さあて。とんでもない手前味噌Ficの、はじまりはじまり〜。  ****************************************************************************************   "エアポケット"    by anne  ****************************************************************************************  「アテンションプリーズ。当機は只今気流の状態の悪いところを通っております。少々揺れる  可能性がありますので、座席のシートベルトをしっかりとお締め下さいませ・・・。」   何度もアナウンスが流れる中、Hiyoは一人で顔を緩ませっぱなしであった。心はまだ、エジ  プトの只中にあった。   乾いた空気。ごみごみした町並み。人懐っこい人達。そして、スフィンクス。ピラミッド。  ミイラ達。  ああ、もう少しあの中に浸っていたかった、そう思った時であった。   まるでエレベーターが急降下するような気分。   そう、エアポケットに入ったのだ。一瞬身体が浮き上がったように感じて、そして。  ********************   ふと気付くと目の前にはよく見慣れた仔犬顔があった。     あら?もう家に戻ってPCの前に座っているのかしら?   Hiyoは当惑した。それからじっとその大好きな仔犬顔を見つめてみた。何故、こんなにリア  ルなのか、確かめる為に。  「カット、カット、カット〜〜〜ッ!!!」   その時、男の鋭い声が飛んできた。    「そうじゃないと言っただろう! そこは見つめ合うシーンじゃないんだ! Gillian、ただで  さえ、スケジュールが押しているんだ、もっとしっかりしてくれ!」  「そりゃ、Chrisがなかなか演出プランを出さないからだよ。」  「@@@@わかった、1時間の休憩だ!」    Chrisと呼ばれた男はディレクターチェアを蹴り倒して立ち去った。Hiyoはゆっくりと周り  を見渡した。何やら大掛かりな撮影セットの中らしいというのは理解出来る。だが。    「またやっちまったな、Gillian。」   仔犬顔の持ち主はフーッとため息を吐き出すと、ブラウンの髪をかきあげた。  「ま、君にそうやって見つめられるのも悪くはないけどね。」   そう茶目っ気たっぷりに言うと、もう一度、Hiyoの真正面に顔を近づけた。     「・・・・? どうしたの? Gillian?」   私がGillian〜〜〜〜?   Hiyoは完全に呆けた状態になっていた。今こうして見つめ合っている人は確かに愛しのDD  だ。でも、どうして・・・?  「あ、あの・・・私疲れてるみたい。」  「そうだと思うよ、Gillian。ここのところずっと缶詰状態だからな。ったく、Chrisもいい加  減にして欲しいよな。」  「そ、そうね。」  「いくら自分がアイディアが枯渇してきたとは言え、何も日本人のシロートの作品を試し取り  するなんて、正気とは思えないよ。ただでさえ、忙しいのに。」   Davidはここぞとばかりにぶつぶつ呟き続けた。その様子をボーっと見上げてたHiyoを一人の  スタッフが促した。  「Gillian、控え室へお願いします。衣装を見てもらいたいので。それからメイクも直しますか  ら、どうぞ。」  ********************   ここは控え室。   Hiyoは鏡を見た。どう見てもこれはGillian Andersonの顔だ。Dana Scullyの顔だ。一体どう  なっているのだろう?   私は確かに飛行機に乗っていたのに。日本に帰国する途中だったはずなのに。   このXF的な状況をどう説明したらいいのだろう。このままGillianの顔をしてい続けるしか  ないのだろうか。DDのそばにいれるのかもしれないが、だからって私はHiyoでしかないのに。  このままだと、XFの撮影は続くはずもないし、GAはもしかすると私の身体の中で苦しんで  いるのかもしれない。   本当にどうしたら、いいのだろう。  「ちょっといいかい?」   DDの声がドア越しに聞こえてきた。   Hiyoは黙っているのも変に思われると思い、なるべく平静を装って「どうぞ」と返事をした。  「ヘアメイクのJennyが戸惑っていたよ。Gillian、一体どうかしたのか?」  「・・・言っても信じて貰えないわ。」  「・・・?またおかしな事を。まるで、本当のScullyのようだよ。」   Davidは笑ってHiyoを見た。ああ、愛する人に気を遣わしてはいけない。そう思って、思い切  って自分のこの状況を話そうとHiyoは決意したのだった。  