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Love Cat





































































































Love Cat









社会主義国の夜の闇は深い。
深夜、北京の故宮博物院。
ルパン、次元、五ェ門の三人は、その宝物殿に押し入った。
形ばかり忍んで天井伝いに降り立ったものの、警備などまったくなく、三人は難なく内部への侵入を果たした。
陳列棚に並ぶは中国の歴史が生み出した無数のお宝。
今回狙う獲物は、時価六億、秦の始皇帝愛用と伝わる、翡翠の麻雀牌である。
やはり防犯装置も何もなく、あっさり取り出したお宝を手に、ルパンが暢気に笑った。
「いよいよ不二子と結婚かあ」
「何、何か仰った?」
傍らの次元が目を丸くする。
「不二子の奴な、これ盗ってきたら結婚するわ約束するわ誓うわ、なーんつったのよ」
そしてお宝を小脇に抱え、口笛を吹きながら、宝物殿をスキップで飛び出していく。
ルパンの能天気な後姿を見送って、次元もこれにはさすがに呆れ果てて肩をすくめた。
「また騙されるだけだってのによォ」
五ェ門も思わず頷く。
「ルパンの奴、マゾかもしれん」
しかし次元から思いもかけぬ反論の声が上がった。
「はあ?! ルパンのどこがマゾだ。あいつは真性のサディストだぞ」
いきなりのことに目をしばたたかせる五ェ門。
だが次元はかまわず、怒りを隠さず、震える拳を握り締めた。
「昨夜だって・・・・・・!」










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不意を突かれた。
次元は悔しさにきつく唇を噛んだ。
夜半、ルパンの部屋に呼び出された。
さしたる疑いも持たずにホテルの部屋のドアを開けた次元は、飛び掛ってきた影に、いきなり床に引き倒された。
ルパンの仕業だと気付く頃には、難なく両手を後ろ手に縛り上げられ、ベッドの上に転がされていた。
手を枷られたまま服を脱がされ(こればかりは何べんやられても、どうしてこんなことが可能なのか、次元にはさっぱり理屈がわからなかった)、裸の脚は抵抗もむなしく強引に折り曲げさせられ、脛と腿とを重ね合わせた状態でぐるぐる巻きに縛られた。しかも左右それぞれともに。
そしてそのまま手を離されてしまえば、次元にはもはや、シーツの上で無様に転げ、ただもがくことしか出来なかった。
手を動かしてみても、縄が手首にきつく食い込むばかり。
奇妙な形で縛られた脚では、身を起こすことすらも儘ならない。
(同じ手を何度食らえば懲りるんだ、俺は)
次元は自分の迂闊さを盛大に呪った。
「いーい格好だな、次元ちゃんよ」
ルパンの声は楽しげだった、まるで手頃な玩具を見つけた残酷な子供のように。
子供が虫の羽を毟るように、手足を実際にもがれないだけましなのかもしれない。
次元は低く舌打ちした。
「どういうつもりだ、ルパン」
「んー、ちょーっと退屈だから遊ぼうかと思ってさ。付き合ってくれんだろ、相棒?」
屈託ない笑い声。
次元は膝で起き上がろうともがくが、歪に括られた四肢ではそれは果たせず、またベッドに転がった。
ルパンの笑い声が、さらに高くなる。
「可ァ愛いの、お人形さんみてえだな」
そうして頬に音高く口づけられる。次元はきつく首を横に振った。
「い・・・いい加減にしやがれ」
そう吐き捨て、目の前の男を睨みつける。
そもそも、いままで次元がことさらルパンの手を拒んだことはない。
なのに何故こんな真似をされなくてはならないのか、さっぱりわからなかった。
ルパンは次元の頬に指を這わし、親指の腹で眦を拭った。
その仕草に自分がまた涙ぐんでいることに気付き、次元は真っ赤になって唇を噛む。
次元の様子を見ながら、ルパンがため息をついた。
「まったく・・・失望させるようなことを言ってくれるなよ、次元」
「え────」
次元は慌てて顔を上げた。ルパンは薄く笑いながら、だが瞳の奥にはありありと侮蔑にも似た色を浮かべている。
「な・・・んで・・・・・・」
次元は呆然とつぶやいた。
何もわからない────今夜のルパンの行動も、いまの言葉の意味も。
身体を起こそうとして、果たせず、また転がる。
「だってよ次元」
ルパンの指が、シーツに這いつくばる次元のおとがいを捉えた。
そしてその瞬間、ルパンが浮かべた笑みに、次元は背筋をぞくりと震わせた。
「────俺がこういう時に、事をいい加減に終わらせるはずがないってことくらい、お前が一番承知のはずじゃねえかよ」
「・・・・・・・・・!」
咄嗟に逃げを打った腰を掴まれ、強引に引き戻される。
尻たぶを平手でしたたかに打たれ、抗いも止まる。
その身体を抱き込まれ、耳元に吹き込まれる熱い囁き。
「朝までたっぷり可愛がってやるよ」
身をすくめた次元にまたルパンは笑い、その堅い首筋にきつく歯を立てた。





