◆リオウ◆

君が知ってるはずないんだ、僕の誕生日なんて。
でも、もしかしたら、君が来てくれるかもしれないと。
そんなありえない夢を見て、僕は手を動かす。
と、そこに見知った顔が現れた。
「なんでケーキとか焼いてんの?お前、今日、自分の誕生日だろ」
「ジーンこそ何しにきたんだ?」
手を止めずに問い返す。
「俺はお前の誕生祝いと偵察を兼ねて」
そう言いながら、面白くなさそうな表情でこちらをみる。
「……お前、仕事だってわかってるんだろうな?」
「わかってるよ」
…たぶん。
わかってる。
「油断させるいい機会だろ」
そう言いつつも、手は止まらない。

決まってる、ことなんだ。
僕と君の人生は君を殺すという一点でのみ、交わるんだ。
そうでしょう?

「誕生日なもので、ケーキを作ってみたのですが……姫もいかがですか」
そんなことを言って、君と一緒に過ごしたかった。

そんなこと、あり得ないもの。

もう、いいや。

手を止める。

「ジーン、これ全部食べていいよ」
そう言って机の上を指差す。
「は?これ全部、か?そりゃ食べろといわれれば食べますけど」
机の上を見回して、再度確認する。
「……いいのか?」
僕は頷く。ジーンは席について食べ始める。
「ま、お前が“浮気”しないっつーんなら別にいいけど」
そんな何年も前の約束を覚えてたんだ。
「ジーン。僕を誰だと思ってる?」
少し、目を細める。
「リオウ、だろ?」
こちらも見ずにジーンが答える。
「お前が今も俺の知ってるリオウなら、いいよ」
ジーンの知ってるリオウ……
どういう、意味だ?
僕が黙っているとジーンが続ける。
「それがわからないのなら、楽士なんてやめて、帰って来るんだな」
食事を終えて立ちあがる。
「じゃ、ご馳走様」
そう言って手を振って出て行く。

机の上には空になった皿が並ぶ。
作り出すのにはあんなに時間がかかったのに、消えるのは一瞬。

――人も、同じ。

僕は。
君を、殺してしまいたいんだろうか。
あの時の、君だって、わかった上で。
それでもなお、殺せるのだろうか?君を。
君と同じ顔をしたカイン様も。

指令があれば、いつものように仕事をするだけ。
僕は自分にそう言い聞かせて、部屋の片付けを始めた。


〜Fin〜




楽士同盟様企画ページへ
王宮二次創作サイト・白いチラシへ


2006.3.6

この後に姫が訪ねて来ておろおろするリオウが見たい。

PC用眼鏡【管理人も使ってますがマジで疲れません】 解約手数料0円【あしたでんき】 Yahoo 楽天 NTT-X Store

無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 ふるさと納税 海外旅行保険が無料! 海外ホテル