The characters and situations of the television program ”The X−files” are thecretion and property of Chris Carter,
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TITLE:時の彼方に 前編
AUTHOR:cat
note:10万ヒットお祝いFIC
<XF課>
「スカリー、君は生まれ変わりを信じるかい?」
いつになく、興奮しきったモルダーが息を切らせて、オフィスに入ってきた。
「モルダー・・・10分の遅刻よ」
スカリーは冷静にモルダーを見た。
「実は今朝の新聞に面白い記事を見つけてね」
モルダーはそう言い、スカリーに新聞を渡した。
渡された新聞はオカルト関係専門のものだった。
「あなたが好きそうな新聞ね」
スカリーはそう言い、渋々新聞を広げた。
「ああ。欠かさず読んでるんだ。君も購読するかい?」
「結構よ。それで、あなたが夢中になっている記事は、どれかしら?」
「これだよ」
そう言い、モルダーは赤ペンで囲ってある記事を指し示した。
『幻の王国の王、長き眠りから目覚める!!』
スカリーはその見出しに、苦笑いを浮かべた。
「幻の王国って?」
「10万年前に太平洋に沈んだという、古代国家の事さ」
モルダーは得意げに話した。
「それで、その古代国家がどうした訳?」
モルダーとは対照的に、スカリーは冷めたように言った。
「その古代国家の王の生まれ変わりだという男が現れたんだよ。スカリー、彼はDC在住だそうだよ」
モルダーはヘーゼルの瞳を輝かせて言った。
スカリーはもはやモルダーを止める事ができないと知ると、深くため息をついた。
<DC内 アパートメント>
「ここに、例の王様がいるわけ?」
「ああ。そうらしい」
そう言うと、モルダーは部屋のドアをノックした。
「今は誰もいないよ」
モルダーとスカリーの後ろから声がした。
振り向くと、17,8才ぐらいの青年が立っていた。
「君は?」
「彼の同居人だよ」
そう言い、青年はモルダーとスカリーの間を縫ってドアを開けた。
「アランはいつ頃戻るんだい?」
「さあね、その新聞の記事見るなり、血相を変えて、出ていったよ」
青年はモルダーが手にしている新聞を指した。
「それじゃあ、悪いけど、忙しいから」
青年はそう言い、ドア閉めた。
「あっ、おい、君」
モルダーの呼びかけは虚しく、何の効用も持たなかった。
「はぁ〜、仕方ない・・・出直してくるか」
モルダーはスカリーを見た。
「うん?スカリー・・・どうした?」
顔色のすぐれないスカリーにモルダーは心配そうに聞いた。
「いえ・・・その、急に頭痛が・・・たいしたこと・・・な・・・い・・」
「スカリー!!」
スカリーは突然倒れ、意識を失った。
<???????>
「・・・海音・・・海音」
男はとても優しい瞳で女を見つめた。
「・・・空・・・様・・・私はどうしていたのでしょう?」
気つ゜くと、女は男の胸の中にいた。
「・・・気を失ったんだ。巫女の儀式が体に障ったのだろう」
男はいたわるように、女の頬に触れた。
「すまぬ。私がいたらなかったばかりに、そなたに心労ばかりをかけてしまって・・・」
「・・・空様・・・」
「・・・私は情けない王だ。まだ即位したばかりだというのに・・・国を危機にさらし・・・体の弱いおまえに巫女としての責任を押し付け・・・」
「・・・私は、空様のためなら、祈ります。私の命の全てを持って・・・」
「いかん。そのような事は・・・もういいのだ。私はこの国を沈める・・・この国にもう未来はないのだから・・・」
「・・・空様・・・そんな・・・いけません・・・あなたを頼っている民はどうするつもりですか?」
「全ての報いを償う時が来たのだ・・・すべての・・・」
「・・・空様」
「私は明日、行動を起こす・・・おまえは、身内を連れて、大陸に逃げなさい」
「いやです。離れたくありません!!」
女は強く男にしがみついた。
「・・・海音・・・」
