copyright by Twentieth Century Fox Film Corporation The X-Files is a trademark of Twentieth Century Fox Film Corporation ***************************** この作品は、RIOSA個人の楽しみのために作ったのが始まりであり、一切の営利目的に 基づきません。 また、本作は「Will&Dana club」シリーズ作品であります。 設定などで、本編とかなり食い違いがありますことをくれぐれも宣言しておきます(苦笑) ・・・だって、二人はすでに恋人・・・ですから。 ***************************** Description for Will & Dana club Serial number:008 Condition:For chiristmas 〜Mulder's mind imagination〜 ***************************** 誰のためのクリスマス? RIOSA 愛が? 愛が。愛が。 愛が愛が愛が愛が。 愛が…僕を狂わせている? 大嫌いだったもの。 彼女達の束縛。 男はみんなそうだろう? 「ねえフォックス、クリスマスの予定は?」 「フォックス、クリスマスパーティーに、あなたと一緒に行きたいの」 そんな風な控えめな言葉で、じっとりと見上げてくる彼女達の視線は、今思い出したって ぞっとする。 クリスマスは、キリストが生まれたとされる日だ。彼が宇宙人だったかも知れない以上、 当時の僕としては、パーティーになんか行っている場合じゃなかった。 年に一度、宇宙からなにか来るかもしれない確率がある日なのだから。 だから、クリスマスツリーには興味があった。 あれはきっと宇宙からの目印のために、一番上に星を飾ったんだ。 サンタクロースが宇宙人という可能性も低くはないと思う。 プレゼントを持ってくるという言い伝えは怪しい。しかも、彼が子供しか相手にしないと いうのだから、そのあたりはもっと疑ってかかる余地はあるだろう。 そう、僕はずっとそういった見方で「spooky」なクリスマスを過ごしてきたのだ。 …それなのに。  ダナと夜を一緒にすごすようになって、半年が過ぎていた。  僕たちは春の甘い匂いの中、夏の蒸し返すような熱帯夜、秋の風の気配の下、  捜査官という仕事をこなしながらも、時間を作ってそばにいた。  ダナは相変わらず、仕事の時にはスカリー捜査官で、完全なプロの顔をする。  そのくせ、恋人としての僕たちの距離はどんどん縮まっていくから、「ダナ」と「スカリー」 のギャップは、どんどん大きくなっていった。  彼女はそのギャップが大きくなればなるほど、割り切りやすくて仕事がしやすいと言う。  一方、僕のほうといえば、そのギャップにとまどうことも多かった。  もちろん、僕だって彼女から「ウィル」と呼ばれる時間と「モルダー」と呼ばれる時間は、 区別しているつもりだ。  けれど、ベッドの中で甘えて駄々をこねて見せたりする彼女が、次の日には素知らぬ顔で 「モルダー、この報告書はこのままじゃ不備よ」  なんて言ったりするのが、正直言って不思議でたまらない。  二人きりの地下室でさえ、一分の隙も見せてくれない。  それなのに、彼女が先に帰ったりした日に、ダナのアパートメントを訪ねていくと、会い たくてたまらなかったような表情で飛びついてくるんだ。  可愛いダナ、甘い匂いのするダナ……事件が多い分だけ、そんな彼女を見る時間は少なくなる。  僕にとっては、同じ顔をしているダナ・スカリーなのに。  いつもなにかちょっとものたりない気持ちにさせられる。  その分だけ、自分が彼女を欲しくて欲しくてたまらないという気持ちが積もっていく気がしていた。 「ねえダナ、クリスマスの休暇はどうやって過ごすんだい?」  もうすぐ12月になる、ある週末。  僕はまるで「1+1はいくつになるかな?」と、小学生に尋ねる先生のような気持ちで彼女に たずねた。  彼女のお手製のシチューの匂いがまだ部屋に残っている。テーブルクロスの上には彼女がぽ ろぽろと、落としたパン屑が転がってる。冬の始まりの食卓は、とても温かく見えて好きだ。  このどう見ても「幸せな恋人達の夕食後の風景」のなかでの僕のこの問いかけ。  