D.

A Durty Man





































































































ズルイオトコ









首尾よくお宝を奪取し、ルパンは館のバルコニーから空を舞った。
取り巻く警官の頭上を飛び越え、スノーボードで雪の市街を駆け抜ける。
追って来たパトカーを自在の動きで振り切り、予定通り合流ポイントにたどり着いた。
わずかに待てば、夜の街に響くスノーモービルのエンジン音。
運転席の黒ずくめの相棒は、相も変わらず飄然と声を掛けてきた。
「よう、待ったか」
まるでデートに遅刻した男のような気楽な言い草に、ルパンは笑み崩れた。
「ちょ〜っとなあ」
ルパンを乗せたスノーモービルがすばやく闇に駆け出せば、その後ろをパトカーのサイレンが追いかけてきた。





「首尾は?」
「上々だ」





次元に、ハリマオの隠し財宝を狙うために、この熊のブロンズ像が必要な理由をかいつまんで説明する。
「その隠し場所のヒントを、熊、鷹、猿の三体の像に残したってワケ」
次元がシートから腰を上げると、意図を察したルパンが運転席に滑り込んだ。
「だが、その三体は戦争が終わってから世界中に散らばった」
察しのよい相棒の言葉に、ハンドルを握る怪盗の口元は不敵に歪んだ。
「ああ、古美術としてもけっこう値打ちモンだったばっかりにヨォ」
スノーモービルを一気に加速させる。
怪盗の無二の相棒は、弾を込め終えた銃を構えた。
「熊、鷹────サツだ!」
「猿だってばぁ」
次元は、スノーモービルの後部にゆらりと立ち上がった。
パトカーから身を乗り出した警官のランチャーが、格好の獲物とばかりにその姿を狙う。
だが、次元にはそれこそが好機だった。





発射されたロケット弾の軌道を、次元の目が捉えた。
コンバットマグナムが二発、火を噴く。
獲物を捕らえることなくロケット弾は宙で破裂し、閃光が辺りを覆った。
「うわあぁぁぁぁ!!!」
視界を失ったパトカーは次々と崖下に転がり落ちた。





スノーモービルは凍った湖面を滑るように進む。
逃走用に用意された飛行機の傍らに、ルパンは五ェ門の姿を見つけた。
「へえ、五ェ門だ」
あの侍がどうしてここに。
今回のネタでは、この侍を引っ張り出すのは、まず難しいと思っていたのだが。
「ああ、俺が雇った。バイトとしてな」
「バイトォ?」
「悟りを開く修行をするにも、先立つものが必要だろ」
次元はそんなふうに嘯くと、スノーモービルからひらりと飛び降り、五ェ門の肩を抱いた。
凛然とたたずむ侍は、ひどく不機嫌そうだった。
「どうせ、手が欲しかったところだろうが?」
お見通しだよ、といわんばかりの次元に、
「そりゃなあ、茶髪の学生雇うより、まあエエけどよォ」
ルパンは人の悪い笑顔を浮かべて五ェ門を見据えた。
「へえぇぇぇ」
「・・・何が言いたい」
五ェ門は低くうなる。
「次元ー、どうやって五ェ門ちゃん口説いたのォ?」
「なあに、真っ当な雇用関係さ。俺は正直な男なんでね」
五ェ門の悔しそうな表情に、ルパンはまた笑った。
「なー、こう・・・相手に弱みがある場合も真っ当って言うのかなあ」
次元は笑った。
「何が言いたいやら、さっぱりだぜルパン」
「おーお、言ってくれるねえ」
次元はかまう様子もなく機体へと向かった。慎重な男のことだ、おそらくエンジンの状態を確認するのだろう。





「なあなあ、五ェ門。次元のヤツ、やたら不二子のことを目のカタキにすっけど、ありゃ同属嫌悪だな。手口が一緒じゃねえか、なあ」
「・・・・・・・・・」
「どうやって口説かれた?手ぇ握って上目遣いで『五ェ門、助けてくれ』とか、『終わったらデートしよう』とか?」
「・・・・・・・・・」
「あれやられっと、男としちゃーやるしかねえもんなあ。『惚れた弱み』ってのは神代の昔から、男にとっての最大のウィークポイントだな」
「拙者は、惚れてなど────!」
「惚れてなど?」
「・・・知らん!」





「とにかく雇用関係なのだ・・・・・・次元がそう言った」
五ェ門は俯いた。子供のように頼りなげな表情だった。
ルパンは肩をすくめると、さらに駄目を押した。
「で、時給は?」
「・・・980円」
「アラ、そーなの」





近づくサイレンの音を機上の次元が聞き咎めた。
「おい、ルパン」
どうやら新手が来たらしい。
近づくパトカーの群れを認め、五ェ門を振り返った。
「そんじゃま、さっそくバイト君にお願いすッかな」





ヘッドライトを存分に浴びて、五ェ門の斬鉄剣が宙を閃いた。
切り裂かれた氷面は崩れ落ち、パトカーを湖底に飲み込んだ。
そして、三人を乗せた飛行機は、夜空に舞い上がった。





五ェ門がいずれ悟りの境地とやらに到達するころ、その横には誰がいるのだろうか。
まだ自分たちと一緒にいるのか、誰か相棒を見つけるのか、それとも────彼の思い人を手にするのか。
その光景を思い描こうとして、ルパンはすぐに諦めた。
そんな想像は無益なことだ。次元は、自分の側を決して離れはしない。





主人に忠実な犬のように。
めぐり合ってしまった、運命の恋人のように。





操縦席の後ろでは、次元が拗ねる五ェ門に、なにやら酒を勧めていた。スキットルを鼻先まで押し付けられた五ェ門は、嫌いな洋酒の香りに顔をしかめている。次元はひどく楽しそうだ。





そのとき胸をよぎった感情は、ルパンにとってはずいぶん新鮮なものだった。





「そんじゃ、今回もいっちょ派手に行きますか!」
感傷をかき消すように叫ぶと、ルパンは操縦桿を強く握りこんだ。







end










テレスペ「ハリマオの財宝を追え!!」opネタ。




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