無題

「どちらさまですか?」
何日か久振りに目を覚ました香は俺に向かって信じられない言葉を発した。

 俺が香に「好きだ」と言ってから一ヶ月はすぎていた。
香に自分の気持ちを伝えたからといって俺たちの生活は何もかわらなかった。
いや、俺が変えたくなかったんだ。

俺は香の事が、大切で、大切で、大切すぎてこの関係を壊したくなかったんだ。
実際、香はこんな俺の事をよく好きでいてくれると思っている。

お前が思うよりも俺はお前の事をとても大事に思っているんだ。お前を
他の女の様に、欲望に任せて抱きたくはないんだ。

そんな俺がどうして香を抱くことになったのか?今考えてみると自分でもよく分からない。


あの日、俺は珍しく飲んでいなくて香はのんでいた。

香は飲んでいたからだろうか、俺に「どうして自分をだかないのか?」と聞いてきた。自分に魅力がないからか?他に思う人がいるのか?
そうじゃない。そうじゃないんだ。俺はお前のことが大切で、大事で、好きで、好きすぎてどうにかなるくらい愛している。お前のいない生活なんて考えられない。頭で考えるより先に身体が香を欲していた。

俺は酔っている香の顎をつかんで深くキスをした。

香と直にキスをするのはこれが初めてだった。

「気持ちいい」  
これが俺の素直な感想だった。
俺は初めてキスをした少年みたいに香の唇に、そして身体に溺れていった。

俺は自分で言うのもなんだが、こっちの方はかなり経験豊富だ。
対して香の方は全くの初心者で俺が香を焦らして、焦らして、自分から求めて
くるくらいにするつもりだった。

「ん…ふぁ…っ」香の口の中に舌をいれると声が漏れてきた。
俺は香の声にますます興奮し、香の口の中を隅々まで味わった。
香は初心者だからだろううか、時折苦しそうに空気を求めて口を離そうとしたが
俺は香のその行為すら許さないくらいに香の口を塞いだ。

一通り香の唇を味わってから離れると香は恨めしそうに俺の顔をにらんできた。
「かわいい」  
俺はさっきから香のすべてがかわいくて、欲しくて気が
狂いそうになっていたから、もちろんその香の仕草は俺を煽るだけとなった。

もう止まらなかった。香の俺を見上げる瞳が少し潤んで、大きな目の端に涙を
ためていた。俺はその溜まった涙を舌で救い上げると、香の全身に舌を這わして
いった。そういう行為自体が初めての香は、最初は嫌がるそぶりを見せはしたが
だんだんと俺に身体を預ける様にしていった。


俺は足にほとんど力が入らない状態の香を、お姫様抱っこで部屋まで
連れて行った。自分のベッドに香をそっとおろし、その行為を再開させた。

俺は香の耳朶を軽く噛みながら着ている服を脱がし始めた。ブラウスのボタンを
外し、スカートも脱がして下着一枚だけにすると、香は下着姿が恥ずかしい
のか全身をピンク色に染めながら少し潤んだ目で俺を見あげた。

香のそんな姿に俺の理性は完全に飛んでいたが、そんなそぶりを香に気づかれ
ない様にブラジャーを外した。思ったよりも香の胸は大きくて、俺はその
豊かな胸に指を滑らせていった。

「あ…っ、は…ん…」 香は感じるのか、くすぐったいのかよく分からない
ような声を出し始めた。

俺は香のそんな声をもっと聞きたくて、左手で胸を弄びながら右の乳首を口に
含んだ。感じてきているのか、香の声は段々と湿り気をおびたものへと
変わって行った。そんな香の様子にすっかり気をよくした俺はその行為を
エスカレートさせていった。

「ちょ…っ、僚!」恥ずかしさからか、香は非難の声を俺に向けた。

俺はそんな香の声に気づかないふりをしながら(気づいていてもやめる
つもりは全くなかったのだが)右手を香の秘所に這わせていった。


俺の指が香の秘所に到達すると、そこはすごくぬかるんでいて
くちゅくちゅという音が聞こえた。「もうこんなに濡れているぞ
胸だけで感じちゃった?香ちゃん」 耳元で俺は意地悪く囁き
香自身が出した蜜で濡れた指を舐めてみた。
そんな俺の行動に香はは全身を赤く染めた。

