DISCLAIMER// The characters and situations of "The X-Files" are the creations and property of Chris Carter, Fox Broadcasting, and Ten-Thirteen Productions. No copyright infringement is intended. ============================================ 前書き 本作品には、MulderとScullyの性的描写が含まれております。 18歳未満の方、もしくはこれに対して抵抗感をお持ちになっている方は ご遠慮いただきますよう、お願い申し上げます。 ============================================ TITLE 27375 SPOILER Tithonus (Season6) AUTHOR スキナー愛好会 DATE 1999. 11. 1. 「愛はどうなの?」 「愛が永遠とでも? 愛なんて、よく持って75年だよ。残りの人生は余計さ」 彼は私にそう言った 愛は永遠ではないと もって75年だと 確信を持って、私にそう言った 「死なせてほしい」 生きる事に疲れた、という顔をしたフェリッグの表情は、 私にそう伝えようとしていたように見えた。 「死にたくない」 かつては、その思いで心がいっぱいだった彼。 自分を親身になって看病してくれた看護婦を、死神に渡してまで「死」を拒んだ彼。 その彼が、今では切に「死」を望んでいるのだ。 死にたいのに死ねない。 なんという皮肉だろうか。 彼がストロボをたいて私の死に様を写そうとしたあの時、私は自分の死を否定した。 「私は死なない」と。 あの時、私は何をもって、あんなにも強く「自分の死」を否定したのか。 なぜ、あそこまで強く… 死への恐怖からなのか 自分の人生において、やり残した事への未練からなのか 家族を置いて先に旅立つ事への申し訳なさからなのか それとも 愛する人を一人、この世に残す事のやりきれなさからか いや 何かが違う 私は、愛する人を残して「死にたくない」とは思わない 愛する人が凍えていれば、私は全身で暖めてあげる 愛する人が涙を流せば、私はそれを拭い去ってあげる 愛する人が傷つけば、私はそれを癒してあげる そして 愛する人が望むなら、私は喜んで命を差し出す 私がもっとも恐れている事 それは、生き続けることによって「愛」を失う事 フェリッグがそうだったように もし、彼の言うことが正しく、長く生きながらえるうちに、私があの人への愛情を忘れてしまったら そして、彼が長く生きながらえるうちに、彼が私への愛情を忘れてしまったら... たとえ命はあっても、その瞬間に、私は死んでしまうだろう ---------------------------------------------------------------------------- ------------------------ ニューヨークでの一件を解決し、DCに戻る飛行機の中、私はそんな事を考えていた。 「人生に疲れた」 彼の悲壮な表情が、苦い記憶という名の縄で、私を縛りつける。 DCの空港に降り立った私は、タクシーを拾って乗り込んだ。 ---------------------------------------------------------------------------- ------------------------ 「やあ、お帰りScully。電話してくれたら迎えに行ったのに」 私は、無意識のうちに、タクシーの運転手にMulderの住所を告げていた。 行き慣れたアパートが、なぜか今日はとても懐かしく感じる。 ドアをノックすると、Mulderが中から姿を現した。 彼は、出張用の荷物を持ったまま立っている私の姿を見て、少し驚いたような顔をしたが、 すぐにいつもの調子でおどけてみせた。 「あれ、君のアパートってここだったっけ?」 自分のアパートに戻る前に、出張先から直接押し掛けてきた私を気遣っているのだろうか。 こんな事は、普段の私からするとまずありえない。 しかし、彼は私のその奇妙な行動を、変に詮索することもなかった。 今の私には、その心配りがとてもありがたかった。 「荷物下ろせよ。コーヒーでも飲むか?」 そう言って、彼は私に背を向け、キッチンに歩いて行こうとした。 その背中に向かって、私はとっさに声をかけた。 「Mulder」 「ん? 何?」 私は、言葉を返す代わりに、彼の手を取った。 