DISCLAIMER// The characters and situations of the television program "The X-Files" are the creations and property of Chris Carter, Fox Broadcasting, and Ten-Thirteen Productions. No copyright infringement is intended. ----------------------------------------------------------------------------------------------------- −前書き− ちょっとした妄想です。 軽い気持ちで読んでやってくださると嬉しいです。 ----------------------------------------------------------------------------------------------------- Title: 汝、隣人に幸せを分け与えよ Category: Comedy Spoiler: None Date: 11/30/99 By Amanda ----------------------------------------------------------------------------------------------------- 「なんだ、これ?」 Mulderは、自宅のパソコンに送信されてきた、ある1通のメールに釘付けになった。 差出人は...ダイアナ・ファウリー。 「あいつ、何考えてるんだ?」 吐き捨てるように言うと、そのメールをごみ箱に移動させ...ようとして、はたと手を止めた。 「僕は...これを...どうすればいいんだろう?」 パソコンの前に腰を下ろし、動かざる事15分。 Mulderは、真剣に考えていた。 ダイアナからのメール 捨てるべきか? 生かすべきか? 彼の指は、せわしなくマウスをトントンと叩いている。 「くっそ〜、こんな物、送ってきやがって...」 苦悩のあまり、ついに頭を抱え込んだMulder。 と同時に、彼は自分の身の上についてを、その頭の中でいろいろと考えていた。 もうすぐ40に手が届こうかという独身男。 愛する女性がいるにはいるが、告白できない情けなさ。 怪奇現象に振り回された「普通の幸せ」とはほど遠い人生。 「.......」 突然彼はガバッと身を起こし、再びダイアナからのメールに視線を戻した。 「よし」 意を決したMulderは、カタカタとキーボードを打ち始めた。 ----------------------------------------------------------------------------------------------------- 「何よ、これ?」 Scullyは、自宅のパソコンに送信されてきた、ある1通のメールに釘付けになった。 To : Dana Scully From : Fox Mulder Subject:転送;幸福になるメール ・:+∴   :☆・:   +∴:+∵:   :☆:+ :☆. .+:∴+:☆‥∵ :+‥☆:∴+:☆ ∴:∵+‥+∴☆:∵ .+☆‥: ∴+∵:∴☆天の川。5人に送ると好きな人と永遠に結ばれます〓 天使の晴久! あろう事か、MulderはダイアナからのメールをScullyに転送したのだ。 「Mulderったら、何考えてるのかしら?」 これで本当に好きな人と永遠に結ばれるんだったら、私だって出すわよ 呆れたようにつぶやくと、そのメールをごみ箱に移動させ...ようとして、はたと手を止めた。 「でもこれ...どうしたらいいのかしら?」 パソコンの前に腰を下ろし、動かざる事3分。 彼女の頭に、ふとある考えが浮かんだ。 「いいわよね、たまには。彼らにもこういうユーモアは必要だわ」 ニヤリと笑ったScullyは、パタパタとキーボードを打ち始めた。 ----------------------------------------------------------------------------------------------------- 次の日 Scullyは、いつもより早く出勤し、ダイエット中の唯一の楽しみである「豆腐アイスクリーム」を 賞味しながら、最新の医学雑誌をパラパラとめくっていた。 程なく、オフィスのドアが開く音が聞こえた。 「やあScully、早いじゃないか」 「あなたが来る前に豆腐アイスクリームを食べたかったのよ。横取りされるの、イヤだから」 「横取り? 人聞きの悪い...」 「そうそう、さっきSkinnerが来て、あなたにオフィスに来るようにって、伝言を預かったわ」 「何の用だろう?」 「さあ...また彼の毛髪がますます危機に陥るような事でもしたんじゃないの?」 「いいジョークだ、Scully。君のそんなところにホレてるんだよ、僕は」 「はいはい、ありがと。お二人で楽しんできてちょうだい」 Mulderがオフィスを後にした。 そうよ、楽しんできてちょうだい、Mulder きっとゾクゾクするわよ Scullyはオフィスで一人ほくそ笑みながら、食べかけのアイスを一舐めした。 ----------------------------------------------------------------------------------------------------- その頃、副長官室では... 何も言わずに、ただパソコンの画面をじっと見つめる、1人のマッチョ男。 「Scully.....」 部下からの突然のメール、しかも... 「彼女がこんなものを信じるなんて...」 Skinnerは、その大きい体をめいいっぱい縮めて丸くし、つい「うーん」と唸ってしまった。 