誰がどう考えたって、答えはひとつじゃないか?  …だが、彼女の答えは「2」ではなかったのだった。 「実家に帰るわ」 「へ?」  彼女の手にキスでもしようと伸ばしかけた腕が情けなく空振りした。  平然とした表情に、ダナの考えが読めたと思った。 「ダナ…僕をあの兄さんと仲良くさせようって魂胆かい?」  まったく、僕を家族に迎え入れる準備をはじめようっていうのかい?  なんて女らしい事を!  しかし……そんな僕の余裕な考えは、一瞬にして覆されたのだった。  きょとんとしたダナの瞳が、僕の狼狽を加速させて行く。 「何言ってるの?ウィル、私は実家で母と休暇を過ごすつもりなの。最近、あなたと週末を 過ごすから、母が淋しがっているし。…そうよ、あなたもお母様の所にでも行って差し上げ たら?」  嘘だろ?  ダナ、クリスマスだぞ?  考えが言葉にならない。おまけに彼女はまるで「野菜も食べなきゃだめよ?」くらいの軽い 口調で、僕のクリスマスの過ごし方まで進言してくれた。 「……」  ぐうの音もでない、とはこのことか。  必死の思いで笑いを作った僕に、彼女は眉をひそめながら苦笑した。  その「あなたがそんなことにこだわるとは思わなかったわ」と、言わんばかりの視線に僕は すっかりくじけてしまったのだった。 ---- 今、思えば、あのときちゃんと言っておけば良かったんだよな。 「クリスマスは、ダナ、二人きりで過ごしたい」って…… 今年のクリスマスイブは金曜日で、だから彼女は24日からの休暇を希望した。 同じ日程で休暇を申請しようとしたら、スキナーの横睨みが飛んできて、キャンセルせざるを 得なくなった。 今日は、彼女と過ごす今年最後の夜かもしれない23日。 僕はまだ、「彼女と一緒に過ごしたい」思いを持て余している。 彼女は今年の仕事を終えて、明日からの休暇の準備に余念がない。 「ママへのプレゼントに、兄さん夫婦に、姪っ子…抜けはないかしらね…」 いつもなら、ゆっくり食後のコーヒーとおしゃべりを楽しむのに、彼女は早々に席を立って あれこれと準備をはじめていた。昨日まで事件を追いかけて、残業と出張の鬼になっていたか ら、心配なのだろう。 理解してあげなければ、という気持ちと、僕達だって久々にゆっくり過ごすのに、という苛 立ちが段々波立ってくる。 寄せて、返して…優しさなんて、自分が満足な状態の上にしか生まれないことを証明するかの ように苛立ちの波はどんどん高ぶっていった。  「ダナ」 一度目。 彼女はクローゼットの奥深くを探っていて聞こえなかったらしい。 「ダナ」 二度目。 今度は盛大な音を立てながら、ラッピングしていた。 「…ダナ」 知らずに立ち上がっていた。 足元の彼女は、ブラウスにスーツの下のスカートという仕事から帰ったままの格好に、エプロ ンをかけていた。たくさんのラッピングペーパーやリボン、ワインやシャンパンのボトルに囲ま れて、忙しいのが嬉しいというような表情をしている。まるで小さな女の子みたいに、頬を上気 させて。 ダナ、クリスマスがそんなに楽しいの? 僕といるよりもかい? ねえダナ、僕を見て。 僕を、見て。 まるで子供のようなその感情に押し流されて、彼女に手を伸ばす。 そして子供をあやすような彼女の声音。 「もう、ウィル、急になあに?今忙しいんだから後に…」 まるで今奪わなければ、一生取り戻せないかのような錯覚が襲ってきて、夢中になって口接け を求めた。 「ちょっと…ウィル?…急に…っ…」  包装紙のがさがさいう音の中に、彼女を押し倒して行く。  反射的に抗った彼女の腕が、ラッピング済みの箱に当たって、鈴の音が派手になる。  赤と緑のリボンの束が解けて床を彩ってゆく。  嫌がって堅く閉じている唇をこじ開ける。  逃げないように抱きしめて、抱きしめて、この想いが届くようにとまた抱きしめなおす。  ダナが諦めたように、口接けの合間に溜め息をつく。 「ダナ…久しぶりなのに君は待たせ過ぎたよ」 僕の言葉に彼女は目を見開いた。 呆れたかのようなその表情の中に、一瞬軽蔑の色が混じったことに、気付かなかったわけじゃ ない。でも、それでも彼女を抱きたかった。 …それでも僕を、見て欲しかった。  どんなに味わっても、味わい尽くした気がしない。  そんな食べ物が、この世に存在するのだろうか? 