May I help you?



 吸血鬼に攫われて……ようやく助け出されもとの生活に戻れるかと思ったら、余計なものまでついてきた。
 余計なものとは……ウィスラーがいなかった間ブレイドの相棒になっていたスカッドのことである。
 しかもそいつは吸血鬼側が送りこんだ、スパイだった。
 それだけでも腹ただしいのに、なぜか奴はちゃっかりとブレイドのもとに戻ってきていた。
 それも今度は吸血鬼達を裏切って……というのだから、かなりタチが悪い。
 それでもスカッドが少しは反省していたら……後ろめたさのようなものを感じさせていたら、ウィスラーもここまでスカッドに反感は抱かなかったかもしれない。
 だが、スカッドの態度は裏切る前とまったく変わっていないのだ。
 その厚かましさには、流石のウィスラーも怒りを隠せない。
 ウィスラーの怒りを煽るものは、もうひとつあった。
 そう……ブレイドである。
 何を思ったか、ブレイドは裏切ったスカッドを再び受け入れた。
 なぜ裏切りに裏切りを重ねるような奴を受け入れることができるのか、ウィスラーにはまったく理解できない。
 それでもウィスラーはブレイドが決めたことなのだから、とスカッドを受け入れようとした。
 だがウィスラー自身の気持ちは完全に納得しているわけでもなく……それはスカッドに対する態度に健著に表れていた。
 はじめから……ウィスラーはスカッドとはウマが合わないと感じていたのだ。
 その想いは更に深まり、いまではスカッドの一挙一動が目について仕方がない。
 いい年をこいてアニメなんかに夢中なのも、ドーナッツを食い散らかすのも、だらしないそのカッコも、マリファナを所かまわずふかしているのも、なにもかもが気に食わない。
 そして何よりも苛つくのは……ウィスラーの目などまったく気にしていないその態度だ。
 まるでウィスラーの存在を忘れたかのように、ところかまわずイチャつくまくる。
 まだ新しい生活をはじめてからそれほど起っていないのに、何度モロな場面に出会ってしまい慌てて逃げ出したことだろう。
  ウィスラーとて、不可抗力とはいえ自分がいなかった時間の長さを知っている。自分が不在の間は、ブレイドとスカッドが二人きりの時間を過ごしていた事も。
 だからと言って……いつまでもその気持ちでいられては叶わない。
 そこのところを厳しく言ってやろうと決心したウィスラーは、ブレイドの部屋のドアをノックもせずに開けた。
 ブレイドは部屋にはいなかった。
 かわりにいたのは……スカッド。
 目の前に広がる光景に、ウィスラーは硬直した。
 部屋の中央に備えられたベッドは激しく乱れていた。
 その上に我が物顔で横たわる……一糸まとわぬスカッドの姿。
 遠目からでもわかる、その白い肌に散った赤い刻印。
 ベッドの周囲に散らばるティッシュの屑。
 それが何を意味しているかは、言うほうが野暮というものだろう。
「んー、旦那?」
 いかにも眠たげなその声。
「ブレイドは、どこだ?」
「ウィスラー?」
 スカッドが目を擦りながら、ゆっくりとベッドから体をおこした。
 まったく隠すそぶりすら見せない堂々としたその姿に、ウィスラーは頭を抱えたくなった。
「さっさと服を着ないか、バカモノ!」
「あー? いーじゃん、べつに」
「羞恥心ってものがないのか、おまえは!」
「育ちが悪くてねぇ……」
「スカッド!!」
 思わず、ウィスラーはスカッドを怒鳴りつけた。
「わかった……わかったから、怒鳴るなよ」
 スカッドはベットの下からズボンを掴むと、そのままそれを身につけた。
 だが、それだけである。
「上はどうした、上は!」
 普段ならば……いくらウィスラーでもここまで細かい事はいわない。
 だが今だ晒されたままのスカッドの上半身は、情事の後がくっきりと残っているのだ。
 それは、さすがに目のやり場にこまる姿だった。
「上……ねぇ」