彼は、まだ私に後ろ姿を向けたままだ。 「背中、借りていい?」 「まさか、蹴り飛ばしたりしないだろうな」 Mulderらしい切り返し方に気持ちが安らいでいくのを感じて、私はフッと笑った。 「その方がいいかしら?」 意地悪な答えを返しながら、つと2、3歩、彼との距離を縮め、 背中からそっと彼の腰に腕を回した。額を背中に押しつける。 「Scully….どうしたんだ?」 彼の優しい声が、ビーンと私の体に反響する。 その声の暖かさで、なぜか目に涙が溢れだした。 私、どうしたのかな? 「ねえMulder, 自分が好きになった人を忘れてしまうって、あり得るのかしら?」 「Scully, 君らしくないセリフだな」 「あなたはどう思う?」 「それは…あり得ない」 「なぜそう思うの?」 「だって、そんないい思い出を忘れたら僕には何が残る? UFOだろ、奇人変人だろ、  謎の微生物にKershのイヤミ。これじゃあ成仏できないよ」 トボけた彼の答えに、私は泣きながら笑った。 Mulderは体の向きを変え、私を大きな体で包み込んだ。 彼の繊細な指が、私の髪を優しくゆったりとすいていく。 雨が止んで太陽が顔を見せるように、私の暗い心が少しづつ和んでいくのを感じた。 「Scully, 何かあったのか?」 「今回の犯人は、死神に心を売ったのと引き換えに、不老不死の体を手に入れたの」 「それはいいな」 「茶化さないの。でも彼は後悔してたわ。永遠の人生なんて苦痛なだけだって」 「そうかな?」 「彼は長く生きすぎて、昔の自分を覚えていなかったの。自分の愛した奥さんの事さえもね」 「…」 「そんな悲しい人生って、あなた耐えられる?」 「…」 「彼は私に『愛情はよくもって75年だ』と言ったの」 「君もそう思う?」 私を胸に抱き、指で髪をとかしながら、彼は私の話をじっと聞いていた。 「私は…多分、いつまでも心のどこかに残ると思う。でももし、彼の話が本当だったら…」 「本当だったら?」 「寂しすぎるわ」 また目に涙がたまる。こらえきれず、頬に一筋こぼれ落ちた。 「私が、自分の愛した人の存在を忘れてしまったら...それは私が死んでしまったのと同じ事だわ」 「Scully…」 ---------------------------------------------------------------------------- ------------------------ 仮面が剥がれて、彼女の素顔がのぞいた。 今、僕の胸にいるのは、仕事のパートナーとしての彼女ではない。 「Dana Scully」という、一人の女性なのだ。 こんなにはかなかったのか、この人は… あまりのいとおしさに、彼女を抱く手に力がこもる。 今にも消えてしまいそうに小さな体を、この腕の中に引き留めるかのように。 「大丈夫だよ、Scully, 心配しなくてもいい。そんな事がありえると思うか?  君が、愛した人を忘れるような女性じゃないって事は、僕が一番よく知ってるよ」 彼女はようやく顔を上げ、僕に泣きながら笑いかけた。 その表情が驚くほど綺麗で、僕は君に気付かれないように小さな吐息をつく。 「さあ、落ち着いて。もし必要なら、僕の胸を喜んで貸すけど」 「じゃあ…もうしばらくこうしていて…」 安堵のため息をついたScullyは、ほんの少しだけ、Mulderに体を預けた。 ---------------------------------------------------------------------------- ------------------------ どのぐらい、そうしていただろうか。 何も言わず、Mulderは彼女をなだめるように抱きとめていた。 そしてScullyは、彼の温もりを全身で感じ取っていた。 「ねえ、Mulder」 彼の胸に顔を埋めたまま、Scullyは相棒の名前を口にした。 「どうした?」 「さっき、私自身が愛する人を忘れたら、私は死人同然だって言ったわよね」 「ああ」 「もし私の愛する人が、私の事を忘れたら...私はまともでいられるかしら?」 「Scully?」 「私がいくら愛していても、その人が私の存在さえも覚えていなかったら…」 「Scully, そんなバカなヤツがいると思うかい? 君を忘れるなんて。  もし本当にそんな男がいるとしたら、是非お目にかかりたいよ」 「Mulder?」 「ん?」 Scullyは顔を上げて、涙で濡れた頬をMulderに向けた。 そして右手を彼の頭にまわして引き寄せ、額に軽くキスをした。 「私…忘れてほしくないの…それに、忘れたくない」 「Scully?」 