「汚いじゃない!」香は俺の顔を少し睨みながらそう聞いてきた。
「お前の身体に汚いとこなんてないよ」 俺はそんなこっぱずかしい
台詞を香の耳元で言っていた。香は真顔でそう伝えた俺がおかしかった
のか、少し笑っていた。笑うことで少し緊張が解けたところで俺は
行為を進めて行った。

表面を軽く指で弄り、蜜でぬかるんだ秘所の奥へと少しづつ指を
いれていった。最初に入れたときは少し眉を顰めた香だったが、
根気よく中をほぐしていくと奥から新たに蜜が零れてきた。
その助けもあり、俺は入れる指を2本に増やした。

「きゃあ…っ、んん、だめ…っ」香は言葉にならない言葉を
吐きながら快感を感じてきたみたいだった。中に入っている指を少し
曲げて内壁を軽くひっかく様に触ってやると、今までにない声と
共に香の身体が大きく反り返った。


「見つけた。」そのときの俺の顔は多分宝物を見つけた子供の様に
輝いていただろう。

「僚、もうやぁ…っ、だめ、だ…って」香が段々と絶頂へと向かって
行った。ダメと言われれば余計にしたくなるのが人と言う物だ。
俺は香が弱いであろうそこを集中的に攻めてみた。

舌を香の秘所の一番深いところまで差し入れ、赤く充血している芽を
指で軽くはさんでやる。最初は軽くそして優しく、力の強弱を付けながら
芽をいじっていた指を舌と同じところにはわせてやると、「ん…っ、
ふぁ…あ…あ…」抑えようとしても抑えきれない声が唇から漏れている。
「きゃぁ…っ、もうだめ、やぁぁっ、僚っ……」俺の背中にしがみつき、
一際甲高い声を出しながら香は初めての絶頂を迎えた。
初めての快感に全身を震わせながら荒い息を吐く香を見ていると香を
焦らしているつもりだったが、いつの間にか俺自身が限界に来ていた。

少し落ち着いてきた香に軽くキスをして、俺はいつになく真剣な顔で
香を見るとただ一言「いれるぞ」とだけつぶやいた。俺の言葉に顔を
真っ赤にしながら「僚、愛しているよ。」と言ってくれた。

「俺もだ、香。」心の中でつぶやきながら俺は自身を香の中に埋めて
いった。

「つ…っ」香に大きな目から涙がこぼれた。いくら十分にほぐしたと
はいえ、処女の香に俺のはきついようだ。
「はぁ…っ、僚、好き。大好き。」息をするのも苦しそうにとぎれとぎれに
発する香の言葉を聞き、俺は吸い寄せられるかの様に口付けていた。
最初は軽く触れながら、徐々に舌を絡ませていく。香の方も少し慣れて
きたのか、俺の舌に十分のそれを絡ませてきた。拙い動きではあるが、
俺は香から与えられるその感触を楽しんだ。
だが、経験値が低い香の舌の動きに満足できなくなってきた俺は香の
舌を音をたてながら軽く噛み、歯列をなぞり、唾液を流し込んだ。
息継ぎをすることすら許さないようなキスに香は苦しいのか、俺の
背中をドンドンと叩いてきた。
ー夢中になりすぎたようだ。ー  少しだけ反省しながら今度は
優しく香の首筋にキスをして、所有の証を付けた。

香の息が整ったのを見届け、俺はゆっくりと腰を動かし始めた。
くちゅくちゅと結合部分から香の蜜があふれ出てくる。滑りが
良くなってきたので俺はさっきよりも激しく動かしてみた。

「…あっ…ああっ…んっ、僚っ、僚っ……っ」香の唇から声が漏れる。
普段の香からは絶対に聞けない、香の声だ。その声にさそわれる様に
俺はよりいっそう激しく動かした。香の中は温かくて、柔らかくて、とても
気持ちがいい。もうヤバい。俺自身そう感じていた。
俺は香の腰を持ち上げ、奥まで突いていった。
「ん…っ、ふぁ…っああ…っ、」俺は香の胸を舌先で嬲り、充血して
膨らんだ芽に指をそえ、無我夢中で腰を激しく動かし続けた。
香の締め付けが一層きつくなり、大きな嬌声があがった。と、同時に
香は身体を痙攣させながら意識を手放した。
「く……っ」 俺は香が意識を手放すのとほぼ同時に、香の中に
自分の欲望を吐き出した。

