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hotel





































































































タイムマシン騒動にもケリがつき、何とか現代へと戻ってきた、その日の午後。
ルパンと次元の二人は、五ェ門と不二子と別れ、北海道のなだらかな道を、どこへ行くともなく車で流していた。
職務熱心な警部殿に発見されたのは、低いトーンで遅めの昼食をラーメンにするかカレーにするか、真剣に言い争っているさなかのことだった。
それから例のカートゥーンさながらの追いかけっこ。
銭形と彼の指揮する道警連中を振り切ったのは、夜もずいぶん更けてのことだった。










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「次元、これからどうする」
フィアットを操る相棒が訊ねてくる。
マグナムを背中に収めると、次元は大きく伸びをした。
「まず風呂だな。あとはとにかく眠りてえ」
「オッケー」
ルパンは左にハンドルを切ると、街道沿いの建物にフィアットを入れた。
「何だここは?」
看板にはホテルとあったが、何だか奇妙なつくりだ。メゾネットタイプらしく幾つものドアが並び、各戸の隣にそれぞれ、専用の駐車スペースが設けられている。
「まあまあ。入った入った」
手を引かれて屋内に入る。そのままドアを締めると、ガチャリと鍵が掛かった。
「おい」
「大丈夫、こういうとこなんだって。ほら」
階段を上がった部屋のど真ん中には、相棒と二人、レスリングでもできそうなサイズのベッドが鎮座ましましていた。
なるほど、状況がよくわかった。
「・・・さかさくらげか」
ため息に、ルパンの爆笑がかぶった。
「次元ちゃん、それ古すぎだよ」
そんな言葉聞いたの、いつ以来だろ。そう言って相棒は、身体をくの字に折り曲げて、痙攣したように笑っている。
「う、うるせー。久々なんだよ、日本は」
次元は真っ赤になってぷいと横を向くと、そのまま視線を室内に流した。





ずいぶん明るく小奇麗な部屋だ。
なるほどカップル向けなのだろう、デコラティブな調度で統一されている。
微妙な居心地の悪さを感じつつ、ソファに腰を下ろしテレビをつけると、ブルーフィルムが流れていた。10代にも見える女が男を咥え込んでいる。
次元はあらためてため息をつくと、立ち上がった。
「見ねえの?」
「ガキは好かねえな。風呂、先に使うぞ」
「おー」
このほこりまみれの身体を、とっとと何とかしたかった。
笑いながら画面を眺める相棒を残し、次元は脱衣所で手早く服を脱ぎ捨て、バスルームに入った。
そして、がっくり肩を落とした。
相棒がにやけ面で手を振っている、ソファの背から身を乗り出さんばかりに。なぜそれがわかるかと言えば、バスルームのベッドルーム側の壁面が、全面ガラス貼りだったからだ。
シャワーの取り付けてある壁も、こちらは全面鏡張り。髭男が困惑顔でこちらを見返している。
「何を考えてこんなもの作りやがったんだ・・・・・・」
次元はルパンも鏡も無視することに決め込むと、シャワーのコックをひねった。程なくして熱い飛沫が降り注いでくる。日本のホテルは、こういうところが好ましい。





仰向いて、温かなシャワーを全身に浴びる。肌の緊張が緩む。次元はほぅっと息を吐いた。
儲けも出ない、とんだ仕事だったが、こうしているとそんな虚脱感も洗い流せてしまえそうだ。
そのままぼんやりとシャワーの飛沫を受けていると、不意に浴室内が暗くなった。
「────ッ?!」
咄嗟に周囲を確認する。
だが、次の瞬間、すぐに事情が知れた。
浴室がいきなり、ピンク色に染まる。
光源は上から。見上げれば、電灯の明かりの色が変わっている。そしてそれは次元の目の前で、今度は紫に変わった、そしてオレンジに。
ガラス越しの相棒は、こちらを見てはしゃいでいた。
手にはリモコン。それをいじるたびに、色が変わる。どうやら、これもこの部屋に仕込まれた、そういうギミックの類らしい。
はあああぁぁぁ。
次元は、ここに入ってからもう何度目になったか知れないため息をついた。
次元が日本を離れている隙に、日本の連れ込みは、相棒がひたすら好みそうなアミューズメントスポットに変わっていたようだ。





そういえば昔も、日本での仕事のとき、ルパンと二人で連れ込みを使ったことがあったな。
次元はふと思い出す。
車中泊が続いて、さすがに布団の上で寝たいと宿を探したが、時間がやはり遅かっただけに連れ込みにしたんだった。むろん、もっと薄暗く狭い宿だった。
あの頃は、確か男女でなければ宿泊できなかったような気がする。
そうだ、それで女装しろとルパンに言われたのを突っぱねて・・・・・・ああ、あの時妙にあっさり引き下がったのが不思議だったんだ。
ルパンはこうと決めたことはたいていやり遂げる────何か他に、もっと面白いことを見つけたとき以外は。
そしてそのときのルパンも、女装嫌いの次元に無理強いするよりも、「もっと面白いこと」を見つけていたわけだ。





