DISCLAIMER// The characters and situations of the television program "The X-Files" are the creations and property of Chris Carter,Fox Broadcasting, and Ten-Thirteen Productions. Also the following movie and songs do not belong to me, either. *"How Can I Not Love You" sung by Joy Enriques *"I'm Your Angel" sung by Celine Dion and R.Kelly *"Ghost" starring Demi Moore and Patrick Swayze No copyright infringement is intended. ------------------------------------------------------------------------------------------ −前書き− このFicは、冒頭でScullyが銃弾に倒れ、命を落とすところからお話が始まります。終始シリアス な作風ではありませんが、このような展開に少しでも嫌悪感を抱かれる方は、お読みにならない事を お勧め致します。また、これは筆者の個人的な想像の産物である事をおことわりしますと同時に、 お読みいただける皆様には上記の設定に関しての寛大なご理解をお願い申し上げます。 本作品は「Heartbeat」の第4章(最終章)です。 ------------------------------------------------------------------------------------------ Title: Heartbeat (4/4) Category: MSR, conspiracy, angst, and comedy Spoiler: None Inspiring: Ghost Date: 6/19/00 By Amanda ------------------------------------------------------------------------------------------ <前回のあらすじ> ラボでのミソスープ作りが趣味(!?)のペンドレルと出会ったScullyは、彼からものに触れる事を 学びます。そんな時、彼女は今回の一件にCSMが絡んでいる事を知ります。スキナーの力を借りて もう一度Mulderに身の危険を知らせようと試み、ようやくその努力が実を結ぼうとした時、再び クライチェックの影が....。長い間引っ張ってしまってスミマセン。今回で最終章です。 耳をつんざくような銃声とガラスの割れる音が部屋中にこだまし、部屋は一瞬にして現実に引き戻された。 3人がハッとして戸口に視線を移すと、そこには銃を手にした無表情のクライチェックが立っていた。 「よおMulder,迎えに来てやったぜ」 ------------------------------------------------------------------------------------------ 銃口をMulder達に向けたクライチェックを見て、3人は凍りついた。 「クライチェック、何しに来た?」 「言っただろ? お前を迎えに来たんだよ」 「迎えにだと? そんな筋合いはないはずだ」 「ある。お前と取り引きだ」 「何が取り引きだ!! Scullyをあんな目に合わせやがって....このゲス野郎が!!」 カッとなったMulderは、銃口が彼を捕らえているのも気にせず、彼に向かって力任せに飛び掛かった。 ダン!! 大きな音を立ててクライチェックの体が壁に押さえつけられる。Mulderはクライチェックの手元から 強引に銃を奪い取り、その銃口を彼の首元に押し付けた。 「よく見ろクライチェック、お前の命は僕が握ってる」 「やめるんだMulder!!」 「Sir!! 止めないで下さい!! これは僕とこいつの問題だ」 スキナーの説得が既に効力を持たないほど、Mulderは逆上していた。しかしそれとは対照的に、銃を 突きつけられて身動きの取れないクライチェックは、驚くほど冷静に、そして勝ち誇ったような表情 でMulderに言い放った。 「ふん、お前に俺が撃てるのか?」 その言葉を聞いたMulderは引きつったような笑みを見せ、同時にそっと人差し指を引き金に置いた。 