南国好きの懲りない面々 〜ホノルルマラソンレポート〜 今年もとうとう行ってきました、死闘(!?)ホノルルマラソン。 2年ぶり、4回目の参加だったのですが、またまた半泣きになりつつも 走り続けた世にも恐ろしい...いえいえ、爆笑あり、感動ありの マラソンツアー、ここで皆様と共に振り返ってみたいと思います。 ご案内はわたくし、Amandaでございます。皆様、どうぞしばしのお付き合いを。 まず、ホノルルマラソンの説明を簡単に。 一応、フルマラソンです。そう、泣く子も黙るような距離、42.195qを走るんです。 もちろん、車や自転車で、ではありません。お尻の下からニュッと生えている、 2本の足を使って走ります。ちなみに、42.195qって、どんな距離でしょう? 関東地方の方なら、皇居から千葉マリンスタジアムまでを直線距離で約往復。 関西地方の方なら、大阪城から芦屋市までの直線距離を約往復。 九州地方の方なら、宮崎シーガイアから日南市までの直線距離ぐらいだと 思っていただければ想像がつくでしょうか?(間違ってたらどーしよ・汗) コースは、アラモアナ通り〜ダウンタウン間を往復してワイキキのホテル街へ、 そしてカピオラニ通りを抜けて、ダイヤモンドヘッドを越えます。その後、 高級住宅街のカハラ地区を通ってハイウェイへ。ちなみにこのハイウェイ、 往復で約14qあるんです。気が遠くなりそうですね(笑) その後、折り返し地点であるハワイ・カイ地区に入ります。 そして再びハイウェイ〜カハラ地区〜ダイヤモンドヘッドを越えて、 カピオラニ公園でゴール。上り坂・下り坂の数はそう多くないのですが、 一つひとつの勾配が大きく、最大高低差は約120フィート。(=36.6m) ハワイへ行った事のある方なら、これを読むと、きっとゾッとすることでしょう(笑) 今回は「雨」の中の滞在だったんです。ひたすら雨、雨、雨。湿度も高く、 まるで日本の梅雨でした。意外にも肌の弱い私は、ばっちり「あせも」を こさえてしまい、いやはやな目にあいました(苦笑) 今回は、総勢6人のメンバーでツアーを実施。それぞれに個性の強い(!?) 面々で、これがまたやたらと楽しいのです。私はメンバーの中で最年少 なんですが、それにも負けじといかんなく(!?)ハチャメチャぶりを発揮。 みんなを思いっきり振り回してしまっています(^^;) ではここで、そのパワーあふれるメンバーのご紹介です。 あずちゃん(♂):我らがジョギングサークルの部長。 めっぽう速い足の持ち主。1児のパパとは思えないような若いノリで、 常々洋楽・洋画・XFをこよなく愛してやまない男。 セイナお姉さん(♀):ジョギングサークルの実質のドン。 (こんなん書いたら怒られそう・汗)ハワイでの買い物が大好き。 メンバー、特に私の面倒をよく見てくださいます。いつもお世話になってます、姉さん(^^) まさやん(♂):セイナお姉さんの弟。まめな性格で、ホノルルツアーだけでなく、 レースや忘年会、飲み会等、各イベントの時は全て完璧なまでに段取りをアレンジして くださる心強いお方。別名、とりまさ(笑) パパ(♂):私のFic「汝、隣人に幸せを分け与えよ」の後書きにも登場した 「Hさん」は、何を隠そうこのお方。女の子が大好きで、レース中にはいつも 近くを走る女の子に声をかけながら走っているとか(笑) でも実は2児の良きパパ。 ホノルルは今回が初トライ。 S君(♂):今回のツアーではいつも「オチ」役として散々からかわれていた存在(笑) なぜかいつも哀愁の漂う表情をしているため、パパから「ホノルル、楽しいか?」と 心配されていた(!?)お兄ちゃん。彼も今回が初のホノルルマラソン。 以上、このメンバーを頭の片隅に置いてご鑑賞いただくと、 より一層レポートをお楽しみいただけるかと思います。 また、本レポートは日記形式ではありません。私が見聞した面白いものや、 他メンバーの言動に焦点を当てて書いてあります。 以上の点をご理解いただければ幸いです。 それでは、前置きが長くなりました。これより本編です。 --------------------- File No.001 −白と黒− 12月10日(金)、22:20発のJAL便で、関西国際空港を出発した面々。 進行方向に向かって前列左から、パパ、Amanda、S君。 後列左から、姉さん、まさやん、あずちゃんの順に着席する。 この時点から、「S君はオチ役」である事が運命付けられていたのである。 パパは離陸前に、機内でスッチーからスポーツ紙を借りた。 何新聞だったかは記憶にないのだが、若手タレント「吉川ひなの」に関する記事が 載っていた。どうやら彼女、久しぶりに公衆の面前に登場したらしい。 