「自分が愛した人を、心で、体で、覚えていたい…ずっと」 「…」 「だから」 Mulderに、真っ直ぐな視線を向ける。 「あなたにも…忘れてほしくない」 これまでの長い間、いつもScullyと一緒だった。 しかし、今この瞬間ほど、彼女をいとおしく、美しいと思った事はなかった。 Mulderは誓った。 「僕は、絶対に忘れたりしない。例え死んでも…」 まるで磁石が引き寄せられるように、どちらからともなく二人は相手を求めていった。 もう引き返せない。 時が二人に合図を告げた。 その時がきた二人には、場所を選ぶ余裕もなかった。堅い床に崩れ落ちるようにし て、抱き合ったまま 横になってゆく。 愛が、思いやりが、情熱が、怒涛のように押し寄せてきていた。 ---------------------------------------------------------------------------- ------------------------ 初めて重ねた彼女の薄い唇は、一瞬ひんやりとしていた。 けれど、自分の唇で開いてゆく彼女の内側が、とても熱いとなぜか僕は知っていた。 彼女の内側。 その単語が自分の頭をよぎった瞬間、自分の体温が跳ねあがるのを体感した。 僕の知っているScullyは、いつも仕事中の顔をしている。 涙を流すときでさえ僕の前では、彼女は「Dana」という女性ではなく 「Scully」捜査官として存在していた。 その彼女の内側にはいったいどんな彼女が隠れているのだろう? 好奇心と不安と、押し寄せてくる欲情。 ああScully、君はただ唇を許しただけで、僕をこんなにも高ぶらせる。 触れた事がないわけじゃない。 正直に言えば、彼女の全裸だって目の当たりにしたことがある。 でも、違う。 Scullyは今、僕という男を許容しようとしている。 まるで、兄弟がよくそうするような、そんな指の流れで、いつも彼女は僕の髪に 触れていたけれど、今夜は違う。 僕の髪が彼女の指の中でくしゃりと音を立てている。 何年も仕事を一緒にやってきた相棒が、自分の腕の中で違う表情になってゆく。 薄く瞼を閉じてゆく。唇が軽く開いてゆく。 そんな変化を目の当たりにできるということ。 …なんという、興奮。 その肌の白さを、柔らかさを再確認したくて、ボタンを外す指が焦っている。 ずっとこの場所から、視線をそらす努力を続けてたってことを、きっと君は知らないだろう。 君が望むように、君と仕事をやって行くための僕の努力は、きっと相当なものだよ、Scully? 「……」 思わず、見詰めてしまっている自分がいた。彼女が女性であることを、こんなにも主張している 不可侵だったところ。 不意に視線を感じて彼女を見ると、唇を噛んで睨むようだった。 「…なんだい、Scully?」 キスをしながら、彼女をこんな風に見下ろす日がくるなんて。 「…ずるいわ、Mulder」 「どうして?」 「…そうやって上から眺めるなんて…」 呟くように早口にそう言って、伏せ目がちになった、彼女の睫毛の艶やかさにくらりとする。 こんなときめきを、年月は忘れさせてしまうと言うのか? 夢中になって胸元に顔を埋めると、甘い香りがした。 その柔らかさを、指先で、唇で初めて探る。まるで音をたてるかのように、 くんと首をもたげてくる敏感な反応が嬉しかった。 「……っ…」 息を飲む気配がして、顔を上げる。濡れた唇からちらりと覗いた白い歯が、 ひどくセクシーに映る。 次はその唇から甘い声を生み出して欲しい。 自分の舌先を堅くするようにして、身体の線を滑らせていきかけた。…のだけれど。 「……」 そこにあったものは、傷跡。 まだ縫い目の生々しい、痛々しい傷跡。 僕でない誰かに、彼女は傷つけられたのだ。 激しい怒りが湧き上がってくる。しかもなぜかそれは、Scully自身にすら向かってゆく。 なぜ? 分からない。 でも彼女を笑わせるのも、怒らせるのも、こんな表情をさせるのも…… そして、傷つけるのも、僕であって欲しいという気持ち。 Scully、君には分からないだろうね。 これはきっと男だけの感情だ。 なぜかなんて、分かりはしないんだよ。なぜかなんてね。 そうして僕は、自分が何をしているのかも分からないまま、夢中でそこに吸い付いて行った。 ---------------------------------------------------------------------------- ------------------------ 砂糖水に漬けられているかのような感覚の海を泳ぎ始めていた私は、 その思わぬ痛覚に目を開けた。 「?!…Mulder!」 慌てて目を開ける。 