N.

Last Night





































































































The secret of the bullets and the undergarments.










Last Night









「絶対にダメだ」
次元は目の前の男をきつく睨みつけた。
「どうしてぇ?」
目の前の男────ルパンは、心底わからないと言いたげに、目を丸くして見せた。
次元は、ため息をついた。
「あーのーな、ルパン。俺たちが何のために北海道に来ているのか忘れたのか?」
「わっすれるわけないでしょー。
“天にそびえる眼 その懐に青き炎 竜の角砕けるとき 白きたまゆら時を貫く”
時を越えるお宝、浪漫じゃないの」
「そう、そのお宝のために、明日っから俺たちは海底をうろうろ徘徊だ」
「宝探しだっての」
「どっちだっていい。とにかく明日は朝から一日仕事なんだ、だから絶対にダメだ!」
遂に次元は怒鳴った。だがルパンは少しもひるまず、にやりと笑った。





うんざりするほど知っている。こういう笑顔を見せるときのルパンは、一歩だって引かないってことを。





「いい目だねえ、次元ちゃん。じゃ、好きにしていいぜ。俺も自分の好きにすっけどよ」
「ルパン!」
腕を動かしてみた。無駄な努力だとあらためて思い知る。
次元は、この始末に終えない男をふたたび睨み据えた。





ひと月前、霧多布岬から少し離れた場所にあるこのコテージを、探索の拠点として借りた。
男二人で使うにはいささか広すぎるきらいはあったが、狭苦しいアパートで始終顔をつきあわせていることを考えれば、見晴らしが良く、それぞれの個室も持てるこのコテージの方がはるかにマシというものだった。
ルパンの作業部屋として使われているこの部屋は、二階の奥間にある。コテージ内で最も広いスペースだったが、今ではすっかり資料と書類で雑然としている。今日まで現地を調査し、探索ポイントを割り出した、その成果だ。
そして先刻、計画の最終の詰めを行なうからと、次元はこの部屋に呼ばれた。





その部屋の片隅の据付のベッドに、次元は寝転がっていた。
腕を黄色のネクタイに拘束されて。
その腕を縛った男に組み敷かれて。










ルパンが低く囁く。
「こんな体勢でもとことん強気────おまえのそういうところ、俺ァ好きだぜ」
鼓動が跳ねた。ルパンの視線を受け止めかねて、次元は思わず視線をそらした。
その隙に首筋に口づけられる。次元は鼻にかかった吐息を漏らした。
「・・・ん・・・ッ・・・よせって────」
肩で何とか自分の上の男を押し返そうとするがかなわない。
もがくことで却って緩んだ脚を、ルパンの膝が器用に開く。堅い身体が割り込んでくる。熱くなり始めた下肢をルパンの腿にまさぐられ、次元は低く呻いた。
「何でぇ、もうこんなにしてんじゃねえか。もっと素直になれって」
「・・・まずいだろ、今夜は」
「何で?」
「明日は合流するんだぞ、五ェ門も────不二子も」
「ははーん」
ルパンの手が次元の両頬を覆った。至近距離から目を覗き込まれる。
「なーるほど、不二子にヤキモチかよ。そんで、俺様をちょーっとばかし焦らしてみようと思ったりしたワケだ」
「ち、違う!」
「うぶな駆け引きだねえ、カーワイイの」
「そんなんじゃ・・・ねえって・・・」
次元は思わず口ごもる。だが、本当にそれだけではないのだ。





「この間だって・・・」





ルパンが仕事の前夜にこうした事を仕掛けてくる時がある。
前回もそうだった。
久々の仕事だったせいか、高揚する気分のままに、ずいぶん遅くまで身体を繋いでいた。
さすがの次元も翌日の動きは若干鈍く、それを見咎めた不二子に厭味をぶつけられ通しだった。それもずいぶんとあけすけなヤツを。
彼女は、人一倍聡いのだ。





だがルパンは平然としたものだった。
「こうやって次元ちゃんが駄々こねるからでしょ。さっさと始めりゃ、さっさと終わるって」
「けどよ・・・・・・」
「諦めろって。俺がこうと決めたモンを逃すわきゃねーだろが」





ルパンが笑う。
何をも恐れぬ、何をも盗み取る、稀代の怪盗が。





「そりゃ・・・そうだけどよ」
次元は、その笑顔に見とれながら、思わずつぶやいた。
ルパンは、今度は声を上げて笑った。そして頭を撫でられる、まるで子供にでもするかのように。
「いい子だ、相棒。じゃ、遠慮なく」
勢いよく伸し掛かってくるルパンを、次元は慌てて、いまだ枷られたままの手で小突いた。
「おい、ゴムは着けろよ」
ルパンは途端に渋面になった。
「えー」
だが、次元もこれは譲れない。
「えー、じゃねえ。俺たちが霧多布にいる一番の目的は?」
「はーい、お宝探索でーす」
「探索ポイントに潜っていられる時間は限られてるんだろ?」
「さっすが次元、俺の言ったことをよく覚えてるゥ────って仕事熱心なんだからよォ」
「明日は時間をトチれねえだろ、こっちの身にもなってみろってんだ」
「・・・次元だって生の方が好きなくせに」
「何か言ったか」
「いーえ、なーんにも。まったくもって仰せの通りにございます」
次元はほっとため息をついた。





