DISCLAIMER// The characters and situations of the television program "The X-Files" are the creations and property of Chris Carter, Fox Broadcasting, and Ten-Thirteen Productions. No copyright infringement is intended. --------------------------------------------------------------------- −前書き− 今年もクリスマスがやってきました。 この人達にも、素敵なクリスマスプレゼントが届きますように....。 これは筆者の個人的な想像の産物である事をおことわりしますと同時に、 お読み下さる皆様には、本作品に対しての寛大なご理解をお願い申し上げます。 --------------------------------------------------------------------- Title: I Love You Category: Xmas Spoiler: くりすますのちっちゃなぷれぜんと(Amanda's FanFiction) Date: 12/23/00 By Amanda --------------------------------------------------------------------- ....私ったら、バカね クリスマスイブの前夜、最後の一文字を書き終えると、スカリーは恥ずかしそうに小さな笑みを こぼした。一度読み返して、どうしようかと迷った挙げ句、便せんを封筒に差し込み、靴下の 絵柄がついた可愛らしいシールを貼り付けて、便せんに封をする。 メリークリスマス、マイ・スイートハート.... 便せんにキスをして、出窓に飾ってある小さなクリスマスツリーの足元にそっと置いた。 あなたに毎日ほんの少しでも幸せが訪れますように.... --------------------------------------------------------------------- 「やった!! ママからの手がみだわ!!」 お転婆娘への道を着実に邁進するエミリーちゃんは、天国にある小学校の二年生になっていました。 今日も、廊下をドタドタと走っていたのを担任のウォルシュ先生に見つかって、教室でお説教を されていたところです。 「まったく....エミリーちゃん、あなたってどうしてそうお転婆さんなの?」 「だってママからの手がみがきたんだもん、ウォルシュ先生。早くあけたくって!!」 「あら、ママって、あなたが去年お手紙を出したママの事?」 「そうよ、とってもびじんなんだからぁ」 くしゃくしゃの笑顔を作って自慢げに話すエミリーちゃんを見ていると、なぜかウォルシュ先生 まで楽しい気分になってきます。 「じゃあ、今日は特別に居残りはなしにしてあげるわ」 「ホント!?」 「ただし、今度廊下を走ったら....わかったわね?」 「はーいっ!!」 クルリと先生に背を向けると、エミリーちゃんは教室を走って出て行きました。 ドタドタドタ...... 「エミリーちゃんったら....」 先生は、豆台風の後ろ姿をニコニコ顔で見守っていました。 --------------------------------------------------------------------- 「たっだいまぁ〜っ!!」 家に帰ってきたかと思うと、すぐさまエミリーちゃんは階段を駆け上がっていきます。自分の 部屋へ入ると後ろ手にドアを閉め、右手に握りしめた封筒を見てニッコリと笑いました。 「ママ、お手紙ありがとう」 封を切ると、ふんわりとママの優しい匂いがしました。 こんにちわ、エミリー 元気にしているかしら? あなたからお手紙をもらって、もう一年が過ぎました。 ついこの前の事だと思ってたのに....。 ママは元気に頑張っています。 もちろん、あなたの大好きなポテトヘッドのモルダーおじさんと一緒にね。 相変わらず変な事件ばかりだけど、ママはこのお仕事を誇りに思っているの。 エミリー、お友達もたくさんできたのかな。 先生の言う事をよく聞いて、お勉強もちゃんと頑張るのよ。 いつもあなたを想っているわ。 笑顔を忘れないで。 『愛するエミリーへ』  ママより 「ママ....」 胸にギュッと手紙を抱いて、エミリーちゃんは大きく息を吸い込みました。 --------------------------------------------------------------------- 「ただいま....って、誰もいる訳ないか」 『ただいま』なんて言ったのはいつ以来だろう。イブの日の夜、仕事を終えて帰宅したモルダーは、 デスクにポンと鍵を放り投げる。つい『ただいま』と口にしてしまった自分自身が可笑しかった。 デスクの上には、スカリーの部屋にあるものと同じミニチュアのクリスマスツリーが飾られている。 『クリスマスなんだから、雰囲気ぐらい楽しめば?』 そう言って、彼女が12月の始めに買ってくれたものだ。 『僕がクリスマスを楽しむだって?』 渡されたツリーを手に、モルダーはそう言って笑った。ひねくれ屋だとスカリーに冷やかされたが、 実のところは、彼女が提案したその素敵なアイデアを素直に受け入れられなくてわざと演出した、 照れ隠しみたいなものだ。 メリークリスマス、か.... フックにコートをかけようとした時、ツリーの足元に置いてあった四角い封筒に気づいた。その瞬間、 去年のクリスマスに起こった出来事が、ふと頭をよぎる。 エミリー....? モルダーはツリーに近づくと、その四角い封筒を取り上げた。去年と同じ水色の封筒だったが、それに 書かれた文字は、去年よりも少しだけ形が整っている。 『モルダーおじさんへ』 約束通りだな....さすがスカリーの娘だ 来年も手紙を書く、と言っていたエミリーの言葉を思い出し、モルダーは微笑みながら封を開けた。 モルダーおじさんへ こんにちわ おじさん、げん気ですか? いつもお空から、ママとおじさんのこと、見てます なかよくしてるので、よかったです いつもママと一しょにいてくれてありがとう ときどきケンカもしてるけど ママはいつもおじさんに一生けんめいです ママのこと、もっともっとすきになってください そうだ、おじさん きょ年の手がみのしつもん、わかりましたか? わたしは、まだよくわかりません 「あいしてる」と「すき」はどうちがうの? わかったらすぐにおしえてね やくそくだよ ではさようなら エミリーより エミリーのヤツ、すっかりおませな娘になったな.... ツリーにぶら下がっているプレゼントのデコレーションを人差し指でチョンとつつくと、 それは楽しげにユラユラと揺れた。 「『モルダーおじさんは、いつも君のママに一生懸命です』」 笑みを作ったまま、揺れるデコレーションを眺めてそう声に出してみた。 窓の外では、舞い下りてくる粉雪が、月の光が放つスポットライトを浴びて銀色に姿を変えた。 --------------------------------------------------------------------- トントントン クリスマスの日の朝、モルダーは、ドアがノックされる音で目が覚めた。 トントントン 同じトーンで、再びノックの音が聞こえる。寒さと格闘しながらようやくカウチから起き出し、 ドアを開けた。 「....おはようモルダー」 そこには、真っ白なコートに身を包んだスカリーの姿があった。寒い中を歩いてきたせいか、 鼻の先が赤くなっている。彼女の吐く息がほんの一瞬だけ白く姿を現した後、スルリと空気の中に 溶けていった。 「スカリー....」 「まだ寝てた?」 「いや、構わないよ。入って」 モルダーは、ドアを大きく開けてスカリーを招き入れた。彼女の身につけているブーツが、 いつもより鈍い音を立てて床を踏む。彼女の目が、デスクの上に飾ってあるツリーを捕らえた。 「結局飾ったのね」 「そうだよ。20世紀最後のクリスマスだし、試しに君の忠告を素直に受け入れてみる事にした」 「いいでしょ、たまには人の言う事を聞くのも」 「『たまに』なら、いいかな」 二人は視線を合わせた。 「ひねくれ者」 スカリーがそう言うと、二人は同時に静かな笑みをもらした。 「ねえ、モルダー」 「ん?」 「今年も....付き合ってもらえないかしら? もし良かったら....」 スカリーは、再びツリーに視線を移す。その青い瞳は、青空のように見事に澄み渡っていた。 「支度するよ、ちょっと待ってて」 --------------------------------------------------------------------- 去年と同じように、二人は教会にやってきた。聖歌隊のコーラスが、教会の内壁に心地良く 反響する。その歌声は全てのしがらみを洗い流し、モルダーとスカリーの心に清らかな静寂を 生み出していった。何もかもが晴れて真っ白になるような、そんな錯覚さえ覚えてしまいそうだ。 