やっと肌になじみ始めた縫い跡をいたぶる、彼の信じがたい姿が、そこにあった。 体をよじろうとしたけれど、それは許されなかった。ベッドに押しつけられるようにして、 また痛い愛撫が始まる。痛みで声をあげそうになるのを堪えながら、薄目を開けるのが 精一杯だった。 そこにはまるで、知らない彼がいた。 見たこともないくらい、恐い瞳をしている……。 その瞳に、私は初めて気付こうとしていた。 彼が、雄という動物であること。 だから、抗うことが無意味だと悟った。 「…い…たいの、Mulder…お願い…」 はっとしたようにこちらを見た、彼の瞳の中に哀れむような色。 「…ごめん…Scully…」 いくつものキスが顔中に降り始めた。 額に、鼻先に、髪の付け根に、耳朶に…いたるところに。 そして「sorry」という言葉と唇の音だけが部屋を支配する。 私は今、Mulderに哀れまれている? 普段なら怒り狂いそうなこのシチュエーションで、私はなぜか悪くない気分だった。 むしろ、心地よかった。弱い生き物のように扱われることが、あれほど嫌いなこの私が…。 その感情の出先を追いかけて、そうしてもうひとつの事実に私は辿りつく。 そうだ、私は哀願という言葉を体現できる雌という動物だったのだ。 優しいキスが肌に滲んで来ると、さっきの痛みが甘く化け始める。 自分が持っているのは、つくづく女の身体なのだと刻み込まれるように本能に諭されている。 どうがんばっても、快楽を甘受する立場にあるのは女なのだ。 …この感情を諦めと言うとしたら、「諦め」というのはなんて肯定的な言葉なのだろう。 Mulderは、申し訳なさそうに傷跡への愛撫を続けていた。今度はそっと舐めてくれている。 くすぐったいような、でも古来の「唾をつけていたら直る」という教えがまんざら 嘘でもないような、そんな不思議な感覚に頬がゆるんだ。 「…そんなに舐めてくれてもふさがりはしないわよ?」 あまりに長い間、彼がそうしているので、不思議になってきて尋ねてみた。 顔を上げたMulderの瞳は、彼の愛情を確認するには十分過ぎる色をしていた。 「Dana、僕は君の奥深くに僕以外のなにかが浸入したって事実だけで狂いそうなんだよ?」 嫉妬という、あまり彼が見せてくれない部分が綺麗に透けて見える。 ああMulder、そのあなたの表情をずっと見たかったの。 …ずっと、ずっと前から。 感動すら覚えて、押し黙った私の前髪を不意に揺らす指。 「…痛むかい?」 私を哀れむばかりに泣き出しそうにすら見える彼の表情は切なくて、愛しさをつのらせた。 「…大丈夫よ…ねえ、Mulder…?」 続きをどうぞと言うかわりに、彼の元へと指を忍ばせる。今度は彼が、息を飲む番。 私の指が彼に変化を、彼の指が私に変化を。 …悪くないじゃない? そう思うと、私は笑い出しそうにすらなっていた。 今まで何を突っ張っていたのだろう? 体の関係を持つと自分の立場が弱くなるとでも、信じ込んでいたのだろうか? 愛がもっても75年と聞いただけで、「そんなことはない」って逆上するほど彼に惚れている癖に。 冷めない自信があるからこそ、私は反感を感じたのだ。 そして証明したかった、証拠を感じたかった。 大した自信だと我ながら呆れずにいられない。 彼にだって75年くらいで冷めやしないって、忘れやしないって思わせなければ 気が済まないのだ。それくらい惚れていて欲しいと、願わずにいられないのだ。 なぜならば、それほどに自分が彼を愛しているから。 この降り注ぐ視線。指先が持つやさしさ。唇が抱く熱さ。 全ての彼の関心が、今自分に向かってきていることを肌で感じる。 体の芯が自分の準備ができつつあることを彼に教えようとしていて、熱い何かが生み出されてゆく。 彼の指にまとわりつく、彼を誘う甘い水たち。 「…Scully…いいかい?」 彼のその言葉に、ひとつ、頷いてみせた。 ---------------------------------------------------------------------------- ------------------------ 彼女の汗は、いつもきらきらしているのだけれど。 僕は少し狭いくらいの彼女の中に身を置きながらも彼女を観察するという、 世にも光栄な場所にいる。額に浮かんできた汗が、ルームライトに映えてあまりに 美しかったから、ふと思った。 彼女を翻弄できたらいいなと思うのだけれど、真実はそうはならないようだ。 僕は彼女の動作をいちいち見て取れる代わりに、いちいち驚かされている。 薄く瞳を閉じた表情に魅入っていると、不意にその瞼が開かれて、内心焦ったり。 潤んだように暗闇に滲む瞳。 背中に感じる彼女の指の存在。 