「さあ....どう思う、クライチェック?」 二人の息遣いだけが荒々しく部屋に響いている。その緊張感が頂点に達した時、Mulderの人差し指が ゆっくりと引き金を引っ張り始めた。 『やめて!!』 突然、Scullyが叫び声を上げた。ありったけの力を使って絞り出したその悲痛な叫びは、スキナーだけ でなく、Mulderの耳にもはっきりと届いた。 「Scully?」 ズドーン!! それはほんのわずかな時間だった。Scullyの声に反応したMulderの隙を突いて、クライチェックが Mulderの手元から銃を奪い返そうとした次の瞬間、重い銃声が部屋中に轟く。同時にMulderの体は、 まるで銃声に操られたように一瞬ビクリと跳ね上がり、右腕を押さえてその場に崩れ落ちた。クライ チェックによってはじき出された銃弾がMulderの右腕を捕らえたのだ。その痛さのあまりにうめき声 を上げる彼の顔が次第に青くなっていく。右腕を覆っているシャツの生地が、じわじわと朱色に染まって いった。 「Mulder!!」『Mulder!!』 スキナーとScullyは同時に声を上げ、Mulderの元へ駆け寄った。 「Mulder、大丈夫か!?」 「あ....ああ....ちょっとかすっ....かすっただけ....だ....」 「しっかりしろ!! 救急車を呼ぶ」 「いや...副長官.....本当に...大丈夫だ...」 Mulderの痛々しい姿を見て、Scullyの中では猛烈な怒りが湧き起こっていた。横たわったMulderを かがんでのぞき込んでいた彼女は顔を上げ、スクッと立ち上がった。唇を震わせ、睨みつけるような 視線をクライチェックに注ぐ。 傷つくのは....私だけでたくさんだわ.... 彼女はゆっくりとクライチェックに近づき、彼の左頬を力一杯ひっぱたいた。 「!?」 突然、頬に強い痛みを感じた彼は、驚いたように目をキョロキョロさせる。Scullyは、引きつった 表情を浮かべたクライチェックの左頬を、今度は拳で殴りつけた。 「なんだ!? 何かいるのか!?」 異様な雰囲気を明らかに察知した彼は、目に恐怖の色をたたえて後ずさりを始めるが、それでもScully は攻撃の手を緩めなかった。涙で前が見えなくなっても、彼女は力を込めてクライチェックを何度も 何度も拳で殴りつける。 『よくもMulderを....代わりに私があなたを地獄へ送ってやるわ!!』 必死で部屋から逃げ出したクライチェックを、Scullyは執拗に追いかけた。 「待て....待つんだクライチェック....」 やっとの思いで立ち上がったMulderも彼らを追いかけようとしたが、まだ銃弾のかすった衝撃が 残っているのか、足元がおぼつかない。スキナーは彼を肩に担いで支えながら、エレベーターへと 向かった。 ------------------------------------------------------------------------------------------ そこは異常に蒸し暑く、ムッとしていた。アパートの地下に設置されているボイラールームでは、 何本も張り巡らされたパイプから定期的に高温の蒸気が噴き出し、それらが湿っぽい空気を作り 出していた。 カンカンカンカンカン.... クライチェックは足早に鉄の階段を駆け下り、ボイラールームへ入り込んだ。天井からぶら下がる 何本もの長い鎖が彼の行く手を邪魔するが、クライチェックは乱暴にそれらを払いのけ、奥へと 進んだ。 30秒ほど遅れてScullyが飛び込んできた。ゆらゆらと揺れる鎖を見て、彼がここに来た事を確信 する。獲物を追いつめる獣のように、Scullyは鋭く目を光らせた。 どこに隠れているの? 神経を集中させ、左から右へゆっくりと視線を移していく。薄暗い部屋の中、見えるのは白い蒸気 と剥き出しのパイプ、錆ついた長い鎖と、ボイラールームのコントロールタワーを務める機械の ボックスばかりだった。 蒸気が噴き出す不快な騒音と、べったり絡みつく部屋の蒸し暑さで、Scullyはますます苛立って きた。暑くてめまいがしそうになるのを堪えようと、彼女は一度だけ強くギュッと目をつぶった。 クライチェック....どこなの? 大きく深呼吸をして気持ちを落ち着け、ゆっくりと歩き始めたScullyの目が、床に水滴が落ちた跡 のような染みを映し出した。それは、彼女の場所からはほとんど死角になるパイプの影に集中して ポタポタと滴り落ちている。それがクライチェックの汗だとわかったのは、10メートル先に彼の 後ろ姿を見つけた時だった。 「クライチェック!! どこだ!?」 