DISCLAIMER// The characters and situations of the television program "The X-Files" are the creations and property of Chris Carter,Fox Broadcasting, and Ten-Thirteen Productions. Also the following movie and songs do not belong to me, either. *"How Can I Not Love You" sung by Joy Enriques *"I'm Your Angel" sung by Celine Dion and R.Kelly *"Ghost" starring Demi Moore and Patrick Swayze No copyright infringement is intended. ------------------------------------------------------------------------------------------ −前書き− このFicは、冒頭でScullyが銃弾に倒れ、命を落とすところからお話が始まります。終始シリアス な作風ではありませんが、このような展開に少しでも嫌悪感を抱かれる方は、お読みにならない事を お勧め致します。また、これは筆者の個人的な想像の産物である事をおことわりしますと同時に、 お読みいただける皆様には上記の設定に関しての寛大なご理解をお願い申し上げます。 本作品は「Heartbeat」の第2章です。 ------------------------------------------------------------------------------------------ Title: Heartbeat (2/4) Category: MSR, conspiracy, angst, and comedy Spoiler: None Inspiring: Ghost Date: 6/12/00 By Amanda ------------------------------------------------------------------------------------------ <前回のあらすじ> クライチェックの銃弾に倒れ、Mulderの腕の中で息を引き取るScully。彼女はゴーストとなって この世に残りますが、生きている人にゴーストの姿は見えません。それだけでなく、ゴーストは物に 触れる事もできないのです。途方に暮れるMulderを目の当たりに、歯がゆい思いをするScully。 そんなある日、Scullyは、Mulderのアパートで不審な行動を取っていたクライチェックを見つけ、 彼を追いかけます。その時に偶然見つけた『霊媒師アダムの店』で、スキナーが霊媒師見習いをして いる事が発覚。実は彼こそが、ゴーストであるScullyの声が聞こえる唯一の「救世主」だったのです。 『Sir,本当に私の声が聞こえるんですか?』 「...Scully,本当に君なのか?」 ------------------------------------------------------------------------------------------ 二人、正確には一人の人間と一人のゴーストは、スキナーが運転する車の中で口論を繰り広げていた。 「どういう事なんだ!? 分かるように説明してくれ!!」 『ですから、さっきも言ったように...』 「君はゴーストだって? どうやって信じろと言うんだ!? もし生きているのが君で、私がゴースト だったらどうするんだ? 君は信じられるのか? 科学をあれほど信奉していた君が!?」 『...ええ....確かにおっしゃる事はよくわかります』 スキナーのもっともな言葉に、Scullyは言葉を詰まらせた。 信号が赤に変わり、スキナーはブレーキをかけて車を停止させる。かわいそうな事にスキナーは、 たった一人で車内で大口を開け、あたかも人を叱りつけるような迫力で話をしている自分の姿が、 通りかかった人々の好奇の目にさらされている事に全く気付いていない。車窓を閉めてエアコンを かけていたのは幸いだった。これで窓を開けていようものなら、おそらく次の日のワシントンポスト の第一面には「FBI副長官が車内で一人口論・過労でそううつ病か?」という不名誉なヘッドライン が踊っていた事だろう。 「....Scully」 『何ですか?』 「君は....今どこにいるんだ?」 『....助手席に座っています。Sir,あなたの隣に』 「そうか....」 そのままスキナーはしばらく押し黙ってしまった。 『...Sir?』 「会話がこんなにやりづらいものだったとはな」 『....』 「まったく厄介だ。相手が見えないのでは、視線をどこに向けたらいいのか分からん....」 