DISCLAIMER// The characters and situations of the television program "The X-Files" are the creations and property of Chris Carter, Fox Broadcasting, and Ten-Thirteen Productions. No copyright infringement is intended. ----------------------------------------------------------------------------------------------------- −前書き− 本作品は、RanさんのFic「I feel blue」の続編で、海外ドラマ「ER」とのCrossOver Fictionです。 「ER」の登場人物がわんさか(!?)出てまいります、どうぞご了承ください。 始めに、この作品を書くきっかけを与えて下さったRanさんに心から感謝いたします。 ----------------------------------------------------------------------------------------------------- Title: This is My Place (1/2) Category: XF/ER CrossOver, Comedy Spoiler: Some Episodes Date: 9/27/99 By Amanda ----------------------------------------------------------------------------------------------------- 「それじゃあ」 「アディオス、また会う日まで」 突然の別れゼリフ これは、Fox MulderとDana Scullyの別れ話では決してない。 いや、考えようによっては「別れゼリフ」にもなり得るが...。 事の起こりはこうだ ----------------------------------------------------------------------------------------------------- 「悪いけど、休みをとるわ。今この瞬間から」 オフィスに戻って開口一番、こんな言葉がScullyから飛び出した。 「えくすきゅーずみー? 何か言ったかい、Dana Scully?」 読んでいたUFO雑誌から顔を上げる事もなく、彼女の相棒は抑揚のない平たい声で尋ねた。 「帰るのよ、これから」 「どこに?」 「家へ」 またいつものジョークだろうと決め込んでいたのだが、ぼそぼそと帰り支度を始めたScullyが 視界に入り、Mulderは初めてそれがジョークでないことを悟った。 「ちょっと待った。まだお天道様は君の頭の上にあるんだぞ」 「分かってるわ。私だって休みたくて休むんじゃないのよ」 「でも、今君が発したその言葉と同時に行われている言動は、思いっきり矛盾してるよ」 「無理やり取らされるのよ、休みを。こんな事、あなたも前にあったでしょう?」 そうだなあ... そう言えば、最後に休みを取ったのはいつだったかな もちろん、そんな事を容易に思い出せるワケがない。 果たして彼らの頭に「休暇」という文字が存在するのか? それは当人と神のみぞ知るといったところだろう。 「で、予定はあるのかい?」 「そうね...とりあえずシカゴにでも行ってみようかと思って」 「シカゴ...はは〜ん、お目当ては、かの有能なDr.ジョン・カーター君だな?」 「いつまでこだわってるのよ!? ジョンはいい友達、それだけよ。彼に会うのも楽しみだけど、  久しぶりにキャロルにも会いたいし」 ジョンの祖母、ミリセント主催の誕生パーティの一件で知り合ったScullyと キャロル・ハサウェイは、今ではすっかり仲良くなり、度々電話やメールで話をするように なっていた。キャロルはとても気さくな性格で、「またシカゴにいらっしゃいよ」と 気軽に誘ってくれる。そんな彼女をScullyはとても気に入っていた。 「というわけで」 いつの間にか帰り支度を済ませたScullyは、Mulderのデスクの上にドン、とブリーフケースを 置いて素気なく言った。 