気まぐれに腰に絡ませてきては、僕の心と体を締め付ける脚達。 自ら確かめる、その腿の汗ばんだ湿り気。 そうして、舌先が肌の塩辛さを感じ取る。 「Scully…」 不意に思いついたその考えに、僕は微笑みながら彼女の頬にキスをした。 「なあに?」 くすぐったげに目を細めながら、彼女は僕の額の汗を拭う。 「まるで君の全身が泣いているみたいだね」 胸元に浮いた雫を舐め取りながら、そう囁いた。 汗と涙の違いはなんだろう? 同じ味がする。 今みたいなときには、あまり変わらない気がした。 「…あなたに泣かされているってこと?」 楽しそうにScullyは、僕の耳に密やかに言葉を放りこんできたりする。 それから僕の視線を探し当てて、にっこりとして見せた。 その笑顔が僕を加速させる。 僕が彼女を泣かせている…しかも、良い涙を。 そう考えることは、僕を有頂天にさせていた。 「…Dana……」 その呼びかけには、もう返事がなかった。 まるで視覚と聴覚が一度になくなったような浮遊感が、僕に押し寄せてきたから。 それは、きっと、彼女にも。 本当に、僕達は夜を一緒に超えたのだ…。 ---------------------------------------------------------------------------- ------------------------ 二人は目を閉じている。 二人は肌に触れ合っている。 どちらも互いに意識があることに気付きながら、声は掛け合わずにいる。 薄暗いままの部屋の床にまだ彼らは横になったままだった。 恐らく、考えていることは、ひとつ。 直接的なことは何も言わないままだった真実のこと。 言いたいような、言わずとも分かっていることにしておきたいような。 「…Scully…」 ついにMulderが口を開く。 愛の言葉には慎重にならざるを得ない。 75年という、限定された歳月は何を意味するのか。 答えは75年先にしか、待ってはいないのか? この答えを見つけ出さなければ、軽はずみなことは言えない気がしていた。 「…なに、Mulder?」 声を掛けてから黙ったMulderをそっと気遣うScullyの声。 何かを期待しているようにも取れる、その声の意味をまたMulderは自分に問う。 「愛の言葉も、プロポーズも、75年先に証明されるまでとっておかなくちゃいけない のかな?」 悪戯っぽくMulderは、Scullyの瞳を覗き込んだ。 今それは、どんな言葉よりも甘く、確実にScullyの心に響いてゆく。 「…さあ、それはあなた次第じゃない?Mulder…」 素直にそれを受け入れるのも癪にさわると、Scullyも茶化すように言って微笑む。 二人は素直じゃない互いに笑い出さずにいられなかった。 「75年先の愛の言葉より、この床の堅さの方が今は問題ね」 情事の後特有のけだるい体を起こしながら、Scullyがうめくように言った。 散らばった服を検分して、自分のものと相手のものとに振り分けてゆく。 「同感だね、Scully…君の家のベッドを今夜の宿泊先に指定したいのだけど、どうかな?」 服を次々とお腹の上に落とされて、Mulderもようやく起きあがる。 仕方が無いわね、と小声でScullyが嬉しそうに呟いた。 車の移動の方が簡単だったけれど、あえて二人は夜道を歩くことにした。 Scullyの出張用バッグはMulderの手に、Mulderの明日の着替えが小さなバッグ に入ってScullyの手に。 薄暗い中でぼんやりと光る店のイルミネーション。 ふと、Scullyが足を止めた。 「…ん?」 Scullyの気配が横から消えたことに気付いて、Mulderが降り返る。 彼女はショウウインドウをながめていた。 硝子の向こうには、綺麗に飾られたアクセサリー達。 「Scully?」 Mulderの声に、Scullyは彼を見て微笑んだ。 「…27375日後のお楽しみを考えていたの」 「…27375日後…」 鸚鵡返しをして、Mulderは飴玉のようにその単語を舌で転がした。 「毎日そのことを考えているだけでお楽しみだね、Dana」 そうして二人はどちらからともなく手を繋ぎ、歩き出す。 愛の期限の有無を確かめて行くために。 fin. ============================================ スキナー愛好会 アダルト担当者 後書き ============================================ 例のブツを書き上げて、私は惰眠を貪っていた。 ---RRRRRRR、RRRRRRRR(TELのベル) なんだよ、せっかく人がfic書き上げて、安眠してるってのに。 