===========================================================================================   この作品は、あくまでも作者の個人的な楽しみに基づくものであり、この小説の登場人物、    設定等の著作権は、すべてクリス・カーター、1013、20世紀フォックス社に帰属します。 注意! この作品には、僅かですが性的描写を匂わせる部分があります。        (ほんとに匂わせただけ(^^;))        こういったものに嫌悪される方、また適当な年齢に達さない方はすぐさま        ウィンドウを閉じて下さい。 また、"Y2K Ver.2"の続編です。まずそちらを読んで状況を理解してから、        本作品をお楽しみ下さい。 ===========================================================================================    " Evidence of love "     by anne ===========================================================================================   見たい・・・・   あの日は一日中、その事ばかりを考えていた。   ようやく通じた君への想い、そして、掌に残る柔らかな肌の感触、色めいた吐息、熱を帯びた唇。  とうとう僕は君をこの手にしたのだ。それは天にも登る心地良さだった。だから、新たな千年紀の  夜明けを見て、それに続く時間を君と共にした後、今度は柔らかなベッドの上で過ごしたいと思っ  たのも当然だ。   しかし、僕の思惑は果たして外れてしまった。下品にも顔に出ていたのだろう、君の態度はだん  だん素っ気無いものになって、とうとう口を聞いてくれなくなり、白い扉は僕の目の前で無情にも  閉じられてしまった。  「ただ、貴方の性欲の捌け口にされるなんて真っ平よ。」     そうじゃないんだ、スカリー。君はとんでもない考え違いをしているよ。   君の部屋の扉に向かってそう呟いたが、時は既に遅し。   おまけに、レポートを書き上げる事をすっかり失念していた僕は、次の日のスキナーの怒りを新  年早々まともに受けてミレニアムの幕開けはかなり不安を伴うものになってしまった。   どうすればいいのだろう。   せっかく君に想いが伝わったと言うのに、またもや手の内から摺り抜けてしまったのか。   正直、僕は途方にくれていた。      だから、君のほうから週末の予定を聞かれたときには舞い上がらんばかりの心地になった。     「勿論、君の為に開けてあるよ。」   どうも言い方がまずかったらしい。お気に召さない答えだったようで、ただ君は眉をひそめてそ  のままラボに行くと言ったきり、遅くまで帰って来なかった。   ようやく年末の遅れを取り戻した頃、君は疲れた様子でオフィスに戻っては来たが、ぱたぱたと  デスクを片してこちらをまともに見る事もせずに、お座なりな挨拶を残してすぐに出ていってしま  った。   スカリー、僕は仕事のパートナーから恋人へと昇格出来たものとばかり思っていたのに。   やはりあの時、君はY2Kで不具合を起こしてたんだね。   でも、この手には確かに君の肌の感触が残っている。   君を信じたい。   貴方だからこそ、と言った君を。         とうとう週末がやって来た。   何気にすれ違ったままの君は今日も朝からラボへ行ってしまったまま戻ってこない。苛立つ僕は  何本目かの鉛筆を天井に向けて放り投げていた。上手く突き刺さらなかったばかりか僕を馬鹿にす  るように既に突き刺してあった鉛筆たちを道連れにして頭の上に落ちてきた。   と、その時電話が鳴り響いた。痛みを堪えて手を伸ばす。  「モルダー。」  「私よ、モルダー。今日はここから直接家に帰るわ。戸締りよろしくね。」  「スカリー、・・・・今日は何曜日か知ってる?」  「金曜よ。それがどうかして?」     あまりの素っ気無さが腹立たしく、なんでもないと言って受話器を叩きつけた。   スカリー、いい加減にしろよ。我慢にも限度ってものがあるぞ。   と、再びベルが鳴る。前言撤回、きっと考え直してくれたに違いない。   慌てて受話器を取り上げて、相手を確かめもせずにいきなり話し掛けた。  「スカリー、悪かった。君の意思を尊重するよ。だから今日は、・・・・」  「スカリーでなくて悪いんだが、私だ、スキナーだ。」   え、しまった・・・・!  「君たちはまた喧嘩でもしたのかね?」  「そんな事はありません、サー。いつもの通りのちょっとした意見の食い違いですよ。」  「それを世間では喧嘩と言っているんだがね。・・・・まあ、いい。ちょっと手を貸してくれ。」          そんな・・・・!   