潤、ちょいと待て」

兄は傘を投げてよこした。

緑色。
勝負傘。


「兄貴?」

「こんな日に自ら望んで雨に打たれる奴ってどんなやつか知ってっか?」

兄はすぐに答えを出した。

「自虐的な奴さ。どーしようもなく自分を傷つけたい、な。…大事な人なんだろ。心のケアもしてやれよ」

「んなっなんでわかるんだよっ!?」

顔に出でているのだろうか。
だったらかなりだらしない表情をしているのだろう。

「さぁな。俺の傘だかんな。心して使えよ」

ビニールと緑を見比べて、

「分かった」

ビニール傘を兄に投げ返した。
兄が満面の笑みで傘を受け取る。


占い師より信用できる気がした。


北川は翻り緑の華を咲かせ五月雨に突っ込んだ。雨で後姿が霞む。
その後姿を、受け取った傘で肩をポンポンと叩きながら兄は見送り、扉を閉めるために玄関先に出た。

兄の苦笑が雨に混じった。


「あんにゃろ、いつの間にか男の顔になりやがって。あーやだやだ。弟が一人前になるのを見るのは楽しくないな」





そのじつ表情は穏やかで、兄は笑みを浮かべている。













§§















どれほどの間、こうしているだろう。


頬を流れる雫が雨なのか、それとも涙なのか分からない。
手先の感覚はなく、下手をすれば意識すら逝きそうだった。ウェーブを描く髪が頬にべっとりとくっつき鬱陶しかったのも遥か昔。
衣服はそれ以上に身体に張り付きラインをハッキリ描き出していた。艶かしいがこの辺りに人気はない。
いや、たった一人だけ声をかけられたが無視した。あの人の声に似ていると気づいたが視線を上げるとその人物もここから消え去っていた。

一人。

そう、一人。


周りを木々に囲まれ、墓石が立ち並ぶ。

深々と。
深々と。
雨だけが静謐を守り、静寂を破る。


そこに、一人。


苦痛ではない。雨に打たれるのも、今の自分にふさわしいと思った。
自分の傷つけ方を知らなくて、でも誰も巻き込みたくなくて、



――ゆえに一人。



本当にどれほどの時間佇んでいるのだろう。
始まりだけは記憶にあるが、終わりは想像もつかない。


動こうとして、足が命令を聞かなかった。

泣こうとして、涙は雨に洗い流された。


と、不意に雨宿りをしていた小鳥がさえずり雨雲に飛んだ。
ジャリッ。地面を踏みしめる音が続き、傘が雨をはじく打音が墓場にこだました。

そして、


「…美坂。やっと見つけたぞ」


あの人の声が、背中を撫でた。
息が弾んでいるのは、走ってきたからだろう。なんとなく、そう思った。

戦慄く唇で香里は名前を呼ぶ。

「北川君…」

動く気配はない。こちらも動けない。

「なんて所にいるんだよ。相沢も、水瀬も、みんな心配してるぞ」

「そう…。それだけ、言うためにここに来たの?」

北川は「ご挨拶だなぁ」と苦笑した。
それから二、三回深呼吸する気配が背後でした。

「ここは?」

「………」

名前の彫られた墓石が立ち並ぶ中、この四角いスペースには何もない。剥き出しの地面が水溜りに埋まっていた。
そこに、美坂香里は立っている。

「ここは、あたしの妹のお墓――――になる予定だった場所」

「妹って…そりゃ初耳だな」

突き出る笑いの衝動を堪え切れなかった。
自虐的に香里は笑った。

「誰にも、名雪にも教えてないわ。だって、あたしに妹なんていなかったんだから」

北川は顔をしかめた。

「は? どういうことだよそりゃ。だっていま美坂…」

「死ぬはずだったのよ」

その一言で、堰が壊れた気がした。

「妹は死ななきゃいけなかった!! だからあたしは妹の存在を消した。だってそうでしょ、あたしは無力で、何もできなくて、辛いことばっかりあたしが抱えないといけないのよ!? 無視したわよ、完璧にね。お見舞いにも行ってない。話なんて論外。電話があっても無言で切った。あたしに妹なんていなかったから…なのに!! …妹は生きながらえた。峠も越えたわ。笑っちゃうわよね。医者の宣告なんて当てにならないってその時思ったわ」