「実は私、Gillianではないの。」  「へえ、X-ファイルかい?」  「笑い事じゃなくて、真実なのよ。」   Hiyoは泣きたくなってきた。こんな顔で誰に信じてもらえるというのか。現にDDは笑って  いる。間直に見る笑顔はとっても素敵だけれど、こんな事を感じている場合ではないのだ。  「じゃ、君は誰なんだい?」  「日本人でHiyoというの。エジプトへ旅行していて帰国の途中だったのよ。飛行機に乗ってい  て突然エアポケットに入って・・・気がついたらここにいたのよ。・・・信じてはもらえないでしょ  うけど。」   ちょっとの間、Davidは頭を傾げて考えているふうだった。  「じゃ、Gillianは君の本体の中にいるんだろうか?」  「わからないわ・・・。どうしたらいいのかも。」  「とりあえず、もうすぐ撮影が始まる。Chrisが途中までしか演出プランを出してないから、撮  影そのものはすぐに終わるから、それから考えようか。」  「・・・信じてくれるの?」  「僕だって、伊達に長いことMulderをやってないよ。それにGillianの事も良く知ってる。今の  君は確かにGillianじゃない。・・・えっと、Hiyoだったっけ? とりあえず、よろしく。」   にっこり笑って差し出された手を救いの藁のように思ったHiyoであった。勿論の事、しっかり  とその手を握り返した。  「これが台本。台詞は多くはないよ。あとワンカットだ。」   Hiyoは驚いた。渡されたそれの表紙にはY2K≠フ文字が。ライター名にanneとある!  「僕らのファンが・・・正確にはX-ファイルのファンだけど、書いたものらしいんだ。同じ日本人  なら知ってるかもね。」  「知ってるも何も、これ私のHPに載せてる作品なの!大好きなのよ!・・・ああ、anneさまぁ、  すごいわ。」(・・・馬鹿^^;)  「君もX-Philesってわけか。嬉しいね。」  「それだけでなく、David Duchovnyのファンなんですぅぅぅ!」   今の自分の立場を忘れて叫ぶHiyoを、目を細めて嬉しげに見てから、Davidは言った。  「じゃ、セットへ行くとするか。」     え、演技をするの?私が?   Hiyoは我に返り、さっと顔から血が引いた。  「あのFicは大好きなんで、全部頭に入っているけれど、どのシーンを・・・?」  「ここ! 暗闇になる直前さ。暗闇のキスシーンの演出が決まってないんだよ。どう表現する  かで監督とChrisとで揉めてるんだよ。」   じゃ、私ってば、DDの頬にキスするんだわ!   自然興奮気味になったHiyo。どうりで、気が付いた時にDavid様の顔が目の前にあったはずだ。    「A happy new year, Mulder.・・・と私が言って、キスをするんですね?」  「そうだよ。わかってるんなら話が早いね。せっかくだから君もこの状況を楽しめばいいよ。」   そう言ってDavidはHiyoにウィンクしてみせた。あまりの事にクラクラする。・・・これで倒れ  てはいけない、キ、キスをするのよ? ・・・ああ!う、嬉しい!      「用意はいいかい? Gillian、今度は頼むよ。」  「いきますよ!」   かちんこ!      FicどおりにDavidが顔を寄せてきて、唇を突き出した。   素敵すぎる・・・思わずそのまま引き寄せて抱きしめたくなるのを堪えて、笑って・・・そう、微  笑んで顔を横に向けさせて・・・  「A happy new year, Mulder.」   そう言って震えそうになっている自分に鞭打って、軽くDavidの頬に唇を触れさせた。   Hiyoにとっては至福の時。  ********************   と、どん!と滑り台からすごいスピードで滑り降りたような感じを受けた。   Hiyoは気がつくと飛行機の中にいた。スチュワーデスが心配げに顔を覗き込んでいた。  「お客様、大丈夫ですか?」  「・・・私、どうしたの?」  「エアポケットに入った衝撃が大きかったものですから、少しの間ですが、気を失っておられ ましたので、心配で・・・。」   Hiyoはなんだか夢の中を旅してきた気分だった。彼女は何も覚えていなかったのだ。ただ、  何か幸せな気分に浸っていたという事はわかったが。これはエジプトの余韻とは少々違う気が  していた。でも、幸せだった。それだけは確かだった。     そして、飛行機は無事に成田へ着陸する準備をし始めた。  ********************   ぱしん!   頬を打つ音が暗闇に響き渡った。    「ってぇ・・・。Hiyo、やめてくれよ。せっかくのチャンスなんだから・・・。」  「誰がHiyoよ。私はGillianよ! このシーンは暗闇だから、単に抱き合っているだけでいいと  いう事だったのに、どうしてキスするのよ! 