こうして僕は、スキナーに絡め取られてしまったのだった。      ようやく開放された僕は、白い扉の前に佇んでいた。   連絡もせずにここへ来るのはいつものことだ。だが、ノックをするのを躊躇っていた。あんな電  話の切り方をして怒っているかもしれない。それよりも、彼女は僕とああなった事を悔やんでいる  のかもしれないのだ。   どうすれば、君の堅く閉ざされていた扉をもう一度開かせることが出来るのだろうか。   突如、狭い廊下に僕の携帯のベルが鳴り響いた。       「・・・・モルダー。」  「入らないの? 窓から見えてたわよ。」   スカリーだ。僕は大きく深呼吸をした。    「いいのか?」  「おかしな人。真夜中に突然訪ねてくる事だってあるのに、今さら遠慮して。鍵は開いてるわ、さ  あ、どうぞ。」   促されてようやく扉を開くと、そこにはいい匂いが漂っていた。   彼女は食事の用意をして僕を待っていてくれたのだ。それでもやはり多少の戸惑いは残っていた。  本当に君は僕を受け入れてくれたのか、を。  「お腹すいた? スキナーの手伝いをさせられてたんでしょ。キムに聞いたわ。」  「上層部に提出する為の資料作りさ。困ったもんだよ、全く・・・・」  「困ってるのは貴方という部下を持ったスキナーの方だと思うけど?」   さらりと冷たいことを言う君が少々憎たらしく思う。可愛さ余って・・・・だよ、スカリー。  「いい匂いだね。でも、僕は君が食べたい。」   そう言って君を抱き寄せた。ちょっと遠慮がちに。   でも、意外な事に君のほうから軽くキスしてくれた上に、こう言ってくれたのだった。  「あとでね。」   先に入れと命令されて、僕は素直に先にシャワーを浴びて、君と交代した。一緒に入ろうと誘っ  てはみたものの、これは軽く一蹴されてしまった。強く押しては失敗する。僕は寝室にある本棚を  虚ろに見ながら、ベッドに腰掛けて待っていた。   ようやく寝室に現われた君は、堅く打ち合わせたバスローブをそれでも足りぬとばかりに両手で  しっかりと押さえて、明後日の方向を向いたまま、小さい声で呟いた。  「・・・・見たい・・・・?」   当たり前じゃないか。僕はお預けを食った仔犬宜しくベッドに腰掛けたまま、しっぽを振って君  を見ていた。あの日、この手で確かめた君の身体をようやく拝めるのだ。本当はこうして話をする  のももどかしく、今にも飛び掛かってその白いローブを剥いてしまいたいほどに、僕は興奮しきっ  ていた。   そんな気持ちを逆撫でするように君は、ゆっくりとバスローブのベルトを緩めて、・・・・緩めて・・・・。   そして。   僕はとんでもないものを目にする事になったのだった。   なんと形容したらいいのだろう。   彼女は文字通り、キャンパスとなっていた。なにやら理解できない複雑怪奇な幾何学模様がその  ミルクのような素肌に踊っていた。しかも、様々な色に彩られて。   あまりの事に呆けてしまい、口をぱっくり開けたまま君を凝視していた僕は、柔らかそうな肌の  白から赤に染まっていくさまをぼんやりと見ていた。 「あ、・・・・あの・・・・」   君は慌ててまたローブを掻き合わせて、火の噴いたような顔でしどろもどろに言い訳をし始めた。  「私、・・・・自信がなかったのよ。・・・・あの時は、真っ暗で何も見えなかったから・・・・思い切った事  が出来たけど・・・・。だから、明るい所で見られるのは、その、・・・・自信がなくて・・・・。」   君はなんて、なんて可愛いんだろう!  「この通り、もう若くはないわ。・・・・30半ばにもなるのよ。・・・・貴方の好きなビデオの女優さんの  ような素敵なプロポーションではないし、・・・・肌に張りもないし、・・・・だから、こうして落書きし  たら、・・・・笑い飛ばしてくれるかと、・・・・そう思って・・・・あの、モルダー、・・・・お願い・・・・何とか  言って・・・・?」   腹の底から笑いが込み上げてきた。   真剣に彼女が語れば語るほど、可笑しくて堪らなくなった。   そうして身体に落書きしたら僕が諦めるとでも?   気が萎えるとでも?   何を心配しているんだろう。   僕は君であればいいのに。   君を抱きたいのに。   どんな姿をしていても、君が欲しいのに。   そう言えばあの日も口にしていなかった一言が、笑い過ぎて苦しい息の下、僕の口から自然に滑  り出ていた。     「スカリー、・・・・君を愛してるよ。」   笑いながら言う事じゃないと君は色をなしたが、構うもんか。僕の為に身体に落書きまでして恥  らっている君が、本当に、本当に愛おしいと思ったんだ。  「僕はスカリー捜査官に憧れている女性局員を何人も知ってるよ。勿論、男もだ。」  「そんな、・・・・嘘よ。」  「僕は? もう40になるんだぜ。」  「・・・・そうね。」  「君こそ、活きのいい若い男の方が好みじゃないのかな?」  「馬鹿言わないで。・・・・言った筈よ。