「ったく、焦らしやがってえ。このヤマが終わったら覚えておけよ」
何やら不穏なつぶやきも聞こえるが、とりあえず、あとのことはその時のことだ。





「おい、こいつも外せよ」
次元は黄色の手枷の嵌ったままの両手を突きだした。
「へいへいっと。俺様って何て相棒思いのやさしい男なんだろう!」
あれほど頑なだった戒めも、ルパンの指がひょいと触れた瞬間するりと解け、ただのネクタイへと戻る。ルパンはそれを、無造作に床へと放った。
次元は、赤く痕の残る手首を撫でさすった。
「やさしい男がそもそも相棒を縛り上げるかよ」
「本ッ当に口の減らない男だね、お前も」
いい加減黙れとでも言うように、ルパンの唇が次元のそれを覆った。
いつもより性急な舌に煽られて、次元はルパンの背中に縋るように、その自由になった手を回した。










一気に追い上げられ、次元は堪らず吐精した。
「ああ・・・・・・ルパン・・・ルパン・・・」
次元はルパンの腰に足を絡めたまま、腰をうねらせた。身体の奥に燻る熱がもどかしい。
荒い息のまま、ルパンが笑う。
「まだ足りねえって顔してんな」
「ああ・・・ん、だって・・・・・・」
「やっぱり生がよかったんだろ。いつも俺のアッツーイのを注ぎ込まれて、たまんねえってキュウキュウ締めつけてくるんだからよォ」
耳元吹き込まれる淫らなトーンのささやきに、次元は身をよじった。
信じないと首を横に打ち振りながら、それが事実であることを自分の身体が一番知っている。





ルパンの指が、ふと次元の唇をなぞった。
次元はその感触に顔を上げる。
浮かされたような、熱っぽいルパンの視線に心ごと絡げとられる。
「じゃあ、代わりにこっちで飲むか?」





違えようもなく。





もう一度、ルパンの親指が下唇をなぞった。
そしてゆっくりとその指が次元の口の中に押し込まれる。残りの指で顔を固定されたまま、親指が次元の口中を強引に犯す。
「どうする?」
ルパンの囁きが耳を焼く。
何を考える余裕もなく、喘ぐように口走った。
「・・・飲みたい・・・・・・飲ませて・・・」
次元は口中のルパンの指を吸い上げ、舌で舐る。
口の端から唾液が零れ落ちる。
ルパンの目がどこか痛むように眇んだ。





ベッドの縁に腰掛けたルパンの、その脚の間に次元はうずくまる。
そしてそのまま、ためらいもなくルパンのそれにむしゃぶりついた。
それは、すぐに硬さを取り戻し、次元の喉を突く。
次元は時折えずきながらも、必死に喉の奥までルパンを咥えた。
舌を使う湿った音が、夜の空気に混じる。その音に、自分で煽られていく。





ルパンの指が、次元の髪を梳いた。
「いいぜ、次元。ずいぶんとうまくなったもんだ」
「・・・んっ・・・・・・んっ・・・・・・」
褒められたのがうれしくて、次元はさらに奥まで飲み込もうと必死に口を開け、熱いそれを迎え入れる。
歯を立てないように、慎重に首を前後に動かす。
苦い味が口の中に広がった。
次元は、いったんルパンを口から吐き出した。
そしてあらためてその先端を舌で嘗め回す。
指での愛撫を加えながら、先からあふれる苦味を味わう。
その熱さに酩酊しそうになる。





たまらず自分の下肢に伸ばした手を、ルパンの目はすばやく見咎めた。
「おっと、自分のはイジるんじゃねえぞ」
次元は思わず顔を上げた。
「そんな切なげな顔をするんじゃねえよ。もっといじめたくなっちまう」
ルパンは、にやりと口元を歪めた。どうしても許すつもりはないらしい。





次元は諦めてふたたびルパンのそれに顔をうずめた。舌で形をたどるように舐めあげる。すっかり覚え込まされた、ルパンの感じる場所に、丹念に舌を這わせる。
ルパンの息が荒くなる。
次元はふたたびルパンのそれを飲み込んだ。
さらに膨れ上がり、口の中に収めきるのも難しい。
次元は強く吸い上げると、そのまま顔を動かした。
「んッ、んッ、んッ、んッ・・・!」
「ああ・・・そこだ。すごくいい・・・・・・」
ルパンの指が髪を掴む。ぐいと押し付けられ、咽そうになる。次元は必死に舌を動かした。脈動が早くなる。
「・・・いくぜ、次元」
すぐに熱い奔流が喉を襲った。
「ふぅんん・・・んっ・・・・・・」
一滴も逃したくない。舌と喉で必死に受け止める。