僕にとっては今、まさにダナがそうだった。 堅い床で交わった後、放心状態の彼女をベッドに連れていって、彼女がまた忌々しいプレゼント の準備のことを思い出す前に、もう次の準備をはじめてしまう。少々ずるいやり方だけど、やむ を得ない。 そうして立て続けに彼女を深く味わったのに、僕の心の片隅はまだお腹がすいた子供みたいに さびしい気持ちだった。   「ウィル…」  冷たい、彼女の声が鳴る。  もはや、怒りすら感じられないような、冷静な、コンピューターから出てきたような音声だった。  行為の後の彼女はいつも、猫みたいにすりよってきたりして、けだるげで、可愛い。  そんな彼女の「いつも」の片鱗も、僕は見つけられなかった。 「なんだい?」  でも、つとめて笑顔を作ってみる。  ありえない、彼女の笑顔を願っている自分。 「…あなた、なんだか変わったわね…」 「僕が?」 「…私の知っているあなたのクリスマスの過ごし方は、事件を追いかけているか、宇宙船でも探しに 行っているか…だわ。そういうのが、あなただとおもっていたわ」  冷たい口調、彼女はずっとそんなことを考えながら抱かれていたのか?  ふいに冷たい汗が、背中を伝っていったような感覚がした。 「ダナ…」 「事件が片付いたとたん、毎日のようにここにやってきて…ねえ、ウィル、あなたこのごろどうかし てるわ」  どうかしてる?  ああ、どうかしてるよ。どうかしてるさ。  君が好きで、君を抱きたくて、君に笑いかけて欲しくて、君から愛を聞きたくて……  それがそんなにおかしいかい?ダナ、僕は君を愛しているんだよ?  たくさんの言葉で唇は空回り。  そんな僕を、彼女は乾いたまなざしで見つめていた。スカリーよりも冷たい瞳が、僕を射抜く。 「…あなたがここにいるなら、私が出て行くことにするわ」  何も言葉の出てこない僕を、これ以上まてないというように、彼女はそう宣告して、立ち上がった。  ベッドから出た彼女は他人よりも遠くて、ベッドから見上げるとあんなに強く抱いていた小さな体は 大きくて、また僕は言葉をなくす。  ダナはもう僕を振り返りもしないで、着替え始めていた。  そこでやっと僕は自分がしでかしてしまったことを、知った。  完全に彼女を怒らせたのだ。  彼女に、ではなく、僕は彼女の体にだけ、話し掛けてしまったのだ。  もう何を言っても、だめだという気がした。  どうしてなんだろう、どうして?  まるで空に放してしまった風船を見るように、ぼんやりと彼女の動きを目だけで追っていた。 「どうせあなたは合鍵持っているんだから、いつまでいてくれてもいいど、火の元には気をつけてね」  荷物を車に詰め込んで、彼女はコートを着込みながら、口を動かす。  僕はまだベッドの中で、彼女の残り香に包まっていた。 それだけは、間違うことのないダナの匂いだった。 「…じゃあ、メリークリスマス、ウィル」 何か言いかけるように、唇を尖らせた後、それをため息に変えて、彼女は僕に背を向けた。  小さく扉が閉じる音がした。  聖なる夜なんて、くそくらえだ。こんなにも彼女を求めているのに、なぜ知らない他人の誕生日 なんか、祝わなきゃならないんだ?  イエス・キリストよ、ただこの日にあなたが生まれたばかりに、僕は今、愛する人のそばにもいられ ない。あなたの誕生日はなんのためにある?どんな意味がある?  クリスマスって、誰のものなんだろう?  誰のためのものなんだろう……?  そのまま、眠りこんでしまった僕は、誰とも顔をあわさないままクリスマスという日をすごしたのだった。                               to be continued... ******************* 途中書き(苦笑) ******************* 「ウィルダナ」シリーズとしてのクリスマスfic! と、思いついたのは、11月の終わりだった気がする(泣) もうねえ、言い訳してもしかたないからあきらめて、 とりあえず書き上げてシリーズに付け加えていただくことにしました(苦笑) 季節感なさすぎですけど、楽しんでいただけたら幸いです。 一応、前後編なので、続きが出たらまたそちらも読んでいただけたらうれしいな。 長い話は、後編のあとがきで書こうかな。 ご意見・感想・リクエストお待ちしてます♪ sa-yo-h@diana.dti.ne.jp