ブツブツと独り言を言いながら、スキナーはわずかに顔を助手席に向け、ちょうどScullyの顔が あるだろうと思われるあたりでチラチラと視線を泳がせた。 誰の目にも写らず、気にも止めてもらえない。文字どおり「空気のような」存在になってしまった 彼女にとって、彼のその仕種はとても心温まるものだった。久しぶりに他人から存在を認められた ような気がしたScullyは、その視線に気恥ずかしささえ感じた。 『Sir,一つお聞きしたい事が....』 「なんだ」 聞いてはならない事のようにも思えたが、さすがのScullyも聞かずにはいられなかった。 『なぜあんな所に?』 「....」 気まずい沈黙が流れた後、ボソリとつぶやく声が聞こえた。 「...趣味だ」 『は?』 「FBIを引退したら、霊媒師にでもなろうかと思ってな」 『はあ...』 「それに」 『?』 「アパートを購入して30年分のローンが残っているのだ。FBIの安月給だけではさすがに...」 『....さぞ豪華なアパートなんでしょうね』 「バスタブは大理石だ」 『そうですか....』 私は一体何を喋っているのだ? 余計な事を口走ってしまったと、それきりスキナーは、ばつが悪そうに黙りこくってしまった。 ....聞かなきゃ良かったわ 「ばつが悪い」という思いは、助手席に座っているScullyとて同じである。 恐ろしいぐらいに乾いたその雰囲気を潤わせたのは、Scullyの一言だった。 『Sir,お願いがあります』 「....『Mulderの所へ連れて行け』以外のセリフである事を祈りたいんだが」 『.....』 Scullyの声が聞こえなくなった事が、予想的中である事を物語っていた。スキナーは「やれやれ」 というため息をつきながら、車をアーリントンへと走らせた。 「私に憑くんじゃないぞ、Scully。せっかくのバスタブを楽しめんからな」 ------------------------------------------------------------------------------------------ エレベーターが「チン」と音を立ててドアが開いた。幾つかのドアが同じ間隔を空けて並ぶホールを、 スキナーは深刻な表情で歩いていき、モルダーの部屋の前で足を止めた。Scullyは無言で歩いていく スキナーの様子を後ろから見つめていた。 開けっ放しだったドアが、今では固く閉じられている。それはまるで、全てのものから逃れたいと いうMulderの自己主張のようにも感じられた。 ドンドンドン スキナーがノックをしたが、目の前に立ちはだかるドアは一向に開く気配を見せない。 ドンドンドンドン 「Mulder、いるんだろ? 開けるんだ!」 ドンドンドンドン 「頼む、ここを開けてくれ!!」 何度もドアを叩き続けるうちに、部屋の向こうからボソボソと元気のない声が聞こえてきた。 「Sir,悪いが帰ってくれ」 「君に話があるんだ」 「今はそんな気分じゃないんだ」 「君がそんな気分じゃなくても、私は君に用がある」 「僕はない」 埒が明かない押し問答にとうとうScullyが業を煮やし、スキナーに話しかけた。 『Sir,私の名前を出したら彼は反応を示すと思うんですけど』 「いいのか?」 『ええ、そのために来たんですから』 一呼吸置いた後、スキナーはドア越しにもう一度モルダーの説得を試みた。 「頼む、Scullyの事なんだ...」 ドアの向こうにいるMulderは、それっきり言葉を発しなくなった。逆効果だったかと焦る Scullyとスキナー。しかし、いったん口に出したものを今更取り消す事もできず、少々強引 かとは思ったが、そのまま言葉を続けた。 「彼女がな、Mulder」 「.......何ですか」 「彼女が.....ここに.....いるんだ」 「....何ですって?」 「Scullyがここにいるんだ、Mulder」 彼女が...Scullyが....ドアの向こうに? カウチにもたれ、両足を投げ出して床に座っていたMulderはゆっくりと顔を上げ、ドアを見詰めた。 まさかという懐疑的な気持ちと、もしかしたらという期待が心の中で混ざり合って大きな渦となり、 Mulderは重い吐き気さえ感じた。 「聞こえているのか、Mulder?」 「.......」 Mulderはフラフラと立ち上がり、病人のような足取りでドアへ近づくと、ドアノブへ手を伸ばした。 しかしその時、銃弾に倒れてぐったりとした彼女の体の重みが鮮明に腕に蘇り、Mulderは突然ヒステ リックに笑い始めた。 「Mulder,どうした? ドアを開けるんだ」 「Sir,それで僕を慰めているつもりなんですか? 冗談が過ぎるぞ!! Scullyは僕の目の前で 撃たれたんですよ。それはあなたも知っているはずでしょう? どうしてもとおっしゃるのなら、 Scullyがそこにいるって事を証明して下さい」 何を言っても心を開こうとしないMulderをなんとかしようと、Scullyは後ろからスキナーに呼び かけた。 『Sir,Mulderに伝えて下さい。アブダクトされた私を見舞ってくれた時、あなたが持ってきた スーパーボウルのビデオが面白かったって』 「...