この作品に出てくるキャラクターは、FOXに属します。 しかし、キャラクター・基本設定のみを拝借して、筆者が個人的に作り上げた フィクションであり、実際の「The X-Files」とは関係のないものです。 ご了承くださる方のみ、お読みください。 また、アダルトなシーンが多少入ってくることを、警告させていただきます。 /-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/- crystal triangle -chapter 2- うっしーず2号 「ごめんなさい・・・こんなことになるなんて」 どうしようもなくなって、Dianaは、Mulderの問いかけを肯定するその呟きをこぼして、 彼の肩を包むように腕を伸ばした。 「・・・君が謝らなくていいよ・・・こんな日は必ず来るって思ってた・・・」 表情は苦しげだったが、MulderはそっとDianaの腕を握って言った。 「あの二人は、SkkinerとScullyは・・・よく似ていると思わない?ここが決定的にとか 断定しては言えないんだけど・・・同じ気持ちの持ち方をしている気がする。それって なんだかいびつだわ・・・。彼女はきっとSkkinerの中に自分を見つけているのよ・・・。 だから」 続きを言いかけるDianaを、Mulderが制した。 「優しいな、君は。だけど、どんな理由でも、Skinnerは彼女を安らげてあげることが できるってことなんだよ・・・。それが、哀しいね」 「Fox・・・」 その瞳があまりにも淋しい色だったので、Dianaはいたたまれなくなって言葉をなくした。 遠い遠い、毎日会っていても遠い彼女。 その遠い彼女は、同じく毎日会っている上司の腕の中にいる。 どうやってMulderは自分の気持ちをごまかしていけばいいのか。 Dianaは、Mulderの悲しみを腕の中の肩越しに感じながら、彼が同じ痛みを彼女に与えて いることを、彼に告げるべきか迷っていた。 彼女にとって、遠い彼は、同じ建物の中で仕事をしている同僚を抱いているのだから。 同じ痛み。 同じ悲しみ。 そして同じくらいの相手への想い。 それでも、彼らは互いの愛情を交わせずにいる。 ため息をつきながら、Dianaは思う。 自分達もきっと、ScullyとSkkinerとは違う似通った何かがあるに違いない。 SkkinerはScullyの家に向かっていた。何が言えるのかもわからないままに向かっていた。 下から見上げると、窓から灯りが見えた。駆け足で階段を駆け上がり、がちゃがちゃと急いだ 音を立てながら鍵を開けると、驚いたようにScullyが玄関にやってきた。 「どうしたの?息切らせて・・・それにえらく早いじゃない?」 笑顔で迎え入れようとするのを拒否するように、Skinnerはぐいと彼女の腕を掴んで、リビ ングへと連れて行った。 ひどく興奮した表情と、腕にかかる痛いくらいの圧力に圧倒されて、Scullyは何も言えない。 「Dana・・・君は私をだましていたのか?」 いきなり尋ねられた質問に、Scullyは表情を一変させた。 「何言ってるの?だますなんてひどい言い方・・・」 「それ以外にどんな言葉がある?君が本当に愛しているのはMulderだろう?Fox Mulderなんだろう? それなのに私に君はいつもなんて言う?彼への想いが叶わないからって、私を代用にしているのか?」 「違う!それは違うわ・・・違う、違うの、そうじゃないの」 一気にまくし立てられて、Scullyは夢中になって首を振って否定した。 「じゃあ、なんなんだ?君にとっての私は」 Skinnerの声が半ば怒鳴るように響いた。同時にScullyが激しく泣き出して、部屋には言い様のない 息苦しさが漂った。 「違う・・・あなたは・・・」 涙にむせながら、Scullyが声を形にしようと子供みたいな努力を始める。 「私・・・あなたをMulderの代わりだなんて思ったことないわ。・・・ただ、ただWalterのそばに いたら安心できるから・・・ただそれだけなのよ・・・Mulderじゃないわ。そうじゃないの・・・」 泣きじゃくりながら言うScullyの姿を見て、Skkinerは自己嫌悪を感じた。 この人を、この愛しい人を、自分の言葉でこんなにも傷つけてしまったのだということが、彼女が しゃくりあげる声が響くたびに身に染みた。 先刻の逆上した興奮が冷めた今では、それはまるで拷問のようだった。 目の前でScullyは弱くて小さい姿を全く無防備にさらけ出している。 それだけで胸が苦しくなる程、いとおしかった。 そっと近寄って、髪に触れる。Scullyが既に腫れ上がってしまった目でSkinnerを見上げた。 なんとか微笑を作ろうとした彼の顔は不自然にゆがんで、Scullyは彼が悪くもないのに罪悪感を感じて いることを知る。 「すまない・・・Dana、ひどいことを言った・・・君を傷つけるなんて・・・」 頭を垂れて、Scullyをそっと腕の中に入れた。