---------------------------------------------------------------------------------------  この作品は、あくまでも作者の個人的な楽しみに基づくものであり、この小説の登場人物、   設定等の著作権は、すべてクリス・カーター、1013、20世紀フォックス社に帰属します。 ======================================================================================= 作者としては、Mariah Carey の "All I Want Fan Christmas Is You" がお気に入り   なのですが、このFicにはちょっとそぐわないので、オーソドックスにしてみました。   読みにくいかもしれませんが、少しの間だけ、お付き合いの程よろしくお願いします。 ---------------------------------------------------------------------------------------- Silent Night / by anne   やぁ、寒くなったね。外はすっかり白くなってるよ。   あら、ほんと? 嬉しいわ、ホワイトクリスマスね。   今日は、お招きありがとう。・・・どうしたんだい? 君はいつも家族と一緒に過ごすのに。   たまにはいいわ、淋しい者同士で過ごすのも。・・・いいから入って。   スカリー、ほら、・・・メリークリスマス。   メリークリスマス、モルダー。・・・これを。     プレゼント、開けてもいい?   ・・・勿論だよ。   これ・・・病院のカード? それも・・・C病院の産婦人科の・・・。何なの、モルダー・・・説明して欲し  いわ。   このカードは君のだ、スカリー。これを持って行くと、すぐにでも詳細を説明して貰える事にな  っている。・・・僕がUFOサークルで知り合った医師に託してあるんだが、とても信頼出来る人だ。  ・・・君の事は全て話してある。どういう状況で、こんな事になったかもね。・・・さすがに、全部を信  じてはくれなかったけれど。   待って・・・何のことだか、理解出来ない。   僕は、・・・君の卵子を手に入れたんだ。・・・驚いているね?・・・話すと長くなるけれど、聞いて欲 しい。      ・・・どうして・・・どうやって・・・!!・・・いいえ、聞きたくなんてないわ。・・・それより、何故、黙っ  てたの!   ・・・驚かせて、悪かった、スカリー。   何故?・・・何故今までこんな大事なことを教えてくれなかったの?モルダー・・・貴方、酷いわ。私  の事よ・・・!私の身体の事なのに・・・。   ・・・スカリー・・・すまない。僕は、臆病者なんだ。君が僕から離れて行く事が怖かったんだ。だか  ら・・・今まで言えなかった。でも、僕等の真実を求める旅がいつ終わるとも知れないから、手遅れに  ならないうちに・・・つまり、君の女性としての機能が落ちないうちに、渡しておかなくてはと・・・今  言わずに後悔するよりは、君に殴られた方がマシだと思って、これを持って来たんだ・・・僕がここへ  訪ねて来る事を許されなくなる覚悟で・・・。   モルダー・・・!・・・私は・・・   ・・・・・・頼むよ、スカリー、・・・泣かないでくれ・・・   君のも開けていいかい?   ・・・・・・   これ・・・君じゃないか、スカリー。・・・オフィスでは見られない、綺麗な笑顔だ。嬉しいよ。   この間、兄のビルが撮ってくれたの。一枚くらい、あなたに持っていて貰いたいと思ったのよ。   でも・・・どうして今さらこんな写真を?   モルダー、私も貴方に黙っていた事があるの・・・私ね、もうすぐ消えてなくなるかもしれないの。   ・・・!スカリー・・・   まだ、確実な事ではないのよ。自分で簡単な検査をしてみただけなの。でも、多分、・・・   早く、専門医のところへ行けよ、スカリー!      ・・・貴方と一緒だわ。仕事を辞めさせられるのが怖くて、・・・事実を突きつけられるのが怖くて・・・  行けなかったの。・・・可笑しいわね、今さら、なのに。   だから、貴方にだけは憶えてて欲しくて・・・。私の存在した事を・・・   これは遺影のつもりなのか、こんな!こんな写真がなくったって君の事は忘れない、忘れられる  わけがないだろう!スカリー・・・!何てこと言うんだ、君こそ・・・。君がそんなに弱気になるなんて。   私だって、ただの弱い女なのよ。   貴方は死なないで、モルダー。今の仕事は危険に満ちてるわ。・・・実際幾度となく死にかけたのだ  から。でも、貴方は死なないで。貴方の存在は私のいた証しでもあるのよ。   スカリー、君は死なない。・・・君こそ死んではだめだ。病院に入って治療を受けて来いよ。僕には  君が必要なんだ。僕のパートナーは君しかいないんだ、だから・・・   ごめんなさい、モルダー。・・・だから、貴方のせっかくのプレゼントも役立てることは出来ないか  もしれないわ。   私・・・夢見てたのよ。父と母のように幸せな家庭を築いて、子供たちに囲まれて暮らす日々を。   今からだって遅くはないよ、スカリー。きちんと身体を治して、・・・君の選んだ男とこの卵子を使  えば子供は出来るよ。君の望む幸せな家庭を・・・。何なら、相応しいと思う男を精子バンクででも探  せばいい。スカリー、君は生きられるよ、きっと、今回も。   ・・・ありがとう、モルダー。でも、子供はもう、いいのよ。   あんなに・・・エミリーのことで心を砕いていた君の台詞とは信じがたいな、スカリー。   精子バンクなんて、私はごめんだわ。両親のように愛する人と家庭を築きたいの。愛する人以外  との子供なんて、意味がないわ。そうでしょう? でも、私の想う人は遠い人なの。   誰だい? 君に想われてるその幸せな奴は・・・。僕の知ってる人かい?   そうよ、貴方の知ってる人。   そうか、・・・君には幸せになって欲しいんだ、スカリー。僕の大事なパートナーだからね。   ・・・貴方は? 愛している人はいないの?   ・・・ずっと愛している人がいるよ、でも、僕には彼女に愛される資格はないんだ。   そんなことない筈よ、モルダー。貴方は・・・魅力的よ。その彼女だってきっと貴方の事、愛してく  れていると思うわ。   ・・・それはないな。   どうしてそう、言い切れるの?   だって・・・僕はその彼女にいつも本気で想いを伝えているよ。愛しているって・・・。結婚してくれ  って言った事もある。・・・でも、彼女は本気にはしてくれないんだ。   言い方が悪いんじゃないの? 私に言ういつものジョークみたいに。・・・それでは通じないわよ、  モルダー。それではだめ。   じゃぁ、どうすれば、僕の想いは伝わるんだろう?   そうねぇ、相手の目をしっかりと見て・・・      こうかい?   そう。そして・・・はっきりと言うの。つまんない事を言ってないで、ストレートに言うのよ。分か  った?   あぁ。やってみるよ。   もう一度言うけど、貴方は魅力的な人よ。大丈夫。きっと伝わるわ。   ・・・スカリー。   何? 練習したいの?   その彼女は、君、なんだ、スカリー。これで最後だと思って聞いてほしい・・・君を、愛している。  ・・・でも、僕には君に愛される資格はない。     ・・・・・・嘘。   ・・・ほら、本気にしてくれない。でも、僕にとって君は・・・。   今日、僕は、君にこのカードを渡して全て打ち明けようと思った時、色々考えたんだ。・・・君が不  快に思うなら、転属してもいい。X−ファイルから離れてアカデミーへ戻ってもいいし、辞めて医  者になってもいい。・・・君のいいようにして欲しい。   ・・・じゃぁ、私のお願いを聞いてくれる?   君の頼みなら何だって聞くさ、スカリー。   私の子供の父親になって。   ・・・!スカリー、でも君には、想い人がいるって今言っただろう?   だめ、なの? モルダー、私を愛しているというのは、やっぱり、嘘?   ・・・真実だよ、君を愛してる・・・でも、僕にはそんな資格は・・・。君の姉さんの事や、君自身の身体  の事を考えると、僕には、・・・   資格、資格って・・・そんなに言うのなら、償って頂戴、モルダー。・・・私の子供の父親になって。   スカリー、・・・本気で君は・・・?   誰が分かってくれるというの? この私の首の後ろに埋められたチップのことや、理不尽に殺さ  れたメリッサに対する悲しみを・・・。誰にも理解して貰えないわ・・・貴方だけが理解出来るのよ、モ  ルダー。   それに・・・資格って何なの? 貴方は私を愛していると言ったわよね。・・・それだけでは足りない  のかしら?     スカリー・・・それは・・・   私の愛する人はね、幻に過ぎないかもしれない真実を追いかけてるどうしようもなく遠い人なの。   ・・・・・・    でも、私を一番理解してくれてるの。来て欲しい時にはいつだって来てくれる。助けの欲しい時  も、そう。命も救ってくれた。・・・貴方を愛してるの、モルダー・・・だからお願い、私に残された時  間を貴方と共に過ごさせて。   君は本当に僕を・・・?   そうよ。・・・私にとっての真実よ。   じゃぁ、僕の言う事も聞いてもらうよ。年が明けたら一緒に病院へ行くんだ。君は闘える人だ、  スカリー。・・・僕がずっと君のそばにいる。だから、闘え・・・!   そうよね。・・・ちゃんと身体を治して、貴方の赤ちゃんを産まなきゃね。     スカリー・・・   モルダー、もう隠し事はなしよ、いいわね?   ・・・・・・あぁ、君もだよ。     ・・・貴方に出会えて良かった、モルダー・・・ それは僕の台詞だよ、スカリー。君に出会った事で救われたのは僕の方だ。   これで、すっきりしたわ。これから新しく始まるのね。ミレニアムを迎えるにあたっての最高の  クリスマスよ。   やっと笑ってくれたね。スカリー、・・・君にキスしても・・・?   馬鹿ね、何故、わざわざ断るのかしら?    それは・・・それだけ君に気安くは触れられないんだよ、アイスクィーン。   私だって、生身の人間よ、モルダー。   ・・・ダナ・・・     ・・・静かだね。   ほんとね、雪の降る音が聞こえてきそう。   メリークリスマス、ダナ。   ・・・メリークリスマス、・・・フォックス。   1900年代最後のクリスマスに、僕は最高のプレゼントを貰ったよ。・・・こんなに素敵なクリス  マスは初めてだ。ありがとう。来年もその次もずっと、こうして二人で祝うんだ。いいね?   勿論よ。・・・愛してるわ、貴方。   僕もだ、愛してるよ。        この拙いFicを最後まで読んでくださった皆様に幸あらんことを・・・  / anne    ご意見ご感想などありましたら、下記または掲示板までお願いします。   ccd32241@nyc.odn.ne.jp