彼女は、お前が見舞いに持ってきたスーパーボウルのビデオが面白かったと言っている」 『誕生日にもらったキーホルダーを大事にしまってある事も』 「誕生日にもらったキーホルダーを大事にしまってあるそうだ」 『私が休暇先で事件に巻き込まれた時、電話で「Marry me」って言ったけど、あれはホントなの?』 「電話で言った『Marry me』は本気かとも聞いてるぞ....お前そんな事言ったのか?」 『それから...』 カチャ... Mulderのやつれた姿がドア越しに現れた。 ------------------------------------------------------------------------------------------ 「それで?」 Mulderは、無愛想な表情でカウチに腰掛けた。 「用件は?」 「Scullyに、ここへ連れてきてほしいと頼まれたんだ」 「で、彼女は?」 「ここにいる。そうだな、Scully?」 『ええ、Sirの横に立ってMulderを見下ろしています』 「私の隣で、君を見下ろしているそうだ」 「そうか....」 Mulderは一言だけそうつぶやいて、スキナーの横、おそらくScullyが立っているのであろう空間に 視線を移し、そこを凝視してみたものの、彼に見えるのは質素な色の壁だけだった。 しかし、実際にはその時、彼の視線はちょうどScullyの目をがっちり捕らえていたのだ。必然的に Mulderの視線を浴びる事になった彼女は、恥ずかしさと興奮で思わず身震いがした。 もちろん、Scullyの姿が見えないMulderはそんな事を知る由もなく、スッと視線をそらして寂しそう に笑った。 「どうした?」 「お笑い種だな、これじゃまるでX-Fileだ。ゴーストと話をするなんて...」 その笑みも一瞬のうちに消え去り、彼は続けてポツリと言った。 「なぜあなたなんですか....」 「どういう事だ?」 「なぜ....なぜあなたにしか彼女の声が聞こえないんだ?」 「それはわからん。私もまだ信じられんのだ」 そうよ、なぜあなたには私の声が届かないの? もどかしさと寂しさで、Scullyの中に怒りと悲しみの混ざった感情が湧きあがってきたが、それを 心の隅へ無理やり押しのけ、努めて冷静に口を開いた。 『Sir,彼に伝えていただきたい事があるんです』 「Mulder,Scullyが、君に伝えたい事があると言っている」 「僕に?」 『Mulder,あなたは今、とても危険な状態なの』 「君が危険な状態だと...」 「....?」 「さっきクライチェックが、お前のアパートにやって来たらしい」 「クライチェックが? はっ、何を言ってるんだ、奴は来てない」 「部屋の中でファウリー捜査官の声がしたから、そのまま引き返したそうだ」 「それで?」 「奴は必ずもう一度お前に近づいてくる。お前を殺しにな」 「...Scullyが...今そう言ってるのか?」 「そうだ」 そうよMulder これは私からの忠告 しかし、予想に反してMulderの反応は冷たいものだった。疲れきったその表情に、寂しそうな微笑み をわずかに浮かべて、彼は小さくつぶやいた。 「....Sir,僕がそれを鵜呑みにするとでも?」 「Mulder?」 Mulderは、まるで次の言葉を発するのを躊躇するように一瞬口をつぐんだが、やがてゆっくりと 唇を開いた。 「Scullyは....Danaは......もう僕の前から消えてしまったんだ。たとえあなたに彼女の声が聞こえて いるとしても、僕には聞こえない。これは事実なんだ。僕にはもう、信じるものがない」 スキナーは、返す言葉を失った。 「今日はもう....帰ってくれないか」 ヘーゼルの瞳が悲しそうに伏せられた。 ------------------------------------------------------------------------------------------ can not dream 夢見る事ができない can not share 分かち合う事もできない sweet and tender moments 優しくて素敵な思い出を can not feel 感じられない how we feel 僕達の気持ちを must pretend it's over 終わったふりをしないといけないんだ must be brave 勇気を出して and we must go on 進まないと must not say 口にしてはいけないんだ what we've known all along 僕達が既に知っている事を how can I not love you どうしたら愛さずにいられるのだろう what do I tell my heart 自分に何て言えばいい when do I not want you いつになったら欲しがらずにいられるのか here in my arms 腕の中に君を how does one walk away どうしたら逃れられるのだろう from all of the memories すべての思い出から how do I not miss you どうしたら恋しがらずに済むのか when you're gone 君がいない時 建物を出たスキナーとScullyは、Mulderの部屋を見上げた。