=THE X-FILESに関する権利は全てChris Cater,20th Fox=    =及びTen-thirteen productionに帰属します。=               !!!!警告!!!! *以下の作品は、18歳未満の方、及びモルダー/スカリーの肉体関係を 好ましく思われない方には読んでいただけない内容となっております。ご 注意下さい。 ====================================   <Cowards>   by よみひと★しらず  Mulder&Scully Romance     According to Yomihito★Shirazu =====================================  ドアのノックを僕は聞いた。  上品で慎ましやかな、いつも耳にしてる彼女のノック。  「どうぞ。」  僕はカウチに腰を下ろしたまま、ドアには目も向けずに言った。  しかし扉は開かない。  僕は重たい腰を上げると、扉をあけた。  そこには確かに、彼女がいた。  「いらっしゃい。」  「頼まれてきた資料、持ってきたの。」  僕が中に入るように促すと、彼女はためらった。  「でも、資料持ってきただけだから・・・」  「いいじゃないか、寄ってけよ。」  半ば強引とも言える、僕の誘い。  僅かに揺れる、彼女の瞳。  僕たちは知っていた。この二つが、始まりの合図だということを。  彼女は僕の隣に座ると資料を広げ、そのひとつひとつを丁寧に説明しつづける。  まるでそのときが来るのを、拒んでいるかのように。  「それでこれが・・・」  「そこはもう、説明してもらったよ。」  僕は彼女を遮った。  彼女の時間がぴくりと止まる。話すことを失った彼女が、必死になって次の言葉を探して いる。  「・・・そうだったかしら・・・?」  「ああ・・・」  彼女の瞳が、今にも泣き出しそうに潤みはじめる。  そして意を決したように立ち上ると、帰り支度を始めた。  「じゃあ、私これで・・・」  「待てよ。」  僕は彼女の手を取り、引きとめた。  彼女の体が硬直する。  「でも、もう用事は済んだから・・・」  「済んでないよ。」  僕は手に取った彼女の指を、力を込めて握り締めた。  その細い一本一本が、何かに怯えるかのように震えている・・・  「来いよ。」  「嫌よ。」  「どうして?」  「だって私、そんなつもりで来たんじゃ・・・」  「嘘をつくな。」  「嘘なんかついて・・・」  そう言いながら振りかえった彼女の表情に在ったのは――――葛藤。そして、何かに飢え、 求める女の苦悩――――。  「もしそんなつもりじゃないなら――――」  僕は努めて優しい口調で言った。  「――――どうしてそんなに熱いまなざしで、僕を見つめたりするんだい?」  そしてもう片方の手を取ると、言葉を続けた。  「おいで――――僕がしたいだけなんだ。」  ・・・一体いつから、こんなことを続けているのだろう・・・?  それをもう、思い出すことは出来ない。  彼女は僕の膝の上で、僕の行為に身を任せる。  「ねえ・・・も・・う、いいか・・ら・・・」  彼女のその言葉に、僕は彼女の一番敏感な場所を、なおいっそう刺激する。  思った通り、彼女の口から嘆願の言葉が失せた。  僕によってあらわにされた下半身と、はだけられた胸元が、刃物のように鋭く光る。  僕は彼女のブラウスに前歯を押しつけると、その布ごと彼女の突起にかじりついた。  彼女が僕にしがみつく。  熱い吐息に喘ぎを閉じ込め、僕に投げかけてくる。  僕は布きれをどけると、今度は直に彼女に吸いついた。  悦楽の声と共に、僕にしがみつく腕の力が強くなる。  「お、ねが・・い・・・も・・う、やめ・・て・・・」  「やめていいの?」  僕の言葉に、彼女の体温が上昇する。  やめないで欲しいと、彼女の身体が訴える。  僕は、彼女自身の一番奥深くまで指を滑り込ませた。  まるで上質のベルベットのような、彼女の感触。  行為を重ねることで見つけ出した、彼女が一番悦ぶ場所。  僕は今日も、その場所を愛しむ。  愛撫の度に繰り返される、彼女の喘ぎ。  何もかもが愛おしい。その声も、感じてるときの表情も。  お願い、それをもっと見せて・・・  僕がいっそう激しく責めると、望み通り、彼女はそれを見せてくれた。  そしてその瞳を、溢れ出す快楽に艶めかしく歪ませると、全身を痙攣させた。  彼女の悦びが、終わりを告げた瞬間。  彼女の中に、理性が戻ってきたのを僕は知った。   彼女は淫らな姿でいる自分自身と、部屋に来たときと同様の、何の乱れもない僕の姿を 無意識に見比べると、そのまま僕の胸に顔をうずめるように抱きついた。  そんな彼女を、僕はそっと抱き返す。  程なく、僕は彼女の肩が震え始めるのを感じた。  彼女が泣いている。  静かに、そして苦しそうに・・・  やがて出始めた嗚咽と共に、彼女の言葉が聞こえてきた。  「・・・もういや・・・こんなこと・・・」  初めて聞いた彼女の言葉に、僕の頭の中が真っ白になる。  彼女を満足させることで擬似的に愛し合う。それは僕らが――――少なくとも僕がたど り着いた、結論のひとつだった。  今まで幾度となく繰り返してきたその行為を、彼女の心がいいように受け入れてないの は知っていた。  でも・・・  「ねえ、あなたは?」  泣きながら、彼女は僕に聞いてくる。  「あなたはいいの?」  助けを求めるような、彼女の口調。  僕はそれに、ただうつむく。  欲しくないわけはない。  こうして泣きすがる彼女を腕の中に収めながらも、僕の身体はおさまっていない。  でも僕は、彼女を奪うことが出来ない。  「僕は・・・いい。」  僕がこうつぶやくと、彼女の瞳に新たな涙がこみあげる。  そして激しい嗚咽と共に、彼女はそれを流し始めた。  「・・・意気地なし・・・」  僕はそんな彼女から、そっと顔をそむけると、それとは逆に、腕にいっそうの力を込めて、 彼女の背中を抱きしめた。    彼女を奪う。  そんなこと、出来るはずもない。  だって僕は知っている。  それを望んでいないのが、僕だけではないことを・・・  僕は彼女に囁きたいこの言葉を、喉の奥にしまい込んだ。  僕らは二人とも・・・意気地なしなんだよ・・・                                 END