次元はその夜、女に化けた相棒に、そのままの姿で犯された。
悪趣味な趣向に必死に抵抗したが、縛り上げられ、嬲られ続けた。
非難の言葉と嬌声を上げ続けた喉はかすれ、しまいには、うぶな小娘のようにただすすり泣くことしかできなくなっていた。





「・・・・・・イヤなことまで思い出しちまった」





あの淫靡な狂乱の一夜。
そして一番狂っているのは、面白ずくでそんな辱めにあわされようとも、ルパンから離れられない自分なのだろう。
次元はため息をついた。





気がつけば、ライトはピンクの状態で止まっていた。単純な仕掛けだ、さすがに飽きたのだろうが。
それにしても。
「何て色だ・・・・・・」
悪趣味なピンク。まるでストリップショーだ。
さっさと上がるか。備え付けのシャンプーのボトルを手にした、そのときだった。
カチャリと小さな音を立てて、浴室のドアが開いた。
「ルパン?」
振り返ると、果たしてそこには裸の相棒。
「悪いな、すぐ出るからよ」
そう言った次元に、ルパンはにやりと笑った。次元は総毛立った。





「お前が出ちまったら、意味がないだろ、次元」





まずい、これはまずい。
この笑顔を浮かべるときのルパンは、たいていろくなことを考えていない。
というか、このシチュエーションは、かなり展開が限られるんじゃないだろうか。





ルパンがゆっくりと近づいていくる。
「お、俺は今日はもう眠りてえって言ったよな」
次元は、思わず後じさる。
「ああ、だから寝ようぜ」
ルパンが、さらに近づいてくる。
「サ、サカってるんじゃねえよ、バカ!」
さらに下がろうとして壁に阻まれる。次元は身をすくませた。
ルパンは笑う。
「サカってんのはどっちだよ」
ルパンは、次元を囲い込むように、壁に両手をついた。そして、耳元に唇を寄せる。
「お前、いま何考えてた?」
低い囁き。思わずぎくりと息を呑む。視線を伏せるが、ルパンはそれを許さない。
顎を掴まれ、仰向かされる。
覗き込んでくる、その丸く黒い瞳。
「すごくいやらしい顔してたぜ、なあ」





