隙間話
「もしもし、俺だ。
教授の家にアレを届けたのは、冴子、お前だよな?」
「あら、遼から電話なんて珍しいわね。
アレ、現場に落ちてたわよ。やっぱり貴方のモノだったのね。」
「このこと、香には、言ってないだろうな?」
「香さん、心配してるわよ。
パートナーが連絡なしに1週間も家に帰らないなんて。
彼女、自分のせいじゃないかって、落ち込んでるわ。可哀想に。
実は、貴方は、連絡なしに、教授宅に潜伏してるのにねぇ。
慰めに、彼女に何度もキスしてあげたわ。
香さん、ドングリ眼で棒立ちになってた。可愛い人ね。
ねぇ、遼、貴方達、一体、どこまでの関係なの?」
「……」
「そう、答えられない、恥かしくて口にも出せない関係なのね。
何年一緒に暮らしてるんだっけ。
香さんには内緒にしてあげるから、早く家に帰ってあげたら?」
「ダメだ。今は、絶対に、香に会いたくない。」
「そう。じゃあ、私が本格的に香さんを慰めてもいいかしら。
私達二人、槇村を通じて繋がってるし、身体の相性も良い感じよ。」
「冴子、煽るなよ。アレ、落した時点で使い物にならねぇんだよ。」
「だったら、ズラなしで、ありのままの姿で、いいじゃないの。
世界一のスィーパーがこんなに繊細だなんて驚いたわ。
遼も随分ストレス溜まってたのね、円形脱…」
「だーーーー。言うなぁぁぁ、香にバラしたら、絶交だからな。
それから、アイツには、指一本、手を出すな。
今回の依頼が終わったら、俺達は漸く、モッコリする約束だったんだ。
こんな想定外が起こらなければな。」
「あら、だから、香さん、貴方から決定的に否定されたと思いこんで凹んでるのね。
彼女、捨てられた仔犬のような眼をしてるわよ。
まるで私を誘ってるみたいで、妖しい気持になるのよ。
遼、男のプライドを取るか、香さんを取るのか。よぉく、考えよぉ♪
じゃ、切るわね。Bye!」
「...........」
二兎を追うもの一兎をも得ず。