貴方だから、いいの。」  「僕だって君だからいいんだよ。」  「モルダー、・・・・」  「綺麗だ、スカリー。思っていた通りだよ。僕には勿体無いくらいだ。」   こちこちに固まっていた君を引き寄せて、頬を包んで接吻けた。自身を抱きしめていた腕が解か  れて僕の首に絡み付く。震えていた唇が次第に愛を語り始める。   首筋に唇を滑らせて、堅く合わさったローブを開かせた。形良く膨らんだ胸には緑の渦巻きが渦  を巻いていた。その模様を舌で辿る。クレヨンの味を受け止めてその中に隠れた君を想う。深い谷  間のあたりには黒々とした三角形。強く吸ってほんのりと赤く染め上げた。それからあちこちに飛  び散った丸い水玉模様。その一つ一つにキスを着けていく。   君はくすぐったそうにやっと顔を綻ばせて僕の髪を梳いてくれた。  「ドイツ製の水溶性クレヨンなの。密ロウで出来ているのよ。子供用なので口に入れても大丈夫。」   そして、ほらとローブのポケットに入っていたクレヨンの箱を見せてくれた。   こんな時になんて解説をするんだよ。でも、何処までも君らしい。その掠れ加減な声に妙にそそ  られるものを感じる。僕はクレヨンを受け取って、枕元に放って投げた。     「クレヨン、美味しい?」  「味見してみるかい?」   きっとクレヨンまみれになっているだろう舌を君の口の中に滑り込ませた。途端に君の胸が大き  く膨らんだ。求められるままに、君の唇を舌で辿り、より深く口付ける。そしてローブを引き落と  して、背中のラインを確かめる。素肌に触れさせた手が溶かされていくような感覚を覚えた。   そのまま君の身体を掬い上げてベッドに横たえる。纏わりつく腕が艶かしい。   愛してるよ。でも、このままでは収まらない。   唐突に、君をうつ伏せにひっくり返す。驚いたように声を上げて非難した君を無視して、さっき  のクレヨンを手に取った。  「何なの? ・・・・モルダー、ちょっとやめて!」  「さあ、何がいいかな。やっぱりこれだ。まずは、アダムスキー型・・・・」   どうにも好奇心を抑えきれず、僕は"お絵かき"を始めたのだった。  「ちょっと、くすぐったいってば!」  「それから、葉巻型・・・・」   両方の肩甲骨の上あたりにそれぞれUFOを書き込んだ。ついで『I WANT TO BELIEVE』とコピー  を付けた。完璧だ。  「似合ってるよ、スカリー。」  「何を言ってるのよ! やめてってば!」   元はと言えば、君が始めた事なんだぜ?   そして緑のクレヨンを手にする。  「リトルグリーンマンもいるな・・・・」  「モルダー!」  「何? どうして欲しいの?」   君は真っ赤に上気した顔をこちらに向けて睨みつけた。  「・・・・スプーキー!」  「君ほどじゃないさ。」   ちょっとした優越感に浸りながら僕はますます調子に乗って無駄な肉のない滑らかな背中に落書  きを続けた。忌々しい蛇のタトゥーの中ににっこりとスマイリーマークを書いて、華やかな色で周  りに花びらを付けてやった。なかなか可愛い出来栄えだ。      少なくともお絵かきは君より上手いと思いつつ・・・・。  「・・・・ん!」   次の朝、僕は鼻をつままれて起こされた。     「起きて頂戴。シャワーを浴びて来て。シーツを洗濯しなきゃ。」  「せっかちだな。愛する人の優しいキスで起こしてくれないのかい?」  「お断りよ。せっかくシャワーを浴びたのに。」   随分な嫌われようだ。昨日はたっぷりと堪能させて貰ったけれど、ちょっと度が過ぎたかな。   まだ滴の落ちる君の髪を見ながら、身体を起こして抱き寄せようとした。しかし軽くあしらわれ  て、バスルームを指差された。またすれ違いを起こすのはごめんだ。   素直に君に従ってシャワーを浴びようとした。そして鏡に浮かんだ僕はようやく納得がいった。  そこにはクレヨンまみれになっている顔が写っていた。いや、顔ばかりでなく身体中何色ともつか  ないクレヨンで汚れていた。   君を愛した確かな証しがここにある。   僕はすっかり嬉しくなった。 The End ===========================================================================================    後悔日誌 20000318       すっかり調子に乗っています。誰か止めてくれってな感じです。       「おとな」シーンをやっぱり書けず、状況的には「おとな」であるにも拘わらず、       肩透かしを食らわせるような展開と相成りました。       どうぞ、お許しを・・・(^^;)       スカリーって何となくですが、"お絵描き"はひどいんじゃないかというのが私の意見。       如何なものでしょうか。       もし、御意見御感想等ありましたら、掲示板又は下記アドレスまでお願いします。       ccd32241@nyc.odn.ne.jp