男は女に応えるように、強く抱きしめた。
<病院>
「・・・モルダー?」
スカリーが薄っすらと瞳を開けると、ぼんやりモルダーの姿が映った。
「やあ、気分はどうだい?」
「・・・大丈夫みたい・・・私、どうしたの?」
「突然、倒れたんだよ、医者の話しでは過労らしい・・・2、3日安静にすればよくなるって言ってたよ」
「そう」
「まあ、ゆっくり休む事だな。僕は仕事があるから行くよ」
そう言い、モルダーはベットの傍から立ち上がった。
「・・・ごめんなさい。迷惑かけて・・・」
「構わないよ。別に。それじゃあ、また来るから。大人しく寝てろよ」
モルダーはスカリーに軽くウィンクすると、病室を出て行った。
<????????>
「・・・海音!!なぜ、ここに」
「空様一人を残してはいけません・・・私も一緒に・・・」
「覚悟はできたか、二人とも」
大柄の男が言った。
「大臣!!あなたが・・・裏切り者だったとは・・・」
海音は大柄な男を睨んだ。
「巫女様、裏切り者とは心外な言葉ですな。私はこの国の未来を心配し、彼らの力を借りる事にしたのです」
大柄な男は薄気味の悪い笑みを浮かべた。
「裏切り者というなら国を沈めようとしている、そこの男だ!!」
大柄な男は空を指した。
「・・・空様は裏切者なんかじゃない!!いつも国の事を第一に考え、民の未来を考えてきたのよ!!」
海音は空を庇うように、大柄な男の前に立った。
「あなたは騙されているのです。その男はそんな器ではない!!彼が国王になったらしようと計画していたて事は何だと思いますか?」
大柄な男は意味深げに、空を見た。
「・・・彼の望みは破壊です。全てを無に戻す事!それが彼の目的 !!」
「嘘よ!!空様は平和な世界を望んでいたのよ!!」
「・・・本当だ。海音」
「えっ!!」
海音は凍りついたように、空を見つめた。
「さて、国王の真実の姿もわかった事ですし、お二人には牢に入ってもらいますよ。裏切者がどうなるか、見せしめのためにも、民衆の前で処刑させてもらいます」
大柄な男は冷笑を浮かべた。
<病院>
「スカリー、見舞いに来たぞ」
そう言って、モルダーが病室に入ると、スカリーの姿はどこにもなかった。
「・・・スカリー」
モルダーの顔色から血の気がひいた。
<??????>
「・・・空様・・・なぜ」
海音は隣の牢にいる空に話し掛けた。
「・・・・・海音・・・」
苦しそうな空の声が聞こえた。
「おまえは今の世界をどう思う?本当に平和だと思うか?・・・大地は汚れ、空は曇り・・・子供たちから笑顔がなくなった」
「・・・だから、この国を、世界を滅ぼそうとなさるのですか?」
「・・・ああ、そうだ。私たちはこのままここにいてはならない。このままだとこの惑星は滅んでしまう・・・故郷の惑星と同じ運命をたどる事に
なってしまうんだ・・・。よそ者の私たちがそんな事をしてはならないのだ・・・この惑星はまだ発展段階にある・・・未来はまだ始まったばかりだ・・・」
「・・・空様・・・」
「・・・海音・・・君を巻き込んでしまってすまない・・・私たちは一週間後に見せしめとして・・・処刑される・・・」
「・・・いいんです。あなたと運命を共にすると・・・決めましたから・・・悔いはありません」
「・・・海音、おまえは逃げるんだ・・・私がおまえを逃がす、だから、生き延びて欲しい・・・」
空はそう言い、壁の隙間から、鍵を差し出した。
「・・・これは・・・?」
「先ほど、私の部下だった男にもらったのだ」
「だったら、空様も一緒に逃げましょう」
「・・・私はいかない。ここで処刑の時を待つ・・・」
「では、私もここにいます」
「だめだ!おまえは死んではならない。洗脳されていない者を連れて大陸に行くんだ」
「・・・空様、私はここにいます」
<アパートメント>
「やあ・・来ると思ったよ・・・・」
スカリーが部屋の中に入ると、先ほどの青年がいた。
「・・・あなたがアランね」
スカリーは青年を見た。
熱い闘志がこもる海色の瞳・・・。そして、優しい瞳・・・。
遠い昔に出会ったような・・・。
いつも見つめていた瞳・・・。
なぜ、胸が苦しいの?