パパ「なあ、この子、最近CM契約も減ってしもて、ピンチなんちゃうん?」 Amanda「そりゃそーや、結婚してすぐ離婚して。イメージダウンやもんなあ。でも、  20歳でバツイチって、ねえ」 パパ「それに比べてS君なんか、33にもなって戸籍白いねんで。戸籍真っ白、お先真っ暗やで」 こんな爆弾発言で、今回のホノルルツアーは幕を開けたのである。 --------------------- File No.002 −ど根性パパ− 睡眠を取り、着陸まであと2時間ほどのところで目を開けて驚いた。パパが座っている はずだった私の隣の席に、なぜかまさやんがひょっこりと座っていたのである。 Amanda「あれ〜、パパは?」 まさやん「気分悪くて別んとこで寝てる」 昨夜、機内で飲んだ2杯のビールと飛行機の揺れがきいたのだろうか。座席の肘掛けを上げ、 横になって寝ているらしかった。大丈夫かいな?? と、みんなが心配しているところに 寝ぼけ眼ではあるが、スッキリした顔つきでパパが戻ってきた。帰って来て開口一番 「いや〜、よー寝た。看病してくれたスチュワーデスのお姉さん、ナースに見えたわ」 ...さすが「女の子好き」なパパ、転んでもタダでは起きない。 --------------------- File No.003 −シンドラーのリスト− 空港に着き、ハワイに足を踏み入れた瞬間、 「うっ、暑い...」 しかも、いつもの暑さと比べて格段に「蒸し暑い」のである。ほとんど日本の梅雨と 変わりがないぐらいだ。おまけに曇りの空模様。いつものあの「ギラギラ太陽」は 一体いずこへ行ってしまったのだろう? とにかく、空港に着いた一行は、他のJ○Bパックツアーの参加者達と共に バスに乗せられ、アロハタワーへと「護送」された。私達はパックツアーではあるものの、 行動日程はすべてフリータイム形式だったため、アロハタワーで手続きを済ませれば、 後は自由行動だと思っていた。 しかし、現実はそう甘くない。 お腹も空いたし、いざランチへ、と思いきや、他のJ○Bツアー団体客達と共に狭い部屋へと 押し込められ、あれやこれやとお説教...いや、「楽しいハワイの過ごし方」なる ありがたい説明を聞かされた上に、20分もある「ハワイ案内ビデオ」を見るハメに なったのである。 「時差ボケ・寝不足・疲労感」と、三拍子揃いも揃った状態であるのに、 暗闇の中でビデオを見るのである。まるで「さあ、心ゆくまで寝て下さい」と 言わんばかりの好環境ではないか。案の定、起きていたのは、今回がホノルルマラソン 初挑戦のパパとS君。まさやんは半分ほど聞いていたらしい。残りの3人は、イビキこそ かいていないにしろ、爆睡モード全開。私にいたっては、何についての話だったのか まったく記憶にない状態だった。 護送、部屋への閉じ込め、拷問という名の(!?) ビデオ鑑賞会。 この体験を通じて、同じく列車で護送され、狭い部屋へと押し込められ、消毒用のシャワーを 浴びせられたユダヤ人達の悲惨な日々を描いた「シンドラーのリスト」を思い出したのは... きっと私だけだろう(笑) 寝起きのボケボケ状態でようやく解放された後、ランチにたどり着く。 その後、本格的に雨が降り出した。 「異国の雨もええやん」なんて言ってる場合ではない。 とりあえず、ホテルにチェックイン。 --------------------- File No.004 −ゴミ− 本降りの雨に耐えられなくなった一行は、ハワイのコンビニ「ABCストア」で 雨ガッパを購入した。ひとつがなんとわずか83セント。色も豊富に取り揃えてあり、 「安いやん!!」と一同、キャッシャーに列をなし、83セントと引き換えに雨ガッパをゲット。 店先で早速袖を通すと... 「おお、これは...ゴミ袋!!」 まさしくゴミ袋の素材で作られた、てれんてれんの雨ガッパだったのだ。 いや、ゴミ袋そのものの素材ならまだ我慢ができる。私達の購入した雨ガッパは、 ゴミ袋のそれよりも一段と「薄い」のだ。 幸か不幸か、黒の雨ガッパを購入したあずちゃんとS君は、パパにより 「生ゴミ1号・生ゴミ2号」と命名される。そして青の雨ガッパ姿の姉さんと私は、 それぞれ「可燃ゴミ1号・不可燃ゴミ1号」というありがたい称号を授かった。 もしここで赤のカッパを着たヤツがいれば、間違いなく「有害ゴミ1号」と 名付けられていたに違いない。 --------------------- File No.005 −告白− それは、夜もとっぷりと更けた頃。 「ちょっとABC行ってくるわ」 と、突然、部長あずちゃんが切り出した。 そうか、こんな夜遅くに...と私は何も疑わずに「行ってらっしゃい」と見送ろうとした。 しかし、彼の言葉は続いた。 「パンツ持ってくんの忘れたから買ってくる」 !? 