しめやかな温もりが、二人を包み込んでゆく。 「Walter・・・ごめんなさい」 涙声が耳に伝わってきて、Skinnerは彼女の耳元に唇を寄せた。精一杯の想いで囁く。 「もういいよ・・・私と君は似てる・・・。だからこそ君は私を選んだんだと思う・・・それは どうしようもない事実だろう?でも・・・似ているからだろうな・・・」 そこで、Skinnerは鼻で小さく笑った。Dianaの声が聞こえたような気がしたから。 「私にはDanaの気持ちがなんとなくわかるんだ。だから、許せる・・・似ているから安心できる ・・・そうだろう?だけど愛してる・・・だれよりも愛してるよ、Dana・・・たとえ君が私に 対して望んでいるものが安心だけだとしても・・・」 Skinnerの言葉を耳だけでなく全身で感じ取るようにして、Scullyはその広い胸に体を寄せた。 「Mulderのことは、もうずっと私の中で忘れたいことなの・・・叶わない恋だものね。ううん ・・・かなっちゃいけない恋だから・・・」 呟くように話し始めたScullyに、Skinnerはじっと耳をすませた。 「いつごろからか分からないけど・・・Mulderを見るのが苦しくて仕方なくなったの。自分で自分を コントロールできることに自信過剰だったのかもしれない・・・。でも今のX-Files課での私たちの 関係を壊すのは怖いの・・・怖いというより、もう私にとっては不可能なことね・・・臆病でしょ? 笑っちゃうでしょ?・・・・でもね、Walter・・・・」 肩が震えてゆく。見るほうが辛くなるほどに赤くなった目元から、まだ涙が溢れていた。 「もういい・・・もういいよ、Dana・・・言うな、それ以上言うな・・・」 切なくて、切なくて、Skinnerはその腕に力をこめた。吐息の音を確かめるように慎重に濡れた頬に 頬擦りする。 Scullyはその怒りも興奮もなくなって、ただ自分への優しい愛情だけが残った彼の仕草を肌で感じて、 今度は安心の涙を流していた。 どんなに自分が卑怯でも、ずるくても、このぬくもりを今手放す勇気はない。 今のScullyの哀しみを埋めることができるのは、確かにSkinnerだけだった。 「おはよう」 青白い顔に腫れぼったい目、というひどい顔で、それでもScullyは明るくアカデミーにやってきた。 今日が講義の日でよかったと、Skinnerは彼女に微笑んで額にキスをして送り出してくれた。 彼女も心底そう思いながら、教壇に立った。 「先生、今日はなんだか顔色が悪くないですか?」 生徒の何人かにそう聞かれたが、 「報告書を作成したり、今日の講義の準備で寝ていないからよ」 と、軽い笑顔でかわしていった。 午前中の講義が終わり、ため息交じりで講師控え室に戻ったScullyは、机の上にメモを見つけた。 <事件発生。何時でもいいのでX-Files課に立ち寄るように Mulder> 小さく息を呑んだ彼女に隣のデスクから声がした。 「ああScully先生、30分くらい前かな、あなたの相棒とやらから電話がありましたよ」 ---彼は、携帯電話にかけることを憚ったのだ。 Scullyは胸がうずくのを感じた。 なぜMulderは彼女に直接電話をかけてこなかったのか。 彼女にとってそれは、Mulderが仕事とプライベートを分けた壁を作ったように感じられた。 Dianaがそばにいたのかしら? 不意にそんな考えが頭をよぎる。 それだけでもう辛くて、彼女もまた、彼の携帯電話には、かけてはいけないかのように感じてしまった。 伝言を頼んで、受話器を置いて、Mulderはため息をついた。 ひどい疲労が地下室を包み込んでいる。 事件はロサンジェルスで起きた。マリブの豪邸でフランス人の変死体が発見されたのだ。 「・・・バカげてるよな」 ごみ箱を蹴飛ばす。 この事件にはXな要素はなにもない。ただ、ややこしいことになりたくないから、警察がFBIに回してきた だけのことだろう。変死体といっても、ただ一部だけが腐った、見た目に変わった死体というだけで なにも妙なところはない。 こんな事件のために、Scullyが出かけていって解剖する必要はないだろう。 その判断は、自分が下してもよかったはずだった。または電話一本かけて、彼女に行くか行かないか 判断してもらえばいいだけのことだった。 ・・・でも。彼女の携帯電話を押しかけた指は、なぜかためらってしまった。 もう慣れ親しんだ番号なのに。 聞きなれた呼び出し音の向こう側にいるのは、もちろんこの時間はScullyただ一人なのに。 それなのに怯えた自分を自覚して、Mulderは受話器を置いた。 そして、わざわざ調べてアカデミーに電話をかけなおしたのだった。 彼女に会う口実が出来た喜びと、どんな顔で話をしようかという戸惑いとを併せ持ちながら。 「・・・遅くなってごめんなさい」 講義を終えて、鏡を覗いた自分の顔があまりに疲れていたため、化粧を直して移動してきた Scullyが地下室にやってきた時には、時計は20時になろうとしていた。 