私は・・・彼を知っている・・・。
「・・・大丈夫?」
青年はスカリーの頬に流れる涙にふれた。
「・・・私・・・なぜ・・・泣いているの・・・何だか胸が苦しい・・・」
「・・・海音・・・君をずっと探していた」
青年はスカリーを引き寄せ、強く抱きしめた。
その感覚に、スカリーは過去の想いを思い出した。
私はこの人を愛していた・・・。
そう、私は彼を知っている。熱い魂を持った彼を・・・。
「・・・あなたは・・・」
スカリーは青年の瞳を見つめた。
「・・・君をずっと、愛してきた・・・そして、やっと、出会えた・・・10万年の時を越えて・・・君に・・・」
スカリーは彼の言葉に胸がいっぱいになり、何も言えなかった。
「君を今でも愛している・・・」
彼はそう言うと、スカリーの唇を奪った。
熱い思いを重ねるように・・・、離れていた時を埋めるように・・・。長く・・・、深く・・・。
魂と魂が触れ合い、求め合うような・・・キスに、スカリーは我を失った。
「スカリー!!」
突然、モルダーが部屋に入ってきた。
「・・・スカリー・・・」
モルダーは抱きしめあい、唇を重ねている、二人を呆然と見つめた。
<スカリーの部屋>
「・・・自分でも信じられない・・・あんな事するなんて」
「彼と、君の間には一体、何があるんだ」
カウチに座り、コーヒーカップを見つめたままの、モルダーが言った。
スカリーは窓際に立ち、外を見つめた。
「・・・わからない。彼との間に何があるのか・・・ただ・・・彼の前に行くと頭がボーッとして、理性よりも、感情で・・・行動してしまう」
「・・・だから、キスしたのか」
スカリーが今まで聞いた事のない低い声で、モルダーは言った。
彼が怒っている・・・。めったに感情を表に出さない彼が・・・。
スカリーはモルダーの態度に脅威を感じた。
「なぜ、あなたに彼とのキスを責められなければならないの?私とあなたは仕事のパートナーでしょ!恋人ではないはずよ!」
スカリーの言葉の後に長い沈黙が続いた。
「・・・恋人じゃないか。そうさ、僕は君の恋人でも。前世での相手でもないさ!だがな、パートナーとして忠告する。彼にはこれ以上関わるな!君は個人的な
感情に走りすぎる!」
殴り捨てるように言うと、モルダーは部屋を出て行った。
<??????>
「・・・なぜ、逃げない・・・明日は処刑の日だぞ」
空は壁の向こうにいる海音に言った。
「・・・あなたが、動かないから・・・だから、私も・・・」
「またそう言うのか。頑固だな・・・」
空の声に苦笑が混じっていた。
「・・・なあ、海音。おまえは生まれ変わりを信じるか?」
ふと、何かを思ったように、空が呟いた。
「輪廻転生・・・。さあ、どうでしょうか・・・私にはよくわかりません」
「フフフ・・・おまえらしい答えだ。巫女なのに、そういう事はあまり信じないのだから・・・」
「・・・説明のできない事柄をやみくもに奇跡だと信じるには気がひけます。物事には必ず、道理というものがあるはずですから」
「ハハハハハ、こんな時でも、おまえは自分の信念を捨てないのだな。まあ、信じる信じないは別として・・・今度、生まれ変わるとしたら、おまえは何を望む?」
「・・・私は・・・あなたと、再び出会えるのなら・・・何でもいいです」
「・・・海音・・・。私もだ」
空はそう言い、壁の隙間から片手を何とか出した。
海音はしっかりと、彼の手を握った。
まるで、愛し合うように、二人は互いの手を絡み合わせ、気持ちを重ねた。
「・・・今度は平和な世でおまえと出会いたい・・・王でも巫女でもなく・・・私とおまえという人間として・・・」
空のその言葉に、海音は一筋の涙を重なり合う手の上に流した。
<スカリーの部屋>
「空!」
スカリーは目を覚ました。
「・・・夢・・・」
「・・・”空”とは古代国家の王の名前かい?」
スカリーはカウチから起き上がり、声のした方を向いた。
「・・・モルダー・・・なぜ・・・」
「謝りに来た・・・さっきの僕は感情的になって・・・いた・・・捜査官として、君のパートナーとして・・・失言だった」
モルダーはすまなそうに、スカリーを見つめた。
その瞳は、傷つき、苦しそうな彼の心を映しているように見えた。
スカリーは彼の瞳を見つめたまま、何も言えなかった。
「・・・それじゃあ、僕は帰るよ・・・」
沈黙が重りとなって、モルダーの心を追い詰めた。
モルダーはスカリーに嘘を見透かされているようで・・・無意識に視線を逸らしてしまう自分が、嫌だった。
どうしたって、彼女が僕以外の男とキスしている場面を思い浮かべてしまう。
あのキスシーンが頭から離れない。
あんなに情熱的にキスする彼女を、僕はどうすればいい・・・?
パートナーというだけの関係がこんなに辛いなんて・・・。
モルダーは自分の感情を抑えるように、スカリーに背向けた。
「・・・待って・・・」
ドアに向かおうとしたモルダーの腕をスカリーは思い切って掴んだ。
絡み合う視線と、視線・・・。
そして、重なる・・・唇と唇・・・。
何かにひかれるように二人は唇を重ねた・・・。
To be continued.
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【後書き】
ひよ様、カウンター10万ヒットおめでとうございます!!!!!!!!!!
このFICは日頃お世話になっているひよ様への感謝の気持ちとしておめでとうFICを書こうというNicholasさんによる素敵な企画に
賛同したものです。
という趣旨の元、おめでたFICを書くつもりだったのに・・・ドロドロしてしまいました(^^;
10万ヒットに間に合わせたかったので、続きものになってしまいましたが・・・。
まぁ〜とにかく、本当、ひよ様10万ヒットおめでとうございます!!!
そして、今回この素敵な企画に誘ってくれたNicholasさん、ありがとうございました&お疲れ様です!
CAT598232629@aol.com