出発当日の午前4時から荷物をスーツケースに詰める作業を始め、その荷物を仕事場に 持って行き、そのまま空港へ直行した彼は、あろう事か大事な下着を詰め忘れたのだ。 パパ「Amandaちゃんの、貸したろか?」 あずちゃん「あ、ホンマに? 貸してくれる?」 Amanda「え、私ので入るん?」 あずちゃん「入るやろうけど、支えるもんがないからなあ」 と言った直後、ホテルの一室は教室と化し、「あずちゃん教授」による 「男女のパンツ構造の違いについて」の講義が始まったのだ。それは彼によって ひとしきり熱く語られた。 「...そやからちゃうねん、男のパンツって、女のんとは」 と締めくくり、講義はビシッとキマった。そして彼は何事もなかったかのように 「ほな、買って来るわ」 と、あっさり部屋を出てしまった。 何も言わなきゃ、パンツを忘れた事なんて誰も気付かないのに...。 パンツを買うべく部屋を出る彼の後ろ姿に、私は「自分にとって恥であるに 違いない事さえもギャグにしてしまう関西人」の気質を見たような気がした。 --------------------- File No.006 −ウクレレとパンツの価値− それから約20分後、あずちゃんが帰ってきた。 彼は部屋につかつかと入ってくるなり、マシンガンの如く喋りだした。 「パンツなかった。ABCだけちゃうで。そのへんの店とかコンビニ、あっちこっち  行ったけどないねん。なんでないんや!? ウクレレはコンビニに売ってんのに、  なんでパンツは置いてないんや!? 日本やったら売ってるやん。なんで?  なんでないんや!? ウクレレ売るんやったらパンツ売れ!!」 真剣に感情を吐き出す彼が、なぜか可愛らしく、滑稽に見えた一瞬だった。 しかし、なぜハワイのコンビニにはパンツが置いていないのだろう? 実際、Tシャツや帽子、タオル等の身につけるアイテムに関しては、バッチリ過ぎるほどの 品揃えなのだ。それどころか、ウクレレだけでなく「腰ミノ&ココナッツの殻の胸あて」 というハワイアンコスチュームまでが陳列されているというのに。これがアメリカンジョーク と言うなら頷けるが、これではあずちゃんが可哀想だ。ABCストアの店員達よ、パンツを 陳列する事がどれだけ重要か、是非一度考えてみてほしい。 --------------------- File No.007 −瞬間沸騰型購買意欲上昇人間− 買い物好きなセイナ姉さん。ハワイに来る度に「ふぇらがも」やら「てふぁにー」やらを 持ち前の威勢の良さでスパッとゲットする。見ていて気持ちがいいぐらいだ。 その姉さん、今年はなかなか財布のヒモを緩めようとしないのだ。 他のメンバーの方があれやこれやと物欲に捕らわれているのを後目に、姉さんは全く動じない。 どうしたんだろ? 珍しい、と、みんながおかしがっていると、とうとうその時がやってきた。 2日目の午前中、ワイキキからバスで約15分ほどの所にある高級上宅地、カハラ地区 (見た目はアルカディアに近いものがある) 内にあるショッピングセンター「カハラモール」 での事だった。「じゃあ2時間後に集まろか」と解散後に、姉さんの「限界」が訪れたらしい。 2時間後の姉さんの両手は、アンサンブル、革ジャケット、化粧パレットなどが入った 紙袋でいっぱいになっていた。聞くところによると、購入総額はしめて約500ドル。 それでもまだまだ買い物心はおさまらず、「もっと買うよ」とはご本人の談。 やはり姉さんはこうでなくちゃ。 この姿を見ないことには、ハワイに来たという実感がわかない。 余談だが、この「カハラモール」には、Eveサマの大好きな「シナボン」というお店がある。 EveサマのFicでモルスカも食べていたシナボン、私もトライしてみた。 基本的にはシナモンロールなのだが、めっちゃくちゃ甘い!! でも、できたてを売って いるので、ホカホカですごくおいしいのである。たっぷり握り拳3つ分ほどのサイズだが、 意外にもスルッと喉を通る。皆様も是非一度、ご賞味あれ。 --------------------- File No.008 −爆発?− 終日フリータイムとはいえ、一応J○Bのパックツアーであるため、移動には、 J○Bが運営する、旅行者専用のトロリーバスを利用することができる。 前章の続きの出来事なのだが、ワイキキへ戻るために、私達はカハラモールで トロリーバスが来るのを待っていた。ハワイの「時間に対するアバウトさ」とでも 言うのだろうか。道路がガラ空きであるにもかかわらず、案の定、バスは10分ほど 遅れてやってきた。 ちなみに姉さんは、このわずか10分を利用して、チラチラとバスの気配をうかがいながら 見事に緑の長袖シャツをゲットした。