この物語はフィクションであり、「XF」の著作権等を侵害する つもりではないことを、ここにおことわりしておきます。 また、「XF」に関するすべての権利は、クリス・カーター氏 及び20世紀FOX社に帰属します。 お読みになる前に 本作はいわゆる「おとな」場面を含むものです。 18才未満の方や、そういう関係の二人を好ましく思わない方 にはお勧め致しません。 しかも、今回はあまりに遅い進捗状況に(おとなものは勢いが つかないと書けないはずの私)、ついに筆者の頭のネジが吹っ 飛び、言い訳のかわりにあまりにばからしいあとがきまで添え てしまっております。もちろん読み飛ばして頂いて結構ですが、 お読みになってしまってからのお叱りは何卒御容赦下さい。 もちろん本編もお読み頂いた後、御不満な点も多くあるかと存 じますが、罵声、中傷等のメールは御容赦下さいますよう心よ りお願い申し上げます。 +++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ 「Dawn in June」 「発つ前に寄りたい所があるの。」 君が普段と変わらない口調でそう言って、ここを訪れる前から 雨はずっと降り続いていた。 救えなかったその幼い少女の面影を、君が誰に重ねているのかは、 想像するまでもない。 音もなく降る雨の中、墓前に佇んでひたすら祈り続ける君を、背中 から見つめながら、僕はそっと声をかける。 「入り口で待ってる。」 君からの返事はなかったが、 僕は雨をたっぷり吸い込んだ芝生に一歩足を踏み出した。 君はまだ祈り続けている。 その姿がいつもより小さく見えるのは、君がさす傘のせいだけで はないだろう。 スカリー。 心の中で、君の名前を小さく唱えた。 まるで、僕の方が救いを求めているように。 背中であなたの声を聞いてから、もうどれくらいたっただろう。 私はようやく顔を上げ、傘をおろして空を仰いだ。 音もなく降る雨は、私にも、そして墓前に添えられた白い百合 の花にも落ちていく。 静かな雨。残酷なほど。 私は傘をさし直して歩き始めた。 そして、傍らで咲き誇る色とりどりの薔薇の脇を、少し急ぎ足 ですり抜ける。 夕刻の墓地にはもう他の人影はなかった。 入り口にあなたが立っているのが見える。 あなたがさす傘にも、例外なく雨は降りかかる。 音もなく。 あなたの姿を見て、私は笑顔を作ろうと努力した。 「もういいの?」 あなたが最初に声をかける。 「ええ。ありがと。モルダー。」 そう言ってあなたの前まで来ると、私は涙が自分の頬を濡らす のを感じた。 あなたが私のさす傘をそっと取り上げて、私の腕を引き寄せる。 そして。 私はそのまま抱きしめられる。 「スカリー。泣いたって構わないよ。」 「もう泣いてるわ。」 「だからさ。」 「ええ、そうね。モルダー。」 あなたの腕の中で、私はすこし笑みをもらした。 溢れる涙を拭おうともせずに。 そして、ゆっくりとあなたを見上げる。 見慣れたあなたの瞳を見て、あなたの想いを感じ取る。 ゆっくりと、あなたの顔が近付いて。 私は、あなたに体を預けて、そっとそのまま目を閉じた。 僕らは帰路に着いていたはずだった。 君を隣に乗せて、僕は黙ってハンドルをとる。 夕暮れが迫る路上に、空港へと続くハイウェイの分岐点が 見えてくる。 一時間後に乗るはずのDC行きのフライト。 雨に濡れるフロントガラスの上を、ワイパーが規則正しく 左右に振れる。 僕はその単調な軋み音をぼんやりと聞き続ける。 いや。そうじゃない。 僕はその音を数えていた。 頭の片隅で。 そして分岐点…。 僕は何も言わずそのまま車を直進させた。 空港へ続く道はあっと言う間に、後方へとかき消える。 「え?」 君が一瞬後ろを振り返ってから、僕の方へと向き直った。 「モルダー?」 どうしたの?と続く少し当惑した君の声。 僕は言う。 前を向いたまま。 「君が抱きたい。」 そして続ける。アクセルを緩めることなく。 「君に訊ねようかと迷った。  さっきの場所で、曲がるかどうか。  でも、僕が決断したかった。まず最初に。」 濡れた路面に僕らのライトが反射を始める。 「私の意見は?」 君が静かに聞き返す。 「次は君が選ぶ番だ。  引き返すか、引き返さないか。」 君は体を元に戻して、わずかの間沈黙した。 ほんのわずかの間。 そして答える。 「引き返さない。」 僕は返事をしない。 君の静かに響く声を、自分の胸の中で反芻するため。 今から僕らは同じ夜を過ごすのだ。 同じ夜。そして夜明けを。 +++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ ほのかなランプの明かりが天井を染めている。 時が止まってしまいそうな静けさの中で、 とろりとした凪のようなシーツに浮かんでいた私は、 あなたの動きでにわかに動きはじめた波におぼれないよう、 何かにつかまろうとする。 私の名を呼ぶあなたの声に導かれるように、 手をのばしてあなたの肩に触れ、 ようやくしがみつこうとする。 すると、あなたが私の手首を捉え、口づける。 手首、そして腕。 そして肩。 あなたの口づけは暖かく、そして柔らかい。 私の耳元に辿り着いたあなたを、今度は私が捕まえる。 あなたに。 さっきまで浴びていたシャワーのぬくもりと、 ずっと私を待つ間にしみこんだ雨の匂いを感じて、 私は自分の中の何かが溶け出すのを感じる。 それは。 ずっと封印してきた感情。 そう、あなたに。 愛されたいという想い。 そう願う、私の想い。 私はあなたの名を呼ぶ。 私を抱く、あなたの名前を。 ランプの明かりにほのかに照らされる君のからだに 僕はいやでも釘付けになる。 僕の動きに君は最初に少し表情を歪めて。 そして小さく息を吐く。 「ダナ?大丈夫?」 そう声をかけると、君は静かに微笑んで、 そして空に手を伸ばす。 僕へと伸びた君の指は少し震えて、 僕を更に混乱させる。 戸惑う僕は、その手首を捕まえて キスをする。 手首から腕。 そして肩。 君の白い首筋に、僕がたどり着いた時、 君は僕の名を呼んだ。 僕は自分の取るリズムを少し整え、 君をそっと抱き起こす。 僕の中で支えきれなくなったこの想い。 あふれるように流れる君への想い。 この瞬間が永遠に続けばいいと祈る僕を、 君はどう思うだろうか。 僕が祈る。 君との時間が永遠でありますようにと。 あなたが私の背を支えて抱き起こす。 私の髪に触れたあなたは私の瞳を一時見つめて。 そうして私に口づけをする。 さっきまでのそれとは違う、長くそして激しい口づけ。 あなたがこんな激しさを内に秘めていたことに、 私は少し驚いた。 そして今起きている出来事が、現実だということを 自分の体が教えてくれる。 「すごく素敵だ。」 あなたが私の耳もとでそう言いながら、 私の腰を引き寄せる。 その痺れにも似た甘い振動に、私は声をあげそうに なって、あなたの肩に歯を立てる。 あなたの手は私の腰から背骨をたどって、肩へとつたう。 私の鎖骨をなぞるあなたの指先。 そして、そのまま何かの線を描くように下へと 降りる。 私の膨らみにたどり着いたあなたの手。 その手に包みこまれただけで、私は思い知らされる。 私の中にあなたがいること。 私は耐え切れずきっと声をあげるだろう。 あなたの名前、そして。 「お願い。」と。 君が僕の名を呼んだ。 僕はその声を待っていたかのように、 君に体を預けるようにして、もう一度僕らはシーツの 海へ沈みこむ。 時が満ちて、次に海面へと浮き上がるための儀式のように。 「ダナ?」 それだけで君は僕が何を言いたいのかを感じとって、 一度目を開けて、僕を見つめる。 そして、小さくうなずいた。 僕は波間で君とはぐれないよう、君を強く抱きしめる。 「愛してる。」 声に出して一息に伝えることが、 こんなにもたやすい事だったとは。 腕の中の君を感じながら、僕はそう考える。 君の指が僕の背で爪を立てる。 ようやく気付いた僕がいる。 僕らはお互いを手に入れたのだ。 君が小さな悲鳴をあげる。 そして。 僕らは光の溢れる海面へと浮き上がる。 波間で君とはぐれることもなく。 君は僕の腕の中にいた。 心の中で、もう一度僕は呟く。 愛してる。ダナ。 愛してる。と。 +++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ 「まだ、始発便には時間があるのに。」 そう言う私の言葉に、あなたは答える。 夜明け前の静寂の中、助手席の私をちらりと見ながら。 「もう1度君を抱けるぐらいの時間?」 さっきあなたの口づけで目覚めたことを思い出したのを、悟られないよう にしながら、私は言う。 「コーヒーを飲んで、トーストを食べるくらいの時間。」 「じゃあ足りない。」 あなたはそう言ってやさしく微笑んだ。 「どこかへ寄るつもり?」 「ああ。もうすぐ着くよ。」 あなたはそう答えて走り続ける。 昨日までの雨で、周りの景色は洗い流されたように澄んでいる。 そして。 「ここだ。スカリー。」 とあなたが私を促したのは、まだうすぼんやりとした空気に包まれた 小高い丘の上だった。 