「やたらめったら電話してこないでね」 「はいはい、了解」 「それじゃあ」 「アディオス、また会う日まで」 Mulderに背を向け、Scullyはそのまま振り返ることなくオフィスを出ていった。 ----------------------------------------------------------------------------------------------------- 次の日の早朝 夜明け前の便でDCを発ち、シカゴに着いたScully。 シカゴに来る前から、滞在はSunny Side Hotelで、とScullyは決めていた。 「休みなんてたまにしか取らないんだし」 そんな思い切った気分も手伝って、前回の調査で訪れた時に泊まった、Mulderいわく 「一泊が、普段の五泊分の値段」という豪華ホテルを選んだのだ。 しかし、まだ朝の8時なので、チェックインには早すぎる。 荷物も軽いので、Scullyは空港から直接カウンティへ行くことに決めた。 「突然行ったりなんかして、驚かれるかしら?」 久々の友人との再会に心を躍らせ、彼女はタクシーに乗って、一路カウンティへと向かうのだった。 ----------------------------------------------------------------------------------------------------- 「お客さん、着いたよ」 ドライバーが彼女に声をかけた。 「どうもありがとう」 お金を払って、タクシーからERの救急車搬入口に降り立つと、かすかな薬品のにおいが Scullyの鼻腔をくすぐった。目の前には「Emergency」と書かれた看板が大きくそびえ立っている。 かつては医学の道を志し、目の回るような量の実験や臨床研修に明け暮れた彼女も、 今ではFBI特別捜査官として、そして法医学者としての人生を歩いている。 もしあの時、アカデミーを選んでいなければ、今頃私はどうなっていたのだろう ちょっぴり感傷的な気分に浸っているところへ、一台の救急車がサイレンを唸らせながら 突っ込んできた。EMTのピックマンが、ストレッチャーに乗せられた患者を運び出し、 病院の中から出てきたDr.マーク・グリーンに申し渡しを始めた。 「Danny Cage 運転中、ガードレールに激突。血圧73の40、脈拍25、呼吸は浅くて5。  グラスゴースケールは11、意識混濁、ショック状態。胸部と腹部を打撲、フロントガラスが 割れて額に刺さり、出血してます。」 「よし、外傷二号に入れて!! ベントンを呼び出すんだ。血算、生化学、血液型クロスマッチを5単位。  頭部、胸部、腹部レントゲン、頚椎四方向、酸素をマスクで8リットル、血中アルコールもだ。  急いで!! コニー、頭部CTをオーダーして。それから、家族に連絡してくれ。破傷風の  トキソイドをいつ打ったかも調べて...」 マークが的確に処置をオーダーしながら、一団は処置室のドアの向こうへと消えていった。 「.....」 私もかつては、ああだったのよね 着いた早々、緊急医療の最前線で働くドクターを目の当たりにしたScullyの中に、 懐かしさとも、寂しさともつかない、なんとも複雑な思いがこみ上げてくる と、その時、彼女の後ろから、赤ん坊を抱いた女性が狂ったように走ってきた。 「この子を助けて!!」 今にも泣きそうな顔をしたその女性に、Scullyは冷静に話しかけた。 「どうしたんですか?」 「この子が...この子が息をしてないの!!」 「わかりました。私もドクターなの、任せてちょうだい」 ERのドアを押し開けてScullyは大声で尋ねた。 「ドクターはいる?」 受付カウンターにいたランディーが、クチャクチャをガムを噛みながら素気ない声で言う。 「みんな診察中だよ」 「どこか部屋は空いてないの?」 「カーテン3号...って、アンタ誰!?」 「ドクターよ、誰もいないなら私がやるわ。ナースを一人よこして!!」 「どうしたの?」 「あなた、ナースね。私と一緒に来て!!」 近くを通りかかったチュニーを巻き込み、Scullyはカーテン3号めがけて飛び込んだ。 「どーすんのよ、こんな所に引っぱり込んで!?」 「私はドクターなの。