シーツに俯せにさせられた肩を押しつけられ、ろくに慣らしもしない其処に、いきなり猛った性器を突き立てられた。
強張り呻く身体は、だがすぐに慣れた快楽にほどける。
ルパンの喉が低く鳴る。悔しさと羞恥とに、次元の身体は震えた。
「もうこんなだ」
ルパンの指が次元の性器に掛かり、やわやわとまさぐられる。
次元の混乱をよそに、そこはすっかり張り詰め、雫を滴らせ始めている。
「あっ・・・・・・あぁ・・・っ」
指で扱かれ、思わず声がこぼれた。
自分の上げた声の、その濡れた色を纏った響きに、次元の目にまた涙が浮かんだ。
「ホーント、痛いの好きだよねえ、次元は」
引き攣れるような痛みと男に穿たれる快楽。
それが交互に襲ってくる、このどちらともつかない曖昧な時間が、次元はひどく苦手だった。
痛いばかりなら歯を食いしばって耐えていればいいし、快楽に流されてしまえばどうせ何も覚えてはいられない。
だがこうして痛みと悦びが入り混じる中では、自分の浅ましさばかりを感じさせられる。
自分の意志が脆く崩れ、男のもたらす悦楽に進んで身を投げ出そうとする、自分の浅ましさばかりを。
「は・・・あ────あぁ・・・・・・」
次元の中に入り込み、それきりルパンは動こうとはしない。
ただ次元の前を戯れにいじるばかりで、次元が身をよじると途端に手を引いてしまう。
戒められた脚が、枷られた腕が────もどかしさに身を焼かれそうだ。
「ルパン・・・・・・」
浅い息の中、次元は必死にルパンを呼んだ。
そのあまえた声に、死にたいほどの羞恥を覚える。
「何だよ」
だがルパンは笑うだけだ。
次元の中のそれは、熱く堅く脈打っているというのに。
たまらない。
次元はもじもじと、自ら腰を蠢かせた。
下肢がシーツに擦れる────まだ足りない。少しも足りない。
「ルパン・・・・・・頼むから・・・」
考えるよりも先に、言葉がこぼれ出す。
不自由な体勢の中、腰を揺らめかせながら、必死にねだる。
「どうして欲しい?」
まるで悪魔のような台詞。
笑いながら、ルパンは尚もささやく。
「全部、お前の言うとおりにしてやるよ。俺はやさしい男だからさ」
どの口がそんなことを言う・・・!
憤りながらも、もう身体の疼きをこらえられない。
もつれる舌で、ルパンに懇願する。
「もっと・・・奥まで・・・・・・」
かすれた声のそれを、ルパンは即座に聞き届けた。
深い衝撃に身体がたわむ。待ち望んだものを与えられ、次元は感じ入ったように嘆息を漏らした。
「それから?」
囁きざま、耳殻の裏側の薄い皮膚に口づけを落とされ、舌が這わされる。
次元はもう何も繕えず、ひときわ高く啼いた。
「動いて・・・」
口にした瞬間、中の男を締め付けてしまう。
ルパンが一瞬、息をのんだ。
一度深く息を吐くと、微かに声をうわずらせ、また問い質す。
「どんな風にされたい・・・?」
「え、抉って────ああっ・・・」
言葉通り内側の弱い箇所を擦り上げられ、喜悦の声を上げる。
言葉にすれば与えられる、その悦びに次元は我を忘れた。
「あ・・・奥────」
不自由な体勢のまま懸命に腰を振り、より深く男を迎え入れる。
「もっと・・・もっと、突いて・・・」
泣きながら喘ぐ。そこの声に煽られたか、ルパンの動きも速くなる。
「あ・・・っ、あ・・・・・・んっ・・・ルパン・・・」
「すごく・・・熱くなってる、次元」
「そこ・・・・・・あ、もう・・・行く・・・・・・」
「いいぜ、行っても」
そう言うと、ルパンは遮二無二腰を突き動かした。
次元はもはや言葉にもならぬ声で泣き叫びながら枷られた身体をのたうたせ、すぐにシーツを精液で濡らした。
その汚れた中に沈み込み、今度は相棒のそれを身の内に受け止める。
自分の内を濡らす、その熱さに焼かれて、次元の身体はびくびくと狂おしげに跳ねた。