車を降りると、眼下にはまだ青白い砂浜。 そしてうっすらと夜の色をまとったままの海が広がっている。 聞こえるのは波の音。それから風の声。 ふと足下を見ると、一角だけきちんと芝生が貼られた上に、 小さな石碑がぽつんと置かれていた。 一篇の詩が刻まれた白い石碑。 「ここは?」 私は後ろにいるあなたに振り返ってそう訊ねた。 海からの風があなたの上着を少し乱している。 「昔、アイルランドから、ある移民船が辿り着いた場所だ。  その船に乗っていた青年が、同じ地を目指しながらそれを果たせな  かった仲間への哀悼と新天地への希望を詠んだ。  後に彼は、アメリカを代表する詩人になる。  ローレンス・E・サマーズさ。」 あなたはそこまで言ってから、一息おいてこう言った。 「せっかく来たから、君に見せたいと思って。」 それから、本物は博物館にあるけどね、と小さな声で付け加えた。 私はしゃがんで、その小さな碑に手をのばした。 石のひんやりとした冷たさが、私の指へと伝わって来る。 そして、刻まれた数行の言葉をなぞる。 「彼の地より---------」 私が声に出して読み上げようとした時、あなたが私の隣に 立って声をかけた。 「スカリー。夜が明ける。」 私はその言葉で立ち上がる。 眼下の水平線が、ゆっくりと光で縁取られていく様子。 私たちは並んでそれを眺めていた。 「愛してる。」 あなたが前を見つめたままそう言った。 「愛してる。モルダー。」 私もそのままの姿勢でそう答える。 海の色が変わっていく。 その様は、今も昔も変わらない。 そしてきっと…これからも。 『彼の地より辿り着きて  この地へ降り立つ  海の終わりをかえりみて  今、思う  我らの未来  ここに始まる。   L.E.S 』 end +++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ 涙のタイトル秘話(ウソです) 編集者田中氏       「さっきから印刷所の方からがんがん電話かかってるんですけどー。 (↑年下のくせに生意気な) 望月さん。」 望月(←これ私)     「あ、はいっ。す、すみません。。」 田中「だいたいあの大富島先生が腸閉塞で入院しちゃって、誌面が空いちゃった所をですよ。    望月さんが手ェ挙げてタダでいいから書きたいって言ったんですからね。    ま。白紙で刷るわけにはいかないから、こっちはいいっすけどねー。」 望月「えぇ。わ、わかってるんですけど。。ど、どうも前後が上手く進まなくて。。。」 田中「そんなねー。ベテランの大先生じゃあるまいし。前後どころか今回のテーマ、アダルト    なんですから、本番のシーンをどーんっと書いてくれりゃあいいんですってば。」 望月「本…そ、そんなロコツに言わなくてたって。。    で、でもっ。やぱりそーなるまでとかっ、そーなった後どーだとかって物語の膨らみ    とかって意味では、た、大切じゃあありません?…か?」 田中「何言ってんですか。それはちゃんと書ける人の話でしょー。    そんなことは100年早いんですってば。望月さん。    さ、とにかく早く上げて下さいよー。ほ、ほらっ。タバコ持ってないで、ペン持って!」 望月「はっ、はいっ。」(望月あわててペンを取る) しばしの沈黙。 望月「で、出来ましたっ。あ、タイトルがま、まだだけど。。」 田中氏これを一瞥。 田中「本番シーン…ってこれだけ?」 望月「そ、そんな本番、本番って。。せめておとな場面とか。。」 田中「他に凝ってるヒマあったら本番シーン凝って下さいよー。    もっとどーんっといってくれないとねー。どーんっと。    これじゃあ読者がつかないっすよー。今月は競作だからいいっすけどねー。    ま、白紙よりマシってことで、一応もらっときます。    あ、タイトルはこっちでテキトーにつけますから。」 田中氏原稿を抱えて退場。 望月「そんな…。どーんって言われても。。どーんって。。。想像の域にも限度ってもんが。。。    ん…?どーん…?ドーン。。。これ!使えるかも!    た、田中さーん。タイトルこれで行きまーす!」 ドタドタドタドタ・・・(望月、田中氏を追いかける音) おしまい 最後までお読み頂きまして、ありがとうございました。 すっかりひいちゃってる方々、本当にごめんなさい(m__m) もしも御感想等(御指導も含めて)お送り頂けるのであれば、 掲示板、または下記アドレスまで頂戴できると幸いです。 亜里 sendtoice@moon.to.fm