さすがである。 さて、しびれを切らした私達が乗り込むと、その運ちゃんは 突然席を立ち、バスを降りていく。どないしたんや? 腹の具合でも悪いんか? と思っていると、彼はなんと、悠長にタバコを吸い始めた。これが日本なら、 彼に向かって罵声どころか、空き缶が投げつけられてもおかしくはない。 約5分後、彼の「楽しい喫煙タイム」が終了し、さて出発...と彼は体勢を整えると、 一気にアクセルを踏んだ。ガクン、という振動が来たかと思うと、彼はまるで目の前に ニンジンをぶら下げられた馬の如く、もの凄いスピードでバスを走らせ始めたのだ。 私達は急ブレーキに押し倒されそうになり、カーブによって生まれる遠心力に振り回される。 一行はそのたびに「ひゃー」「ひゃー」「ひゃー」と奇声を発するハメになった。 「速度を時速80マイル以下に落とせば、バスは爆発する」 映画好きのあずちゃんと私の脳裏に、「スピード」のこんなセリフが浮かんだのは 言うまでもないだろう。 --------------------- File No.009 −ティファニーで朝食を食べられなかった男− 「ウクレレとパンツ」の一件で熱く語ってくれた男、あずちゃんの告白第2弾。 なんやかんやと話をしながらワイキキを歩いている時、彼はこんな事を告白してくれた。 「『ティファニーで朝食を』って映画、あるやん。俺、学生の時にビンボー旅行で  ニューヨーク行ったやろ。そん時『ティファニーで朝飯が食える』って思ってて、  普段のTシャツとパンツ姿でティファニーに入った事あんねん。そやけど、  食えそうな所ないし、『2階なんかなあ』と思って、階段上がっていってんけど、  全然(食べる所が)ないし。『なんや、食べられへんのか』と思って店出ようと  してんけど、何も買わんと出るのん、気まずいやん。ほんで、店ん中で一番安そうな  もん探して、レターセット買うてん。それ、50ドルやってんで。なんでレターセットが  50ドルもすんねん!! そんなに払うてる場合か!!」 もちろん、一同は大爆笑である。 ティファニーとオードリーヘップバーンの陰謀(!?)により、見事に騙されてしまった あずちゃん。あまりのおかしさに、彼が50ドルもしたレターセットを誰のために 使ったのかという、肝心な事を尋ねるのをすっかり忘れていた私なのだった。 --------------------- File No.010 −ペイシェントX・巨大UFOに誘導される者達− マラソンは、現地時間で12日(日)午前5時スタート。という訳で、当日は夜中の2時に 起床したのだが、なんと外は大雨。ハワイに来てから太陽を見た事のない私達、当日の とっぱなから出鼻をくじかれた格好になってしまった。 しかし、そんな事でブツブツ言っても雨が上がる訳でもない。とにかく、前日に買った おにぎりと、日本から持参したスポーツドリンク「エネ○ゲン」(レース前に必ず飲むのが 私の習慣となっており、今や海外でもその習慣は外す事ができない。Amandaは意外に こだわりを持つヤツなのである。)を摂取...したのだが、こんぶおにぎりが気持ち悪いぐらい マズイのだ。同じくこんぶおにぎりを食していた同室の姉さんも、そのマズさに顔をしかめる。 姉さんと私は目を合わせた。 「もしや腐っているのでは?」 この時、二人の頭の中では、こんな言葉がグルグルと渦を巻いていたに違いない。 一抹の不安が頭をよぎった上に、私はレース中に腹痛に襲われ、仮設トイレに飛び込む 自分の姿をつい想像してしまった。 「いっ、いかん。こんな事で弱気になってはいけない!!」 必死になって頭の中の想像を打ち消し、雨ガッパをかぶって、一路スタート地点の アラモアナ通りへ。ここには、ハワイ最大のショッピングモール「アラモアナショッピング センター」があるのだが、クリスマスのこの時期、至る所にド派手なクリスマス用 イルミネーションが施されているのは、皆様の想像にたやすいだろう。もちろん、 このショッピングセンターもしかりである。その付近に、まるで京都タワーのような 塔が建っているのだが、ちょうどこの先端がUFOのような形をしており、 イルミネーションでピカピカに光っているのだ。 雨の中、この「UFO」の元に、雨除けのカッパを着た26,000人ものレース参加者達が 集うのである。 こんな場面、どこかで見たような... そう、スカリーが首もとのチップによって呼び出しをくらう、あのエピソードである。 「ペイシェントX」 いや、大袈裟ではなく、本当にあんなイメージなのだ。 (同じくXFを愛するあずちゃんも、実は私の隣りで同じ事を考えていた・笑) もしかして、誰かがカサンドラのように連れて行かれてしまうのであろうか。 