二人は並んで座ると、静かに祈りを捧げた。 「あのさスカリー」 「......」 「僕が去年、君に尋ねた事、覚えてる?」 「何?」 「『愛してる』と『好き』の違い」 ぼんやりとした表情で、スカリーはゆっくりと一年前の記憶を手繰り寄せていった。 「ああ、そうだったわね」 「答えは出たかい?」 「残念ながら、これと言って謎を解く鍵は見つかってないわ」 その言葉を聞くと、モルダーは少しだけ嬉しそうな表情を作った。 「じゃあ、こんな話を知ってるかい?」 昔むかし、あるところに、ラベルという青年が住んでいました。 ラベルは、ケインズの森に住む幸福の妖精。 愛情を分け与えるのが仕事です。 『みんなが幸せに過ごせますように』 そう願いを込めて、ラベルは毎日、森に住む者達に愛情をたっぷりと注いでいました。 ある朝ラベルは、リアスの滝でとても美しい女性に出会いました。 彼女は森の守護神セーラ。 長くてサラサラとなびく黄金の髪に、真っ白でしなやかな肢体。 ラベルは、素敵な笑顔を持つセーラにすっかり心を奪われてしまいました。 「この気持ち、どうしてもセーラ様にお伝えしたい....」 それからというもの、ラベルはセーラの姿を見るために、 毎朝リアスの滝を訪れるようになりました。 ラベルの、彼女への想いは日に日に募るばかり。 朝、起きた時に思い出すのは、セーラの紺碧の瞳。 夜、眠る前に瞼に浮かぶのは、セーラの紅い唇。 ケインズの森では、『好き』という言葉を相手の耳元で囁くと、 その想いが通じると信じられていました。 しかし、ラベルは考えました。 「『好き』なんて言葉だけじゃ、僕の想いはセーラ様には伝わらない....」 そこでラベルは、夜明け前にリアスの滝から落ちる澄み切った水しぶきを、 掌ほどの透明の小瓶にそっと詰めました。 『神様、今日だけ僕のわがままをお許し下さい。 みんなに配る愛情を、あの人だけにお渡ししたい』 ラベルはそっと胸で十字を切り、リアスの滝に祈りを捧げるセーラの掌に 小瓶の中の水を落としました。 『セーラ様、あなたを愛している』 ラベルが耳元で囁くと、掌の水はハートの雫へと形を変え、虹色に輝きました。 セーラはニッコリと微笑むと、ラベルの頬にくちづけをしました。 少しの間を置いて、聖歌隊が次の歌を歌い始めた。 「つまり、『好き』では伝えきれない気持ちを『愛してる』って言葉で表現するって事?」 「ダナ・スカリー流に分析すれば、そうなるのかな」 「失礼ね、『分析』なんて。でも、とてもいい話だわ。作者は誰?」 「僕」 スカリーは、驚いたようにモルダーの顔を覗き込んだ。 「あなた?」 「そう、100%オリジナルだ。びっくりした?」 「....まあね。ロマンティックなフォックス・モルダー誕生の瞬間に立ち会えて光栄だわ」 「だろ?」 二人は唇の端を上げて静かに微笑み、教会の中央に飾られたイエス・キリスト像を眺めた。 人を愛して止まなかったイエス・キリスト セーラに最高の愛を伝えようとしたラベル ラベルが生み出した愛の言葉.... 「愛してる」 モルダーは、スカリーの耳元でそっと囁いた。 「知ってるわ、そんな事」 そう言って、スカリーはフッと笑う。 その日の朝、ツリーの足元に置かれていた手紙を思い出してみた。 『ママへ』 ママ、げん気ですか? エミリーは、まい日たのしく学校へ行ってます このまえ、先生にきかれました 「エミリーちゃんは、大きくなったらなにになりたいの?」って そのときは、「まだわからない」って言ったけど、 本当は、1つだけなりたいものがあります ママ、きいてくれる? エミリーはね、おいしゃさまになりたいの みんなをげんきにしてあげるの だからママ、おうえんしてくれる? もちろんよ。あなたならきっと、素敵なお医者様になれるわ...... 目を閉じると、そこには笑顔を浮かべたエミリーが立っていた。 The END −後書き− クリスマス・12月・年末.... ムードのいい季節なのに、私は毎年ドタバタしてます(苦笑) 南国から帰ってきたかと思ったら、その激しい温度差に自律神経がついてこない(汗) 数重なる忘年会・今だに真っ白な年賀状・加えて今年は片道2時間の通学.... 体がもう一つほしいんだけどぉ〜っ。 だ・か・ら.... サンタさん、私にクローンをちょうだいっ!! 一体入るぐらいのでかい靴下ぶら下げとくから、よろしくね〜っ(笑) いつもお世話になっているひよ様に このFicをお読みいただいた皆様に そして、世界のみーんなに、Merry X'mas to You ALL!! Amanda