- 161 名前:風と木の名無しさん:2006/11/06(月) 01:44:10 ID:xLsm+Zsr0
- >>158 書き込みdクス。
おかげで嬉しい情報を得られた。
サイト立ち上げメチャメチャ楽しみだ。
- 162 名前:風と木の名無しさん:2006/11/06(月) 02:13:35 ID:oooE7Ck7O
- 自分もサイトが楽しみ。
それと、養育係超乙。文うまい人はいいわね。
- 163 名前:風と木の名無しさん:2006/11/06(月) 02:15:21 ID:w5n6i+71O
- 絡みスレと愚痴とチラ裏行ってきた。
ちょっとだけ、スッとした。
- 164 名前:とらわれの螺旋 1/6:2006/11/06(月) 03:10:30 ID:6eXIHGpf0
- 投下します。長い割りには今回導入のみです。
それでもよろしければ、どうぞ。
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――ずっとずっと昔に見た、遠い幻影。それにもうずっと、捕われている……。
――退屈だな。
朝の日差しに目を灼かれ起き上がりながら気怠そうに髪を掻き上げ、流(りゅう)は心中でこっそりと呟いた。
ズボンだけを身に着け、ベッドに腰掛ける流の足元では、何人かの男女が全裸となって呻き声を上げながら広い部屋の中に転がっている。
その表情は苦痛と快楽と狂喜に彩られ、虚ろな目線を中空に投げかけていた。
流はそれを見下ろしながら、ゆっくりと部屋の中を歩き回る。ベルトに挟まれた一本の乗馬ムチが、部屋の照明を反射して鈍く光った。
流は彼等を見下ろしながら考える。自分の欲求を満たす存在を。
こいつ等では不足している。自分の飢えは、乾きは、決して満たされることはない。
一時の快楽もいらない。既にこいつ等では出来上がってしまっているし、こいつ等にムチをくれてよがらせたところで、既になんの楽しみもない。
- 165 名前:とらわれの螺旋 2/6:2006/11/06(月) 03:11:16 ID:6eXIHGpf0
- 新たな犬を調教するにしろ、その過程はもう自分の中に染みついてしまっていて、これまた退屈だ。
飼い主としての義務は果たすが、これ以上はもう要らない。
なんでも手にはいるからこそ欲しくなる。決して自分の手に入らぬ存在が。
もしそれがあるとすれば……。
流は一瞬己の脳裏に浮かんだヴィジョンを、苦笑と共に振り払った。
幼い日に奇妙な縁で出会った、一週間ほどを共に過ごした少年。
あれからもう、十年以上経つ。再会など、叶うはずがない。
流は部屋の隅に置いてあった煙草に火を付け、深々と吸い込んだ。ゆっくりと煙を吐き出し、窓の外を見上げる。
外は非常によく晴れており、鳥のさえずりも心地よく聞こえてくる。こんな日に、こんな爛れた部屋にいるのも勿体ない。
流はムチを部屋の中に放ると、シャツを羽織って部屋の外に出た。
広い屋敷の中を歩き回り、真っ直ぐに自分の部屋を目指す。その際執事を呼んで、先程の部屋にいる犬たちの世話を命じておいた。
そうしてから新しい服に着替え、屋敷の外へと出る。
現代の若者に溶け込むような服を選んでいるから、共も付けずに屋敷の外へ出たところで、自分が大企業の一人息子だと気付くものはそういないだろう。それに、自分の身くらいは自分で守れる。
ただ自分の顔を見ると間違いなく女どもが騒ぐので、申し訳程度にサングラスは身に付ける。
流はゆっくりと、足の向くままにふらふらと歩き始めた。
- 166 名前:とらわれの螺旋 3/6:2006/11/06(月) 03:12:52 ID:6eXIHGpf0
- どれくらいか歩いたところで、昼になった。迷わず手近にあったファーストフード店に足を向ける。