その時、Mulderの声がボイラールームに響き渡った。スキナーに支えられたままの姿勢で、彼は なんとか直立姿勢を保っていた。その声に反応して一瞬動きを止めたクライチェックを、Scullyは 足早に追いかける。彼の真後ろに来ると、彼女はクライチェックの背中をドンと押した。 「!?」 驚いて振り向く彼だったが、当然Scullyの姿は見えない。その隙を狙って、彼女は正面から彼の 左肩を強く突いた。その反動でクライチェックはヨロヨロと後ずさりする。 彼はすっかり動揺しきっていた。 くそっ、どうなってるんだ!? 「こんな所にいたのか!!」 Mulderとスキナーも彼の姿を見つけた。 絶体絶命 クライチェックはキッとMulderを見据えた。 今更失うものは何もない クライチェックの目には、孤独な者が持つ特有の狂気じみた光が宿っていた。ゾッとするような微笑み を浮かべて彼は言った。 「Mulder....お前もバカなやつだ。なぜわからないんだ? なぜそんなくだらない信念を持ち続け るんだ? そんなものは結局何の役にも立たないんだぞ!!」 「クライチェック....ひとつ教えてやる。人間は....信念を持ってこそ人間なんだ。それがどんなに くだらない事だろうとな」 シューッ!! その瞬間、クライチェックの真横にあったパイプから勢いよく蒸気が噴き出し、彼の顔を直撃した。 「あーーーーーーっっっ!! 目が....目が見えないっ!!」 その強い風圧でバランスを崩し、両手で顔を覆った彼はフラフラと後ろへよろめく。そこにもう一本 のパイプから更に強い蒸気が吐き出され、クライチェックにまとわりついた。 体中に熱傷を負った彼は、無残に焼けただれた自分の体を支えきれず、床にバッタリと横たわった。 すると程なく、彼の体から別のクライチェック....正確には彼の魂....がムックリと起き上がり、姿を 現した。 『ク....クライチェック?』 人間の魂が、その器として機能を果たしていた体から離れる瞬間を目の当たりにし、Scullyは愕然と した。彼は傷だらけで横たわった自分の体を見下ろし、しばらくの間キョトンとしていたが、この尋常 でない状況をようやく理解し始めると、その黒い瞳に恐怖を宿らせた。 『俺は.....死んだのか?』 彼自身がそれを悟った時、腹の底まで響き渡るような恐ろしく、大きな地鳴りが聞こえたかと思うと、 どこからともなく現れた不気味な大きい影がクライチェックの魂を包み込んだ。 「うわぁぁぁぁーーーーーーっっっ!!!」 必死の抵抗も虚しく、彼はそのまま地面に吸い込まれてしまった。 これが....悪人の最期.... Scullyは、彼が吸い込まれたその一点から目が離せなかった。 「FBIのスキナーだ。至急救急車をよこしてくれ!!」 スキナーは携帯電話で連絡を取るために、階段を一段飛ばしで地上へと駆け上っていった。 ------------------------------------------------------------------------------------------ must be brave 勇気を出して and we must be strong 強くならないと can not say 口にはできないんだ what we've known all along 僕達が既に知っている事を how can I not love you どうしたら愛さずにいられるのだろう what do I tell my heart 自分に何て言えばいい when do I not want you いつになったら欲しがらずにいられるのか here in my arms 腕の中に君を how does one walk away どうしたら逃れられるのだろう from all of the memories すべての思い出から how do I not miss you どうしたら恋しがらずに済むのか when you're gone 君がいない時 how can I not love you どうしたら愛さずにいられるのだろう when you're gone 君がいなくなったら 救急救命士が、クライチェックに酸素を送り込みながらストレッチャーに乗せる。勢いよく後ろの ドアが閉まり、けたたましいサイレンをうならせながら、救急車は慌ただしく去って行った。 しかしその時、彼の心臓は既に拍動を続ける意志を放棄していた。おそらくもう二度と、その意志 を取り戻す事はないだろう。スキナーはそのまま現場の処理に当たり、幾人かの警察官と捜査官を 指揮していた。 Mulderは、病院へ行けと勧めるスキナーの言いつけを無視し、部屋に戻った。