どうせなら42qも走らなくて済むよう、私を連れて行ってくれればいいのに、 などと不謹慎な事を、頭の隅っこで考えていた私なのだった。 --------------------- File No.011 −Run, Amanda, Run!!− 「連れ去られたい」という私の願いも虚しく(!?)、雨の中の午前5時、大砲の音と共に レースがスタート。ランナーがもぞもぞと走り出すと、ディズニーランドのパレードの クライマックスで見られるような花火がガンガン上がる。しかしあいにく、そんなモノを 見ている余裕はない。なんせ26,000人という数である。よそ見をしていると、簡単に 押し倒されてしまうからだ。私達は、チラチラと視界の端でその花火を楽しみながら ダウンタウンへと走って行く。 まさやん、パパ、私の3人は、普段から走るペースが似ているので、序盤は一緒に走っていた。 最初はS君も一緒だったが、いつの間にやら離脱。まさやんも調子が良かったのか、10q地点 あたりで先に走っていってしまった。雨のため、スタートする前からシューズはベチャベチャ。 シューズの中まで雨水が染み込んでいる状態だったので、既に指には水脹れの感触がある。 なんかヤバイ 早くも私はそう感じていた。 始めの難関、ダイヤモンドヘッドを越え、片道7qのハイウェイに差し掛かってから、 私はウェストポーチに準備していた自前のウォークマンを取り出し、音楽を聞きながら 走り出す。このレースのために、私は「闘争心を掻き立てられるような音楽達」を 70分テープに編集して持って来ていたのだ。 ハーフ地点までは、ほぼ確実に1マイル(=1.6q)10分のペースでパパと併走していた。 しかし、パパがここで突然弱気になる。 「Amandaちゃん、俺、ヤバイ」 「なんやて!?」 何がヤバイんや? 私もヤバイっちゅーねん!! 気がつけば、パパの姿はもう見えなくなっていた。 あっれ〜っっ!? どこに行ってしもたんや!? しかし、ここで立ち止まり、スカリーが砂漠の中でそうしたように 「パパ〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッッッッッ!!」と叫び倒す訳にもいくまい。 仕方なく、私は音楽を聞きながら走り続けた。 折り返し地点、ハワイ・カイに入ったあたりで、猛烈な空腹感に襲われた。 この時点で、すでに3時間近く走り続けているのだから無理もない。私はこれまた 日本から持参した「カロリー○イト・チョコレート味」を1本口に入れる。元気が ムクムクと湧いてきた私は、ちょうど耳の中でかかっていた「Searchin' My Soul」 (注:「アリー・myラブ」のテーマソング)を口に出して歌い始めた。 ♪I've been searchin' my soul tonight Don't wanna be alone in life Now I know I can shine a light To find my way back home うぉううぉおおお〜べいべえぇぇぇ〜 うぉううおぉぉぉぉ〜 ふうぅぅぅぅ〜 ♪ 恥ずかしげもなく平気な顔で、しかも普通に喋るぐらいのボリュームで歌っていたため、 私が追い越していく日本人ランナー達が驚いて私を振り返る、という事は、私がいちいち 説明を加えなくてもおわかりいただけるのではないかと思う。 元来私は、自分の好きな音楽を聞きながら走ると調子がいい、という傾向にある。 しかも、歌いながらとくればなおさらだ、というのだから始末が悪い。 この後、Ricky Martin やら、懐かしの映画「フットルース」の「Holding out for a Hero」 (注:ドラマ「スクールウォーズ」のテーマソングの英語バージョン)やら、S5「プロメテウス」 の「モルスカダンスシーン」でかかっていた、Cherの「Walking in Memphis」やらが 続々と飛び出し、しばらく歌いっぱなしで走り続けていたのである。 しかしここで、図ったようにアクシデントが待ち受けていた。 給水ポイントは2マイル毎に設置されている。 ここで、動かしすぎでオーバーヒートを起こしている筋肉や体を冷やすためのスポンジや 飲料水、スポーツドリンクをもらえるのだ。 しかしながら、マラソンの「給水」という行為にさほど慣れていないアマチュアランナー達が、 もらったコップを取り損ねて落としたり、はじき飛ばしたり、という事も多々ある。 それに、カップの中味全部を飲み干せるとは限らず、そのへんに流して捨ててしまう 事もある。それに加えて、絞ったスポンジからも水が滴り落ちる。そのため、給水地点は 文字どおり「水浸し」なのだ。 その何回目かの「水浸し地点」で、私はいつものように太腿と延髄でスポンジを絞り、体を冷やした。 (延髄のあたりに水をかけると、「冷たい」という感覚がより強く神経に伝わるからだ) その時 「ぐぉんぐぉんぐわ〜んぐぉ〜ん.......ブツリ」 音楽がやんでしまった。 「げっ、どないなったんや!? おーい、動けよぉ〜っ!! あと12q残ってるんやで!!」 これからが一番辛くなる、という30q地点で、私の戦友であるウォークマンが 意識を失ってしまったのだ。 倒れた人を見て、気が動転している人がそうするように、私はポーチごとウォークマンを ゆすってみた。しかし、何の反応もない。私はこの時、FTFのモルダーの気持ちを痛いほど 理解する事ができたような気がした。息をしないスカリーにCPRを施すモルダー。 「スカリー、息をしろ、生きるんだスカリー!!」 モルダーが相棒に向かって叫んだ事を、私はウォークマンに向かって念じていたのだ。 結局、うんともすんとも反応しない戦友を腰に装着したまま、私は走り続けた。それは まるで、南極にある謎の基地からスカリーを肩にかついで脱出するモルダーの図、である。 こんな私に、更に神は試練をお与えになる。 ハイウェイを走り終える頃、あろう事か私に「睡魔」が襲ってきたのだ。 ところどころ、意識のないまま走っていた瞬間があったのも事実である。 「おいおい、走りながら『眠い』ってどないやねん!? そんな事、あるんかい!?」と 思うことなかれ。本当に眠くなったのだ。幸い、次の給水地点で水をかぶってから 目が覚めたが。 ハイウェイの最後あたりからカハラ地区走行中は、本当に足が前に進まなかった。 自分では走っているつもりなのだが、普通に歩くのとそう変わらない速度だったように思う。 こんな状態がしばらく続き、時計を見るとすでに4時間20分が経過していた。 このあたりから、毎度お決まりのセリフが私の頭を駆け巡るのである。 私、こんな所で何やってんねんやろ? ハワイに来てまでしんどい思いして走るなんて、アホみたいやん もーこんなしんどいの、一生せえへんで 決めた、ゼッタイに二度と走らん!! ゼッタイゼッタイゼッタ〜〜〜〜〜イッッッ!! ...ひとしきり心の中で叫ぶと、意外に精神状態は落ち着くものである。 その後は、ただただ5時間を切る事だけを考えて走っていた。 最後の難関、ダイヤモンドヘッド越え。 きっと私は、般若に負けないぐらいのしかめっ面で走っていたに違いない。 40q近くを走ってきた体にとってかなりきつい勾配の坂を上り切ると、後は2qを 残すのみ。この地点でタイムは4時間47分、4時間台を狙うにはもう崖っぷちの 状態である。このままヘロヘロと走り続ければ、おそらく5時間を越えてしまうだろう。 私は考えた。 この後のコースは、1.2qが下り坂、800mが直線なのだ。 この下りを利用して転がり落ちて(!?)いけば、きっとそのペースを落とさずに ゴールに突っ込んでいける。 そう思った瞬間、「アリー・myラブ」に出てくる「ちびクッキー」こと、ジョン・ケージ さながら、私の頭の中で「カーン」という「勇姿」ならぬ「勇音の鐘(!?)」が鳴ったのが 聞こえた。そうくると、もうこっちのものである。私は一気に坂を駆け降り、そのままの ペースで直線コースに入った。さっきまで足を引きずっていたのが嘘のようだ。 そこで私の視界左側に、一人の見知らぬおじちゃんの姿が目に入った。 おじちゃんは私に向かって叫んだ。 「ねーちゃん、いけ〜〜〜〜〜〜〜〜っっっっ!! 5時間切るんや〜〜〜〜っっっ!!」 普通なら「なんやこのおっさん、何わめいとんねん?」と突っ込んでしまいそうなのだが、 なにぶんこっちも必死である。それに、辛い時の応援ほど嬉しいものはない。 私はそのおっちゃんの叫びに負けないぐらいの声で 「よっしゃ〜〜〜〜〜〜っっっ、もうちょ〜〜〜〜〜〜いっっっっっ!!」 と、完全にキレてしまった。こうなるとAmandaは実に驚くべきパワーを発揮する(笑) どぉぉぉぉぉぉりゃぁぁぁぁぁぁっっっっ!! と、大声でわめき散らしながら、800mを荒れた馬車馬のごとく突っ走り、 感動で半泣き&笑顔のぐちゃぐちゃの顔でフィニッシュラインを踏み越えたのである。 タイムは4時間57分31秒。前回よりも14分遅いタイムだが、そんな事はどうでもいい。 周りのボランティアスタッフの「Good Job!!」という言葉と、完走者全員の首にかけて くれる貝殻のレイ、そして、フィニッシュラインのすぐ後ろに設けられたシャワーに 打たれながら、「やっと終わった」という安心感と充実感に満たされるのである。 しかし、まだ問題が残っている。 完走者全員に渡される「フィニッシャーズTシャツ」が配られるテントが、ゴール地点から めちゃくちゃ遠いのである。