P.

Prison





































































































やさしい檻









音も無く寝室のドアが開いた。
ルパンは瞬間、覚醒する。雨の音が耳に煩い。
だが暗闇の中、そっとたたずむ気配は、ルパンのよく知ったものだった。
「次元?」
「悪い、起こしちまったな」
ルパンは思わず苦笑した。
眠っていても、相棒の押し殺した気配をすぐに察する自分と、取り繕ってはみても、すぐに自分が寝ていたことに気づく相棒。
どれだけ長く一緒にいたのだろう、俺たちは。
ルパンは半身を起こした。
午後中、外へ出ていた次元は、今帰ってきたばかりなのか、まだスーツ姿だった。帽子は珍しくかぶっていない。
車を使わなかったのか、髪もジャケットもしっとり濡れている。
裸で寝ていたルパンに頓着する様子も無く、次元はルパンの元へと歩み寄った。いつもと同じ、飄然とした仕草で。
だがルパンは眉をひそめた。
雨の匂い。それに混じって、微かな硝煙と血の臭いがした。
カーテンを開けたままの窓からぼんやりと差し込む街灯の明かりが、痩せた相棒の顔を照らす。ルパンの視線を避けるように反らされた眼差しはどこか暗かった。
「何があった」
「何も────何もなかった」
口早に繰り返された否定の言葉。だがルパンは重ねて問うた。
「怪我の手当ては?」
「・・・・・・もう済ませた」
「そうか。それならいい」
「・・・・・・・・・・・・」
黙り込んでしまった次元の手をそっと握ってやる。その手は、氷のように冷たかった。
指で掌を愛撫するようになぞると、次元はベッドに乗り上がってきた。
「ルパン、いいか?」
上目遣いに見つめられる。だがそれは欲望というよりも、もっと切羽詰った、苦おしげな色に覆われていた。
「次元」
咎める声にかまわず、次元は手早く服を脱ぎ捨て、ブルーのボタンダウンシャツだけの姿になった。シャツの釦を二つ外すと、ルパンの下肢に屈みこむ。
「お前は何もしなくていい。全部自分でやるから」
湿った感触がルパンを包む。
口腔の奥深くまで飲み込み、中で懸命に舌を動かす。濡れた音が暗い部屋に満ちる。
なだめるように指で髪を梳いてやるが、次元は必死になって首を上下に動かし続けた。
ルパンが程なく高ぶると、次元は唾液に汚れた顔を上げた。そして慣らしもせずに、猛ったそれに腰を落とした。
「──────!」
「バカ、よせ!」
ルパンは慌てて、なおもルパンを体内にこじ入れようとする次元の脇に手を差し込むと、痛みに震える身体を抱えあげた。ベッドに横たわらせると、きつく抱きしめる。
「無茶するんじゃねえよ」
こうした行為に慣れた身体とはいっても、そうやすやすと受け入れられるものではない。
だがその痛みを、次元は欲しているのだろうか。
抱きしめたまま、そっと身体の下に引き込む。
口づけようとしたが、次元はふいっと顔を反らした。苦しげな横顔。
「お前に手間を掛けさせるつもりはないんだ」
「あのなあ。こういう行為は二人で楽しむためにするもんでしょうが」
ルパンはことさら明るい声を作った。
何が起きたのか自分に隠そうとする、その相棒の意志を踏みにじる気はなかった。
だが、ただ手をこまねいて見ているだけというのも、自分の流儀に反するのだ。
ルパンは、気づかれないように次元の今夜出来たばかりの傷の位置が左腕にあることを確認する。シャツの下に手を潜らせると、左腕を避けながら身体をまさぐった。
「お、おい」
「相手が痛いばっかりじゃ、稀代の色事師の名がすたるってもんだ」
次元の息が徐々に上がりだす。
「ルパン、待ってくれ、ルパン」
「安心しろよ、次元」
ルパンはにやりと笑った。
「痛みなんかよりも、もっと酷い目にあわせてやるよ」
身体の下の次元が、思わず怯えたように身をすくませた。