「はいもちもち」 私の寝ぼけ声に、相手が電話の向こうであきれている空気が伝わる。 「・・・私だ」 「は?」 「・・・私が分からないのかね?愛好会員のくせに」 「・・・っ!スキナー様!!」 っていうか、なんであなたがTELかけてくるの? さらにこの愛好会、発足したばかりなんだけど?(爆) 「やっとわかったかね?」 「・・・はい。それであのう・・・どういったご用件で?」 私はだんだん恐ろしくなってきていた。 仮にも彼はFBI副長官、私はしらない間になにかやらかしたのか? 「・・・君達は愛好会員といいながら、あんなものを書いて・・・」 「え?」 ・・・スキナー、あなた私達愛好会員のメールを傍受してんの? 私は頭がまっちろけになるのを感じた。 「ひどいじゃないか!私のファンと言いながら、君達のficは X-files課の二人のことばかり!」 「・・・はぁ」 彼の怒りはもっともなんだか、なんか方向性が違うんだか 眠たい私には判断能力すらなかった。 「・・・つまり、あなたが主演のficを出せと?」 「・・・ありていにいえば、そうだ。しかも、・・・できたらロマンスがいいな」 ふいに小さくなる声が彼の照れを物語る。 やっぱかわいいな、スキ様。 でも眠いな。 ベッドが私を呼ぶ声が大きくなってくる。 「わかりました。出しましょう」 そう言いきると、スキナーは満足したのかあっさり電話を切ってくれた。 ああ、眠い。 ---次の日。 正気のアタマでスキナーとの約束を思い出し、私は青ざめた。 愛好会の相方の仕事は忙しくなる一方だった。 そんな中、スキfic・・・しかもロマンス・・・(爆) 私達の明日はどっちだ・・・そしてスキficは愛好会からでるのか・・・。 でもとりあえず、カラオケにでもいーこうっと! スキ様のことは、あとで考えよう! こうして、スキ様がでてくるはずのficは遅れていくのでした・・・・。 ====================================おわし。 (全然、後書きちゃうやん・・・) ================================================= スキナー愛好会 アダルト以外担当者(笑) 後書き ================================================= ある夜更け、私はボソボソとソリティアで遊んでいた。 ---RRRRRRR、RRRRRRRR(TELのベル) も〜、こんな夜中に誰だ!? 「もしもし、だあれ?」 私の不作法な電話対応に、相手が電話の向こうであきれている空気が伝わる。 「・・・私だ」 「誰やっちゅーねん!!」 「・・・私が分からないのかね?愛好会員のくせに」 「あん? も、もしや・・・スキナー様!?」 なんでスキナーが電話かけてくんの? それよりも、なんで私の電話番号知ってんの!? 「そうだ、反応が遅いぞ」 「・・・すみません。で...何かご用ですか?」 なんで私のところに彼から電話が!? 突然の出来事に、私はすっかりパニックに陥っていた。 「・・・君の相方には既に連絡済みなんだが」 「ち、ちょっと待って!!」 スキナーの電話、相方、愛好会員... この3つの単語によって、私の脳は次第に活性化され始めた。 「君は本当に私の愛好会員なのか!?」 「どーゆー事ですか?」 「『愛好会』とは名ばかりで、私が一度も出てこないではないか」 あ、あんた...アップしてないから、内容はまだ作者しか知らないハズなのに... 「あのう、お言葉ですが、なぜ内容をご存知なんですか?」 「部下同様、愛好会員の行動を常に把握しておくのが私のつとめだ」 そ、そうなんだ... 「詳しいことは、相方から聞いてくれ。分かったな?」 そう言うと、スキナーは電話を切った。 なんのこっちゃ...!? ---次の日。 相方からスキficの話を聞かされ、ビジュアルも中身も爆発している私の頭から更に湯気が立った。 「で、引き受けちゃったの!?」 「うん」 「どーする?」 「書かなきゃダメかな。一応『愛好会員』だし」 「やっぱ書けない、なんて言ったら抹殺されそうだしね」 「えふびーあいの管理職だし、それぐらいは簡単かも」 「でもねえ、ロマンスficでしょ?」 私達は顔を見合わせ、同時に疑問を口にした。 「相手は誰?」 スカ、キム、モル、クラチ、マリタ、CSM、ダイアナおばば... ああ、どうする!? なかなか案が煮詰まらず、スキ様がでてくるはずのficは遅れていくのでした・・・・。 ====================================おわし。 (ホンマや、全然後書きちゃうやん・笑)