パンパンになった太腿、水脹れがたくさんできあがった足、 ガチガチになった背筋と腹筋。そんな体を引きずりながら、今度はテントを目指して 歩かなければならない。そして、それをもらった後は、ホテルまで自力で帰らなくては ならないのだ。そう考えると、何かまた気が遠くなるような気もするのだが(苦笑) しかし、やはりあのフィニッシュラインを踏み越える瞬間は、何度経験しても感動する。 あの感動があるから「また走りに来よう」と思えるのだ。 随所に、たくさんのカメラマンスタッフがいる。走っている姿、走った後の姿、 とにかく、ホノルルマラソンの全てをひたすらフィルムに収めてくれる人達だ。 その写真は、写っているゼッケン番号を手掛かりに、後に自宅へと郵送してくれる。 どれだけ疲れていても、カメラを向けられるとSmileをしてしまう自分が、 ちょっと可笑しかった。 さて、この章の最後に、私の「戦友」についてのその後を書いておきたい。 走ったその日の夜遅くの事だった。 きっと水がかかって動かなくなってしもたんや ゴムで固定してたけど、走るたんびに振動で揺れとったしな 戦友って言うても、一応デリケートな精密機械やし と、諦めの境地でもう一度再生ボタンを押してみた。 すると、なんと何事もなかったかのように動き出したのだ。 あん?? 私はすっかり拍子抜けしてしまった。 一時は動かなくなってしまったのに、今では息を吹き返し、 淡々とテープを右から左へと巻き続けるウォークマン。 "I had you big time"(騙したのよ) なんだかそう言われているような気がした。 --------------------- File No.012 −念願のS7− 走った日の晩、念願のS7エピソードを見た。 なんだか関西人魂を全開にして突っ込みたくなるようなストーリーだった。 ものすごい幸運を背負ったオヤジの話だったのだが、これがまたとことんラッキーな ヤツなのだ。高い所から落ちても、車に轢かれても、銃で撃たれても、何が起ころうが とにかく助かるのである。とはいえ、彼には肝臓に重い障害を持つ息子がいるのだが。 後でこの息子を絡めたストーリー展開になってきて...これ以上はネタばれになるので やめておく。 しかし、この男のラッキーぶりは尋常ではない。町でDDとGAにばったり会って、 簡単に意気投合して友達になれるぐらいのレベルである。特に最後は「おいおいCC、 そこまでするか!!」と、ほとんどギャグのようだった。まあ、散髪してこざっぱりとした DDと、いつもより笑顔のショットが多かったGAの姿を拝めただけでも満足である。 この他にも「カビ」と「愛児」の再放送も見る事ができ、なかなかのXFな生活を 過ごす事ができた。 --------------------- File No.013 −エビの誘惑− 最終日に、初めて太陽を見る事ができた。 すっかり太陽に飢えていた一行は、レンタカーをぶっ飛ばし、オアフ島北部までドライブ。 アウトレットショッピングモールや、ドールのパイナップル工場を経て、お目当ての 「エビ屋」へ。ここはハワイへ来る度に訪れる、お気に入りの店である。 「エビ屋」とは言っても、トレーラーで商売をする、いわゆる「屋台」で、 一見アヤシそうな店なのだが、いつも愛想の良いお姉さんやお兄さんが出迎えてくれる。 メニューは「エビ」だけ、しかも激辛なのである。スパイス系の激辛なのだが、これが 半端ではないのだ。一口食べた後、500mlの水を一気に飲み干し、更に甘ったるいガムで 口の中の辛さを消そうという防衛能力(!?)が働くほどだ。 とにかく、この激辛エビを食べては「ひ〜〜〜〜〜っっっ!!」と叫び、その情けないザマを 写真に撮ってみんなで笑う、というのが、このメンバー達の恒例行事なのである。 例によって今年もこの「ひ〜〜〜〜〜っっっ!!」が、オアフ島にこだましたのだった。 --------------------- File No.014 −ひーはー− ホノルル滞在最終日、一行はこれまたお馴染みの店「HOOTERS」へと向かった。 フライドチキンが自慢、という気楽なお店で、超ナイスバディのお姉さん達が、 「HOOTERS」オリジナルデザインの、フクロウのイラストが描かれたタンクトップと、 オレンジ色のショートパンツ姿でサービスをしてくれるのだ。みんなとても気さくで あり、健康的な色気と盛り上げ上手な性格で、日本人にも丁寧に対応してくれる、 とてもいい店だ。 まず、この「HOOTERS」へ行くのに、例によってJ○Bのトロリーバスを利用した のだが、このRicky Martin似の運ちゃん、めちゃくちゃテンションが高いのだ。 