10万Hitおめでとう 第一段 ひよ様に愛を込めて送る嫌がらせプレゼント(返却不可) ********************************************** 本作の登場人物・設定等の著作権は、全てクリス・カーター、1013、 20世紀フォックス社に帰属します。 "We just keep unfolding like a flower. " spoiler:Fire wrriten by Nicholas 私達は10代で出会ったわけじゃない。あなたにも私にも過去はある。 それは当たり前のことと頭では分かっているのに、それが現実のものとして目の前に現れたとき、 冷静ではいられなかった。 私達の関係。 それはお互いの命を預けあう仕事のパートナー。 そして、いくらもがいても手の届かない真実への渇望を癒す為に体を重ねる関係。 私達がこうなるのはあっと言う間だった。 自分でも驚くくらいに、自然な成り行き。 私にとっては出会ってから寝るまでの最短記録。 恋人ではない人とこんなことになったのも初めてだった。 でもそれに対して罪悪感も興奮もない。 快楽の為でもなく、傷をなめあう為でもなく、忘れる為でもない。 あなたのそのしなやかな指に込められた情熱が、熱い吐息から感じる切なさが、乾いた心に染みわた り、私を潤す。 私は二人の間に存在するものを愛情と定義づけていた。 「同志愛」という愛情。 出会ってまだ日は浅いが、私たちの間には既にパートナーとしてのそして友人としての強い絆がある と思っていた。 でもそんなごまかしがきいたのは、あなたの周りに女の影がなかったからかもしれない。 FBIの歴史の中でも十指に入ると言われる人だ。例えXファイルの為に出世街道から外れてもその 能力が劣ったわけではない。 今でもあなたを虎視眈々と狙っている女性局員はいくらでもいる。 でも今のあなたにとっては真実を見つけることが最優先であり、女に目をくれている暇などないこと は明らかだった。そしてそれはすなわち私を女として見ているわけではないことも。 突然に現れたあなたの過去。 それはあなたにも情熱を傾けた女がいたという事実を、否が応でも私に突きつける。 その熱い眼差しをかつて一身に受けた人を腕に抱いて、静かな口づけを交わすあなた。 二人の姿を見たとき、私をあなたの腕の中に彼女ではない人を見ていた。 例え一瞬の幻影でも、見てはいけないものを見てしまった時の私の驚きと恐怖が、今私をこんなにも 動揺させている。何故私がこの幻影にこれほどに心を乱されたのか。 分かり切った答えを見つけられないふり続けながら、私は今日もこの言葉を何万回も、何十万回も唱 えている。 「私たちはパートナー」 あなたは私を友人として、そして同志として見ているのだ。 だから今夜も私たちは同志愛としての行為を続ける。 その腕の中で、かつて愛した人からは得られなかった情熱と癒し、後悔と諦めを噛み締めながら、私 はまた暗い海の底に沈んでいく。 nicholas@fh.freeserve.ne.jp