北川はやっと授業中呼び出された意味を知った。

だが、それはあまりにも北川には重く、そして香里は再度笑う。

背中が震えていた。

「電話もらったとき、あたしこう思ったの。『なんで、死ななかったのよ』って。信じられる? 実の妹なのに」

「美坂、落ち着け」

「あたしのやってきたことってなんなのよ!? 栞が死ななきゃ意味がないのに…でもあの子はこれからも生き続ける!!」

「美坂」

「あの子はずっとあたしを恨むわ。そしてあたしは恨まれ続ける。ねぇ教えてよ。あたし、どうすればいいの…」

「やめろ」

「なによ、北川君も笑いなさいよ。あたしなんて―――――」

「バカなこと、言ってんじゃねぇよ」

北川は同じ台詞を繰り返した。

黙った背中を見つめ北川はため息をついた。

認められない。
認めてはいけなかった。

なぜなら、

「なぁ美坂」

彼女が好きだから。

「オレ、美坂のこと好きなんだ」

愛しいから。

「な、なに、言ってんのよ」

「別に返事を期待してるわけじゃないぞ。ま、聞けって――オレの知ってる美坂はオレたちのリーダーで、頭がよくて、でもちょっとドジ気味で…そこがまた、その、なんだ、えぇと…可愛くて。つまりまぁベタ惚れってやつだな、うむ」

「だったらどうにかしてみなさいよ。出来ないくせに!! 変なこと、言わないで…」

突き離された気がした。

でもショックは、今のところなかった。
なぜか心が落ち着いていられた。雨中の墓地だから、じゃないと思うけれど。

「…好きなだけじゃダメか? 今の話聞いてもそれは変わらないぞ。美坂は自分が嫌いかもしれないけど、そんな美坂をオレは好きなんだ。自分を傷つけるなよ。少なくとも、美坂は一人じゃないだろ? 好かれるだけの人間が、そんなこと言うもんじゃねぇよ。それに、迷惑じゃなかったら、そばにいる。相沢だって水瀬だって、そう言うと思うぞ」

いったい何を言っているのか。北川は苦笑した。
告白か説教かどちらかにしろ、と兄に怒られそうだった。

自分にあるまじき会話だと思う。

でも、あと、少しだけ…。

「…迷惑、よ。ばか」

「そりゃオレは美坂の代わりは出来ないし望むことだって叶えられない。でもな」

丸い影が香里の頭上に落ちる。

肩と肩が触れ合う距離に人の気配。

五月雨が、止んだ。
涙が零れ落ち始める。


「こうやって助けるぐらいは出来る。こうやって助けるぐらいしか出来ないけど」

滲んだ景色にあの人の姿はないけれど。
冷気を優しい声音が覆った。


「一緒に帰ろう、な?」


諭しているようにも聞こえたし、純粋に懇願にも思えた。
でも実際はそのどちらでもないのだろう。


「ダメ…みんなに迷惑かけたく、ないの。あたし、あたし…」

「オレは一向に構わないぞ。ここまで来ていまさらって感じだしな」

北川は苦笑した。
香里は笑わない。笑えない。

「帰れないの…帰りたくないのよ……」

「だったらオレもずっとここにいる。迷惑でもいるからな。じゃないと、美坂が風邪ひくだろ?」

ギュッと香里の手が北川の肩を掴んだ。

「傍に、いて、くれる? ちゃんと逃げないでいてくれる?」

「逃げないし、逃げ出したら美坂怒るじゃないか。それだけは勘弁してほしいところだな」

「ばか」と小さく呟き、

「あたし、は―――――――――――――!!!!!」

指一本分の距離は零になった。

北川の身体が冷たくなり、暖かさを逃さないように片手でしっかり香里を抱きしめる。
もうかける言葉はない。あと北川にできることは待つことだけだった。

――こりゃ、オレが泣かしたってことになる、のか?