この子が呼吸してないのよ。他のドクターがみんな出払ってるらしいから  私が処置するわ。手伝ってほしいの」 Scullyは、赤ちゃんを手の上でうつ伏せにして背中を叩くが、何も反応がない。 「チュニー、喉頭鏡をちょうだい」 赤ちゃんを仰向けにして台に乗せ、口からゆっくりと喉頭鏡を挿入する。 光に反射して、喉で何かが光った。 「何か詰まってるみたい。マギル鉗子」 マギル鉗子の先で「それ」をつまみ、喉を傷つけないようにゆっくりと引き上げた。 Scullyに捕らえられた、鈍く光る10セントコイン。 「バッグして、血糖値は?」 喉を詰まらせていた赤ん坊に、チュニーが数回空気を送り込む。 ギャ〜〜〜ッッ!! 喉のつかえがなくなった赤ん坊は、たっぷりと息を吸い込んで元気良く泣き始めた。 「チュニー、ありがとう」 「やったわね、Agent Scully」 「赤ん坊はどこだ!?」 首にかけた聴診器を手で押さえながら、カーターがキャロルと共に走り込んできた。 「大丈夫よ。コインが喉につっかえてたの」 「...Dana!! こんなところで何してんの!?」 一風変わったシチュエーションでの再会となった。 ----------------------------------------------------------------------------------------------------- 「...そんな訳で、ほとんど脅迫されるように休みを取らされたのよ。四六時中Mulderと  顔をつき合わせてるから、無性に他の人が恋しくなって」 「しっかし、面白かったなあ。君がラテックスの手袋をはめて立ってるんだから」 「ホント、ビックリしたわ。でも、よく来てくれたわね。会えて嬉しい」 スタッフラウンジで、久しぶりの再会を喜ぶ3人。 「あれから、カーターのおばあちゃまの機嫌を損ねることもなく、うまくやってるわ。  クリニックも順調だし。Dana, あなたのお陰よ」 「...あの時、あなた達にはすっかりハメられたわね。私がここに来た時には、もう筋書きが  できてたんだもの」 「ごめんよ、ああするしかなくって。でも、祖母は君をいたく気に入ったみたいだ」 「ホント? 良かったわ」 「僕としては、あれが『恋人のフリ』じゃなかったらいいのに、なんて思ってるんだけど」 「あの、それは...」 「わかってますよ、DanaにはMulder捜査官がいるんだから」 「ジョン、誤解しないで。彼とはなんでもないのよ」 だって彼は...と、一通りの弁解をしようとし始めたちょうどその時、Scullyのセルが鳴った。 「はいScully」 「やあ僕だ。調子はどうだい?」 「電話しないでって言ったでしょう?」 「雑誌によると、今日の君の運勢はあまり良くないらしい。もしかして君の乗った飛行機が  墜落でもしたんじゃないかと心配でね」 「おあいにく様ね、今の所は全て順調そのもの。用がないなら切るわよ」 そう言ったが早いか、次のセリフを聞く前に、彼女はさっさとセルを切ってしまった。 その一部始終を見ていたカーターとキャロルが、Scullyの方を向いてニヤニヤしている。 「何よ?」 「電話しないでなんて、つれないなあ」 「だって、私は休暇中なのよ。休みの日にまで、仕事のパートナーの事なんて思い出したくないわ」 「またまた、無理したら体に毒よ。ああ、でも彼は『ただの』パートナーだからいいのかしら?」 からかうようにケラケラと笑うキャロル。 すると、ラウンジのドアが勢いよく開いた。 「キャロル、手伝ってくれないか?」 「あらダグ。いらっしゃいよ、紹介するわ。友達のDanaよ、前に話した...」 「ああ、君がクリニック存続のためにカーターの恋人として働かされた人だね?」 小首をかしげて柔らかい表情で話しかけるダグに向かって、Scullyは苦笑しながら右手を差し出した。 「ええ、まあそんなところね。Dana Scullyです」 「ダグ・ロスだ。君のおかげで助かったよ。クリニックは順調だし、キャロルの八つ当たりを くらわなくて済んだんだからな」 「ちょっと、ダグ!? 余計な事言わないの!!」 「あれ、キャロル? 案外ロス先生の言葉は当たってるかも、だよ」 「もう、カーターまで...さ、もういいでしょ? ダグ、患者はどこなの?」 