彼はカウチに倒れ 込み、仰向けになって静かに目を閉じた。まだ傷口がシクシクするが出血は止まっている。撃たれた 事など、今のMulderにはどうでもいい事のように思えた。 ふと右頬に、Scullyの柔らかい手の感触が蘇った。Mulderはゆっくりと目を開け、頬にそっと自分 の右手をあててみる。しかしその暖かさは、かえって彼の心に寒々しい風を吹き込んでいく。彼は 寂しそうに微笑んだ。 ....また....一人ぼっちか.... 視界に入るもの全てがうっとおしくなり、再び目を閉じる。信念なんてどうでもいい。このまま 目が開かなくなった方が楽かもしれない、と、彼は次第に薄れていく意識の中でぼんやりと考えた。 ....私はずっとこんな彼を見続けなくてはいけないの? Scullyは部屋の隅で、すっかり輝きをなくしたMulderを見つめていた。 私、こんなあなたを見るためにここにいるんじゃない.... どうしちゃったの、Mulder? いつものあなたに戻ってよ 誰も取り合わないような変な事件を真剣に追いかけてたじゃない 科学一辺倒の私を楽しそうにからかってたじゃない 今にも溢れ出しそうな涙をこらえようと、Scullyは真一文字に口を結んだ。 私....そんなあなたに......ついて行こうって決めたのに..... 堪えきれなくなった涙の雫が一つ、頬を伝うと、せきを切ったように二つ、三つと零れ落ちていった。 四つ、五つ、六つ、七つ....。 ひんやりとした真ん丸な涙の雫たちは、Scullyの頬を濡らしていく。 あれ....私....泣いてる.... 彼女は立ったまま壁にもたれて静かに泣いた。顔を上に向けて....これ以上、涙が落ちてこないように。 私って....こんなに......泣き虫だったかしら? 「....Scully?」 いやだ、だあれ? こんな時に何の用なのよ.... 情けない顔してるんだから、ちょっと待ってくれない? 「Scully?」 だからもうちょっと待ってってば 「Scully....」 そっと腕を掴まれた。 !? 「やっと見つけた」 目の前にはMulderが立っていた。 ------------------------------------------------------------------------------------------ 『私が....見えるの?』 Mulderは、Scullyの目を見て軽く頷いた。 「ああ....ひどい顔してるぞ」 『何よ、その言い方』 「いいじゃないか、泣きたい時は泣けばいいんだ」 ふてくされたScullyを見て、Mulderはニッコリと笑った。 「たまにはそんな表情もいいよ、君らしくなくて」 彼の言葉が、Scullyの耳に優しく転がり込んでくる。嬉しさと懐かしさと気恥ずかしさ。いろんな 感情が一気に湧き上がり、Scullyは思わずうつむいた。 『何言ってるのよ....』 それが精一杯の言葉だった。困惑したような表情がいとおしくて、MulderはScullyの小さな体を 大きく包み込んだ。妙な懐かしさにつられて、Scullyも彼の首にそっと両腕を回す。そんな彼女の 仕種にMulderは少しだけ驚いたが、今こうして再び彼女の柔らかな髪が頬にかかる感触を、彼は 楽しんでいた。 「あれ、Scully,どうした? 僕に抱きつくなんて」 『たまにはいいでしょ、 私らしくなくて....』 人の体温はこんなにも温かかったのか。愛する者に触れる事が、こんなにも心安らぐ行為だった のか。互いの息遣いを感じながら、二人は改めて喜びをかみしめていた。 ------------------------------------------------------------------------------------------ しばらくの間、二人はカウチに並んで座り込んだ。互いの肩が触れ合う事で、相手が近くにいるのを 実感し、その心地良さに酔いしれていた。 「Scully?」 『なに?』 「またこれまで通りの生活ができるんだよな?」 『そうよ....あなたはね』 " あなたはね " と言ってしまった事に、Scullyは後悔した。 「....君は?」 『私は....わかってるでしょう?』 「何をだ!? だって君はこうしてここに....」 『無理言わないで。私はもうこの世には存在しないのよ』 「そんなの信じないぞ、絶対に」 『ねえ、お願いだからMulder....』 「嫌だ!! 僕には君がいないと....」 そう言って、MulderはScullyと向き合い、彼女の両肩を強く掴んだ。前にも言ったはずなのに、 なぜか今日は気恥ずかしくて、彼はうつむいて次の言葉を発した。 