An encounter 2 
 


目がさめたら、知らない場所にいた。
 見覚えのない、倉庫みたいな殺風景な部屋。
 寝起きの目には、朝日がヤケにまぶしい。
 なんで俺はここにいるんだ?
 昨日は…確かに飲みに行って、それから美女に誘われて…。
 ん…美女?
「うわっ!」
 記憶をとりもどし、思わず跳ね起きた。
 勢いそのまま自分の体を確かめるが、どこもかわったことはない。
 それに…今、俺は朝日を浴びている。
 太陽の光を浴びてもなんでもないってことは、俺は吸血鬼にならずにすんだってことか。
 安心したとたん、昨夜の記憶が完全に甦ってきた。
 そう…美女二人に誘われたと喜んでたら、そいつらが吸血鬼だったんだよな。
 それでそいつらに襲われてたら、黒尽くめの男に助けられたんだ。
 んで、ここに連れてこられて、ワクチンっていう注射を打ってもらったんだっけ。
 なんとなく…昨夜の感覚を思い出して、ぞっとする。
 自分が少しずつ変わっていくのがわかる、あの冷たいような熱いような嫌な感覚。。
 それと、奇妙な飢え。
 もし吸血鬼になったら…あの奇妙な飢えに悩まされるのだろうか。
 そんなのはマジにごめんだ。
 ホント…ならずに済んでよかったぜ。
 ふと、脇に毛布があることに気がついた。
 どうやら俺が跳ね起きた時、横におっこちたものらしい。
 あの男が…掛けてくれたのだろうか?
 なら、それほど悪い奴じゃなかったってことか。
 まぁ素直に助けないアタリ、ちょっとひねくれてるかもしれないけどな。
 部屋を出ると…まさにそこは倉庫だった。
 こういうところは嫌いじゃない。
 あちこち見まわしている内に、テーブルの隅にあるモノに目が引きつけられた。
 無造作に積み上げられた…既製モノじゃないオリジナルの銃。
 気がつけば手を伸ばし、じっくりと眺めていた。
 ひどく変わったデザイン…やはりオリジナルの一点ものに違いない。
 そのくせ機能性も重視しているあたり、作った奴のこだわりが見える。
 スライドを引こうとしたら、なにかが引っかかったように動かなかった。
 何度か試して見たがダメ。
 どうやら、壊れているらしい。
 ならば…同じように積みあげられているのも、何らかの故障品なのかもしれない。
 そのすぐそばに一通りの道具が揃っているのを見た途端、我慢できなくなった。
 血が騒ぎ出すのを止められなかった。
 気がつけば、勝手に手が動いていた。
 拳銃を分解して、ひとつひとつの部品を確かめていく。
 既製モンとは勝手が違うが、だいたいは同じ。
 バラしていくうちに、ある部品の一部が破損していることに気がついた。
 こいつが原因か。
 積み上げられている山から、同じようなサイズの銃を引き寄せそいつも分解する。
 こいつも同じ奴が作ったものなのだろう…部品のサイズはほぽ同じだった。
 そいつから欠けた部品と同じ、まともな部品を見つけ出すとそれを取り出した。
 ホントは新しくソコだけ作ったほうがいいとわかっているが、それは流石に気がひける。
 それにしても…ハッパが欲しい。
 昨日のごたごたで落したのか、ポッケを探ったがみつからない。
 いま…あれがあれば最高なのに。
 欠けた部分を新しく取り出したやつで補い、俺は他をチェックしながら素早く組み立てた。
 スライドを引く。
 今度は抵抗も無く引けた。
 まったくこんな程度でほっとくなんて、もったいなさすぎる。
 せっかくオリジナルの作品なのにな。
「手馴れてるな」
 いきなり後ろから声を掛けられ、文字通り俺は飛びあがった。
 慌てて振りかえると、俺を助けてくれた黒尽くめのカッコをした男がいつのまにか背後に立っていた。
「いきなり声かけるなよ、びっくりするだろ!」
 男は無表情な顔で俺を見つめたまま、動かない。
 なんか…怒ってる?
「あ…勝手に触ったことは、謝るよ。つい…手が動いてさ」
 直した拳銃を投げると、男は無駄の無い動きでキャッチした。
 スライドを引き、動くのを確かめている。
 俺様が直したんだ、不具合なんて見つかる分けない。
「専門家なのか?」
「ん…ああ、まあね。ジャンク屋やってんだよ、俺」
「どうりで、手馴れてるはずだ」
「しかし…どれもこれも、いいセンスしてるよな。誰が作ったんだ?」
 男は再び黙り込む。
 もしかして…また失言かましたかな、俺。
「悪い…聞いちゃいけないことだったか?」
 男は無言。
 やりにくいね、ホントに。
「そういや、礼がまだだったな。助けてくれて、サンキュ」
「礼が言われたくてしたわけじゃない」
「でも…あんたがワクチンだか何だかなを打ってくれたおかげで、俺は吸血鬼にならずに済んだんだろ?」
 吸血鬼なんかになりたくない俺には、それだけで大感謝だ。
「たまたま、だ」
 警戒してるのか、なかなか会話が続かない。
 かといって、他に話すネタもない。
 なんだが居心地が悪くて、俺はつとめて明るく言った。
「んじゃ…そろそろ帰らせてもらっていいか?」
「好きにしろ」
 まったく…冷たい奴だな。
 だけど、なんだか妙に気になる奴だ。
「ああ…そこいらので直して欲しいものがあったら、スカッドって言えばすぐ見つかるから持ってきてくれよ。助けてもらったお礼にタダにしとくからさ」
 このままバイバイと言うのもなんだか勿体無いような気がして、俺は思わずそう言っていた。
「考えておく」
 だが俺から誘いをかけてるっていうのに、男はたった一言だけ。
 ホント…つれないね。
 まぁ、その一貫性は嫌いじゃない。
「ああ…そうだ」
 外へ向かおうとして、俺は男のほうを振りかえった。
「最後にひとつ、いいかい?」
「なんだ?」
「旦那の名前は?」
「ブレイドだ」
 ブレイド…なるほどね。
「あんたにぴったりの名前だね。そんじゃ…」
 俺は出来るだけ軽く手を振ると、今度は振り返らずに歩き出した。
 


 また…会うことがあるだろうか?
 それとも、このまま2度と会わずにすむのだろうか?



 そんなことを考えながら、俺はねぐらへ向かって歩き始めた。

なんか中途半端…
まぁ次に続くと言うことで、赦してください

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