香里の身体に触れるのは始めてだと気づき、慌てる煩悩をよそに理性ではなんとなくそんなことを思っていた。





五月雨が止んだその狭い空間で、美坂香里は泣き続ける。












§§















「それにしても、よくあそこにあたしがいるって分かったわね」

香里が泣き止み落ち着きを取り戻したとき日はすでにどっぷり暮れていた。
慌てても仕方ないので街に繋がる道路を二人は傘一つでゆっくり歩いていた。

「ん? あぁ、兄貴がたまたまここ通ったらしくてね。それがビンゴだったわけ」

「えぇ!? あれあなたのお兄さんだったの!!?」

「ど、どした?」

「……無視しちゃった」

「全然だいじょうぶ。傷つく玉じゃないから」

北川が傘を持ちその腕に香里がすがる格好だったが不意に香里が顔をそらした。
なにやらぶつぶつ呟いている。「これじゃ顔合わせの時…」とかなんとか。

「ねぇ潤、あの時返事はしなくてもいいって言ってたわよね?」

突然香里が問いかけた。

「へぁ? え、あ、じゅん? オレ…だよな。じゃない、違う。えぇと、そんなこと言ったよーないわなかったよーな」

名前で呼んだだけで北川はあたふたする。
そんな姿が面白くて香里はもう少し意地悪をしてみる気になった。

「…返事、聞きたくないの?」

北川は立ち止まりギギギッと機械的動作で香里に振り向いた。

それはさながら、さ迷える子猫のようで香里は苦笑した。
――ここまできてフラれるとか考えてるんじゃないでしょうね、潤?

「き、聞きたい…かなぁ〜なんて。…美坂?」

返事をまだしていないから。
仕方ないから。

そっと頬に口づけをして、香里はささやいた。

「ぜんぶ終わったら…そのときはえっちしましょ」

「ぶっ!? み、みみみみ…」

「好きよ、潤。もう、離さないんだからっ」

腕が折れる勢いで香里は笑顔で抱きしめる。


あのときの勢いはどこへやら…


微苦笑し北川は少し傘を傾けた。

覗く夜は相変わらず雨に覆われている。
街灯に雨が線で映り、それ以外では傘を打つ音でしか雨を感じることが出来なかった。

ちょっと憂鬱で。

でもそれ以上に五月の今日は大吉で。

「…香里」

「ん? な、なぁに?」

初めて愛しい人を名前で呼び、隣にはとびきりの笑顔があって、

「………キス、していいか?」

「ばか、そういうことは言わずにするのよ、まったく」





こんな五月雨もいいかな、なんて北川潤は思うのだった。





















〜〜あとがき〜〜

長いお話を読んでくださりありがとうございます(礼)

このお話、雨の日に不意に思いついたんですが…
あぅ、やっぱりらぶぅは無理です。自分にはまだまだ経験が足りませんでした(汗)
くそーっ修行だ!!(なんのだ(汗))
ほんのちょっとでも読んでよかったと思っていただければ幸いです。

では、秋天でした(礼)


Shadow Moonより

ちょっぴり切ない、北川君と香里ちゃんのお話、ありがとうございました。
栞ちゃんが助かって、それを喜べない自分を許せない香里ちゃんの心情、とても悲しいですね。
祐一君と栞ちゃんが恋人にならなかったら、香里ちゃんはこんな風に苦しむんだなと感心しました。
そして栞ちゃんが助からなければ、きっとこんなものでは済まなかったでしょう。
辛いとき、楽な方に逃げてしまうと取り返しのつかない結果になってしまう…… そんな教訓を感じました。
けれども、そこから助け出してくれた人がいた…… そんな香里ちゃんは幸せ者だと思います。
次回の修行した秋天さんのらぶぅSS、楽しみにしてますね。 

秋天様への感想はこちらまで。


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