遅くなることを伝える電話を一本入れればよかったのだが、なんとなくかけづらく、内心では待ち疲れた Mulderが資料だけ残して帰っていてくれたらいいとさえ思いながらドアを開けた。 「ああ」 まるで力のない茶色い瞳がScullyを出迎えた。 今度の事件が大した仕事ではないらしいことは、その表情を見ればScullyにも分かった。 けれど今の彼女はつい余計なことまでかんぐってしまう。 新しい事件、それもX-Filesには関係なさそうな事件のせいで、Dianaと離れて自分と出かけなければ いけないことが憂鬱なのかもしれない。 「どうしたの?今夜から出かけなくちゃいけないような事件?」 荷物を置きながら、つい不満げな声を出してしまう。 そんな声を聞くとMulderもまた構えてしまう。 「いいや別に。君がこの資料を見てメスをふるいたいかふるいたくないかだけのことさ」 ばさっと音を立てて机の上に紙が投げられた。 一瞬二人の視線が絡まった。 いつもの軽口の言い合いとはレベルの違う互いの尖った口調に、どちらも当惑している。なにか軽い冗談 でも言わなければ、という焦りが二人の頭をかけめぐっていた。 なんというぎこちない空気。 資料に目を通しながら、Scullyは何を言うべきかばかり考えていた。 「・・・今の発言とこの資料から察するに、もし解剖する気なら、私一人で行けってことかしら?」 結局、彼女の口をついて出てきたのは軽い冗談でもなければ、まともな意見でもなかった。 いつもと同じ感じのことを言わなければ。そう思って考え出した言葉だったのだが・・・。 言った瞬間から後悔が口の中で苦く広がった。 Mulderの表情が怒ったような哀しいような、複雑な色を描いてゆく。 「誰もそんなことは言ってないだろう?行きたくないならそう言えばいいだろう?こんな事件くらいで SkinnerのいるDCから出たくないならそうはっきり言えばいいんじゃないのか?」 ひどく僻みっぽい言い方だったと、Mulderもまた言った瞬間から後悔した。Scullyが誰のことを考えて 出張に行く行かないの判断を下そうとそれは彼女の勝手だ。それなのに、自分の思いがままならないからと いってこんな風にScullyを困らせるなんて、と自責の念が頭を掠めた。 だが、もうそれは取り返せるものではなかった。 「・・・なに、それ・・・。知ってた・・・の?」 喉を嗄らしたような声で、詰まりながらScullyは口を動かした。 「私、そんなつもり、ないわ。ひどいわMulder、そんな風に言うなんて・・・。じ、自分だって本当は 出張ならDianaと行きたいって思ってるんじゃないの?どうしてあなたにそんな風に言われなくちゃ いけないの?」 知られていたという驚きと隠し切れない嫉妬が、思わぬ言葉をScullyに言わせていた。 混乱した二人の想いが交錯して、二人は互いに自分の言葉と相手の言葉に息を飲んだ。 閉じ込められていた時間が溶けてゆく。 「副長官と・・・いつからなんだ?」 「か、関係ないでしょう、そんなことは」 きつい口調で言い返しながら、ScullyはMulderの想いを垣間見て体が震えだすのを感じた。 「関係なくないだろう?僕は・・・」 言いかけてはっとしたように口を閉ざしたMulderにScullyは性急に聞き返していた。 「僕は・・・何?何なの?」 何も考えていなかった。 ただその続きが欲しくて、期待していた言葉が聞きたくて、今まで抑えていた心を忘れてしまっていた。 Scullyの勢いにMulderも自制を失った。 目の前にScullyがいる、しかも自分の言葉を待って。 それは、Mulderが初めて見たScullyの中での自分の正確な存在位置だった。 「僕は君が好きだから・・・だから嫌だ。君が他人の腕の中ですごすのはいやだし、僕のしらない顔したり するのも嫌だ。ずっと・・・君にそう言いたかっ・・・」 「やめてっ」 鋭い悲鳴が空気を突き破ってMulderの言葉を止めた。 聞いてはならない言葉を聞いてしまったことにやっと気付いて、Scullyは体を小刻みに震わせてMulderを 見た。 ・・・もう遅かった。 溶け始めた時間は戻らない。 二人は息を呑んで見つめ合っていた。 全く違う瞳を持った想い人が、互いの目の前に立っていた。 to Be continued... /-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/- /-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/- なんだかさらに、本編とかけ離れた話になりつつあるような・・・(^v^;) しかも今回オトナシーンなしだし・・・(汗) ・・・こんな話でも読んでくださった方に感謝いたします。 感想とか、BBSにでもいただけたらうれしいです。 うっしーず2号