無題



亡き親友の妹?親友の妻?傷ついた香?
……罠?

――知らん。

それがいかに背徳の行為であっても。
香の目的がわからなくとも。
香の瞳に吸い込まれるように、全ての思考を放棄する。

抱きかかえ壁に香を押さえつけると髪に、耳に、首筋にと唇を這わせる。
柔らかく熟れた胸を乱暴に揉みしだくと、香は苦しみに似た吐息を漏らした。
抱え上げ浴槽の淵に腰掛けさせ、跪いてしなやかに伸びた脚を割りその中心へと舌を侵入させ
赤く熟した芽芯を舐め上げ吸い付き舌を震わす。

「んっ…ゃっ…」

香の脚の筋肉がこおばるのをリョウは指でからかうようになで上げた。
中心からは粘り気を帯びた果汁が床へと滴り落ちる。
それを指で掬い上げ芽芯へと擦り付けると香は熱い声を漏らす。
経験の無い女がする反応ではない事がチリと胸を焦がした。

(…ミックの野郎)

スケベなミックのことだ。当たり前とは分かりながらも怒りが満ちてくる。
ミックに抱かれ嬌声を上げる香がちらつき、愛撫は一層激しくなる。
親友の手によって女となった、香。
長い時を共にしたはずの女は今、知らない表情を浮かべ乱れている。

「はぁっ…んっ!!」

湯船を背にした香は、不安定な自分の状況を支えようとリョウの髪を鷲づかみにした。

「…いやらしい女だな」
「やっ…だっ…」

リョウの冷たく蔑む言葉にも、香は顔を紅潮させ体を震わす。
中心へと指を差し込むと赤く熟れた肉壁は指先に絡み付いて締め上げた。
指の腹でザラリとする箇所を擦り上げるとビクンと香の体が跳ねる。

「ここか…」

その箇所を攻めながら芽芯を吸い上げ、上を向いた乳首を優しくひねり上げる。

「ひゃっ…ぁ…あぁっ!!!!」

体を仰け反り快感へと昇りあげていくのを確認し、リョウははたと愛撫を止める。
絶頂の寸前で止められた香は切なげに息をつき、拷問を課せられたかのような表情を浮かべた。

「まだ、だ」

濡れて肌に張り付いた服を、脱ぎ捨てるとベシャリと重い音を立てて落ちた。
香を抱き上げ壁へと再度押し付けると、程よく肉付いた脚を担ぎ上げて自らの肩へとかける。
今でもエアロビは欠かしていないのだろう、脚は素晴らしく柔軟に開脚され、赤く熟れた秘部が露になった。

「やっ見ないで……」

絶頂の寸前であった秘部は、突然無理な体勢を強いられ、ひくついている。
武骨な指でそこをなで上げると、片足で立つことを強いられた香はリョウへとしがみつく。
香の中心へとシャワーと浴びせたてる。
水圧に快感を強制され香はいやいやと首を振るが不安定な体勢にあるため
それから逃れることができない。
リョウはシャワーの口を一部手で塞ぎ水圧を一層強くし攻め立てる。
しがみつく香の耳に舌を這わせ囁いた。

「…いけよ」
「やっ…だっ…」

無機質なものでなど逝きたくない、と腰を引いて逃げようとする香に
体ごと押さえつけ身動きを封じると香は拒絶とは裏腹に体は快感に震えた。

「わがままなやつだな…」

呆れたように言い放ってシャワーの水圧から開放してやる。
香はやっと呼吸ができたとばかりに安堵の表情を浮かべ息をついた。
しかし無理な体勢はまだ、開放されてはいない。
リョウは自らの肉棒を赤く露出したそこにあてがう。
香の体温に包まれたそれは怒張を一層なものにした。
肉棒を導いている手でひくつく中を確認しながら、
腰を前後に動かし、ぷくりと腫れ上がった芽芯に引っ掛けるよう弄ぶ。
ぬめついた粘膜に擦りつける。
リョウの吐息が漏れる。

「…っ…はぁっ…」

二人の吐息は重なり、お互いが離れる事を恐れるかのように唇を重ね貪る。
リョウは肉食動物が逃げる獲物を弄ぶように、香の快感が近くなる度に動きを弱め
息が落ち着くのを待って、再びそこを弄ぶ。
とどめの無い快感の波は感覚を徐々に短くしていく。

「おねがいっリョウっ…!!!!」

香は終わりの見えない快感に、終結を懇願した。
それに応えるようにリョウは震える香の中心を
厭らしい水音を響かせるように擦りあげる。

「…はっ…んんっ!!!」

香は、自らがどこかに行ってしまうのを抑えるように
リョウの背中に爪を立てしがみつくとガクガクと震え、絶頂へと駆け上った。

途端、荒く息を吐きながら糸の切れた人形のように
しな垂れかかる香をリョウは抱きかかえ浴室を出るとベッドへと香を横たえる。
オレンジ色の柔らかい光が香の体を照らし出しリョウは息を呑んだ。
初めて会った時の少年のような姿はそこにはもういない。
香は艶やかに咲き誇ったバラの花のように女の美しさを讃えている。
水分を充分に含んだ肌は、ベルベットのような艶やかさを醸し視線から逃げるように顔を背ける。