鼓動が落ち着き始めるころ、ずるりとルパンが引き抜かれた。
ぼんやりとしたままの次元を抱き起こすと、ルパンは胡座をかいた、その膝の上に次元を座らせる。
「いつもこんなに素直だったら、俺もこんなことをしないで済むのに」
ルパンはそうつぶやくと、するりと次元の脚の枷を解き、手の枷を解いた。
ようやく息をついた。それでも痺れた四肢は、思うように動かすことも出来ない。
「だから俺の言うこと、最初から聞いときゃよかったんだよ」
お前はけっきょく、俺の思い通りになるんだからよ。
片頬を歪ませ、ルパンが言う。
ふと昨夜、ルパンに誘いを掛けられ、断ったことを思い出した。
五ェ門も一緒のときなのだからと、そう言って。
(俺が言うことを聞かなかった、その腹いせかよ────)
次元は呆けた表情でルパンを見つめ・・・・・・そしてため息を吐いた。
ん? とルパンが覗き込んでくるのを、まったくだなとつぶやき返す。
やけっぱちの声音に気づいたかどうだか知らないが、ルパンが、だろ? と嬉しげに笑いかけてくる。
(しょうがねえヤツ・・・)
次元は笑おうとして、その代わりにもう一度、今度は大げさにため息を吐いた。
ルパンが首を傾げるから、次元は口の端を引き上げてぼやいた。
「まったく妙なことばっかり俺に教え込みやがってよ・・・」
「えー、でも縛られて燃えてたじゃんか、お前」
次元のしかめた顔に、ルパンはけらけらと声を上げて笑い出した。上機嫌のまま、髪を撫でられる。
「ま、責任取って俺が一生可愛がってやるから安心しろよ」
「・・・不二子はどうするんだよ」
「お、次元ちゃんヤキモチ?」
「バカ言うな」
次元の抗議も、ルパンは聞いちゃいない。
にやにやしながら、俺ばっかり妬いてるってのも間尺に合わねえもんな、などと言っている。誰が何に妬くんだ、意味がわからねえ。
そのうちにまたベッドの上に引き倒され、ルパンが伸し掛かってくる。
「今度はやさしくばっかりしてやるからよ」
そう笑うと、ルパンは片目を閉じる。まるで子供のような笑顔。
本当に────しょうがねえヤツだ。
唇を寄せられ、次元は素直に目を閉じた。










++++++++++










拳を握り締めたまま、ぼんやりとする次元の顔を、五ェ門が覗き込んだ。
「昨夜がどうした?」
「昨夜は・・・・・・」
次元は言い淀む。言い差して初めて、五ェ門に言えるようなエピソードが一つもないことにようやく気付いたからだ。
それに。
(昨夜は酷くされたってばかりでも・・・・・・なかったか)
戒めを解かれてからあとのことを思い出し、次元はそっと目を伏せた。その瞼もうっすらと赤く染まっている。
だが五ェ門は容赦ない。
「で、ルパンのどこがどうサディストだというのだ?」
「・・・あ、いや、それは────」
さらに重ねられる五ェ門の問いに、次元はついに真っ赤になった。
五ェ門がふとつぶやく。
「・・・昨夜、恋猫のごとき声がルパンの部屋からしていたな」
「レンビョウ?」
「恋の猫────春先の、さかりのついた猫のことだ」
「誰がさかりのついた猫だ!」
かっとなった次元が怒鳴る。
五ェ門はため息をついた。語るに落ちるとはこのことか。
「・・・次元、日本に江戸の頃より伝わる諺がある。そなたたちには似合いであろう」
「な、何だ?」
侍は冷ややかな口調で告げた。
「────割れ鍋に綴じ蓋、だ」
絶句する次元に向かってふんと鼻を鳴らすと五ェ門は、
「やってられるか、馬鹿馬鹿しい」
そう吐き捨て、頬を赤く染めたままぽかんと口を開けた次元を捨て置き、そのまま泥棒一味らしからぬ堂々とした挙措で、のしのしと宝物殿を後にしたのだった。










end










新ル第93話「万里の長城インベーダー作戦」ネタ。




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