「君がいないと....ダメなんだよ....僕は」 Mulder.... 駄々をこねる少年のようなMulderを、Scullyは優しく胸に引き寄せた。その仕種に任せて彼は頭を 彼女にもたせかけたが.... 聞こえない Scullyの心臓は、命の鼓動を失っていた。 彼女の心臓が機能していない事を改めて思い知らされ、「Scullyの死」という変え難い事実が、更に Mulderを容赦なく傷つけた。 『聞いて、Mulder』 Mulderの背中で両手を組んだScullyは、彼の頭にそっと顎を置き、柔らかい声で言葉を続けた。 『あなたはまだ生きてるの。これからあなたがどうやって生きていくのか、それはあなた次第よ。 このまま泣き暮らして人生を終わるのか、それとも真実を求めて、信念を貫いて最後まで駆け 抜けるのか。誰もあなたに強要はしないわ』 Mulderは一言も口を挟まず、静かに聞いていた。 『でもね、私が "spooky" って変人扱いされているあなたについて行こうと思ったのは、あなたの 信念を愛したからなの。何があってもくじけない、そんなあなたの強さに惹かれたのよ』 「僕の強さに....?」 『そう、あなたの強さにね』 Mulderはゆっくりと顔を上げ、Scullyを見た。 『知らなかった?』 彼女はニヤリと笑った。 『だから、あなたにはずっと強くあってほしい』 「......」 『あなたを好きでい続けたい』 Scully.... 『わかってくれる?』 「....君に....」 『ん?』 「嫌われると恐いからな」 『....』 「そうだろ、Scully?」 今度はMulderがニヤリと笑い返す。 ここまで来れたのは君のおかげだ 君の人生を無駄にはしない 必ずやり通してみせるよ 心の中で、Mulderはそっと小さな誓いを立てた。 必ずやり通すよ、Scully 諦めずに最後まで 「じゃあ」 Mulderは姿勢を立て直し、Scullyを正面から見つめた。ふと、互いの視線が同じ高さである事に 気づいたScullyは突然ぎこちなさを感じ、わずかに視線をそらせた。 「Scully?」 『..な.....』 何? と言いかけて、Scullyの唇は動きを止めた。 Scullyの唇は繊細で、ひんやりとしていた。その冷たさを取り去るように、そしてその冷たさを 取り去る事で、Scullyが命を取り戻すかもしれないというわずかな希望を持って、Mulderの唇は、 彼女をうっとりと味わった。 Mulderの唇は柔らかく、温かかった。その温かさは、まるで新たな命を注ぎ込まれるような錯覚 さえ呼び起こした。めまいがしそうなほどに息苦しく、そして心地良い彼の優しさを、Scullyの 唇はたっぷりと受け止めた。 Mulderが名残惜しそうに唇を放すと、Scullyから熱い吐息が漏れた。 「誓いのキスだ」 『?』 「僕が一生真実を追い続けるって誓い」 二人は視線を合わせ、かすかにフッと微笑んだ。 『ずいぶん熱烈な誓いのキスだこと』 「ゴーストとのキスだぞ、こんな経験はめったにできないからな」 『あら、そんな目的のために私にキスしたの?』 「どうかな?この貴重な体験レポートは、X-Filesのキャビネットに保管させてもらうよ」 『それって私があのファイルに閉じ込められるって事?』 「そう。この件の管理責任者は僕だ」 『あなた?』 「そう。僕のものだ、Scully」 してやったりとでも言わんばかりの笑みを浮かべて、Mulderはもう一度Scullyに顔を近づけ、軽い キスをした。子供のように無邪気な表情を浮かべる彼を、Scullyは左手で優しく抱き寄せる。 『Mulder,今日はもうゆっくり休んで』 Scullyは左肩に彼の頭をのせ、細い指でゆったりと髪を梳いた。彼女の指の心地良い動きが、 Mulderの眠りを少しずついざない始める。 『おやすみ,Mulder』 「おやすみ,Scully」 Mulderは安心した表情でぐっすりと眠りに落ちていった。 しばらくすると、規則正しい寝息が聞こえてきた。 Scullyは、そっとMulderの胸に手を置いた。 トクン....トクン....トクン.... Mulderの命は、力強い鼓動を刻んでいた。 ------------------------------------------------------------------------------------------ 「....Scully?」 目が覚めると、部屋は真っ暗だった。いつの間に開けたのか、窓からわずかに風が吹き込んでいる。 「Scully?」 もう一度名前を呼んだ。 