「そんな見ないで…?」

恥ずかしさに駆られた弱弱しい声に呼ばれるように、肢体にキスを降らせて覆いかぶさる。
細い肩を抱きしめると答えるように香の冷たい指先が背中をなぞる。
脚を割って自らを中心へと押し当てると少しの戸惑いに体が止まる。
息をついてしがみついた香に後押しされ最後の砦は破られた。
充分に滑らかにされた香の中心は、
リョウの人並みはずれた大きさのものに小さな悲鳴を上げながら飲み込んでいく。

未来過去、交わることはなかったはずの二人。
背に手を回ししがみついて頬を合わせる香の吐息がリョウの耳元をくすぐる。
どこかでずっと、触れ合うことを願っていた体温。


家族として愛した女。
仕事の相棒として愛した女。
女として愛することを逃げ続けた女。
親友の妻となって見ることすら罪深く感じるようになった女。

一つ一つがこの衝動に繋がっていたことに気づいた瞬間。
暗闇に突き落とされた瞬間でもあった。

知ってしまった禁断の果実の味。
知らずにいれば日常をやり過ごすことはできたというのに。

切なさに快感に息が、詰まる。
包まれた暖かさに身を委ねると、終わりへと続く身動きを躊躇ってしまう。
香の腕に引き寄せられ唇を合わせると同じ感情を共有している錯覚にとらわれる。
きっと、香もまた自分なしでは生きられないのではないかと。

しかしその期待はすぐに裏切られた。



「りょっ……あたし…ね…」



―――――あなたのこと…愛してた……――――



吐息交じりの刹那。
その言葉は、今のこれが未来の無い行為であることの告知でもあった。

「…過去形か」

時間が動きだす。
リョウはズッと腰を引いて打ち付けた。

「あぁっ…!!!」
「俺は…なぁ…香…」

奥までねじ込んだものをまた、ゆっくりと引く、そして打ち込む。

「あっ……はぁっ…!!」
「…今も、だ」

香は顔を歪め、大きく熱い息を吐く。
快感による表情なのか言葉に揺らされた表情なのか。
香の瞳から涙が零れ落ちる。


「なっ…んで今更そんなこと言うのよっ…」
「…それは俺の台詞だろ……」
「だってっ…!!」
「俺が当て馬なんぞになると思ったんか…!」

リョウの指が香の柔らかい髪を絡みとって乱暴にくちづけをする。
香はリョウの唇を柔らかく拒否して唇をかみ締めた。
小さな肩。
震えて。
泣いて。
鳴いて。

いつだって香は不器用な女だった。
全身で悲しみを現すくせに言葉と行動は裏腹で。
昔、嫉妬心を頓珍漢な方法で表現する香に苦笑していたことを思い出す。
いつだってその対象はリョウだった。

しかし、それは過去の話。

隙間なく満たしているのに、抱きしめているのに、体温を全身で感じているのに、遠い。

―――事が済めばミックのもとへ帰るっていうのか?
    悲しみを隠して愛を囁いて、罪悪感に駆られたミックは香を抱くのだろうか。
     かずえ君とミックは……!?


「…なぁ…帰って来いよ」

思わず口から出た言葉。
そのリョウのものとは思えない情けない声に、
香は一瞬驚いたような表情を浮かべると、首を左右に振って泣きじゃくった。
リョウはどこかで分かっていた答えに打ちのめされる。

(いやだ。離したくない。)

逃がさないとばかりに香の体を掻き抱くと自らの気持ちを注ぎ込むように腰を打ち付ける。
首筋に、腕に、噛み付くようにキスを降らす。

(ミックが気づけばいい。俺のだ。俺の…!!)

纏わり付く肉壁はリョウの肉棒を締め上げる。

「ん…っあぁっ!!!リョウっ!!!」

―――香!!!

リョウの作り出す波に身を委ねた香は幾度となくリョウの名を呼ぶ。
その声には確かに愛情がこもっているように聞こえて。
堰を切ったかのようにリョウの動きを加速させ―――





絶頂が、この世の終わりのように感じられた。

******


小さな衣擦れの音に目を覚ます。

寝たふりをしたまま身支度をする香の姿を眺める。
憂いを帯びた首筋に、背中に、腕に、自分の意図的に散らした紅い痕。
鏡を覗き込み紅い痕を軽く撫ぜ、小さく息をついた。

「リョウ、ごめんね…」

身支度を終えた香は抑揚の無い言葉を残し、振り返らずに部屋を去っていった。

ミックは自分の元を訪れるだろうか。
気づかない男ではない。
自分の不貞を棚に上げて嫉妬にかられるミックは容易に想像できた。

どんな未来が待っているのか、と不安がよぎる。

静寂に包まれた薄暗い部屋は開けてしまったパンドラの箱のようだった。
負の感情に包まれた部屋。
この部屋から一刻も早く逃げ出そうと起き上がると
リョウはテーブルにそれを見つけた。

小さな指輪。

手にとって眺めると僅かな光を受け鈍く輝く。
それは去っていった女の、我侭な心変わり。
未来を託された事に気づき、少しだけ報われた気分になった自分に

苦笑した。


fin
BACK

Gポイントポイ活 Amazon Yahoo 楽天

無料ホームページ 楽天モバイル[UNLIMITが今なら1円] 海外格安航空券 海外旅行保険が無料!