「ああ・・・・・・っ」
ようやく自分の中に押し入ってきた男に、次元は歓喜の声を上げた。
あれから指と舌で嬲られ続けた身体は、一度も達することを許されず、次元はついには泣きながら「入れてくれ」と何度も請うた。
ようやく得られた快楽に、もっと奥深くまで男を迎え入れようと、貪るように腰がうねる。ルパンが腰を引こうとすると、内側がきつく締まり、絡み付いてくる。
「いやらしい奴だ」
ルパンは低く笑った。途端にさらにきつく締め上げられる。
その締め付けを楽しみながら、ルパンは次元の身体を抱きしめ、深く口づける。ねっとりと舌で愛撫を繰り返し、唾液を絡ませあう。腕の中の次元は身体を震わせ、額からは汗が噴き出した。
唇が離れ、唾液が口の端からあふれる。だが、次元はもはやそれにかまう余裕もないのか、震える舌で必死に声を絞り出す。
「ル、ルパン」
かすれた声。ルパンは背筋をぞくぞくさせながらも、平静を装って笑う。
「どうした、次元」
「お願い・・・・・・お願いだから」
次元の目から、新たな涙が零れ落ちた。
「う、動いて」
「こうか?」
ルパンが浅く突いてやると、それだけで次元の身体は弓なりにしなった。
「も、もっと・・・・・・ああんっ」
望みどおりに、奥を突いてやる。ゆっくりとした動きに、次元は濡れた声を上げ続けた。
「ああっ、アァ・・・・・・」
とろとろに溶けた身体を、だが決して終わらせないように、ルパンは慎重に動く。
次元の好む場所を故意に外し、極みの見えるごとに動きを止める。
やがて次元の身体は、狂おしげにのたうった。
「ああ・・・・・・ルパン、どうして」
「酷い目にあいたかったんだろ」
ルパンは笑いながら次元の耳元に囁く。
「痛みよりも堪えきれないだろう、コッチの方が」
「んっ、あああ・・・・・・!」
またゆったりと腰を動かしてやる。
次元はがくがくと震えながら切ない声を上げた。
「も、もう、おかしくなる、おかしくなっちまう────ああ・・・・・・んっ」
「おかしくなればいいじゃねえか。そうしたら、一生こうして抱いててやるよ」
また深く押し込んでやる。離すまいと、次元の細い脚がルパンの腰に絡んだ。
「次元」
「お願い・・・・・・お願いだから」
脚を絡めたまま、腰が揺らめく。
もどかしげに首を振りながら、必死になってルパンの背中に爪を立てる。
「ルパンが欲しい・・・・・・」
ルパンは、次元の身体を抱えながら、身体を起こした。
より深く咥えこみ、次元の喉が悲鳴を漏らす。
だが、ルパンはかまわず深く突き上げる。
打って変わっての強い刺激に、次元は泣きながらよがり狂った。
「んんっ、ああん・・・・・・あああっ」
「いいぜ、くれてやるよ」
腰を揺すりあげ、性器をいじってやる。次元は声を上げ続けた。
「ああっ、あああ、ルパン・・・・・・ルパン!」
腰の動きを早めると、次元はもはやなすすべもなく、ただ揺すぶられていた。やがて、ルパンの迸りを身体で受け止める頃には、すっかり気を失ってしまっていた。










雨はまだ降り続いていた。





ぐったりとした身体を、そっと横たえる。
汗にぐしゃぐしゃになったシャツを脱がせてやり、腕の怪我を確認する。
包帯に薄く血が滲んでいる。確かに深い傷というわけではないようだ。
だが身体に怪我を負うたび、次元の心には同じだけ傷が出来る。優しい男は、それを癒すすべを知らない。
ルパンはため息をついた。
身じろぎすらしない相棒の隣に滑り込むと、次元の頬に残る、乾いた涙の跡を指でそっと拭った。そして、その頬を指で軽く抓る。
「あんまりおんもで傷ばかり作ってくるようなら、終いにゃ檻の中にでも閉じこめちまうからな」
耳元に囁きを落とすと、ルパンは相棒の痩せた身体を、腕の中にきつく抱き込んだ。





この雨の音が、今は静かな眠りにつく彼に届かないように。
一夜限りの檻の中へと閉じ込めた。








end










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