返事がない。 「Scully!!」 Scullyを呼ぶ声は固い壁にぶつかって、吹き込んでくる風と混ざり合い、Mulderに向かって跳ね 返ってきた。 Scullyの気配がない事を悟ったMulderは、力なくカウチに座り直した。膝の上で両手を組み、 頭を乗せる。 その時、首元で何かが光るのが見えた。 壊さないように、それをそっと手ですくってみる。 「.......」 金のクロスがついたネックレスだった。 " おやすみMulder " 最後に聞いた彼女の一言が記憶に蘇ると、言い知れぬ寂しさがMulderを襲った。 Scully....僕は本当に誓いを守れると思うかい? 君がいないだけで、こんなに苦しいのに.... カチャッ....ザー..... 突然、部屋にあるステレオの電源がついた。チューナー調節のつまみがクルクルと回り、あるラジオ 局の周波数を指し示すと、そこでピタリと止まった。Mulderは、涙で半分見えなくなったヘーゼル の瞳で、その様子をじっと見守っていた。 スピーカーから、ホッとするような落ち着いた女性DJの声が聞こえてきた。 「...それでは次のリクエスト。Danaという女性からのメッセージです。『あなたをいつでも見て います。泣きたくなった時、負けそうになった時、自信が持てなくなった時、私はあなたの側に います。あなたなら大丈夫。誓いを忘れないで....』このメッセージが、Danaの大切な人へ届く 事を願っています。それでは曲をお送りしましょう....」 Scully.... No mountain's too high for you to climb 高くて上れない山なんてない All you have to do is have some climbing faith 上れると思えばいいの No river's too wide for you to make it across 広くて渡れない川なんてない All you have to do is believe it when you pray そう信じて祈ればいいの And then you will see そうすれば The morning will come 夜明けは来るわ And everyday will be bright as the sun 毎日が太陽のように輝くの All of your fears 恐れる心を Cast them on me 私に投げかけて I just want you to see あなたにわかってほしい I'll be your cloud up in the sky 空に浮かぶ雲になってあげる I'll be your shoulder when you cry 泣きたい時は慰めてあげる I'll hear your voices when you call me あなたの声はきっと私に届くわ I am your angel 私はあなたの天使 And when all hope is gone, I'm here 希望を失った時はここにいる No matter how far you are, I'm nere どんなに遠く離れていても、そばにいてあげる It makes no difference who you are あなたが誰でも構わない I am your angel 私はあなたの天使だから I am your angel あなたの天使だから I saw your teardrops, and I heard you cry あなたの涙も泣き声も知ってる All you need is time 必要なのは時間なの Seek me and you shall find 私を探して、そして見つけて You have everything and you're still lonely 満ち足りていても、心は孤独 It don't have to be this way そんな考えは捨てて Let me show you a better day 素敵な人生を見せてあげる And then you will see そうすれば The morning will come 夜明けは来るわ All of your days will be bright as the sun 毎日が太陽のように輝くの All of your fears 恐れる心を Cast them on me 私に投げかけて How can I make you see どうしたらわかってもらえるの I'll be your cloud up in the sky 