「 FIRST LOVE?」




 昼休み。



「たっちゃんたっちゃーん!」

 おれは廊下にたっちゃんの姿を見つけると、だーっと走り出した。

「ん?うわあっ!」

 がばっと飛びつくと、たっちゃんは驚いて声を上げる。と、瞬間ドスッと腹に鈍い痛みが走った。

「っつうー・・・」

 おれは腹をおさえてうずくまってしまう。まさか、肘鉄されるとは・・・・。

「あ、悪い。誰かと思って・・・。大丈夫か、ユウキ?」

 すいっと差し出された手につかまり、おれは立ち上がった。

「それで、何か用?」

と、言われてはっとする。

「そーだ!一緒にバスケしよーぜっ!」



 たっちゃんは同じクラスの友達だ。いつでもマイペースで、普段はあんまり感情が顔に出ないみたいだ。でも、友達に見せる笑顔は最高で、こんなことは本人に言ったら怒られるだろうけど、おれは“可愛い”と思っていた。



「あ、克っちゃん、」

 最近グンと仲良くなれて、幸せなおれなのだが、そんなおれにも悩みがあった。

「おぅ、達也。何、バスケ?オレもいい?」

 それが、この男・克則の存在である。

「あ、ああ、いいよ」

 答えはしたものの、本当はいやだった。だって、たっちゃんと克っちゃん仲が良いから・・・・。

 嫉妬してるんだ、おれは。しかも克っちゃんに。おれは、たっちゃんの一番になりたいんだ。たっちゃんに必要とされたいんだ。

 だって、たっちゃんのこと好きだから。



 結局その昼休みは、あんまり楽しめなかった。





 放課後。

 教室の隅でたっちゃんと克っちゃんが話している。

「え、克っちゃん、今日は一緒に帰れないの?」

「悪い。ちょっと呼び出しくらっちまってさー。ごめん、な?」

「呼び出しなら待ってる。」

「それこそ悪いよ。待ってないで帰ってくれって。」

「・・・ふん、別にいいけど。」

 たっちゃんがすねてる!珍しい・・・。

 おれには、あんな顔見せない。

 二人の間には、割って入れない気がした。おれなんかが入る隙なんか、ないんだ。

 ちょっと、・・・・・かなり悔しかった。





「たーっちゃん!」

 帰りの会が終わってすぐ、おれはたっちゃんに声をかけた。

「何?ユウキ」

 心なしか不機嫌そうな声が返ってきて、おれの胸がちくっと痛んだ。

「あのさ、一緒帰んない?」

 まるでご機嫌とるみたいなおれと、それを普通に従わせているたっちゃん。端から見たら、女王サマと下僕みたいな図だ。

 その女王サマは、こう言った。

「あー・・・、ごめん。悪いけど今日は一人で帰りたいから。」

 目を合わせようとしないたっちゃんは、明らかに克っちゃんのことでいらついている。

 おれはがっくりと肩を落として、ちくちく痛む胸に手を当てた。そうしてつい口の中でこうぼやく。

「なんだよぉ、克っちゃんにしか反応しないなんてずりーや、おれだってー・・・。」

 もちろんたっちゃんの耳には届いていない。振り返りもせず行ってしまった。





  失恋・・・・、みたいな。

  でもでも、あきらめるもんか。

  おれは、せめて二番目に、一番が駄目でも二番目になるんだー!

  見てろよ、克っちゃん!



  待ってろよぉ、たっちゃん<





END



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