何もかも。
俺はこいつの手の中だ。





次元は目を閉じると、ちいさくため息をついた。
両肩を掴まれ、勢いよく引き寄せられる。仰け反った喉をきつく吸われる。軽く歯が立てられる。
「あ・・・・・・っ」
思わずびくりと身体が震えた。
そのまま壁に叩きつけられ、後ろを向かされる。手をついた鏡張りの壁は冷たく、否が応でも、自分が熱くなっていることを思い知らされる。
背後からルパンが覆いかぶさった。
ルパンの手が伸び、下肢をまさぐられる。きざし始めたそれを、ぐいぐいと扱き上げられた。
「んんっ・・・・・・んっ!」
次元は必死に唇を噛んだ。だが、ルパンの指は残酷なまでに的確に次元を追い詰めていく。
「もう熱くなってんじゃないの。なーに考えてこんなにしてんだろうねえ」
皮肉げな口調。急速に追い上げられ、次元は必死に壁に爪を立てた。
「あっ!」
無造作に、ルパンの指が次元の中に入り込んだ。
指が、強引にそこをこじ開けようと、乱暴に動き回る。
「ひ・・・・・・あっ、あっ」
前も後ろも性急にまさぐられ、狂おしいほどの快楽に、次元は身悶えた。
「も、もう・・・・・・」
「もう? どうした?」
からかうような響きのルパンの言葉に、頓着する余裕すらもうなかった。
「もう、無理だ。イッちまう・・・・・・ッ!」
その声を確認して、ルパンの手が離れた。
身体もさっと引かれ、支えを失った次元の身体は、壁伝いに崩れ落ちた。
そのままタイルの床に這う。直前で止められた腰が疼く。
「揺れてんぜ、腰」
見咎められ、羞恥に身をよじる。そのはずみで、タイルに熱くなった下肢がこすれ、声もなく身体を震わせた。
「安心しろって。きっちりイカせてやるからよ」
「ひっ・・・・・・!」
腰を掴まれ、強引に引き摺り上げられた。腰だけを高く上げた姿勢を取らされる。
恥らう余裕もなく、ルパンに刺し貫かれた。
「ああああ────!」
肉と肉のぶつかり合う、鈍い音が浴室に響く。
声を殺すために噛み締めるリネンもここにはない。
ルパンの力任せの速い動き。次元の背中にぼたぼたとルパンの汗が落ちる。
その感触すら、いまの次元を惑乱させる。
「ほら見てみろよ」
髪を掴まれ、顔を引き上げさせられた。
淫猥なピンク色の照明が、ぬめる肌を照らしている。
鏡に映る自分の顔は、涙と汗と唾液と────快楽にまみれていた。
「い、いやだ────あああっ」
ぐいと脚を抱えられ、身体を引き起こされた。ルパンの膝に乗り上げ、さらにルパンに奥深く穿たれる。
「あああ・・・・・・ああ」
深く穿たれ、力なく喘ぐ次元に、容赦せずルパンは次元のそれを弄ぶ。
「見ろよ、ほら。いやだいやだっつって、こんなにギンギンにしやがって」
次元は目をきつく閉じ、首を激しく打ち振った。次元の肩に触れるルパンの喉が、低い笑いに震えた。
「本当に好き者だよな、お前」
次元を揶揄するルパンの息も荒い。次元は必死にルパンを振り返ろうとする。
「どうして、お前、今日は、こんな────あうっ!」
だがルパンは、動きでそれを封じてしまう。
「・・・・・・さあな、何でだろうな」
突き上げる、ルパンの腰の動きが速くなる。繋がった部分が、粘ついた水音を立てる。
次元は、がくがくと震えた。
「ひ、あああっ、イ、イク、イクッ・・・!」
「イケよ、イッちまえ!」
「あああっ、あっ、あああぁぁぁ・・・・・・!」
ようやく許された快楽の極みに、次元は打ち震えながら精を放った。
息を整えるまもなく、中がルパンの欲望に濡らされる。
「ふぅ・・・・・・んっ」
その熱さに、次元はたまらず身を振るわせた。
だがルパンは、そんな次元の苦しげな様子にも頓着することはなかった。
すべてを出し切るように腰をうごめかせながら、次元の顎をつかみ、引き上げる。
「ほら見ろよ。綺麗なもんだぜ」
ルパンの掌で据えられた、その目線の先には、次元の放った白濁がねっとりと鏡面を滴り落ちていた。
顔を背ける次元を見て、ルパンがまた声を上げて笑った。










あのあと、ベッドに場所を移してさらに2回。
あらためてシャワーを浴びなおす気力もなく、次元は広いベッドの片隅に、シーツにくるまり丸くなっていた。ルパンに背を向けるのが、せめてもの意思表示だ。正直、却って情けない気がしないでもないが。
そんな次元をかまうでもなく、煙草を吸っていたルパンが、思い出したようにつぶやいた。
「で、けっきょくお前、あのとき何考えてたんだ?」
「あのとき・・・・・・?」
意味がわからずに、鸚鵡返しにする。
しばらく考えてようやく、次元はルパンの言うそれが、浴室でのやりとりのことだと気づいた。
「俺のこと考えてたんだろ、ええ?」
そのかすかに苛立ったような響き。
次元は思わず振り返った。
相棒は、いつもどおり不敵に笑っている。だが目の奥に、隠しきれない揺らぎがある。





何だ、見透かされていたわけじゃなかったのか。
何だ、ただの────ヤキモチだったのか。





「おい、何笑ってんだよ」
くつくつと低く笑う次元と反対に、ルパンの機嫌はみるみる悪くなっていく。
次元は笑いながら、拗ねる相棒を手招いた。
「ん、どうした?」
すぐさま煙草を灰皿に押し付け、素直に身を寄せてくるルパンが、何だか可愛らしくて仕方がなかった。
次元は、そのままルパンの身体を引き寄せた。
「おい」
途惑うルパンを、ぎゅうぎゅう抱きしめる。





「お前のことだよ、ルパン」





次元は微笑んだ。ルパンの短い髪にその笑顔をうずめる。
「お前と俺が、昔やらかした────バカみてえなことを思い出してたのさ」
「・・・・・・ふん」
ルパンが納得したのかしないのか、よくわからなかったが、もうどうでもよかった。





ずるい男だ。
手酷く扱って、散々身も心も翻弄しておきながら、子供のような無邪気さで、人を容易く魅了してしまう。
愛しいと、思わされてしまう。





「寝るのか、次元」
そう言って身を起こそうとするルパンを、もう一度抱き込んだ。
「いいじゃねえか、今日ぐらい、このままで」
ルパンは何やらブツブツ言っている。だが、聞こえない振りをした。
相棒のぬくもりと重みを感じながら、次元はやって来た深い眠りに身をゆだねた。








end










テレスペ「霧のエリューシヴ」ネタ(一応)。




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