こんなところを見ると執事にうるさく言われそうなものだが、関係ない。どうせどんなものを食べたって、自分にとっては一緒なのだから。
トレイを手に上の階に行こうとしたところで、階段の上から派手な物音が聞こえた。なにやら怒鳴り声も聞こえてくる。
そして、店員や客の悲鳴。
――五月蠅い連中だな。
流は眉を顰め、ゆっくりと階段を上っていった。
自分はもっと気分を落ち着かせて飯が食いたいんだ。こんなところでくだらん騒ぎを引き起こす連中は……叩き潰す。
そう思いながら階段を上っていくのにあわせるように、少しずつ物音が小さくなっていき、怒鳴り声の人数も減ってくる。
不審に思いながら足を速め、一気に階段を上りきると、目の前で丁度、最後の一人の大柄な男が一人の少年によって打ち倒されるところだった。
学ランを着た男の鳩尾に拳が深々と食い込み、呻き声すら立てられずに男が崩れ落ちる。
- 167 名前:とらわれの螺旋 4/6:2006/11/06(月) 03:13:44 ID:6eXIHGpf0
- 見ると、それをなした男の周囲には似たような風体の男たちが揃って気を失って転がっている。
あの連中は見覚えがある。確かこの辺りの都立高校の空手部員じゃなかったか。それを、たった一人で倒したというのだろうか。
年はおそらく、自分と同じくらいの十代後半。引き締まった長身と、それに似合わぬ童顔と、柔らかい猫の毛。
しなやかな身のこなしと、まるで野生動物のように爛々と輝く瞳は、流の目を釘付けにした。
「舜……」
かつての幻影が脳裏に過ぎる。幼き日の記憶がフラッシュバックする。
たった一週間を共に過ごし、すり抜けるようにして消えてしまったあの日の少年。
目の前にいる男は、あの少年の面影をくっきりと残していた。
その呟きが聞こえたのだろうか。ゆっくりと男が流を振り返る。サングラス越しに、目があった。
「……誰だ、アンタ」
しかし男の返事は素っ気ないものだった。それきり興味を失ったとでも言うように、流の脇をすり抜けさっさと歩きさってしまう。
流は思わずそれを見送りながら、湧き起こってくる笑いを堪えきれずにいた――
- 168 名前:とらわれの螺旋 5/5:2006/11/06(月) 03:14:34 ID:6eXIHGpf0
- 「舜……」
古びた紙片を眺めながら、流はうっそりと呟いた。そこにあったのは、下手くそな字で書きつづられた幼い舜からの手紙。
ただの画用紙にクレヨンで「りゅう、ありがと」とだけ書かれたその手紙を、流はずっと捨てることはなかった。
舜の両親が亡くなり、舜の親戚が正式に引き取りに来るまでの一週間、舜はこの屋敷で過ごした。
初めて来る大きな家と、知らない人間ばかりの場所で、舜は決して誰にも懐くことなくここにいた。
ずっと野生動物のような目をしてギラギラと周囲を見渡す舜に、僅かでも近づけたのは流だけだった。
一週間に交わすことが出来た言葉など微々たるものだったが、それでも最後の方では舜は僅かに笑みを見せた。
そして最後の日。舜が残した、流に宛てた手紙とも言えないような手紙。その手紙は、ずっと流の心の奥の引き出しにそっとしまわれていたのだった。
――欲しい。
舜は、変わっていなかった。あの日の野生生物のままだった。
今度こそ、今度こそ手に入れたい。その為なら……どんな手でも使ってやる。
美貌を笑みの形に歪め、流は紙片を眺めながら小さく肩を震わせ続けていた。
- 169 名前:とらわれの螺旋 :2006/11/06(月) 03:17:22 ID:6eXIHGpf0
- 今回は、ここまでです。
分数計算間違えて申し訳ないorz
では。
- 170 名前:風と木の名無しさん:2006/11/06(月) 05:59:36 ID:9VF/+oufO
- 乙!
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