夕陽の赤い光がアスファルトに照り つけ、そのやんわりとした眩しさにScullyはそっと右手をかざす。ふと隣を見ると、スキナーも その眩しさに目を細めていた。 『Sir....』 「もう少し時間をやろう」 『でも....彼が心配です』 「今のMulderには心の整理が必要だ。いや、奴だけじゃない。Scully,君もそうじゃないのか?」 『......』 スキナーの優しさが、Scullyには嬉しかった。 「さあ、送ろう....と言っても、君をどこに送ればいいのだ?」 参った、という表情で彼は苦笑した。 『....FBIへ』 「わかった」 今やゴーストとしてではなく、一人の人間「Dana Scully」として彼女と接している自分自身を心の中に 見出したスキナーは、今更になって私までもがMulderに毒されたかと、その皮肉な状況にため息を つく。彼はアクセルをゆっくりと踏み込み、車をDCの中心部へと走らせ始めた。 ------------------------------------------------------------------------------------------ 「それじゃあ、私はまだ仕事が残っているのでな」 『Sir,本当に感謝しています』 FBIのエントランスで、Scullyはスキナーに礼を言った。 「二度と私の耳元で『ふくちょうか〜ん!!』などと叫ぶなよ」 『....すみません、お恥ずかしい限りです。必死だったものでつい....』 「Scully」 「はい....?」 「Mulderを....助けてやってくれ」 人に見えないように、少しだけ唇を動かしてそう言うと、スキナーは階段を上がっていった。 外ではいつの間にか太陽が姿を消し、薄黄色い三日月が夜の空を支配していた。 ここに来なくなってわずか数日しか経っていないというのに、まるで何年ぶりかに足を踏み入れた ような気がした。仕事を終えた局員達は、Scullyの存在に気づく事も、また気づこうとする素振り も見せず、ただ彼女の周りを通り過ぎ、家路を急ぐ。今や彼女の存在を感じられる人間は世界中で スキナーただ一人なのである。その事を改めて肌で感じ取ったScullyは、小さなため息をついた。 ------------------------------------------------------------------------------------------ それからの数十分間、Scullyは人の少ない館内をブラブラと見て回った。何年もここで働き続けた にもかかわらず、今更こんなツアー客のような行動を取っている自分が、まるで馬鹿みたいでおかし かった。しかしそれは、Dana Scullyという人物が確かにここに存在していたのだという事実を、 自分自身で確かめたかったからなのかもしれない。 「おい、あれからMulder捜査官、来てないらしいぞ」 Scullyが、殉職者のプレートが掲げてあるホールの一角を通り過ぎた時だった。FBIのIDカードを つけた若い男性局員の口からこんな言葉が飛び出した。 「そりゃショックだろ、パートナーが目の前で殺されたんだからな」 まさか殺された当人が目の前にいるとは露ほども思っていない二人の男性局員達は、なおも会話を 続けた。人の数が少ない分、その声はいつもよりも大きくホールに響く。 「それにしても、あのScully捜査官が殉職なんてな...俺、彼女のファンだったのに」 「お前もか? やっぱ競争率高いんだな、Scully捜査官って...」 「だってあんないいオンナ、めったにいないぜ。頭だって抜群にいいしさ」 「そんな才色兼備の彼女は、FBIの地下に住みついているspookyなMulder捜査官のパートナーと して、その生涯を閉じましたとさ....全然めでたくない話だ」 「あの二人、デキてたのかな?」 「さあね。そうじゃないのか?」 ....またか MulderとScullyはデキてるだのデキてないだの、長年の謎として多くの局員達に語り継がれてきた このトピックは、今再びScullyをウンザリさせた。しかしそれよりも、自分の人生が『めでたくない もの』としてこの局員に認識されている事が、Scullyの猛烈な怒りを誘った。こんな侮辱はいつ以来 だろうか。彼女は体中がカッと熱くなった。 あなたに何がわかるって言うの? 勝手な事言わないでよ、この青二才!! ドカッ!! 強烈なストレートが、「青二才」の左頬へ鮮やかにヒットした。 「....ってぇ....お前、何すんだよ!?」 「な、何だよ? 何にもしてないよ!!」 「嘘つけ!! 今、俺を殴ったじゃないか!!」 「だから何にもしてないって言ってんだろ!!」 言い争っている二人の横で、Scullyは腫れ上がった右手を振って必死に痛覚と格闘していた。 ったくもう、あなたが余計な事言うからよ....って、ちょっと待ってよ!! 今....