空に浮かぶ雲になってあげる I'll be your shoulder when you cry 泣きたい時は慰めてあげる I'll hear your voices when you call me あなたの声はきっと私に届くわ I am your angel 私はあなたの天使 And when all hope is gone, I'm here 希望を失った時はここにいる No matter how far you are, I'm nere どんなに遠く離れていても、そばにいてあげる It makes no difference who you are あなたが誰でも構わない I am your angel 私はあなたの天使だから I am your angel あなたの天使だから And when it's time to face the storm 苦しみに立ち向かう時がきたら I'll be there by your side あなたの側にいてあげる This place will keep us safe and warm ここなら大丈夫 And I know we will survive きっと生き抜ける And when it seems as if your end is drawning near たとえ終わりが近づいても Don't you dare give up the fight 戦う事を諦めないで Just put your trust beyond the sky 空の彼方を信じて I'll be your cloud up in the sky 空に浮かぶ雲になってあげる I'll be your shoulder when you cry 泣きたい時は慰めてあげる I'll hear your voices when you call me あなたの声はきっと私に届くわ I am your angel 私はあなたの天使 And when all hope is gone, I'm here 希望を失った時はここにいる No matter how far you are, I'm nere どんなに遠く離れていても、そばにいてあげる It makes no difference who you are あなたが誰でも構わない I am your angel 私はあなたの天使だから I am your angel あなたの天使だから.... 不意に部屋で大きな風が舞い、窓に視線を移した。 夜明けが近づいていた。薄紫色の空に輝いていた星の数がまばらになり、地平線から太陽が姿を 現した。黒々としたアスファルトが、今日の空を支配する新たな光に照らされ、深い青色へと 装いを替え始める。 世界は今日も絶え間なく鼓動を続ける。 Mulderは、掌を広げて空にかざしてみた。 トクン....トクン....トクン.... 体の中で息づく音 この世に生を授かった証 首にかかる金のクロスに右手をかけ、彼は穏やかな表情で瞳を閉じた。 The END −後書き− お疲れサマでした....(^^;) 主要キャラを二人も手に掛けてしまった私って、きっとCSMよりも悪人に違いない!! 話の展開の都合上とは言え、前書きでクラチの最期について触れなかった事をお詫びします(深々) 気分を害された方がいらっしゃったら、ホントに申し訳ないです....。 「XFキャストで『ゴースト』を書いてみよう」 そんな元ネタを思いついて半年、書くのに2ヶ月という、私にしてはとんでもなく長い時間を 費やしたFicになってしまいました。いつもの私なら「ネタ仕込み一週間・書くの5日間」(笑) ほとんど「ネタは新しいうちに料理してまうんや!!」ってな感じの「すし屋のおっちゃん」の ノリで書いてしまうのに....。 処理が早いと言えば、やっぱり「よしぎゅー」こと「吉○屋の牛丼」かな(←なんでそーなる・苦笑) 私、肉があまり好きではないので、行った事がないんですけど。でも私、実は「よしぎゅー」に 対して、密かに親近感を抱いているのです。だって「早い・安い・旨い」とか言う彼らのキャッチ コピーは、私の「(書くのが)早い・(内容が)安い・(厳しいとこ突っ込まれても逃げるのが)ウマい」 っていうFicのスタイルとそっくりなんだも〜ん(爆) あ、あれ? これってホントに「よしぎゅー」のキャッチコピーだっけ?? このFicを読んで下さったすべての方に、 試験的にこのFicを読む事を快く引き受けてくれた相棒に、 そして、このFicをアップしてくださった管理人サマに、感謝の気持ちを込めて....。 Amanda