これ以上、いらぬ事は言わせないとばかりに、キャロルはラウンジからダグを 無理やり押し出そうとしながら、Scullyの方に顔を向けた。 「それじゃDana、また後でね」 「ええ、ごゆっくり」 「それじゃDana、また後でな。ふはははは...」 ダグが心地良い響きの含み笑いをあげながら、二人はラウンジを去っていった。 「ねえ、あの二人、つき合ってるの?」 「そうだよ」 「似合ってるわね」 「そうだね」 「まるで言葉でじゃれあってるみたい」 最後のScullyのセリフを聞いたカーターは、唇の端を上げて軽く微笑んだ。 君とMulder捜査官もだよ ----------------------------------------------------------------------------------------------------- お互いの近況報告を終えた後、ScullyはカーターにERを案内してもらうように頼んだ。 かつては自分も研修生として病院に身を置いた立場にある。その懐かしさから、もう一度 病院という医療現場を肌で感じ取りたいと思ったからだ。カーターは、彼女の申し出に 快く答えてくれた。 「久々に味わう現場の雰囲気はどう?」 「懐かしいわね」 「病院に戻りたい?」 「さあ、どうかしら?」 「Danaなら、きっと今からでも大丈夫だよ」 二人で廊下を歩いていると、反対側から双子の幼児を抱えたドクターが歩いてきた。 ブロンドの髪を後ろでキリッと結んだ、凛々しい顔立ちの女性だ。 「Hi, アンナ、紹介するよ。友人のDanaだ」 「あら、どうも。アンナ・デル・アミコよ。あ、ごめんなさい。握手はできないけど」 両手を双子でふさがれている彼女は、ニッコリとしてScullyに挨拶をした。 「Dana Scullyです。忙しそうね」 「ええもう、振り回されっぱなし。この子達、キャンディをあげたらすっかり元気になっちゃって。 ねー、もう大丈夫よね」 双子の顔を覗き込むアンナ。 その双子達は、愛らしい瞳をくるくると動かしながら、同時にアンナに笑いかける。 「......」 そんな微笑ましい光景を見て、なぜかSculyの背中に悪寒のようなものが走った。 凶悪な事件の真相に近づいた時の、あの感覚だ。 彼女は無意識に、本当に無意識に、双子に向かって右手を伸ばした。 「アンナ、ちょっといいかしら?」 そう言って、双子の後ろ側に回り込み、伸ばしたその手で、双子の片割れの襟首を押し下げ、 首の後ろ側をまじまじと見つめた。 隆起物はないわね 「どうしたの?」 不思議そうな顔をして尋ねるアンナの声で、Scullyはハッと我に返った。 「あ、いえ別に。双子って、ホントにそっくりよね。どっちがどっちか区別できないぐらい」 焦ったように早口になった彼女を見て、カーターが心配そうにScullyの顔を見た。 「大丈夫かい、Dana?」 「ええ、大丈夫よ、本当に」 『隆起物』ですって!? これはただの双子なのよ、Dana 私、どうしちゃったのかしら? 彼らをクロ...いえ、考えるのも恐ろしいわ 私がそんな風にしか双子を見れなくなってるなんて... 「Dana, 朝早かったから疲れてるんじゃないのかな? よかったらラウンジで休むかい?」 「いえ、いいのよジョン。前に扱ってた事件の事を思い出しただけだから」 「Dana, 気をつけて。さてと、私はもう行かなくちゃ。会えて嬉しかったわ」 「私もよ、アンナ。引き止めてごめんなさいね」 「いえ、いいのよ。それじゃ」 Scullyとカーターに軽く微笑んで、アンナは二人の横を通りすぎていった。 彼女の後ろ姿を見送りながら、Scullyは「双子をクローンかもしれない」と一瞬でも 疑ってしまった自分に対して苦笑いを作った。 「そんなはずないのにね」 「え、何だって?」 「いえ、何でもないの。ひとり言」 カーターにニッコリと笑いかけたScullyだったが、心の中では、双子が発する毒ガスに アンナがやられやしないかと、いつまでもヒヤヒヤしていたのだった。 To be Continued... 別に「続く」にするほどのものでもないんです。 ただ、容量の都合上、前後編にわけただけなので... 「え〜、まだ続くんか!?」って思われちゃうかも(汗) もし良かったら、後半もおつきあい下さいませ(^^;)