私が殴ったの? ------------------------------------------------------------------------------------------ なぜ? どうして? ゴーストは何にも触れる事ができないはずじゃなかったの? 頭の中で疑問が幾重にも重なり、Scullyを襲った。 確かにあの局員を殴った。今でも右手にズキズキと残る鈍痛が、その事実を物語っている。度々 降りかかってくる未知なる体験が、Scullyをますます混乱させていた。 どうしてこうなっちゃったのよ!? 既にあれこれ考える力も尽き始めたScullyは、なんとか気持ちを落ち着かせようとした。まずは 殴ってしまった彼らから離れたい。彼女はとりあえず近くにあったエスカレーターを使って上の階へ 上がった。 そこはラボだった。 ふと懐かしい感覚に襲われたScullyは、電気の消えた薄暗いラボのドアを潜り抜けた。 薬品の匂い.... 独特の刺激臭も、なぜか今日はいとおしかった。未知の物質を持ち込んではあれこれと考えを巡らせ ていた時の事を思い出すと、瞳にジワリと涙の感触がわく。そして聞き慣れた声が彼女の体いっぱい にこだまし始めた。 −Scully,これを調べてくれ。もしかしたら世界の常識が根底から覆るかもしれないぞ −Scully,こんな塩基配列、見た事はあるかい? −君の科学知識が必要なんだ。これで真実がわかるかもしれないんだよ、Scully ....私ってこんなにセンチメンタルな人間だったかしら? 何を見ても、何を聞いても、何を思い出しても、脳裏に浮かぶのはMulderの事ばかり。そんな自分 に対して、妙なおかしさが込み上げてくる。彼女はわずかに微笑みつつ、少しばかり呆れたような ため息をついた。 きっとこの数年間で、彼にすっかりマインドコントロールされたのね、私 でも...X-Fileセクションに配属されていなかったら、今頃私はどうなっていたのかしら? Scullyがそんな想像し難い想像を試みようとしていると、ある匂いが部屋中に漂い始めた。 どうやらラボに隣接した、検査用器具が管理されている部屋が出元のようだ。しかし... この匂い....どうしてこんな所から? 不思議に思ったScullyは、かすかに開いたドアの隙間から、隣の用具部屋にスルリと入り込んだ。 ------------------------------------------------------------------------------------------ そこでは、薄明るい電気がともされていた。デスクの上では、15cm程の高さの二つのバーナーが 「ゴーッ」という燃える音を発し、その他数種類の瓶やビーカー、ステンレス製の容器などがズラリ と並んでいる。 デスクの手前側には、白衣を着た一人の男がこちらに背を向けて丸椅子に腰掛けていた。明かりが 暗いため、Scullyにはその姿が誰のものであるのかがよく見えない。バーナーの青白い光だけが、 男の姿を奇妙に照らし出していた。 どうせ私の姿は誰にも見られないんだし、構わないわよね Scullyはゆっくりとその男に近寄った。「出し抜けに」という表現は、まさにこの事を言うのだ ろう。まるで彼女の近づく気配を感じたかのように、それまで前を向いていた男がクルリと顔を 後ろに向けたのだ。 ...!! 思わず息を飲むScully。しかし、普段はよほどの事でない限り驚かない彼女とはいえ、今回は息を 飲むだけでは済まなかった。 「あれっ、Scully捜査官!?」 『あ〜〜〜〜〜っっっっ!!』 恐らく、彼女がこんな大声を上げたのはクリスマスのゴーストハンティング以来だろう。突然名前 を呼ばれたScullyは、すっかり気が動転してしまった。いつもの癖で銃を取ろうと腰元を探るが、 当然そんな物を持っているはずもない。なぜこの男に自分の存在がわかるのか、などと考える余裕 を、今の彼女は微塵も持ち合わせていなかった。 「お、落ち着いて下さい、Scully捜査官。僕ですよ、僕!!」 Scullyは、アドレナリンが一瞬で体全体を駆け巡ったような気にさえなっていた。頭にカッと血が 上ったが、彼女は激しく呼吸を繰り返しながら、男に焦点を合わせようとして自分自身を必死に 落ち着けた。 しばらくの間を置いた後、ぼんやりとした男の姿が、次第にクリアな形で視界に入ってきた。 『あなた...』 Scullyはその正体を目の当たりにし、しばらく言葉を失った。 一体....どうなってるの....!? ...to be continued −後書き− 話はようやく折り返し地点。まさかこんなに長ったらしくなるなんて...(汗) サンプルを試験的に読んでもらっていた相棒には「いつものAmandaちゃんの作風じゃない!!」と 言われる始末(笑) いや〜、Ficを書き始めて一年経ったし、ちょっと変わった事がしたくなった もので....。 しか〜し、コメディシーンでは、やっぱりスキ様にお付き合いいただきました(笑) これでも私、 彼のFanなんだけど....。私の愛情表現なんて、所詮はこんなもん!? スミマセン、まだ続きます。 Amanda