Kiss Of Fire 御幸と初めてキスをした時、熱い、と思った 実際はそんな事無くて、どちらかといえば体温の低い彼の唇は ヒンヤリとしていたのだけれど 目を見開いて、息を止めて、思わず固まっていると、唇を重ねたまま御幸は笑った それはいつものからかう様な馬鹿にするようなものではなくて、 思わず笑みが零れたという風だったのだけど、栄純は何だか悔しくなって 口を尖らせた 「何だよ・・・」 尖らせた唇を悪戯っ子のようにペロリと舐めて御幸は言う 「お前、すっげー可愛い」 可愛いなんて、俺は男なんだから嬉しくない!という抗議の言葉は 最後まで言えなかった 言葉ごと、御幸が奪っていったから 「・・・・っ!?」 ハッと気づいたときには熱いものが口の中に入ってきて、とっさに逃げようとする 自分の舌が絡みとられる 強く吸われたり、軽く噛まれたり 生き物のように動くそれが御幸の舌だと気付いた時は、 思う存分に口内を蹂躙されていた 背中から頭の先までビリビリと、まるで電気が走ったみたいになって 逃れようと頭を振ろうにも御幸の大きな手にがっちり掴まれていてままならない 「んん・・・っ」 飲み込みきれない唾液が顎を伝っていく感蝕に栄純は眉を顰めた ただ唇を重ねるだけがキスだと思っていた栄純にとって、正にカルチャーショックとも言うべきディープキスだったけれど、不思議と嫌悪感は感じなかった 飽きる事無く、何度も何度も角度を変えて唇を貪られて その内に酸素が足りなくなってぼーっとしてきた栄純が、ぎゅっと縋るように掴んでいたシャツから力なく手を離すと、御幸はハッとしたように栄純を解放する 「はっ・・・はぁ・・っ」 肩で大きく息をしているその背中を優しく撫でながら バツが悪そうに「キツかった?」と言う男を栄純は潤んだ瞳で軽く睨んでやった 身体に力が入らなくてまともに立っていられない そんなふうになってしまった自分が恥ずかしい 照れ隠しのように怒鳴る 「バカ!いきなりすんな!」 「ははっ、悪ぃ」 「笑うな!!」 真っ赤な顔で、口を尖らせている様子がすごく可愛くて 「つーか、いきなりじゃなかったらいいんだ?」なんて、 つい意地悪な事を言ってしまった御幸は「うん」と素直に頷いた栄純に一瞬固まって、それから嬉しそうに笑った いまだにぼーっとする頭で、栄純は御幸の唇にそっと手を伸ばす 指先に感じる、やっぱりどこかヒンヤリとした感蝕に首を傾げていたら、 その手を掴まれて、手首にちゅっと音を立ててキスをされる 「何?」 「・・・御幸の唇、冷たい」 「そ?」 「さっき、すげー熱いと思ったのに・・・」 「ははっ、お前は熱いけどな?」 「俺?」 「ん、すっげー熱い」 「俺かよ!?」 「なぁ、もう一回してもいい?」 「・・・・う・・・うん」 真っ赤になった栄純の頬を両手で包んで御幸は笑う そして重なった唇はやっぱり熱くて、それからとても甘かった |