「つっぎはぁ〜、アローハタワ〜〜〜」 と、奇妙なイントネーションの日本語でくっちゃべり、頭上の鐘をガンガン鳴らしながら 振り落とされるのではないかというぐらいのスピードで「Hee-Ha!!」と雄叫びを上げて バスを運転するのである。ちょっとイカレたRicky...うむ、ますますアヤシいではないか。 しかし、個人的にはそういうノリが好きなので、一緒になって奇声を発していたのだが。 それにしても、バスの運ちゃんが「Hee-Ha!!」はないだろう、なあ、兄ちゃん。 --------------------- File No.015 −ホノルルは最高− その「HOOTERS」、味もなかなかよろしく、ひとしきり盛り上がった後、姉さんが タバコを吸い始めた。すると、本人自ら志願したのか、はたまた誰かがけしかけたのかは 結局ハッキリしないのだが、かねがね禁煙中だったパパが、姉さんのタバコに手を出したのだ。 「やめとき〜、またやめられへんようになんで〜!!」という、外野からの「天使の声」と 「ええやん、一本ぐらい」という「悪魔の声」が交互に飛び交う中、タバコはパパの口に くわえられ、先端がジリジリと燃えていったかと思うと、彼の口から白い煙がすうっと 漏れていく。うっとりした表情を浮かべ、パパがひとこと。 「ホノルル最高!!」 たった一本のタバコが、ホノルルを楽園に変えてしまったのである。 素晴らしき哉、タバコ。 --------------------- File No.016 −椅子になったパパ− 帰りの飛行機の中で、お手洗いに行きたくなったパパ。 トイレに行くために、座席の下に脱いで置いていたサンダルを取ろうと、 パパは通路にしゃがんだ。 ちょうど同じ頃、後方からこちらに向かってスッチーが食事を配りに来ていた。 彼女は私の横に止まり、食事のトレイを引き出そうと身をかがめた。 すると 「あ」 という、なんとも言えない声がスッチーの口から漏れた。 そう、できすぎとも言えるタイミングで、スッチーがパパの頭に腰掛けるような格好に なってしまったのだ。 普段から女の子によくちょっかいをかけてはニンマリと喜ぶパパなのだが、さすがに これには焦ったらしく、「わざとちゃうで!!」と、しきりに自己フォローに努めていた。 かたや自分のお尻をパパの頭に乗っけてしまったスッチーは「あら、いいところに...」 と、少しはにかんだ表情でつぶやいた。そのセリフが妙におかしくて、何か旅の最後に 得をしたような気分にさせられた。 --------------------- File No.017 −最後に− マラソンでは4回目、通算5回目のハワイではあるが、毎回濃い内容が盛りだくさんで 山のように撮ったマヌケな(!?)写真達を見る度に、その瞬間を容易に思い出す事ができ、 私の大切な思い出となっている事は、皆様の想像にたやすいだろう。 今回も様々な思い出と共に日本へ戻ってくる事ができ、大変嬉しく思っている。 やはり今回は、なんとか4時間台で完走できた事が一番心に残っている。 首・腰・アキレス腱に爆弾を抱え、充分な体調とは言えないままのハワイ入り だったためだろうか。所詮、マラソンは日々の健康管理と、どれだけ練習をしたかが ものを言うのだ。 実を言うと、私は走る事がそんなに好きではない。練習も嫌いだし、レース参加もそんなに 積極的ではない。その私がなぜ、何回もホノルルへ走りに行くのか。おそらくホノルルで 遊ぶため...ではなく、あのフィニッシュラインを踏む瞬間が好きだからだ。スタートから ゴールまでの生々しい辛さなど、1ヶ月も経てば、きれいさっぱり忘れている。あの辛さを 1年経っても忘れられなければ、きっとマラソンになど、こう何回も参加はしない。 嬉しい事や楽しい事はいつまでも心に残り、そして辛い事や苦しい事は、自然に記憶から 埋没していく。人間は、そんな都合の良い記憶力を持っているからこそ、マラソンを 走る事ができるのだと思う。 「走らないと...練習しないと...」この数ヶ月、常にこんなストレスに追いかけられていた ような気がする。当面は、少し体を休めたいと思う。と言っても、エアロとボクササイズの 指導までサボるわけにもいかないが...。 来年のホノルルマラソンに参加するかどうかはまだ決めていない。しかしおそらく、私の 都合の良い記憶力が、走る事の苦しさを忘れてしまった頃、また「走りたい」と思うように なるのだろう。 最後に、あずちゃん、ねえさん、まさやん、パパ、S君。 こんな超マイペースな「爆弾娘」のお守りをしてくれて、どうもありがとう。 みんなのおかげで、今年も最高に楽しい6日間を送ることができました。 こんな私で良かったら、これからもまた付き合ってやって下さい。 よろしくお願いしやす。 Amanda