To : Walter Skinner From : Dana Scully Subject:幸福になるメール ・:+∴   :☆・:   +∴:+∵:   :☆:+ :☆. .+:∴+:☆‥∵ :+‥☆:∴+:☆ ∴:∵+‥+∴☆:∵ .+☆‥: ∴+∵:∴☆天の川。5人に送ると好きな人と永遠に結ばれます〓 天使の晴久! しかし、更にこの後、Scullyによって以下のような文章が付け足されていた。 まさかScullyがこんなものを書くとは、偉大なるSkinnerでも思いつかないだろう。 これを読んだ後、最初に会った人に「君が好きだ」と言うと 今日、必ずあなたに素敵な事が起こるでしょう 人間はみんな平等です きっとあなたにも、幸運が訪れてくれます 報告書のお堅い文体だけでなく、こんな文章を書く才能もあったとは。 さすがDana Scully、だてにFBI Agentを務めてはいない。 Skinnerは、苦笑いを浮かべた。 上司である私に、こんなメールを送りつけてくるとは... こんな事は言いたくないが、彼女もとうとう本格的にMulderの影響を受け始めたに違いない どうせMulderから送られてきたのだろう Skinner副長官、確かにあなたの勘は鋭い。 しかし、XFセクションの二人を監督するには、もう一捻りの鋭さが必要であるという事を あなたはまだ気付いていないのだろうか? ばかばかしい、と、そのメールを削除しようとしたその時、ドアがノックされる音がした。 ドアの向こうから、Mulderが姿を見せる。 「Sir, お呼びですか?」 ドアのノックの音から、Mulderの「お呼びですか?」というセリフまでの僅かな間、 Skinnerの頭の中では、様々な思いが交錯していた。 最初に会った人に「君が好きだ」と言うと、幸福が訪れるでしょう 幸福が訪れるでしょう 「幸福」が...... ふん、そんな事、あるわけがないだろうに しかし... 私も踏んだり蹴ったりの人生だ 上からは押さえつけられ 下からは突き上げられ 管理職特有の板挟み その上、結婚生活も破綻 今じゃあ 休みの日の、愛犬トトとのボール遊びが私の楽しみ こんな私に 幸福は果たしてやってくるのか? こんな私にも 幸福は微笑みかけてくれるのだろうか? Skinnerの唇が開く。 「君が好きだ」 ....... オフィスにある時計の、秒針の刻む音がやけに大きく響いているような気がした。 「ふ、ふくちょうかん? いまなんとおっしゃいました??」 何度も言わせるな!! 恥ずかしい... 「いや、何でもない。もういい、オフィスに戻れ」 聞きずてならない、いや、唐突の上司の発言にキョトンとするMulder。 「聞こえなかったのか? 戻って仕事をしろ」 「は、はあ...」 「ああ、Mulder捜査官」 「何ですか?」 「...メールに...自分の運命を託してはいかん」 ?? 「わ、わかりました...?」 ----------------------------------------------------------------------------------------------------- 副長官室のドアを閉めた後、MulderはSkinnerの最後の言葉を頭の中で反復した。 メールに自分の運命を託すな メールに自分の運命を... メールに... もしや.... あのメールか!? そして... さっきのSkinnerの告白が... 僕にもたらされた幸福なのか!? すっかり気が動転してしまったMulderは、どうやって自分のオフィスに戻ったのか 全然覚えていなかった。 ----------------------------------------------------------------------------------------------------- 「あら、早かったのね。何だったの?」 返事がない 「Mulder.....?」 私の計画、成功したのかしら? 「Mulder!!」 「へっ!?」 「Skinner、何ですって?」 「え、あの...いや、なんでもないよ。いつものお叱りだ」 言葉につっかえながらも、なんとかごまかしたつもりのMulder。 「ふーん、そうなの...ねえMulder?」 「あ? まだ何かあるのかい?」 「私に『幸福になれるメール』を送ってきてたけど、何かいい事あった?」 ドキ 思わず声がうわずる。 「い、いやー、何にもないよ。何にもないったらScully!!」 「そう...いい事、あるといいわね」 「そうだな、うん、ホントにそうだな」 妙に陽気なMulder。 きっとSkinnerに「好きだ」って言われたのね そう確信したScully。 Skinnerの告白シーン、私も見たかったわ そこで会話はプッツリ途切れ、黙々と今日の仕事を始める二人だった。 メールの文句にひっかかる男達と メールで言葉巧みに男達を騙す女 そして このちょっとした珍事件の元凶ともいえる 「幸福になれるメール」を送りつけてきた、もう一人の女 こんな彼らに、果たして本当に幸せは訪れてくれるのだろうか? The END −後書き− お粗末サマでした(^^;) こんなネタ、どこから!? と思われるでしょうね。 実はこれ、ジョギング中に思いついたんです。 今回、共にホノルルマラソンに参加する方(=以下Hさん)との会話から、このFicは生まれました。 私が所属しているジョギングサークルのメンバーには、なぜかXF愛好者が多い。 (もしかして、火付け役は私かな?・笑) Hさんは、ご夫婦でXFをご覧になってるそうです。 で、ついこの前までものすごい愛煙家だったHさん。 ランナーが愛煙家やったらアカンやろ!! という事で、今は禁煙なさっているのですが...。 そんなワケで、内輪ではHさんの事を「CSM」と呼ばせていただいてます(笑) 最後に...Hさん&セイナお姉さん、アイデア提供をありがとうございました!! 感想や、ご意見等をいただければ嬉しく思います。 Amanda aiko@mti.biglobe.ne.jp