すべて飲み下した。欲しかったものを得られた安堵に、思わず床に倒れこみそうになる。そこをルパンの手が捉え、ベッドの上へと引き上げられた。
腰掛けたままのルパンと向き合うかたちで、膝の上に抱えられる。
「いい子だったな、次元」
満足そうなルパンの笑顔。
下肢はまだ熱い。思わず不安に駆られるが、ルパンにはお見通しだったようだ。頬を軽く抓られる。
「イテッ」
「安心しろって。お前が眠るまでつき合ってやるからよ」
腰を抱き寄せられ、乳首をきつく吸い上げられる。
「・・・あっ────」
男の腕の中、身体をのけ反らせながら、次元の心は確かに悦んでいた。










初夏の眩しい日差しの中、目を覚ました次元大介は、次の瞬間、蒼白になった。
「お、起きろ、ルパン!」
「・・・んー・・・・・・?」
次元にしたたかに肩を揺さぶられ、薄目を開けたルパンは、サイドボードの目覚まし時計に手を伸ばした。
「ありゃまあ・・・」





────合流予定の時間まで、残りあと15分。





「すぐ出るぞ!」





慌しく、ベッドの下に乱れ落ちた服を身につける。
次元は顔をしかめながら、昨日のままのシャツに袖を通す。さすがに自室に戻り、新しいシャツを持ってくる時間はない。
ぼやぼやとした手つきでルパンがクローゼットから着替えを出している。
無性に腹が立って、次元はルパンが手にしていたそれを奪った。
「貸しやがれ!」
「ありゃ、次元。それ履くの?」
よく見ればそれは、トランクス。緑の縦縞の。
引くに引けずに次元は怒鳴った。
「下着くれえ新しいのを着けていきてえんだよ!」
「あはは、じゃあ俺もおそろいのにしよっと」
そう言ってルパンは、同じ柄のトランクスを取り出す。こちらは青だ。
「見て見て、ペアルック〜!」
次元は顔をしかめた。
「ビョーキかお前は」
「人のパンツ履きたがる奴よりはフツーだと思うぜ」
「誰のせいだバカ!」
「んー、昨夜なかなか俺を眠らせてくれなかったカワイコちゃんのせい?」
「──────ッ!とっとと着がえろ!」
「へいへい」





時間にしてものの5分。
二人を乗せたフィアットはアジトを飛び出した。





次元は助手席に、高く脚を組むいつものスタイルで収まった。
あと10分。
「間に合うか?」
「だーいじょうぶだって」
急なカーブにもほとんどスピードを緩めることなくフィアットは滑らかに進む。
「ま、車の運転でお前さんにあれこれ言うのも野暮な話か」
「まあねえ、たいていの乗り物は俺様の意のまま────次元ちゃんに乗るのも上手でしょ」
「俺はいっぺんそのふざけた脳ミソを洗濯板で徹底洗浄してやりてえよ」
上着の内ポケットを探っていた次元が舌打ちした。
「チッ、予備の弾ァ忘れてきちまった」
準備しようとしたところで、昨夜はそのままルパンのところへ呼ばれてしまったのだ。
「んー、まあ大丈夫だろ。今回、特に大立ち回りの予定もないしな」
「それもそうだな・・・・・・どうも落ち着かねえが」
「じゃ、今日はサクサク探索して、サクサクおウチに戻りましょっか」
ルパンは笑いながら、次元にウィンクした。
「・・・おう」
次元は低く答えると、窓の外に視線を流した。何だか決まりが悪かった。





こういう瞬間、ルパンに甘やかされている、と思う。大切にされているのだ、と思う。
認めたくはないが、そういうことなのだ。
対等の相棒でいたいという矜持も確かにあるのに、気がつけばネコの子のようにルパンの手の中であやされている。
いちばんタチが悪いのは、自分の中にそうした扱いを喜ぶ部分がひそかにあることだ。
プライドごと、心ごと、この我儘で気儘で────そしてやさしい泥棒に盗み取られてしまっている。





次元はため息をついた。





「やっぱりてめえってヤツは始末に終えねえぜ、ルパンよ」
「どしたの、急に」
「ま、いろいろとな」
「男心も複雑だねえ」
不意に伸びてきた指に、頬を軽く摘まれた。
「おい」
「そーんな顔してんなって。まァた不二子にどやされっぞ」
「チッ」
次元は舌打ちすると、ボルサリーノを深くかぶりなおした。
赤くなった頬を、誰の目からも隠してしまうために。










そして、その「サクサクとした帰宅」が、500年の時間を経てのことになるとは、まだ二人とも知るよしもなかった・・・








end










テレスペ「霧のエリューシヴ」ネタ。




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