盗聴FM

ある晩の事。
あたりは喧騒を忘れ、静まりかえった深夜。
一人明かりを抑えた部屋でバーボンを片手に、機材チェックのため何の気なしに
受信機のチャンネルを香の部屋に合わせ耳を澄ませた。
本人には知らせていないが、随分と前から万が一の危険に備えて
香の部屋と衣類には盗聴器を仕掛けてあるのだ。
するとどうだろう。香の部屋は寝息とは違う息苦しさを訴えるような声で包まれている。
(…ん?なんだ?)
状況を把握するために、寝巻きのボタンに仕掛けた盗聴器に
チャンネルを合わせると飛び込んで来た音に耳を疑った。

――ヌチャ…
(…!?…)
ヌメリのある水分を叩く音。それは僅かな音ながらも香の行為を物語っている。
( …か、香がオナってんのか!?)
その事実は困惑を覚えたが、思えば香も既に20代半ば。
女としての肉体は熟成している。そういった事が無い方が不自然といえばそうだった。
とは言え、やはり性に疎そうな香とその行為が俺の頭の中では結びつかないでいる。
俺の困惑を構うことなく、絶え間なく耳には香の熱い吐息と淫靡な水音が響いていた。
衣擦れの音から、寝巻きを着たまま指を忍ばせ行為している事が伺える。
控えめな水音からは、行為を恥じながら指の進みを止められないでいる香の姿を想像させる。
一つ屋根の下でこっそりと行われている行為を盗み聞ぎし、その様子を妄想するのは
そこらのグラビアやAVを見るより、よほど興奮を感じるものだった。
『…んっ …はぁっ…』
堪え切れなかったかのように発せられる香のくぐもった声が耳を痺れさせる。
俺自身も吐息に誘われるように、隆起して開放を訴える肉棒をジーンズから取り出し、
ヘッドホンから聞こえてくる吐息にあわせて巨砲と化した己自身を包み込んだ手で上下する。
『…やっ…りょっ…!』
(おっ?俺がおかずかよ…)
名を呼んだのを合図にするかのように、クチといやらしい音が音量をあげた。
俺も今までに香をネタにこいた事がないと言えば嘘になる。
しかし。逆に俺が香のネタになっている事は考えた事も無かった。
たった今、香が俺に抱かれている事を想像し淫らな行為をし、それを俺が盗聴して香の乱れた姿を想像している。
その言葉に出来ないほどの興奮に、海綿体に大量の血が流れ込んで肥大し
自らの手はおのずと力を増し、未だ誰も臨んだ事のないであろう香のそこを再現しようとする。

―――…クチュっ…クチヌチュっ…
『…っ…!んっ…くっ!』
しばらくすると香が絶頂を迎えた事をへッドホンの向こうから厭らしい音と嬌声が知らせていた。
それを追いかけるように俺も一身に自慰にふけり、一人青臭い液体を吐き出した。

(しかしなんだな。自分で抜かないで夜這いかけりゃよかったんかな…。)
少しばかり後悔した後、機材チェックを日課にすることを密かに決めたのであった。

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