今まで何人もの女を抱いてきたが、心の底から気持ちいいと思えたのは
今日が初めてだ。

香、ありがとう。こんな俺を好きでいてくれて、愛してくれてありがとう。
俺はお前が思うよりもずっとお前の事を愛している。
お前がおもうよりずっとお前の事が大切で、大事に思う。
香がいるから俺は人として生きていけるのだから。
香が俺に与えてくれる以上の物を俺はお前に与えよう。

香、お前がいないとおれはきっと生きてはいけないだろう。


「僚…っ、もうダメだよ。あ、あ…っ」
「まだだ、全然足りない。」
俺はそう答えると香の蜜壷の中に大きくなった自身を差し込んだ。
さっきまで俺の指と舌で散々嬲られていた為か、香の秘所からはシーツに
零れるくらい大量に蜜が湧き出ている。
「あっ、あっ…は…んっ、んんーっ」香の声に我慢ができなくて、俺は
奥まで腰を推し進めた。香は時折苦しそうに眉をひそめるが、その顔も
俺をますます煽っていくだけだった。俺は香の一番感じるポイントを
見つけては、その場所をゆっくりと攻めていった。
「あ…っ、僚、もうイッ…ちゃ…んんー」
その声を聞くと同時に俺は香の中を激しく激しく攻め立てた。
二人が繋がった所からはどんどん蜜があふれ出し、香は俺をきつく締め付けた。
俺は香の腰をつかみ、高く持ち上げると激しく腰を動かして与えてくれる快感に
酔いしれていった。香はもう身体に力が入らないらしく、俺に揺すられる
ままになっていた。
「ああ…っ、はっんんーっ」香が一際高い嬌声をあげ、俺の背中にしがみつき
ながら身体を震わせると同時に身体に熱いものがこみ上げてきた。
「く…っ」俺はそのまま香の中に己の激情を注ぎ込んだ。
香を見ると途中で意識を失ったらしく、目を閉じたままだった。

ーやりすぎたかなー 俺はまだ目を覚まそうとしない香の顔に優しくキスを
した。壊れ物を扱うかのような優しいキスを…

初めて香を抱いてから一ヶ月がたとうとしていた。あの夜以来俺は香を
何回も抱いた。朝・昼・晩、寝室ではもちろん、キッチンでもリビングでも
風呂でも所かまわず気を失うまで抱いた。初めの頃は俺のあまりの
変わりように戸惑っていた香だったが、最近は諦めて大人しく応えるように
なってきた。

当たり前だ。8年間ずっと抱くのを我慢していた女をやっと抱けたんだ。
これでも足りないくらいだ。俺は香をもう離すことなどできない。
香も俺から離れることはないだろう。これから先ずっと二人で生きていこう。

お互いが死ぬまで。

その日、俺は珍しく香と一緒に伝言板を見に来ていた。

今日も依頼がなかったらしく、香は段々と不機嫌な顔にかわっていった。
香の怒りの矛先が自分に向けられてはかなわないので、俺はそっと香から
離れようとしていた。そんな俺の行動に気が付いた香は、ハンマーを
振り回しながら俺の後を追いかけてきた。

いつもと同じ日常が繰り返されていた。

香は俺を追い掛け回すのを諦めたのか、、回れ右をしてその場を立ち去ろうと
した。香が帰ろうとしたその時、目のまで子供が車道に飛び出すのを見つけ
子供を助けようと車道に飛び出していった。

かおりーーっっ

香は俺の目の前で空中に舞った。

それから先の事は自分自身あまり覚えていなかった。
俺は自分でも驚くくらいに動揺していた。落ち着いて周りを見渡すと、
たくさんのコードで繋がれた香の身体がベッドに横たわっていた。

血の気のない紙の様に白い顔をしながら…

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