 チラリとスカッドはベッドの脇に目をやった。
 何気なくその視線を追ったウィスラーの目に入ったのは、引き裂かれた布切れ。
「なんだ、アレは?」
「あんたの望みのモノ……旦那はせっかちだからねぇ、すぐ破いちまうんだよな」
 スカッドはズボンからマリファナを取り出すと、口に咥えて火をつけた。
「吸うか?」
「いらん」
「まったく……何、怒ってんだか」
 マリファナを吸ったことでようやく目が覚めたのか、スカッドは改めてウィスラーを見た。
「歳なんだから……あんま怒ると体に悪いぜ?」
「誰が、怒らしてるんだ、誰が!」
 怒りを隠そうともしないウィスラーのその姿に、スカッドの瞳がイタズラっぽく輝き出す。
 だがスカッドから目を反らし続けていたウィスラーは、そんなスカッドに気がつくことができなかった。
「つーか、さ……男同士なんだから、そんなに気にすることないじゃん。それとも、何か……」
「なんだ?」
 意味ありげな言葉に、ウィスラーは思わず聞き返した。
 スカッドはそんなウィスラーに、ニヤリと笑いかけた。
「俺のこの色っぽーい姿に、起っちまいそうだから……とか?」
「なっ……何を言ってるんだ、貴様は!」
 狼狽するウィスラーを見て、スカッドの笑みが更に深く、そして艶やかになる。
「慌てっぷりが、妖しいよなぁ。そうだったら……爺さんもまだまだ元気だねぇ」
 あまりのことに、ウィスラーは絶句した。
 次の瞬間には己を取り戻したウィスラーは、スカッドを怒鳴りつけようとした。
 したの、だが……。
「処理するんなら、手伝ってやろうか?」
「はぁ?」
 何を言われたか理解できず目を白黒させるウィスラーに、スカッドはこれみよがしに自らの唇を舐め上げてみせた。
 そのひどく淫らな仕草に、思わず視線が引き寄せられる。
「ご無沙汰なんだろ? 一人で処理するより、断然楽しめるぜ?」
 灰皿にマリファナを押しつけ、スカッドはゆっくりとウィスラーに近づいた。
 ふざけるな……ウィスラーはそう怒鳴ろうとしたが、言葉が喉に引っかかってでてこない。
 それどころかその白い肌に散った情事の後が、ヤケにウィスラーの目に突き刺さる。
「なぁ……ウィスラー」
 いつのまにかウィスラーの目の前に立ったスカッドが、その股間をすぅっとなで上げた。
 その感触に、ようやくウィスラーは我に返った。
「―――っ!」
 最初の勢いはどこへやら……ウィスラーは脱兎のごとくブレイドの部屋から逃げ出した。
 あまりの予想通りのその反応に、スカッドの口から押さえきれない笑い声が零れ落ちた。
「何をしてるんだ?」
 腹を抱えて涙を流しながら笑い転げるスカッドに、帰ってきたブレイドが不審そうに声をかけた。
「あ……旦那」
 懸命に笑いを堪えながら、スカッドは何でもないと言って手を振った。
 答えにならない答えに、ブレイドの顔がさらにいぶかしそうになる。
「そこで物凄い表情をしたウィスラーとすれ違ったが……何の用だったんだ?」
「べ……別に、なんでもないよ」
 更にこみ上げてきそうな笑いを唇をかんで押さえつつ、スカッドはブレイドに抱きついた。
「ウィスラーって結構、面白いな。見なおしたよ、あのオヤジ」
「?」
「仲良くやっていけそう……ってこと」
「……そうか」
 さっぱり話が見えなかったが……スカッドとウィスラーの仲の悪さに頭を痛めていたブレイドは、スカッドがウィスラーに何をしたのか知らずその言葉を喜ばしいこととして受けとめた。




 このあと、「わしはノーマルだ……ノーマルなんだぁ」と叫びながら、自ら壁に頭を打ち付けるウィスラーの姿を見ることが出来たとか、できなかったとか……。


書くの……すっごく楽しかったです
やっぱギャグはええのう(笑)
なんかこのパターン、癖になりそうなんですけど……(苦笑)

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