次にこんな事をしたらセクハラで訴えてやるか  ら覚悟なさい!」     Davidは当惑した。今までHiyoと名乗っていた可愛い仕草を見せた彼女はどこへいったのか。  ここにいるのはいつものきつい、仕事に燃えてるGillianだったから。  「キスくらいいいじゃないか。」  「契約違反よ。貴方とはもうそういう関係じゃないのよ!」   そう言い放ってGillianはChrisを見る。    「もう、こんなシーンはやめましょうよ。MulderとScullyはこうなってはいけないと思うわ。」   つらつらと自分の意見をCCに述べ立てるGillianを見ながらDavidはちょっと残念に思って  いた。彼女がHiyoのように可愛いかったらあるいは・・・。     The End  ***************************************************************************************   手前味噌にも程があるって? ・・・ごめんなさい!   ここまで来るとホント馬鹿だね・・・(苦笑)   ちょっとでもひよさまに幸せをと思ったのだ。   これで妄想してくださいませ。(笑)     おかえりなさいFicでした。(^^;) anne  2000.2.18  ***************************************************************************************  この下はひよの感想メールとなっています。  anneさんにアップのお願いをした時に、「あの感想での壊れぶりがおもしろかったから  Ficにつけたら?」と言われたので、図々しくつけちゃいました♪  (私はanneさんの「Y2K」がとても好きです。モルダーのかわいさとスカリーの色っぽさ   にすっかりはまり何度も読みかえしていました。その感想を送った時には「ラブレター   みたい。」と呆れられた前科があります。(笑))  もし、ここまで読まれて「なによ、ひよしか幸せになってないじゃない!」と怒りを覚えた  方がいらっしゃいましたら、ここで即刻ウィンドウを閉じてください。(笑)    でも、実際幸せでした♪  ありがとう!anneさま!!!  ***************************************************************************************  注:ひよは感激の為にかなり壊れていましたが、お許しください。    もう、私の願望満載!  目の前にDDの顔があって、じっと見つめる事ができたら・・・  (どきどき)  DDとお話することができたら・・・  (でも、え、英語かな?やっぱり・・・と違った意味でどきどき?けれど、もしそれなら  今から駅前留学をして死ぬ気で勉強をしてぺらぺらになってみせるわっ!!!←固い決意)  DDに心配されたり・・・  (しかも真正面でっ!)  DDが私の部屋に来たり・・・  (この場合は楽屋・・・?でもふたりっきり♪(にやり))  一瞬でもあの美しいGAの体を借りられたり・・・  (なんだか、髪の毛のにおいとか嗅いでしまいそう。良い匂いだろうなー♪あと、どんな香水  を使っているのかしら・・・って・・・私ってば変態?(爆))  Hiyoって、きちんと認識してもらって、名前を呼んでもらったり・・・  (きっと、テープにとって一生大切に・・・ああ、だめだっ!持って帰れないんだっけ?(号泣))  撮っている作品が「Y2K」だと知ったら、もちろん作中のHiyoのように叫んでいた事でしょう!!!  (力説!だって本当に好きなんだものっ!)  そして・・・頬にキスなんて・・・心臓が爆発してしまうかもっ!  あの、唇を突き出すモルダーが目の前に・・・冷静でいられるかしら?  実際の私だと理性がぶっとんで、暗闇をいい事に唇を奪ってしまうに違いない・・・  (↑崩壊)  あ、でも、それどころではなくて、中学生の様に照れきってなにもできない  かわいい私となってしまうかしら?  (本気で心配しなくっても?(笑))  最後になにも覚えていないっていうオチもよかったです!  ああ、私ってば覚えていないけれど、そんなことが実はあったのね?って  思わせてくれる・・・  (↑既に妄想中)  少しどころか、すごく、すっごーく!幸せな気分になれました!  本当にありがとうございました!!!  ・・・でも、もしもこれが「Y2K」おとなバージョンだったら・・・  鼻血を吹いて出血多量で・・・Gillianを道連れに2度と帰らぬ人となっていたかも  しれません。(合掌)  戻ってこられてよかったですー。(笑)